ワインの書籍を読んでいると、ワインの欠陥を表す用語として「揮発性の酸(VA = volatile acidity)」という言葉が出てきます。
揮発性という観点から見ると、酸には大きく分けて2種類あり、揮発性の高い(蒸発しやすい)酸と、揮発性の低い(蒸発しにくい)酸があるそうです。
不揮発性の酸は主に味覚で感じられますが、揮発性の酸の特徴は、その名の通り気体になりやすいために、主に香りとして感じられると言われます。
ワインに含まれる主要な酸である、酒石酸(tartaric acid)やリンゴ酸(malic acid)、乳酸(lactic acid)は全て揮発性の低い「不揮発性の酸」です。
一方で、ワインに含まれる「揮発性の酸」はそのほどんどが酢酸(acetic acid)です。
酢酸は、ワインの発酵過程で酢酸菌(acetic acid bacteria)の媒介によりアルコールから生成され、全てのワインに含まれていると言われます。
酢酸はまた、ワイン中のアルコールと反応をして酢酸エチル(ethyl acetate)を作り出すと言われています。酢酸エチルの特徴は、マニキュアの除光液の香りやシンナーの香りと言われています。
酢酸および酢酸エチルは、少量が含まれる場合には、芳香性や複雑性などワインにポジティブな影響を与えると言われます。しかし、大量に含まれる場合には、不快な香りとして感じられます。これが、「揮発性の酸(VA)」がワインの欠陥を表す用語として使われる理由のようです。
揮発性の酸(酢酸)は一般的に、古い樽や酸化的な環境で造られたワインに多く含まれると言われています。酢酸菌は酸素の存在下で活発に働き、アルコールを酢酸に変えるためです。
揮発性の酸(酢酸)は、天然酵母を用いたアルコール発酵の際にも発生しやすいと言われます。
また、ボトリティス・シネレア(貴腐菌)を使って作られた甘口ワイン(ソーテルヌなど)は、ブドウに酢酸菌が自然に多く存在する傾向があるので、揮発性酸度が高くなることが多いと言われます。干しブドウから作られたワイン(アマローネ・デラ・ヴァルポリチェッラなど)も同様です。
しかし、当然、これらのワインには通常、欠陥と言われるレベルの揮発性の酸(酢酸)は含まれていません。