スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

4月, 2020の投稿を表示しています

最新記事

エントレ・コルディリェラス? チリの新しい原産地呼称の覚え方

 チリのワイン産地は南北に長く広がりますが、地形的な特徴の影響を受けるために、実は南北よりも東西にかけて、気候や土壌の多様性が非常に高いと言われています。 従来の原産地呼称では、この東西にかけてのワインスタイルの特徴の違いが十分に表現されていませんでしたが、2011年から、この問題を解決するための新たな付加的な原産地呼称が加えられました。 それが、「コスタ(Costa)」、「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」、「アンデス(Andes)」の3つです。 これは従来の原産地呼称に付加的に加えられるもので、例えば「Aconcagua」で造られたワインに対して、「Aconcagua Costa」、「Aconcagua Entre Cordilleras」、「Aconcagua Andes」のようにラベルに表記されるようです。 上図のように、「コスタ」は海の影響を受ける地域、「アンデス」はアンデス山脈の影響を受ける地域、そして「エントレ・コルディリェラス」はその間の地域を表します。 この新たな原産地呼称の仕組み自体はシンプルなのですが、それぞれの名前、特に「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」を覚えるのが厄介です。 そこで、これを覚えるための語呂合わせを考えてみました。 エントレ・コルディリェラスは少し苦しいですが、英語のスペルも覚えられるように、それに合わせた語呂合わせにしてみました。 <了>

シャンパーニュ地方は、なぜ発泡性ワインの生産に向いているのか?

シャンパーニュ(Champagne)は、フランスの主要なワイン産地の中ではもっとも北に位置するもっとも冷涼な地域の1つです。 シャンパーニュも含め、このような冷涼な地域の多くでは、スパークリングワインが製造されています。 私はこのような地域は、一般のスティルワインが造れないから消去法的にスパークリングワインを造っているものとばかり思っていました。 しかし、実際は、このようなブドウ栽培が困難と思われる地域こそ、スパークリングワインの生産に理想的な土地なのだそうです。 シャンパーニュがスパークリングワインに適している理由 シャンパーニュ地方は冷涼な大陸性気候です。そのため、この地域では最も温暖な年でさえ、ブドウの糖度は極めて低いままで、酸度は非常に高くなります。しかし、一方でブドウはしっかりと熟し、糖度と酸度の変化とともに、ゆっくりとブドウの風味も変化し、青臭い草の特徴はなくなります。 スパークリングワイン用のブドウ栽培で必要な条件は、スティルワイン(非発泡性ワイン)で求められるものとは異なります。 条件の1つ目は、 「糖度が低くなければならない」 ということです。シャンパーニュの製造ではワインの発泡化のために二次発酵が行われますが、この工程では同時にアルコール度が1.2~1.3%上昇します。そのため、二次発酵前のベースとなる辛口ワインは、10~11%程度のアルコール度の低いワインでなくてはなりません。(スパークリングワインは、同じアルコール度数のスティルワインよりもアルコールが強く感じられるため、高アルコールは適しません) 条件の2つ目は、スパークリングワインでは 「高い酸度」 が望ましいということです。高い酸度によって、すっきりしたスタイルのワインが造られます。 条件の3つ目は、 「ブドウが十分に熟している」 ことです。糖度が低いブドウでも、ブドウが十分に熟していない場合には、ワインに青い草の特徴が残ります。スパークリングワインでは、ワインの特徴が増幅されるため、青い草の香りはスティルワインよりも強く感じられてしまい、好まれません。 温暖な地域でこのような特徴を持つワインを造ろうとした場合、唯一できる方法は、糖度と酸度が適切なレベルで早めにブドウを摘むことですが、ブドウが完熟しきっていないせいで青い草の香りが残

impartの意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語

ワインの書籍を読んでいると、日頃はあまり使わないけれど、よく目にする単語があります。 その1つが、「 impart 」。 ワインが、オークや樽によって風味付けされる際によく使われます。 --------------------------------------------------- impart 動詞(他動詞)〔+目(+to+(代)名)〕 〔ものなどに〕〈性質などを〉添える,加える. --------------------------------------------------- <例文> A barrel imparts little flavour or tannin.  樽から風味やタンニンはほとんど溶出しない。 New oak barriques may be used to impart the toasty flavours.  トーストのような風味を与えるには、新しいオークのバリックを使うことができる。 Older oak and larger barrels impart less flavour but still allow a gentle oxidation to promote complexity.  古くなったオークや大きめの樽では風味はあまり加わらないが、それでも穏やかな酸化が起こり、複雑さが促される。

ワインがブドウ以外の果実の香りを持つ理由。ワイン中のエステルとは?

