ピノタージュは、主に南アフリカで栽培される黒ブドウ品種です。
1925年に、ピノノワールとサンソーの交配により、同国で開発されました。サンソーは南アフリカでは、エルミタージュとも呼べばれているそうです。
赤系果実の香りを持つ品種と言われているために、同様に赤系果実の香りを持つ、「ピノノワール」と「ジンファンデル」と比べて、その特徴を調べてみました。それぞれの産地は、南アフリカのような比較的暖かい地域である、カリフォルニアのものを選びました。
ちなみに今回は下の3種類のワインを選びました:
①ソノマPN:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016
②ローダイ・ジンファンデル:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017
③ウエスタンケープ・ピノタージュ:Mount Rozier Myrtle Manor Pinotage 2020
外観の特徴
色の濃さは、「ピノノワール < ピノタージュ < ジンファンデル」の順番でした。
ピノノワールよりはやや濃い程度の色でしたが、ジンファンデルよりは圧倒的に薄い色でした。いわゆるミディアムルビーに該当する色ですが、若いワインであることもあり、紫色のトーンが強く表れています。下の写真のように、グラスの底がしっかりと透けて見えます。
ピノタージュは、粒が小さく高い糖度に達するブドウで、濃い色で高アルコールを造ることができると言われるため、少し意外な結果でした。
南アのピノタージュは、フルボディのスタイルと、それよりもエレガントなスタイルの両方が造られているために、このワインはおそらくエレガントなスタイルなのだと思いました。
香りの特徴
ピノタージュの香りの特徴は、まずはしっかりとした樽香が感じられました。焦げた木のようなタークチョコレートのような、華やかさとは対極にあるような香りです。この香りに圧倒されて、果実の香りが鳴りを潜めている印象です。
そういえばWSETレベル3に次のような記述がありました。
「ピノタージュは、強くトーストしたオーク樽で発酵・貯蔵すると、コーヒーやチョコレートの強いアロマを帯びることがある。このようなワインは、しばしばそのユニークなスタイルを強調するために販売され、一部の消費者に非常に人気がある。」
もしかしたら、このタイプのピノタージュワインなのかもしれません。とはいえ、一般的に南アのピノタージュの新樽比率はかなり高めのようです。
果実の香りが前面に現れているカリフォルニアのピノノワールやジンファンデルとは全く異なり、ピノタージュは強い樽香に圧倒されている香りでした。
かすかに果実の香りも感じ取れますが、赤系果実に加えて、黒系果実も感じられるような気がしました。
味わいの特徴
ピノタージュワインの特徴は、タンニンよりも酸味が特徴的なワインでした。
スタイルとしては、ピノノワールにより近いスタイルです。
タンニンがしっかり抽出されているジンファンデルと比べると、ピノタージュのタンニンはずっと弱く感じられます(中程度レベルのタンニン)。
このピノタージュは、エレガントなスタイルで造られているために、果皮との接触時間が短く、タンニンがあまり抽出されていないためだと思います。フルボディスタイルの場合は、もっとしっかりとしたタンニンが期待できるのだと思います。
アルコール度も13.5%と中程度であり、ボディもミディアムボディ程度です。しかし、暖かい地域らしく、果実味は比較的しっかりと感じられます。
まとめ
今回用意をしたピノタージュは、果実の凝縮度はそれほど高くなく、比較的エレガントなスタイルのものでした。
そのため、多くの特徴はジンファンデルよりも、ピノノワール(ただしフルボディのピノノワール)に近いものでした。
香りとしては品種特徴よりも、樽香が非常に強く出ているワインでした。しかし、この樽香の強さは、南アのピノタージュの特徴の1つと言えるのかもしれません。
1つの典型的なタイプのピノタージュの特徴を捉えることはできましたが、フルボディのものなど、他のタイプのピノタージュの特徴も調べてみる必要があると思いました。