スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

最新記事

エントレ・コルディリェラス? チリの新しい原産地呼称の覚え方

 チリのワイン産地は南北に長く広がりますが、地形的な特徴の影響を受けるために、実は南北よりも東西にかけて、気候や土壌の多様性が非常に高いと言われています。 従来の原産地呼称では、この東西にかけてのワインスタイルの特徴の違いが十分に表現されていませんでしたが、2011年から、この問題を解決するための新たな付加的な原産地呼称が加えられました。 それが、「コスタ(Costa)」、「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」、「アンデス(Andes)」の3つです。 これは従来の原産地呼称に付加的に加えられるもので、例えば「Aconcagua」で造られたワインに対して、「Aconcagua Costa」、「Aconcagua Entre Cordilleras」、「Aconcagua Andes」のようにラベルに表記されるようです。 上図のように、「コスタ」は海の影響を受ける地域、「アンデス」はアンデス山脈の影響を受ける地域、そして「エントレ・コルディリェラス」はその間の地域を表します。 この新たな原産地呼称の仕組み自体はシンプルなのですが、それぞれの名前、特に「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」を覚えるのが厄介です。 そこで、これを覚えるための語呂合わせを考えてみました。 エントレ・コルディリェラスは少し苦しいですが、英語のスペルも覚えられるように、それに合わせた語呂合わせにしてみました。 <了>
最近の投稿

チリのワイン用のブドウ栽培環境のまとめ

 チリのワイン用のブドウ栽培環境をまとめてみたいと思います。 さらには、地域ごとの栽培環境の違いによるワインスタイルの違いにも言及してみたいと思います。 これはあくまでも個人的なまとめなので、もしかしたら誤っている部分があるかもしれません。 まず、地域差はありますが、チリの全体的な栽培環境は次の通りです: 温暖な地中海性気候であるということは、非常にブドウ栽培に適した気候であると言えると思います。ここから、大量生産ワイン用のブドウ栽培が期待できると言えそうです。 また、温暖な気候であるとともに、海や山からの冷涼効果が期待できるということは、低品質の大量生産ワインだけでなく、高品質ワインに向いたブドウの栽培も期待できると言えそうです。 ではここから、主なワイン産地である4つの地域について、栽培環境を見ていきたいと思います。チリには6つのワイン地域がありますが、主要なワイン産地は、コキンボ、アコンカグア、セントラルヴァレー、南部地方の4つのようです。 チリの国土は縦長であり、それぞれの地域によって気候や栽培環境に大きな違いがあります。そして、その違いは生産されるワインのスタイルにも大きな違いを生み出します。 まずは、 「コキンボ」 からです。 コキンボの栽培環境とワインスタイルの特徴を下にまとめてみました。 コキンボの特徴は、とても険しい山間にあり、厳しい栽培環境にあるということです。 すぐ北にはアタカマ砂漠があるようなとても乾燥した地域で、ブドウ栽培地域としては緯度の低い場所にあります(南緯30°くらい)。 このような厳しい栽培環境においてもブドウ栽培ができるのは、海岸山脈にキャップがあるような谷間であり、そこには海風が吹き込むことで一定の冷涼効果が得られるようです。また地域によっては、アンデス山脈からの冷たい風の冷涼効果も得られます。 また険しい山間にあることから、標高による冷涼効果も得られ、日夜の寒暖の差も得られます。 コキンボで製造されるワインのイメージは、厳しい環境で造られたギュッと凝縮された少量生産のワインです。平野部が少ないことや、都市部からのアクセスが難しいことで、このような利益率の高いワインの生産が向いているようです。 次は、 「アコンカグア」 です。 アコンカグアはコキンボの南、セントラルヴァレーの北に位置します。 アコンカグアの特徴は、沿岸部からア

チリのセントラルヴァレーのサブリージョン/ゾーンの覚え方

チリ最大のワイン産地であるセントラル・ヴァレーには4つのサブリージョンがあります。 そして、サブリージョンのいくつかは、さらに細かいゾーンに分かれています。 これらのサブリージョンやゾーンは比較的メジャーな産地なのですが、何度覚えてもすぐに忘れてしまうので、忘れないための語呂合わせを考えてみました。 ラペル・ヴァレー(サブリージョン)のカチャポアル・ヴァレー(ゾーン)とコルチャグア・ヴァレー(ゾーン)以外にもいくつかゾーンはあるようですが、今回は有名なこの2つのゾーンのみを取り上げました。 実際に、「ラペル・ヴァレー」という名前よりも、「カチャポアル・ヴァレー」や「コルチャグア・ヴァレー」というゾーンの名前の方がワインラベルに使われることが多いそうです。 以上。