ワインのテイスティングでずっと違和感のあることがありました。 それは、ワインをブドウ以外の果物で例えるということです。 ブドウから造られたお酒なのに、なぜブドウ以外の香りで例えられるんだろう? ずっと不思議に思っていましたが、これもワイン業界のしきたりのようなものだと思い、あまり深くは考えていませんでした。 しかし、調べてみるとワインからは実際に他の果物の香りがするようなのです。 その主な原因物質は、 「エステル(Ester)」 です。 エステルとは、 酸とアルコールの反応 の結果生まれる化学物質であり、その多くはパイナップル、バナナ、ストロベリー、ラズベリーなどの顕著な果物の香りを持ちます。 例えば、ワインにおける主要なエステルは 「酢酸エチル(ethyl acetate)」 で次のような化学反応で生成されます: CH3CO OH  +  H OCH2CH3   →   CH3COOCH2CH3   +   H2O (acetic acid)      (ethanol)            (ethyl acetate)           (water) エステルは、新鮮なブドウ果汁の中にも含まれていますが、そのほとんどはワインの発酵と熟成の工程を経て造り出されるそうです。 ブドウ果汁にはもともと酒石酸とリンゴ酸という天然の酸が存在しますが、アルコール発酵やマロラクティック発酵を経ることで、乳酸とコハク酸という2つの主要な酸が造られます。さらに、プロピオン酸、ピルビン酸、グリコール酸、フマル酸、ガラクチュロン酸(ガラクツロン酸)、粘液酸、シュウ酸などもこの工程中に生成されます。これらのさまざまな酸はアルコールと反応し、エステルを形成します。 アルコール発酵の温度が低すぎると、過剰な揮発性のエステルが取り込まれ、エステルのパイナップルの香り(エステル香)が顕著になります。 エステルの多くは瓶熟成などの 嫌気的熟成中 に形成されるようです。そして、これらのエステルは、加水分解による酸とアルコールへの分解と、再結合を繰り返し、複雑で、フルーティーな、魅力的な香りを造り出します。 このように、ワイン中にはエステルという香り物質が形成され、中には形容される実際の果物と同じ香り物質を持つものもあるよ

ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは?

ブドウ樹は、その土地に合わせて様々な形をしています。このブドウ樹の形は「仕立て」と呼ばれ、休眠期の剪定によって整えられます。 例えば、ボルドーやブルゴーニュでは針金と柱を用いて枝を地面と垂直方向に伸ばす「垣根仕立て」が多く採用されています。 一方で日本では、ブドウや葉を棚の天面に広げる棚仕立て(Pergola ペルゴラ)が多く採用されています。 このような仕立てや選定は、気温、日照、水、土壌の栄養分などのブドウ樹が必要とする要素や、ブドウ畑の機械の使用などを考慮して、そのブドウ畑に最適なものが選ばれます。 WSETレベル3では、この「仕立て」、「剪定」について比較的しっかりと学ぶのですが、ブドウ畑に馴染みのない私にとっては少し理解が難しい部分でした。 特に私が混乱してしまったのは、「仕立て(training)」と「剪定(pruning)」の違いでした。両者はお互いに深い関係があり、テキストの説明だけでは直感的にわかりにくかったので、個人的に図などを利用してまとめてみました。 (関連記事:t rellis の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) <仕立てと剪定の違い> WSETテキストによれば「仕立て」と「剪定」は次のように説明されています。 「ブドウ樹の整枝・仕立てとは一般に株の形状のことをいい、大きく分けて、株仕立てとコルドン仕立ての二つに分類できる。」(株…ブドウ樹で一年以上経っている木質部のこと) 「剪定とは、冬または生育期間中に、望ましくない葉や長梢、株を除去することである。剪定によって樹の形が決まり、大きさが制限される。」 つまり、仕立てとは「ブドウ樹の形」を意味し、剪定とはその「ブドウ樹の形をつくるための作業」ということになります。 <仕立てと剪定の種類> 「仕立て」は株(一年以上経っている木質部)の形によって大きく「株仕立て(head training)」と「コルドン仕立て(cordon training)」の二つに分類ができるようです。 「株仕立て」は株の部分が比較的小さいのに対して、「コルドン仕立て」はコルドンと呼ばれる腕枝があるのが特徴です。コルドンは通常1~2本ですが、4本以上のコルドンを持つ「大木仕立て(big vine)」と呼ばれるものもあるようです。

