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12月, 2022の投稿を表示しています

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エントレ・コルディリェラス? チリの新しい原産地呼称の覚え方

 チリのワイン産地は南北に長く広がりますが、地形的な特徴の影響を受けるために、実は南北よりも東西にかけて、気候や土壌の多様性が非常に高いと言われています。 従来の原産地呼称では、この東西にかけてのワインスタイルの特徴の違いが十分に表現されていませんでしたが、2011年から、この問題を解決するための新たな付加的な原産地呼称が加えられました。 それが、「コスタ(Costa)」、「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」、「アンデス(Andes)」の3つです。 これは従来の原産地呼称に付加的に加えられるもので、例えば「Aconcagua」で造られたワインに対して、「Aconcagua Costa」、「Aconcagua Entre Cordilleras」、「Aconcagua Andes」のようにラベルに表記されるようです。 上図のように、「コスタ」は海の影響を受ける地域、「アンデス」はアンデス山脈の影響を受ける地域、そして「エントレ・コルディリェラス」はその間の地域を表します。 この新たな原産地呼称の仕組み自体はシンプルなのですが、それぞれの名前、特に「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」を覚えるのが厄介です。 そこで、これを覚えるための語呂合わせを考えてみました。 エントレ・コルディリェラスは少し苦しいですが、英語のスペルも覚えられるように、それに合わせた語呂合わせにしてみました。 <了>

場所が近いのにこんなに特徴の違う「アデレード・ヒルズ」と「マクラーレン・ヴェイル」

 アデレード・ヒルズ(Adelaide Hills)とマクラーレン・ヴェイル(McLaren Vale)はともに、南オーストラリア州の州都であるアデレード近郊に位置するワイン産地です。 地理的な場所が近いので、何となく似通ったイメージも持ってしまいやすい2つの産地ですが、調べてみるとかなり特徴が異なります。 今回は、その違いについて調べてみました。 まずは、 アデレード・ヒルズ の特徴から。 この地域の特徴は次の通りです: ・マウントロフティレンジ・ゾーン(Mount Lofty Ranges Zone)に属する ・丘陵や谷が多く、機械作業が困難 ・標高が高く、オーストラリアのワイン産地の中では涼しい(冷涼~温和) ・昼夜の寒暖差(日較差)が大きい ・海に近い海洋性気候で雨が多い(特に冬から春にかけて) ・オーストラリアの産地の中では湿気が高く、カビのリスクが高い ・緯度が低めのため、日光が強い ・白ワイン品種の方が多く栽培されている(ソーヴィニヨンブランやシャルドネなど) ・赤ワイン品種ではピノノワールの栽培が多く、スパークリングワインやスティルワインが製造されている ・オーストラリアの産地の中ではシラーズの栽培が少ない まとめると、アデレード・ヒルズはその名の通り、丘陵にある標高の高い地域であるために、気温が低く、白ブドウ栽培や早熟な黒ブドウ品種の栽培に適した地域であるようです。雨が多く、比較的湿気の多い地域でもあり、これも気温の低さに影響しているのかもしれません。 次に、 マクラーレン・ヴェイル の特徴です。 この地域の特徴は次の通りです: ・フルリオ・ゾーン(Fleurieu Zone)に属する ・気候は暖かい地中海性気候 ・海風や丘陵からの風が暖かい気候を緩和するとともに、カビのリスクを減らす ・春から秋にかけて雨が少ない ・圧倒的に、赤ワイン用品種の栽培が多い(シラーズ、カベルネソーヴィニヨン、グルナッシュなど) ・シラーズの栽培が最も多い ・機械収穫を取り入れている大規模なブドウ畑が多い まとめると、マクラーレン・ヴェイルは、アデレードヒルズに比べると低い地域であり、気温もかなり高めです。比較的、乾燥した気候で、日照量も多く、フルボディの赤ワインを造るような晩熟のブドウを栽培するのに非常に適した地域です。涼しさの必要な、白ブドウ品種やピノノワールのよう