サルデーニャ州(イタリア)の白ワインと主要白ブドウ品種の覚え方

サルデーニャ州の主要な白ワインと、白ブドウ品種の覚え方を考えてみました。 まず、サルデーニャ州の主要な白ブドウ品種と言えば、ヴェルメンティーノ(Vermentino)です。 栽培面積の大きさは、カンノナウについで州内で第2位と言われています。 ヴェルメンティーノは、フランス南部ではロール(Rolle)という名前でも呼ばれる品種です。スペルはRolle(役割)とは違い、「L」が2つ重なるようです。 そして、サルデーニャ州の高品質な白ワインはこの品種から造られています。次の2つのワインは、このヴェルメンティーノから造られています。 ・ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャDOC ・ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG 「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG」はこの州唯一のDOCGワインとしても有名です。 ここまで国際的に広く利用されている品種であるヴェルメンティーノを取り上げてきましたが、サルデーニャには土着品種の白ブドウも広く栽培されています。 それが、「ヌラグス」というなのブドウです。 このブドウから造られるワインの多くは、主にこの地域で消費されるようなワインに使われているようです。 <了>

サルデーニャ州(イタリア)の赤ワインと主要黒ブドウ品種の覚え方

 イタリアのサルデーニャ州で製造されている主要赤ワインと、主要黒ブドウ品種の覚え方を考えてみました。 まず赤ワインとして有名なのは次の2つです: ・カンノナウ・ディ・サルデーニャDOC(Cannonau di Sardegna DOC) ・カリニャーノ デル スルチスDOC (Carignano del Sulcis) カンノナウとは、グルナッシュ・ノワールのサルディーニャ州での呼称です。 カンノナウはサルデーニャ州で最も栽培面積の大きなブドウ品種です。 また、カリニャーノとはカリニャンのイタリアでの呼称です。 カリニャンは、黒ブドウの中でカンノナウに続いて2番目に栽培面積の大きな品種です。 サルデーニャではこのように2種類の国際品種が多く栽培されていますが、土着品種の黒ブドウも栽培されいます。 その中でも栽培面積の大きいものは、モニカ(Monica)という名前のブドウです。これは主に、この土地で消費されるようなワインに使われているようです。 <了>

シチリア州のワイン用【黒】ブドウ品種の覚え方(語呂合わせ)

 白ブドウ品種に続けて、黒ブドウ品種の覚え方も考えてみました。 ネロ・ダヴォラ(Nero d'Avola) ネロ・ダヴォラは、シチリアで最も広く栽培されている黒ブドウ品種です。カラブレーゼ(Clabrese)という名前でも知られています。 シチリア唯一のDOCGワインである「 チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア(Cerasuolo di Vittoria) DOCG 」の主要品種としても有名です。このDOCGではフラッパート(Frappato)という名の黒ブドウとブレンドされます。 ネロ・ダヴォラは晩熟品種で、赤系~黒系果実の香りと、比較的しっかりとした骨格(タンニン、酸味)を持っています。 品質の低い低価格なワインも造りますが、収量を制限すると熟度の高いブドウから品質の高い中~高価格のワインを製造できます。品質の高いワインの多くは、小さめのオーク樽で熟成されます。 高品質なワインを造ることのできる特徴から、90年代には大きな注目も集めた品種であるようです。 ネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese) ネレッロ・マスカレーゼは、近年は、 エトナDOC(赤) の主要品種として注目されている品種です。収量を増やして大量生産に使われることもありますが、収量を制限した高品質なワインの製造にも使われる品種のようです。 エトナDOCは、エトナ火山を囲むように広がる地域です。ちなみに先ほど登場したチェラッスオーロ・ディ・ヴィットリアは島の南部に広がっています。 ネレッロ・マスカレーゼは、ネロ・ダヴォラと同様に、晩熟でしっかりとした骨格(特に高い酸味)を持つブドウ品種です。 ネロダヴォラと比べると、赤系果実の香りが中心で、スミレやハーブ、土のような複雑な香りを持っています。強めの香りの強さを持っているようです。 香りの良さと、しっかりとした骨格を持つという特徴から、近年注目されている理由もうかがい知れます。 エトナには60-100歳にもなる古木も栽培されており、最も品質の高いワインは、このような古木から収穫されたブドウで造られています。 <了>