アルザスの自然要因(栽培環境)と、そのブドウ栽培への影響

アルザスは、非常に特徴的な自然要因を持つワイン産地です。 私がこの地域を学んで驚いたことは、ワイン産地としてはかなり北側(北緯48度くらい)に位置するにも関わらず、ヴァンダンジュ・タルディブ(Vendanges Tardives)やセレクション・ド・グラン・ノーブル(Sélection de Grains Nobles)のような非常に糖度の高いワインを造れることでした。 これもアルザスが、年間を通して降水量が非常に少なく、日照時間が長く、ブドウ栽培に非常に適した自然要因を持っていることが大きな理由だと思います。 アルザスの自然要因と、そのブドウ栽培における影響をまとめてみました。 <アルザスの自然要因> アルザスは、比較的冷涼な地域であり、ヴォージュ山脈が天候やブドウ畑の環境に大きな影響を与えています。 1.冷涼から温和な大陸性気候 アルザスの気候は、冷涼~温和な大陸性気候です。そのため、「春の霜害」、「開花~結実の期間の雨による育成不良」、「果実の成熟不良」、「収穫期の雨」などのリスクがあります。 2.非常に乾燥している アルザスでは、ヴォージュ(Vosges)山脈が雨混じり偏西風からブドウ畑を保護していて、雲が少ないため、夏は晴れの日が多く、秋は乾燥しています。このため、ブドウは非常に高い糖度に達し、ヴァンダンジュ・タルディブ(Vendanges Tardives)のようなパスリヤージュ(樹上乾燥)ワインを造ることもできます。その反面、乾燥した年には渇水が問題になることもあるようです。 3.優良な畑は急斜面 アルザスでは優良な畑は東あるいは東南向きの急斜面に位置します。斜面に植栽されたブドウ樹は、長い日照時間を確保することができ、またその列は日照を最大限に受けられる向きに仕立てられます。また急斜面には石が多いため放射熱を受けやすく、その熱を最大限に受けられるようにブドウ樹は低く仕立てられます。 一方で、より質の落ちる畑は、よりライン川よりの平野に位置し、ここでは急斜面ほどの日照も放射熱も受けられません。また、春の霜害を最小限にするためにブドウ樹は斜面とは異なり高く仕立てられます。ここで栽培されるブドウは、この地方の発泡性ワインであるクレマン・ダルザス(Crémant d'Alsa

