ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...
南オーストラリア州には、いくつかの有名なワイン産地があります。これらはオーストラリアのワイン法で、地区(Region)と呼ばれるレベルのものです。(ZONE > Region > Sub-region)
広大な南オーストラリア州のうち、ワインの主要産地は南端のごく一部です。
各地区はそれぞれ独特の気候を持ち、その気候にあったブドウ品種が栽培されています。
この記事では、それぞれの地区が持つ気候の特徴と、栽培されている品種をまとめて行きたいと思います。
まず、南オーストラリア州のサイズ感ですが、下の地図をみるとよくわかります。
しかし、主要なワイン産地のうち、北端のクレアヴァレーから、南端近くのクナワラまで約500kmあり、ここに東京ー大阪間がすっぽりと収まってしまいます。
いかに広大な土地に広がっているかがよくわかります。
では、ここから主要産地の場所と、気候特徴、主要品種を見ていきたいと思います。
一気に箇条書きにまとめてみました。
① クレア・ヴァレー(Region; 地区)
- 温暖な気候
- 冷涼な風と夜間の気温の低下による緩和効果がある
- 昼夜の気温差によって、果実の成熟が遅くなり、酸味が保持される
- 尾根/丘と谷が連続しており、
- ⇒ 標高の高い地域で、リースリングなどが栽培さる
- ⇒ 標高の低い地域で、シラーズやカベルネソーヴィニヨンが栽培される
② リヴァーランド(Region; 地区)
- 暑い大陸性気候(川や海からの若干の冷却効果あり)
- グレートディヴァイディング山脈の影響で雨が少ない
- ⇒ 大量収穫の健康的なブドウ栽培に理想的な環境
- ⇒ 低価格、大量生産ワインが製造される(GIサウス・イースタン・オーストラリアなど)
③ クナワラ(Region; 地区)
- 温和なボルドーに似た気候
- 海風と雲による気温の緩和効果あり
- テラロッサ土壌(水はけがよく、水と影響の摂取を制限する土壌)
- ⇒ 樹勢が制限され、果実の凝縮度が増す
- ⇒ カベルネソーヴィニヨン、シラーズ、シャルドネ、リースリングが栽培されている
④バロッサ・ヴァレー(Region; 地区)
- 温暖な気候(夏は暑いが、夜は涼しい)
- ほとんどの畑は平野にある
- ⇒ フルボディの赤ワインに適した環境
- ⇒ シラーズ、カベルネソーヴィニヨンが主に栽培される
- ⇒ フルボディのシャルドネやセミヨンも造られる
⑤イーデン・ヴァレー(Region; 地区)
- なだらかな丘陵地帯(ロフティ山系の一部)で、バロッサヴァレーよりも標高が高く、より涼しい気候
- ⇒ リースリングが最も多く栽培される
- ⇒ シラーズは、バロッサヴァレーよりも酸味が高く、タンニンに骨格があり、アルコールが低い
⑥マクラーレン・ヴェール(Region; 地区)
- 温暖~暑い夏
- 気温は湾やアデレードヒルズからの風で緩和される
- ⇒ 黒ブドウが収穫の90%を占めている
- ⇒ シラーズ、カベルネソーヴィニヨン、グルナッシュの栽培が多い
⑦アデレード・ヒルズ(Region; 地区)
- 冷涼~温和な海洋性気候
- 標高による冷涼効果
- ⇒ 比較的涼しいために、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ピノノワールが多く植えられる
- ⇒ 昼夜の気温差のために酸味が保持される