シチリア州のワイン用【白】ブドウ品種の覚え方(語呂合わせ)

 シチリア州(イタリア)の白ワイン用ブドウ品種を覚えるための語呂合わせを考えてみました。 カタラット(Catarratto) カタラットは黒ブドウ、白ブドウの両方を合わせても、最も広く栽培されているブドウ品種です。英語で書く場合は、「r」が2つ並ぶのでスペルミスをしてしまいそうです。 シチリアの白ブドウは、低価格帯の辛口ワインや、酒精強化ワインのマルサーラの製造に使われることが多いようですが、カタラットも例外ではありません。 高い収穫量を期待でき、軽めのレモンやハーブの香りを持ち、高い酸味を持つことが特徴と言われています。 カタラットは、アルカモDOC(白)製造のための主要品種としても知られています。 グリッロ(Grillo) グリッロは、カタラットと同様にレモンの香りと高い酸味を持つ白ブドウ品種です。暑さに強い品種なので、シチリアの温かく乾燥した気候には非常に適しているようです。 グリッロから製造されるワインも、カタラットと同様に、低価格な辛口ワインやマルサーラ、アルカモDOCなどがあります。 しかし、中程度の強度の香りと、花の香りを持つために、カタラットよりも品質の高いワインが造られる傾向があるようです。 インツォリア(Inzolia) = アンソニカ(Ansonica) インツォリアは、アンソニカとも呼ばれる白ブドウ品種です。早熟で乾燥に強い特徴を持ったブドウ品種です。 カタラットやグリッロと同様に、中程度のレモンの香りを持った品種ですが、酸味は中程度で、カタラットやグリッロほどの酸味はありません。そのために、両品種とのブレンドに相性が良いようです。 インツォリアからも、低価格な辛口ワインやマルサーラ、アルカモDOCなどが造れらるようです。 ジビッボ(Zibibbo)= マスカット・オブ・アレキサンドリア シチリアではマスカット品種も栽培されており、ジビッボという名前で知られています。ZとBばかりの独特な綴りです。 ジビッボは、熱や乾燥に強いという特徴を持っているために、強烈な日差し、暑さ、乾燥した風によって最も乾燥に強い品種しか育たないパンテッレリーア島でのワイン造りに役立っています。パンテッレリーア島は、シチリアとチュニジアにある島です。 ここでは、通常の辛口や甘口のレイト・ハーヴェストワインに加えて、半干しブドウから造られるパッシート・スタイルのワインが

スペインの「グラン・レセルバ(Gran Reserva)」ワインとは?その品質を考察

スペインの「グラン・レセルバ(Gran Reserva)」ワインとは、スペインのワイン法で定められた最長の熟成基準を満たしたワインのことを指し、ラベルに「Gran Reserva」と表記することが許されたワインのことです。 赤ワインの場合、最低限5年の熟成期間が求められており、そのうち最低18か月以上の樽熟成が必要です。樽熟成に使われる樽のサイズにも規定があり、330ℓを超えるものを用いることはできません。 熟成期間の規定には独自にさらに厳しい条件を課している地域(リオハDOCaなど)もあり、さらに長い最低熟成期間や、瓶熟成の規定、より小さい樽の利用などの条件が課せられています。 白ワインやロゼワインにも「グラン・レセルバ」を名乗るには同様の熟成規定があり、4年の最低熟成期間(うち、6か月は330ℓ以下での樽熟成)という条件が課せられています。 一定の熟成規定を満たしたワインに表示のできるラベル用語としては「Gran Reserva」以外にも「Reserva(レセルバ)」や「Crianza(クリアンサ)」がありますが、最も長く厳しい熟成規定が設けられているのは「Gran Reserva」です。 では、「Gran Reserva」が最も品質の高いワインと言えるのでしょうか? 答えは必ずしもそうとは限りません。 その理由を考察していきたいと思います。 【理由①】「Gran Reserva」は熟成しか規定していない ワインの品質に大きな影響を与える要素としては、ブドウの品質(ブドウ栽培)、醸造手法(ワイン醸造)、熟成手法(ワイン熟成)があると言われています。 しかし、「Gran Reserva」が規定しているのは、このうちの「熟成手法」のみについてです。「ブドウの品質」や「醸造手法」については何も条件が課せられていません。 極端な例をあげると、最高の日当たりと水はけの畑でとられた最高級のブドウから造られたワインでも、栽培条件の良くない畑の粗悪なブドウから造られたワインでも、一定の条件を満たす熟成工程を経た場合、どちらも「Gran Reserva」が名乗れてしまうわけです。 例えば、同じ熟成規定のもとで造られるリオハDOCaワインであっても、これだけ広範囲にわたるブドウ畑があれば、そこで造られるブドウの品質もまちまちです。そして、そのブドウから造られるワインの品質もピンから