地図を使うと覚えやすい!コルトンの丘のグラン・クリュAOCの暗記法

ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌ地区の 「コルトンの丘」 のグラン・クリュ畑のAOCと生産可能色は複雑です。 複雑だと思う理由は、 ・3つのグランクリュAOCが3つの村に分散している ・村によって、分散しているAOCと、生産可能色が少しずつ異なる ・3つのグランクリュAOCは、どれも名前が似通っている などです。 特にJSAソムリエ・ワインエキスパートでは、AOCの分散と生産可能色まで事細かに暗記することを求められます。 しかし、下の表のように複雑なために、何度も「覚える→忘れる→覚える→忘れる」のループを繰り返しました。 そこで行きついたのが、地図で覚えるという方法です。 JSA教本の地図を見ながら、「コルトン(赤)」、「コルトン(白)」、「コルトン・シャルルマーニュ(白)」、「シャルルマーニュ(白)」の畑の広がりをまとめてみると、暗記がずっと楽になりました。 コルトン Corton(赤) 「コルトン(赤)」 の生産範囲は、3つの村( ペルナン・ヴェルジュレス 、 アロース・コルトン 、 ラドワ・セリニィ )のグランクリュ畑の(ほぼ?)全域に広がります。 ちなみに 「コルトン(赤)」 の畑は、ラベルにクリマ(畑)の名前を付記することができるそうです。畑は、標高約250~330mに位置し、特に斜面の中腹は傾斜も緩やかで、茶色の石灰岩に由来し、泥炭を多く含む、赤い小石の多い土壌で、ピノノワールに向いています。 コルトン Corton(白) 「コルトン(白)」 の生産範囲は、 アロース・コルトン と ラドワ・セリニィ の2村のグランクリュ畑に広がります。 ペルナン・ヴェルジュレス で生産される白ワインは、 「コルトン・シャルルマーニュ(白)」 だけであるために(図の①がない)ために、ここでは 「コルトン(白)」 は生産されません。 コルトンの生産は大半が赤ワインであり、白ワインの生産はわずかであるそうです。 コルトン・シャルルマーニュ Corton-Charlemagne(白) 「コルトン・シャルルマーニュ(白)」 の生産範囲は、3つの村( ペルナン・ヴェルジュレス 、 アロース・コルトン 、 ラドワ・セリニィ )の

格付けやAOCだけじゃない!学んでみると楽しいボルドーワイン

ワインを学ぶ上で、ボルドーは非常に興味深い産地です。 私がJSAソムリエ・ワインエキスパート試験対策に取り組んだ時には、ボルドーは暗記の山場と言われており、次のような事柄を事細かに覚えました。 ・ボルドーの歴史 ・各生産地域の名称とAOCの名称と生産色 ・各生産地域の格付け(メドック地区、グラーヴ地区、サンテミリオン地区、ポムロール地区、ソーテルヌ地区など) 覚えることが多すぎて、語呂合わせや読み合わせを何度もやって、死ぬ気で覚えたのを覚えています。 しかし、このようなボルドーの表面的な部分だけをやって、ボルドーの学習を終えてしまうのは非常にもったいないと思います。実際にJSA試験に取り組んでいた時の私はそうでした。 次のようなことを考えて学習に取り組んでみると、ボルドーは非常に興味深い地域だと思いました。 ・なぜボルドーワインはほとんどのワインが複数品種のブレンドなのか? ・どんな品種が使われていて、なぜそのような品種が使われているのか? ・なぜ、地域によって栽培されている主要品種や、ワインのブレンドが違うのか? ・なぜ一部のボルドーワインは高額で取引されているのか? WSETでは、こんな疑問に答えられるような学習内容が用意されています。 JSAとWSETでは学習内容が異なることを以前の記事でも説明をしましたが、ボルドーはそんな両者の違いが顕著に表れている学習範囲だと思います。 (参考記事: WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ? ) WSETを通してボルドーワインについて学んだ事を(ごく一部ですが)紹介したいと思います。 ボルドーの気候と、ボルドーワインのスタイルの関係 ボルドーは、「温和な海洋性気候」です。 年間を通じて雨が降るため、開花や結実が妨げられ、果実の腐敗が進み、収穫期にブドウの風味が失われるといった被害も生じます。 健康なブドウを育て収穫期に糖度と風味の発達を高めるために、散布液を使用したり、キャノピーマネジメントの活用が必須となります。 このように変化に富んだ気候、特に降水量に変化があるために、収穫年ごとにスタイルや品質に大きな差が出やすく、ボルドーワインを選ぶ際に、ヴィンテージは重視すべき

樽でワインはどう変わる?ワイン醸造における樽熟成の主な効果(メリット)