「トロンテス」の特徴とは? ~アルゼンチンの代表的な白ブドウ品種を調べてみる~

 トロンテスは、アルゼンチンで生産される代表的な白ワイン品種です。 アルゼンチンワインと言えば、赤=マルベック、白=トロンテス、というイメージがあります。 実際、マルベックはアルゼンチンで最も栽培面積の広いワイン用ブドウ品種です。 栽培規模 トロンテスの栽培規模というと、必ずしも大きいわけではありません。 栽培面積は白ブドウで2番目ですが(1位はペドロ・ジメネス)、白黒合わせた全体では、6、7番目くらいの栽培規模です。 アルゼンチンは、黒ブドウ品種に加えて、ピンク系ブドウ品種の栽培も多いので、白ブドウ品種の生産はそこまで多くないためです。 主要産地 トロンテスの主要産地は、メンドーサ州、サンフアン州、ラ・リオハ州、そして、最も成功していると言われているのはサルタ州のカファジャテ(Cafayate)です。 これらの地域は、ワイン用の産地としてはかなり低い緯度に位置しているのが特徴です。サルタ州は南緯24度と、本来であればかなり暑い地域に位置しています。 ブドウ栽培における特徴 トロンテスは早熟なブドウ品種です。気温の高さによって成熟し過ぎると、アルコールが過度に高く、酸味に乏しく、苦みのあるワインになってしまうという特徴があります。 では、このような特徴を持つトロンテスが、なぜ南緯20~35度のような本来であれば暑い場所で栽培されるかというと、メンドーサ州、サンフアン州、ラ・リオハ州、サルタ州の標高の高さに理由があります。 トロンテスが栽培される畑は全て標高の高い場所に位置するため、栽培環境の気温は低くなり、早熟なブドウ品種のトロンテスに適した環境となるわけです。また、昼と夜の温度差が大きく、ブドウの酸味や、新鮮な果実の香りの保たれた高品質なブドウが造られます。高品質なトロンテスの栽培で有名なカファジャテの標高は、1,700mにもなります。 ブドウの起源 トロンテスは、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と「クリオージャ・チカ」の自然交配品種と言われています。クリオージャ・チカは、チリでは「パイス」と呼ばれるブドウです。 アルゼンチンでトロンテスと名の付くブドウ品種は、「Torrontes Riojano」、「Torrontes Sanjuanino」、「Torrontes Mendocino」の3つがあると言われています。このうち、トロンテス・リオハーノが最も品質

カルメネールとマルベックの類似点・相違点をまとめてみる

 南米のワイン産地で特徴的な黒ブドウと言えば「カルメネール」と「マルベック」があがると思います。 カルメネールと言えば「チリ」、マルベックと言えば「アルゼンチン」で多く栽培されているブドウですが、何かと似ている印象があって度々混同してしまいます。 そこで、この2種類のブドウの類似点と相違点についてまとめてみようと思います。 類似点 最初の類似点 は、 ワインスタイル です。 カルメネール、マルベックともに、骨格のしっかりしたフルボディのワインを造ります。両者ともに、特に高いレベルのタンニンを持った黒系果実の香り・風味を持ったワインです。 また、一定水準以上の品質のワインは樽熟成を経て造られるので、どちらも樽熟成に由来するコーヒーやヴァニラ、その他甘いスパイスの香り・風味を持つことも共通点です。 また、フルボディのワインを造るブドウ品種に共通する特徴ですが、その栽培環境として、一定の日照や暖かさを要することも共通しています。 2つ目の類似点 は、 由来 です。 両者ともにもともとはフランスで栽培されていたブドウ品種のようです。そしてそれぞれの品種は、チリおよびアルゼンチンに持ち込まれ、それぞれの国を代表する赤ワインを造るようになりました。 一方で、両者ともにフランスにおいてはメジャーな品種ではなくなってしまっている点も共通しています。 相違点 最初の相違点 は主な 栽培地域 です。 カルメネールは、フランス、イタリア、アルゼンチンでも栽培がされていますが、やはり主な栽培地と言えばチリです。 マルベックも、フランスやアメリカを含め世界各地で栽培がされていますが、主要な栽培地と言えばアルゼンチンがあがります。またこれに加えて、フランス南西地方のカオールも主要な産地としてその名があがります。カオールではマルベックは別名「コット」とも呼ばれています。 両方とも南米で有名な黒ブドウ品種ですが、主要栽培地域には明確な違いがあります。 2つ目の相違点 は、代表的な産地であるチリ、および、アルゼンチンにおける 栽培面積 です。 マルベックは、白黒合わせて最も栽培されているブドウ品種であり、その栽培面積は全体の約20%を占めると言われています。まさに、アルゼンチンを代表するブドウ品種です。 一方で、カルメネールはチリにおいてそれほど大きな栽培面積を占めていません。チリで最も栽培されてい