リオハの主要品種の覚え方(語呂合わせ)

 スペインのリオハの赤ワインに使われる主要品種の覚え方を考えてみました。 リオハと言えば、スペイン中央部の北側に位置するワイン産地で、特に赤ワインが有名です。 リオハは大きく3つのサブゾーンに分かれており、各ゾーンごとに気候や土壌の違いがあるために、栽培されるブドウの種類にも若干の違いがあります。 上図の青い部分が「リオハ・アルタ」、オレンジが「リオハ・アラベサ」、黄色が「リオハ・オリエンタル」というなのサブゾーンです。 リオハ・オリエンタルは昔は「リオハ・バハ」という名前で呼ばれていました。Bajaとは下流を表すスペイン語とのことですが、これはリオハの中心部を流れるエブロ川の下流に位置することから名づけられたようです。しかし、下を表すBajaという言葉が品質の低さも連想させることから、東を意味する「リオハ・オリエンタル」という名前に改められたようです。 一方で、エブロ川の上流にあるゾーンにはアルタ(Alta)という名前が付けられて、「リオハ・アルタ」と呼ばれています。 エブロ川の上流の一部、北岸のゾーンには「リオハ・アラベサ」という名前が付けられていますが、これはこの地域がアラバ県(バスク州)に位置することからつけられた名称であると考えられます。 さて、ブドウ品種の名前に戻りますが、リオハの赤ワインに使われる品種は「テンプラニーリョ」、「ガルナッチャ」、「グラシアーノ」、「マスエロ」、「マトゥラナ・ティンタ」などです。 これらの品種を覚えるために次のような語呂合わせを作ってみました。 テンプラニーリョ(Tempranillo) リオハで栽培されているブドウの9割が黒ブドウですが、黒ブドウの中でもさらに9割近くの栽培面積を誇るのがこのテンプラニーリョです。つまり、リオハにおいては圧倒的に栽培量の多い品種であるということです。 テンプラニーリョは早熟な品種であるために、高品質なものは、比較的涼しい地域で栽培されることが多いようです。サブゾーンでいうと、リオハ・アルタやリオハ・アラベサの涼しい地域に適していると言われています。 リオハブレンドの主要品種としてや、単一品種ワインとしても使われます。ラズベリーや黒プラムの風味と、中程度かそれよりもやや高めの酸味とタンニンを持っています。 ガルナッチャ(Garnacha) ガルナッチャは、リオハで2番目に多く栽培されている黒ブ