「樽熟成」 は、ワインの醸造工程の 「熟成(エルヴァージュ; Elevage)」 で行われる一つの手法です。熟成とは、発酵が終わったワインをタンクまたは樽に移し替えて、しばらくの期間静置し、ワインのバランスや風味を向上させることです。樽熟成させる場合には、ワインが一定量蒸発するために、定期的な 補填作業(ウイヤージュ; Ouillage) が行われます。 この 「樽熟成」 はワインの醸造工程の中でも複雑な要素が絡み合い、とても分かりにくい部分だと思います。少なくとも、個人的にはそうでした。 その反面、JSA教本やWSETのテキストを見ても、樽熟成については主に表面的な効果のみに触れられているだけで、ワインの中で一体どんなことが起きているのかについての詳細な説明はあまり見つけることができませんでした。 例えば、JSA教本には次のような 「樽熟成の主な効果」 についての記述がありましたが、当時はあまり内容も分からずに、ひたすら字面だけ覚えようとしていました。 樽熟成の主な効果 ------------------------------------------------------------ ① 酸素との接触 ② 清澄化の促進 ③ 樽からの成分抽出(タンニン、ココナッツ香など) ④ 赤ワインの色調の安定化 ⑤ フェノール成分の重合による沈殿 ⑥ 風味の複雑化 ------------------------------------------------------------ そこで、今回、これらの「樽熟成の主な効果」について、もう少し踏み込んでみようと思い、それぞれが具体的にどんな現象や化学反応を意味しているのかを個人的に調べてみました。 それぞれの効果の詳細 ① 酸素との接触 ・木樽は気密ではないために、少量の酸素が木樽の隙間や、栓付近を通して樽内に入り込み、ワインと反応をする。(新樽が最も酸素透過率が高い) ・酸化の程度は、木樽のサイズとワインを貯蔵する期間によって異なる。バリックなどの小樽は、大樽に比べて、ワインが樽と接する表面積が大きくなるため、酸化の影響は大きくなる。 ・容器をワインで満杯にしなければ、酸素との接触が増えて、酸化の効果は

ブドウの育成サイクルにおけるヴェレゾン(véraison)とは?

ヴェレゾン(véraison)(=色づき) はブドウ育成のライフサイクルにとって大きな転換点です。 これを機にブドウの果実の成熟が始まり、適切なタイミングで収穫がはじまります。 ブドウのライフサイクルは、JSA試験、WSET試験のどちらにも含まれる内容ですが、今回はWSETのテキストを中心にヴェレゾンの特徴をまとめてみました。 (関連記事: JSA 酒類 飲料概論1-2の感想(ブドウの生育サイクルと栽培作業など) ) ----------------------------------------------------------------------------------- ヴェレゾンとは... ・ヴェレゾンは、果実が熟し始める時期。 ・ヴェレゾンは、結実後、6~8週間後に起こる。 ・ヴェレゾンは、北半球では7月~9月、南半球では1月~3月に起こる ・ヴェレゾンの時期になるとブドウの果皮が色づいてくる。黒ブドウ品種は赤くなってから紫になる。白ブドウ品種は半透明で金色になる。 ・ヴェレゾン以降、ブドウが成熟するにつれて、糖度は上がり、酸度が下がる。 ・ヴェレゾン以降には、ブドウに典型的な風味が発達し、ブドウの果皮のタンニンの苦みと渋味が少なくなってくる。 Véraison is... ・Véraison is the point at which the grapes begin to ripen. ・Véraison occurs 6-8 weeks after the fruit is set. ・Véraison is July-September in the Northern Hemisphere, and January-March in the Southern Hemisphere. ・Véraison is signalled by a change in colour of the grapes' skins; black varieties turn red, then purple whereas white varieties become translucent and golden. ・(After véraison) As the

赤ワイン、白ワインの醸造オプション(成分抽出法)の整理

赤ワイン、白ワインにはブドウの果皮からの成分抽出を促すためのさまざまな 醸造の選択肢(オプション) があります。 しかし、どれも名称や手法が似ていて、覚えるのにとても苦労をした経験があります。 例えば昔、JSAソムリエ・ワインエキスパートの模擬試験で、次のような問題が出題されました。 -------------------------------------------------------------------------------------- Q. 次の中から、果醪中の種子からタンニンの抽出を強めることができる醸造法を1つ選び、解答欄にマークしてください。 1. Cold maceration 2. Maceration finale a chaud 3. Cryo-extraction 4. Micro-bullage (答え: 2) -------------------------------------------------------------------------------------- この問題を見て、当時は面食らってしまって、当てずっぽで回答をしたのを覚えています。。 面食らってしまった理由は、何よりも、 醸造理論をしっかりと理解していなかったから です。 そんな経験を踏まえて、今改めて、 果皮からの抽出における醸造オプション を整理しなおしてみました。 適用のタイミング と、 適用温度 で整理をしていくと、それぞれのオプションが異なる目的で行われている理由が見えてきて、それぞれの違いが明確になりました。 マセラシオン・プレフェルメンテール・アショー(Macération préfermentaire à chaud)=MPC 【特徴】 ・破砕後、果醪を70℃前後まで加熱し、一定時間保持。色素・タンニン抽出を行い圧搾、その後は果汁を常温まで下げてから発酵させる方法。(加熱、冷却後、圧搾せずに果皮・種子ともに発酵させる場合もある) ・ 色素がよく抽出 される。 タンニンが少ない ので早く飲める。 【ポイント】 ・高温(70℃)により細胞壁から色素成分であるアントシアニンが抽出されやすくなる。 ・アルコールに抽出されやすいタ

