ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。
棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。
ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。
そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」です。
垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。
そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。
棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット
棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。
そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。
日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。
通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。
また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。
一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。
ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。
(関連記事:棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り)
垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット
垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。
したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の機械化」という3つのメリットが得られます。
垣根仕立ては、長梢更新剪定および、短梢剪定のどちらでも利用ができるという柔軟性も特徴です。
(関連記事:ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは?)
また、応用を効かせて、垂直に伸びた新梢の上部を結びつける代わりに垂れ下げていくらか葉陰を造ることができたり、棚仕立てに比べると目線の位置で作業ができるというのメリットかもしれません。
一方で、垣根仕立て(VSP)は樹勢の強いブドウ樹にはあまり向かないと言われています。そしてこのような場合は、その他の棚付けの方法(ジェノバ・ダブル・カーテン、リール、ペルゴラなど)を利用して強い樹勢が管理されます。