アンジュー&ソミュール地区の甘口ワイン産地と語呂合わせ

 今回は、ロワールで有名な甘口ワインの産地を覚えるための語呂合わせを考えてみました。 コトー・デュ・レイヨン(Coteaux du Layon)AOC、ボンヌゾー(Bonnezeaux)AOC、カール・ド・ショーム(Quarts de Chaume)AOCは、ロワールのアンジュー&ソミュール地区に属します。 アンジュー&ソミュール地区には東西に渡ってロワール川が流れていますが、もう1つ、レイヨン川と呼ばれる川が南北に流れており、アンジェの南側でロワール川に合流しています。 このレイヨン川とその支流は、沿岸の畑に湿気をもたらし、貴腐ワインを造るために理想的な環境を提供しています。 コトー・デュ・レイヨン(Coteaux du Layon)はレイヨン川に沿って広い範囲に広がる地域です。ここでは、湿気の多い環境を活かして、貴腐ブドウや過熟ブドウから造られる甘口ワインが造られています。 ボンヌゾー(Bonnezeaux)とカール・ド・ショーム(Quarts de Chaume)は、コトー・デュ・レイヨンの範囲内に位置する特に優れた甘口ワインを製造する地域です。 特に、カール・ド・ショーム(Quarts de Chaume)はロワールで最初のグラン・クリュの名前が与えられたそうです。 最後に、個人的にわかりにくいと思っていた「アンジェ(Angers)」と「アンジュー(Anjou)」の違いについて。 アンジェは都市の名前で、アンジューはかつてあった州の名前です。アンジューは現在の地方行政区画としては利用されていないようです。 アンジェとアンジュー、特に日本語にするとなんとも紛らわしい名前です。 <了>

多すぎる!ポルトガルワインの土着品種の覚え方を考える

ポルトガルワインに使われるブドウ品種の特徴は、土着品種の多さです。 地域ごとに異なる種類の土着品種が使われるので、それぞれの品種を覚えるのが大変です。 地域ごとに覚えたいブドウ品種を、黒ブドウ、白ブドウそれぞれについてまとめてみました。 赤ワインに使われるブドウ品種 ポルトガルでは、より多くの赤ワインが造られていますが、まずは赤ワインの製造に使われる黒ブドウから。 ポルトガルには31のDOC(DOPレベル)と、14のVR(PGIレベル)がありますが、すべて細かく覚えていくのが大変なので、まずは5つのDOCに絞ってみました。 ヴィーニョヴェルデDOC、ドウロDOC、バイラーダDOC、ダォンDOC、アレンテージョDOCの5つです。 品種を覚えるための手助けとして、まずは各地域を南北に北部、中部、南部に分けて、東西に沿岸部、内陸部に分けてみました。(青い点線で記しました) まず、全体的な特徴としては、海風の影響が限定的でより暖かい内陸部では圧倒的に赤ワインの生産量が多いということです。 このような 内陸部 では、ティンタロリス(テンプラニーリョ)や、トウリガナショナル、トウリガフランサなどが大きな役割を果たしています。 一方で、 沿岸部 で栽培されているブドウ品種は、より地域によって特徴的です。 ヴィーニョヴェルデ この地域で生産されるワインの8割以上が白ワインであり、赤ワインが注目されることはそれほどないかもしれません。 ヴィーニョヴェルデで圧倒的に多く栽培されている黒ブドウは、ヴィニャン(Vinhão)です。この品種は、ドウロエリアでも栽培されており、ソウソン(Sousão)という名前で知られています。 この品種の特徴は、 ・果皮が厚く、色濃いワインを造る ・高い酸味を持つ ・赤系果実(さくらんぼ)の香りを持つ などです。 バイラーダ この地域で最も多く栽培されている黒ブドウは、バガ(Baga)という名の品種です。 ポルトガルワインの多くは複数ブドウ品種のブレンドから造られますが、バガはしばしば単一品種のワインとしても製造されるようです。 バガの特徴は、 ・晩熟品種 ・高いレベルの酸味とタンニン ・中程度のボディ ・赤系果実の香り(クランベリー、さくらんぼ、赤プラム) ・若いうちは口当たりが良くないが、瓶内熟成で複雑な味わいになる などです。 バイラーダは海に近く、雨

ポルトガルの2つの「セルシアル」と呼ばれるブドウ品種

 ポルトガルのブドウ品種で「セルシアル」と言えば、真っ先に思い浮かぶのは酒精強化種のマデイラで使われる「Sercial」という白ブドウ品種かもしれません。 この「Sercial」の特徴は、晩熟で高い酸味を持ち、あまり潜在アルコール度が高くないことです。最も辛口のマデイラに使われるブドウ品種です。 そして、ポルトガルにはもう1つ「セルシアル」と呼ばれるブドウ品種があります。 それは、「Cercial」という白ブドウ品種で、ポルトガル本土のダォン、バイラーダ、テージョなどのワイン産地で栽培されています。 「Cercial」は酸味が豊かな品種で、通常、バガ、ビカル、エンクルザードなどのブドウ品種とのブレンドワインに使われることが多いようです。単一品種として使うと、柑橘系果実(ライムやグレープフルーツ)やミネラル感のあるワインを造り、酸味が豊かであるために十年程度の長期熟成が可能であると言われています。 「Cercial」の表記は、「Cerceal」や「Sercial」ともされるようです。 両品種ともに別々の品種のようですが、両社ともポルトガルの土着品種であるために、容易に混同してしまいそうです。 <了>