ワインに使うオーク樽の素材は「ナラ」?それとも「カシ」?

ワイン樽に使われる最もメジャーな木材と言えば オーク です。 オークについてwikipediaで調べると、「オーク(英: oak、仏: chêne、独: Eiche)はブナ科 コナラ属(学名:Quercus)の植物の総称。落葉樹であるナラ(楢)の総称。」と書かれています。 ここで疑問が。昔、英語の授業で「 oak = カシ 」と習ったような...。 この疑問について調べてみました。 オークは「ナラ」?それとも「カシ」? まず、ワインで使われるオークは大きく分けて、「 ヨーロッパオーク 」と「 アメリカンオーク 」の2種類があるそうです。 ヨーロッパオーク に使われる種(species/ genus)は2種類あり、 ヨーロッパナラ と呼ばれる Quercus robur(ケルカス・ロブール) と、 フユナラ と呼ばれる Quercus petraea(ケルカス・ぺトラエア) です。 アメリカンオーク に使われる種は、 ホワイトオーク に属する Quercus alba(ケルカス・アルバ) です。 やはりここでも、 「カシ」 ではなく 「ナラ」 という名称が使われています。 そこで、「ナラ」「カシ」の両者についてwikipediaで調べてみました。 ------------------------------------------------------------------------------------- 「ナラ(楢、柞、枹)は、ブナ科 (Quercoideae) コナラ亜科 (Quercoideae) コナラ属 (Quercus) コナラ亜属 (subgenesis Quercus) のうち、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク (oak)。秋には葉が茶色くなることで知られている。英語のoak(オーク)という単語(他のヨーロッパ言語も同様)はヨーロッパナラを指す場合が多く、常緑性のカシのみを指す言葉はライヴオーク(live oak)であり、誤訳となることがたびたびある。英国に分布するoakはナラに相当する。」 「カシ(樫、橿、櫧)とは、ブナ科の常緑高木の一群の総称である。狭義にはコナラ属Quercus中の常緑性の種をカシと呼ぶ。 英語で常緑性のカシのみを指す場合はライブオーク (live oak

ワインにおける麝香(じゃこう)の香りとは?非日常的な香り用語を想像してみる

麝香(じゃこう) の香りは、ワインの香りを表す用語として度々登場します。 私が香り用語としての「麝香」にはじめて出会ったのは、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験の回答用紙なのですが、よくニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを表す香りとして使われていた印象があります。 麝香は日常的に触れる機会のほとんどないものなので、私にとってこの香りは、ワイン用語でよくある「想像のつかない香り」の1つでした。 そこで、ワインにおける麝香の香りとは一体どのような香りなのかを様々な情報を検索して調べてみました。 <様々なサイトにおける「麝香」の香りについての記述> ------------------------------------------------------------- ・麝香(じゃこう)は雄のジャコウジカの腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種である。ムスク(英: musk)とも呼ばれる。 ・甘く粉っぽい香りを持ち、香水の香りを長く持続させる効果があるため、香水の素材として極めて重要であった。 (source: wikipedia「麝香」) ・麝香(musk)は、甘く鼻にツンとくる汗に似た動物系の香り。多くの旧世界の赤ワイン、特にフランスのシャトー・ヌフ・デュ・パプやイタリアのタウラージが持つ。 (source: https://winefolly.com/tips/33-bizarre-wine-flavors/) ・(マスカットは、)食用に改良され、様々な品種がある。「麝香(マスク、ムスク)」に喩えられる強い香りが特徴である。 (source: wikipedia「マスカット」) ------------------------------------------------------------- これらの情報をまとめてみると、ワインにおける麝香の香りとは、「 マスカットのような甘さの強い香りで、その中にも動物的な鼻にツンとくる香り 」のようです。 このように考えると、パッションフルーツのような華やかな香りの中に、鼻を突く青い香りを持つ ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン が「麝香」で例えられる理由がよくわかります。 ちなみに、

