カルトワインとは、一般的に、熱心な愛好家グループが大金を払って手に入れる非常に高額なワインを指します。
「Cult」とは、宗教的に用いられることも多い言葉ですが、「社会の特定のグループの間で人気があること」という意味も持つ単語です。
まさに、その名の通りのワインです。
カルトワインは一般のワインとは異なり、単に消費のために購入されるわけではなく、しばしば収集や投資のために購入されます。
これらのワインはもともと非常に品質の高いワインですが、生産量が非常に少なく、口コミや有名批評家からの高評価による需要の高まりによって、本来の品質以上の価格で取引されます。
そして、その価値は年を追うごとに飛躍的に上昇するとも言われます。
「カルトワイン」という言葉はもともとは、カリフォルニアのナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン ブレンドが法外な値段で売れた現象を表現するために使われた言葉と言われています。
そして、この現象は、ワイン造りの伝統のあるワイナリーからではなく、小さな無名な土地から若い醸造家が造ったワインによって作り出したと言われています。
このような経緯で広まった「カルトワイン」という言葉ですが、今では、ブルゴーニュ、ボルドー、ローヌ、イタリアなどのワインでも、生産量が希少で高額で取引されるワインはカルトワインと呼ばれるそうです。
カルトワインと似たような言葉に、「ガレージワイン」という言葉があります。以前に下の記事でも触れました。
(関連記事:格付けやAOCだけじゃない!学んでみると楽しいボルドーワイン)
ガレージワインは、1990年代半ばに、ボルドーの赤ワインの伝統的なスタイルに反発して、ガレージの様な小さな醸造設備で少量生産されたワインのことを言います。小規模な畑でとれたブドウをポムロールの農家の地下で醸造していたシャトー・ル・パンは、ガレージワインの前身と考えられています。
ボルドーの赤ワインの伝統的なスタイルは、タンニンが強く、飲めるようになるまでに長い瓶熟成を必要とするものでしたが、ガレージワインの醸造家たちは、伝統的なスタイルとは異なる果実味豊かなワインを造り批評家からの高い評価を受けました。
ガレージワインも、カルトワインと同様に、無名な土地から伝統の無いワイナリーで製造され、高い品質や希少性、さらには誇張や流行によって非常に高値で取引されるようになりました。
ガレージワインもカルトワインに非常に似通っていますが、ボルドーのカルトワインと言う場合、その多くは、1855年の格付けで上位にランクされた、左岸のカベルネ・ソーヴィニヨンをベースとするワインを指すようです。