語呂合わせで覚えるドウロ・ワインの白ブドウ品種

  ポルトガルのドウロは酒精強化ワインであるポートワインで有名な地域です。 しかし、ここでは通常のワイン(スティルワイン)も造られています。 ポルトガルのワインの多くでは、ポルトガルのみに根付いている土着品種が多く使われています。 土着品種は聞きなじみのない名前が多いので、覚えるのが非常に大変です。 例えば、ドウロの赤ワインでは、トウリガ・ナシオナル、トウリガ・フランカ、ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、ソウソンなど主要品種の名前があがります。 ポルトガル以外の地域では、あまり名前を聞かないブドウ品種です。しかし、「トウリガ~」、「ティンタ~」などの名前の法則があって、やや覚えられそうな名前かもしれません。 一方で、白ワインによく使われる品種は、ヴィオジーニョ、ラビガート、ゴウヴェイオ、モスカテル・ガレゴ・ブランコなどの名前があがります。 これらは赤ワインに使われるブドウ品種に比べると、一から覚えるのはとても大変そうに思えます。 そこで今回は、ドウロで造られている白ワイン(スティルワイン)に使われる有名な品種を覚えるために、語呂合わせを作ってみました。 ------------------------------ 道路で色白  (ドウロ白ワイン) 美人の   (ヴィオジーニョ) 「アリガート」  (ラビガート) 聞きに、 豪米欧へ   (ゴウヴェイオ) ガレゴー   (モスカテル・ガレゴ・ブランコ) ------------------------------ それぞれのブドウ品種の特徴を見てみようと思います。 ヴィオジーニョ (Viosinho) ・有核果実(モモ、アプリコットなど)や花の香りを持つ ・フルボディのワインを造る ・酸味に欠けることがある ラビガート (Rabigato) ・柑橘系果実(レモン、ライムなど)や花の香りを持つ ・高い酸味を持つ ゴウヴェイオ (Gouveio)  ※スペインではゴデーリョ(Godello)と呼ばれる ・柑橘系果実(レモン、ライムなど)や花の香りを持つ ・やや高い酸味を持つ モスカテル・ガレゴ・ブランコ (Moscatel Galego Branco)  ※(=  Muscat Blanc à Petits Grains ) ・マスカット系の強い風味/香りを持つ 最後に、ドウロの赤ワインに使われる主要品種(トウリ

【考察】ニュージーランドのワイン産地は3つの気候帯で考えるとわかりやすい

 ニュージーランドには10にも上るワイン産地があり(サブリージョンを含めるともっと!)、それぞれの地域で栽培されているブドウ品種はそれぞれ異なります。 それぞれの産地について、栽培環境や主要品種を個別に覚えていくのは結構大変な作業です。 そこで、ニュージーランドを大きく3つの気候帯に分けて考えてみると、そこで栽培されているブドウ品種の特徴が見えてくるのではないかと、気候帯と栽培されているブドウ品種の関係を考察してみることにしました。 3つの気候帯の分け方ですが、次の地図の通りです: ※赤線の地域は代表的な産地を表しています 北から、 ・温和な海洋性気候(ホークスベイなど) ・冷涼な海洋性気候(マールボロなど) ・冷涼な半大陸性気候(セントラルオタゴのみ) の3つです。 ニュージーランドのほとんどの産地は海の影響を受ける「海洋性気候」です。その中でもより緯度の低い北島はより暖かい「温和な気候」、緯度の高い南島は「冷涼な気候」です。 そして、南島の中でも山に囲まれたユニークな地形を持ったセントラルオタゴは、「冷涼な半大陸性気候」です。 それでは、それぞれの地域で栽培されているブドウ品種を見ていこうと思います。 <温和な海洋性気候の地域> ここは、ニュージーランドでも最も暖かい気候を持つ地域です。南島に比べて地形の起伏も大きくなく、昼夜の寒暖差もなく、育成期間を通して一定の暖かさが得られるようです。 そのため、晩熟の赤ワイン用ブドウが栽培されていることが特徴です。 例えば、オークランドのカベルネソーヴィニヨンやシラー、ホークスベイのシラー、メルロ、カベルネソーヴィニヨンなどが有名です。 特に、ホークスベイのギンブレット地区はボルドーのような砂利土壌を持ち、水はけがよく暖かい栽培環境が得られるために、メルロを中心に晩熟型のボルドー品種が多く栽培されています。 一方で、白ワインについては比較的、シャルドネが多く栽培されているようです。ギズボーンやホークスベイで多く栽培されています。 ニュージーランドの白ワインと言えばソーヴィニヨンブランですが、この地域にはソーヴィニヨンブランが有名な地域はあまり無いようです(北島のワイラパパはソーヴィニヨンブランが有名ですが、私の分析では次の「冷涼な海洋性気候」に含めています)。もしかしたら、品質の高いソーヴィニヨンブランを育てるためには、少