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

JSA試験、WSET試験を通して酒精強化ワインであるシェリー(Sherry)を学んできましたが、ずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、「 パロ・コルタド・シェリーとは何なのか? 」です。 シェリーとは、スペイン・アンダルシア州カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとその周辺地域で生産される酒精強化ワインのことで、ポート・ワイン(ポルトガル)、マデイラ・ワイン(ポルトガル)とともに、著名な酒精強化ワインと言われています。 シェリーには、フィノ(Fino)/マンサ二ーリャ(Manzanilla)、オロロソ(Oloroso)、アモンティリャード(Almontillado)、 パロ・コルタド(Palo Cortado) 、ペドロヒメネス(Pedro Ximenez)など様々な種類があります。 しかし、JSA、WSETどちらのテキストにおいても、 パロ・コルタド に関する記述 はとても少なく、製法に関する記述もなく、漠然とその特徴が書かれているだけでした。 その特徴は、 ・希少であること ・アモンティリャード(Amontillado)の香りを持つが、味はオロロソ(Oloroso)のボディとこくを持つ という2点だけです。 ずっと疑問に思っていたことを解決すべく、製法を中心にパロ・コルタドについて調べてみました。 参考にしたのは、次のサイトです: https://www.sherrynotes.com/sherry-types/palo-cortado/ https://www.sherrynotes.com/2015/background/palo-cortado-mystery/ まずは、パロ・コルタドの発祥から。パロ・コルタドは、もともとフィノとしては不適合として除外された樽からできたそうです。 <パロ・コルタドの発祥> ------------------------------------------------------------------------ ・パロ・コルタドは、もともとフィノ(Fino)の製造から偶然生まれたワインと言われている。 ・フィノシェリーでは、樽での熟成中にフロールと呼ばれる産膜酵母が発生し、フロールのもとで熟成される。しかし、フィノ樽の中には

酒精強化ワインMarsala(マルサーラ/マルサラ)の特徴と製法

Marsala(マルサーラ/マルサラ) と言えば、イタリアはシチリアで造られる酒精強化ワインです。 JSAの教本 でも紹介されていたワインで、次のように説明されていました。 <Marsala(マルサーラ/マルサラ)の特徴> ----------------------------------------------------------------------------- ・シチリア島西端で造られる酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)のDOC ・1773年、イギリス人ジョン・ウッドハウスがシチリアで生産 ・アルコール度17~18% ・使用ブドウ品種:   白(オーロ、アンブラ):グリッロ、カタラット   赤(ルビーノ):ピニャテッロ、ネレッロ・マスカレーゼ ・色による分類:   oro(オーロ):黄金色   ambra(アンブラ):琥珀色   rubino(ルビーノ):ルビー色 ・甘さによる分類   secco:40g/ℓ以下   semisecco:40-100g/ℓ   dolce:100g/ℓ以上 ----------------------------------------------------------------------------- 歴史や、分類などを中心に説明をしているところがとてもJSAらしいのですが、いったいどんな特徴のあるワインで、どんな製法で造られるのかがずっと疑問のままでした。 しかし、最近やっと造り方に関する記述を見つけることができました。まとめると次のような内容です: <Marsala(マルサーラ/マルサラ)の製法など> ----------------------------------------------------------------------------- ・ポートワインと同じく、発酵中にブランデーを加えて発酵を止める製法で造られる。 ・甘口ワインにする場合は、発酵初期にブランデーを加え、よりドライスタイルにする場合は発酵後期に加える。 ・シェリーと同じくソレラシステムで熟成される。 ・ソレラでの熟成の長さによって次のように分類される   Marsala Fine(マルサーラ・フィー