地形に富んだセントラル・オタゴのサブリージョン(ニュージーランド)

 セントラル・オタゴと言えば、ニュージーランドで最も有名なワイン産地の1つです。 セントラル・オタゴは、ニュージーランドの地方行政区画である16の地方のうち、オタゴ地方に位置しています。 下の図でオタゴ地方の場所を見てみると、オーストラリアのタスマニア島よりも、やや緯度の高い場所に位置しています。 セントラル・オタゴはオタゴ地方の北部一帯を占めますが、それでも世界最南端のワイン産地と言われています。 ニュージーランドのワイン産地のほとんどが海洋性気候である一方で、セントラル・オタゴは半大陸性気候という独特な気候をもっています。これは、この地域がサザン・アルプスに囲まれているために、海からの影響から遮断されていることが原因だと言われています。 セントラル・オタゴの気候的な特徴は、暑い夏、日中と夜間の寒暖差(いずれも半大陸性気候が原因)、高い紫外線レベル(高緯度、オゾン層破壊、少ない大気汚染が原因)です。この地域で生産されるブドウ品種のほとんどをピノ・ノワールが占めますが、このような気候的な特徴を受けるために、製造されるワインは、色が深く、フルボディで、豊富な酸味と熟したタンニンを持ち、強烈な赤系と黒系果実の香りを帯びると言われています。 これがセントラル・オタゴに関する一般論ですが、この地域には6つのサブリージョンがあり、それぞれのサブリージョンによって若干のスタイルの違いがあるようです。 この記事では、個人的な備忘の目的も含め、それぞれのサブリージョンを整理してみようと思います。 まず、サブリージョンの位置ですが、いずれのサブリージョンもセントラル・オタゴ(地図の白線)のごく中心部に集中しています。およそ、下の地図の赤枠に収まる範囲です。 6つのサブリージョンには次のような地域が含まれます: ・アレクサンドラ ・ギブストン ・バノックバーン ・クロムウェル/ローバーン/ピサ ・ベンディゴ ・ワナカ それぞれの位置関係を3Dの地図を使って調べてみました。地図の範囲は、ちょうど上の赤枠のエリアくらいです。(ただし、だいたいの場所を表しており、そこまで正確ではないかもしれません) ちょうど中心部の湖の谷間に「バノックバーン」、「クロムウェル/ローバーン/ピサ」、「ベンディゴ」の3つのサブリージョンが位置しており、南東の端に「アレクサンドラ」、西端に「ギブストン」、北端に「