ワインにおけるハチミツの香りとは?|ワインの香り用語

ハチミツはとても身近で、誰もが想像しやすい香りです。 そのため、ワインから甘い香りがしてきたら、ついつい「ハチミツの香り!」と形容してしまいがちです。 ワインテイスティングの学習をはじめたばかりの私は、まさにその典型でした。 若い辛口のリースリングやソーヴィニヨン・ブランは甘い香りを持つことがよくあります。私はこのようなワインのテースティングノートに「ハチミツ」という言葉をよく用いていました。 しかし、ワインテイスティングの学習を深めていくうちに、このような表現が間違いであることに気が付きました。 ワインのテイスティングにおける「ハチミツ」とは、凝縮された甘さを持つ特別なワインに用いることが多い用語です。そして、私が若い辛口の白ワインに感じていた軽めの甘さには「スイカズラ」のような花を用いて形容することがより一般的です。スイカズラは英語にすると honeysuckle。まさにハチミツのような甘さを持った花の香りです。 (参考記事: Honeysuckle(セイヨウスイカズラ)の香りとは? ) あるサイトでは、「ハチミツ」の香りは次のように説明されていますが、私が学んだ内容に一致をするようなとてもしっくりいく内容です: -------------------------------------------------------------------------------- ハチミツ(Honey) ・ハチミツの特徴は「甘さ」と「粘性」である。そのためこれは、他のワインよりも濃厚でシロップのような味を持つデザートワインに用いられることが多い。 ・花蜜から造られるハチミツは、遅摘みワインや、樹上で乾燥させたブドウから造ったワイン、貴腐ワインなど、濃縮された香りや味をもつワインに適した表現用語である。 ・ハチミツの香りは、ソーテルヌや、ハンガリーのトカイ、ドイツの特定のリースリングワイン(アウスレーゼ、シュペートレーゼ、ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)などから感じられる。 ・ハチミツは、果糖と花の香りを有した複雑な甘さを持つ熟成香でもある。 ------------------------------------------------------------------------

ワインがユーカリ香を持つ理由と、その香りを感じる方法

ユーカリの香りは、数多くのオーストラリアの赤ワインが持っていると言われています。 私がユーカリの香りに出会ったのは、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験対策で出題された 「南オーストラリア バロッサヴァレーのシラーズ」 でした。 しかし当時は、講師から「ユーカリの香りがする」と説明されても、実際にどのような香りなのか全く分かりませんでした。 そこで、ここで改めていくつかのサイトを調べてユーカリの香りをまとめてみました。 【ユーカリ(Eucalyptus)の香りとは?】 ---------------------------------------------------------------------------------- ・ユーカリの香りは「スパイスのような」「ミントのような」香りで、オーストラリアのに生えるゴムの木を思い起こさせる香りである。 ・ユーカリの香りの由来は、「シネオール(cineole)」という化合物である、「オイカリプトール(eucalyptol)」とも言われている。 ・シネオールの香りは、「フレッシュな」、「クールな」、「薬のような」、「樟脳のような」香りと言われる。 ・ユーカリの香りは、通常、ユーカリの木々に囲まれたブドウ畑で造られたオーストラリアワイン(特に、カベルネソーヴィニヨンやシラーズ)で見つかる。 ・ユーカリの香りは、オーストラリアワイン以外にも、アルゼンチンのカベルネフラン、カリフォルニアのジンファンデルなどでも見つかる。 ・暖かい気候では、ブドウ畑の近くに生えているユーカリの木々から揮発性の高いユーカリオイルが放出され、それが蒸発し、空気注を通ってブドウ果実の表面にたどり着くと言われている。ユーカリの香りは赤ワインでより顕著であると言われているが、それは、赤ワインの発酵は果皮を接触した状態で行われ、ユーカリオイルが果皮からより多く抽出されるためである。 ・ユーカリの木々に近いブドウ畑ではこの香り物質が見つかる可能性が高く、より強いユーカリの香りを持つ。 ・しかし一方で、「ユーカリ」の香りはユーカリの木の栽培地から離れた畑でも造られてることがあるためにシネオール(オイカリプトール)はブドウに含まれる前駆体から発生するという主張もある。 (source) h