ブルゴーニュのワインがなぜ高い評価を得ているのか?を考察

 世界で最も評価の高いワイン産地として真っ先に名前があがるのは「ブルゴーニュ」なのではないかと思います。 しかし、「なぜ、ブルゴーニュの評価が高いのか?」と聞かれると、「有名だから」、「値段が高いから」、「歴史があるから」くらいしか答えが出てきません。 これくらいの回答しかできないのは、せっかくワインの勉強をしているのにさみしい気がします。 そこで、なぜブルゴーニュのワインが高い評価を得ているのかについて、個人的に分析をしてみることにしました。 まず、最初に、できるだけ漏れなく、重複なくその理由をあげることができるように、フレームワークを使って考えてみようと思います。 <歴史・伝統> まず、「歴史・伝統」に関しては、長いワイン造りの歴史があること、ブルゴーニュのワインが世界中の手本にされていることが大きな理由なのではないかと思います。 ブルゴーニュのブドウ栽培の歴史は非常に古く、古代ローマ時代から始まり、紀元前1000年くらいには、ブドウ畑はクリマと呼ばれる個別の区画に分けられていたと言われています。また、ブルゴーニュワインについての記録は、591年のものが残っているようです。 また、長いワイン造りの歴史と相まって、ブルゴーニュのワイン、特にピノノワールとシャルドネの単一品種ワインは、世界中の生産者からお手本とされています。 <ブドウ栽培> ブドウ栽培については、高級品種であるピノノワール(赤)とシャルドネ(白)に適した栽培環境があること、供給量が少なくその分人気や価格が高いことが理由に挙げられるのではないかと思います。 ブルゴーニュは冷涼~温和な大陸性気候です。この気候の特徴は夏が短く、早熟品種であるピノノワールやシャルドネの栽培に適していると言われています。また、南北に連なる丘陵地帯であるコート・ドールを中心に、南向きや南東向きの斜面が多く、このような場所にある畑ではブドウが熟成に必要な日照量が十分に得られます。土壌は石灰石を含む土壌で、特に斜面の畑では水はけがよく、樹勢が制限され、果実味の豊富なブドウが収穫されます。 このような栽培環境に恵まれているおかげで、ワイン用ブドウ品種の中では評価の高い品種であるピノノワールやシャルドネを高い品質で栽培できるのだと思います。 また、ブルゴーニュは、北はディジョンから南はマコンまでの約130kmを南北に走る比較的狭い土地

アルゼンチン・ワインの地理的表示(GI)を考える ~ルハン・デ・クージョやサン・ラファエルはどのレベル?

 アルゼンチン・ワインの 地理的表示(GI) を整理してみようと思います。 アルゼンチン・ワインの地理的表示は基本的に、 地方行政区画 に従っています。地方行政区画とは、円滑な行政を行うために区切られた区画です。ワイン産地の多くは、地方行政区画(日本でいうと長野県など)か、もしくは、慣習的に使われている地方区分(日本でいうと信州など)で区切られています。 例えば メンドーサ を例にとってみます。 まずメンドーサを含んでいる最も大きな地理的表示は、 クージョ(Cuyo I.G.) です。 クージョは、正確には地方行政区画ではありませんが、昔から伝統的に使われてきた地理的区分だそうです。通常、「クージョ」という場合は、サン・フアン州、サン・ルイス州、メンドーサ州、ラ・リオハ州の4つの州が含まれますが、ワインのGIの場合はサン・ルイス州は含まれないようです。これは、サン・ルイス州でワイン製造が盛んでないためかもしれません。 ちなみに 「I.G.」 とは、 「Indicacion Geografica」 の省略であり、 Geographical Indication(地理的表示) と同義です。 そして、メンドーサを含む次の大きいGIは、 メンドーサ(Mendoza I.G.) です。これはもっとも大きい行政区画であるプロビンシア(=州)レベルのGIです。ちなみにアルゼンチンの州は英語では「province」と表現されます。 さらに、メンドーサ州を詳しく見てみると、メンドーサ州はいくつかの デパルタメント に分れています。デパルタメントとは州の下位に位置する地方行政地区です。デパルタメントは県とも訳される場合があるそうです。英語では「department」を表現されます。 メンドーサ州のデパルタメントの中には、 「ルハン・デ・クージョ・デパルタメント」 と 「サン・ラファエル・デパルタメント」 が含まれています。それぞれ、 Luján de Cuyo GI と、 San Rafael I.G. というGIが存在しています。 この2つの地域は、アルゼンチンに2つしかない DOC産地 として有名です。 DOC産地のワインが、一般のGIワインと異なる点は、ブドウやワインを栽培/生産できる地理的な制約だけではなく、 ブドウ栽培やブドウ品種、ワイン醸造に対しても一定の法的な制約が課せら