今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
南アフリカのワイン産地の自然環境をざっくりとまとめてみたいと思います。
西ケープ州は、Geographical Unit(地理的区域)にあたり、この中には5つのRegion(地域)が含まれています。
まず、南アフリカは、南緯22°~34°に位置する暑い~暖かい地域です。
一般に、ワイン用のブドウ栽培ができる地域は北緯/南緯30°~50°と言われているので、南アフリカの南端でも、ブドウ栽培にはかなりギリギリの地域です。
南アフリカの南端には、「西ケープ州」があります。実際、南アフリカのワインのほとんどはこの州で生産されています。
しかし、それでも西ケープ州の緯度は南緯30°~34°くらいです。
このような暖かい地域でも高品質なワインが造ることができる原因は、寒流である「Benguela(ベンゲラ)海流」と、その冷涼効果を高めてくれる「Cape Doctor(ケープドクター)」と呼ばれる南東の風にあると言われています。
ベンゲラ海流の冷涼効果は、西ケープ州の西岸から、アフリカ大陸先端のアガラス岬の辺りまで広がるようです。
一方で、大陸の東側にはアガラス海流と呼ばれる暖流が流れており、海流による冷涼効果は得られません。
ところで、南アフリカの原産地呼称制度は、生産地を大きさにより4種類に分類してます。
大きい順に、「Geographical Unit(地理的区域)>Region(地域)>District(地区)>Ward(小地区)」の順です。
それらは、「Coastal Region(コースタル・リージョン)」、「Breede River Valley(ブレード・リヴァー・ヴァレー)」、「Cape South Coast(ケープ・サウス・コースト)」、「Olifants River(オリファンツ・リヴァー)」、「Klein Karoo(クレイン・カルー)」です。
これらの地域は、自然環境から受ける影響の違いにより、異なるワインを製造します。
コースタル・リージョンは、5つの地域のうち、ブドウの栽培面積が最大の地域です。しかし、比較的低収穫の中~高価格のワインが多く製造されているために、ワインの生産量は必ずしも最大というわけではありません。
この地域は、海沿いは寒流やケープドクターによる冷涼効果、また、内陸の山岳地域は標高による冷涼効果が得られるために、ブドウの香りとタンニンがゆっくりと成熟するために、高品質なブドウを生産することができると言われています。
冷涼効果の影響もあり、温和~温暖な気候を持つこの地域では、カベルネソーヴィニヨン、シラーズ、ピノタージュの赤ワインに加えて、シュナンブラン、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネなどの白ワインも製造されています。
コースタル・リージョンには南アフリカで最も有名なワイン産地の1つであるステレンボッシュ地区(Stellenbosch ward)があり、トップクラスのカベルネソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ケープブレンドなどで高い評価を得ています。特にカベルネソーヴィニヨンは、高い酸味とタンニンを持ち、ボルドーに近いスタイルで造られると言われています。
・温和~温暖な気候
・十分な降水量(主に冬)
・False(フォールス)湾からの夏の涼しい風
・標高、方角、土壌のバリエーション(標高による冷涼効果もあり)
などの自然条件が高品質のブドウの栽培に寄与していると言われています。
ブレード・リヴァー・ヴァレーは暖かく乾燥した肥沃な土地で、ブドウ栽培に適した土地です。ブドウの多くは、高い収穫量で栽培され、南アフリカで最も多くのワインを製造していると言われる地域です。
高収穫量で栽培されたブドウの多くは、低価格ワインやブランデーの製造用に使われます。
品種としては、シュナンブランや、コロンバール、ソーヴィニヨンブランや、シラーが多く栽培されています。
伝統的に低価格ワインやブランデーの製造で有名な地域ですが、徐々に高品質ワインの製造も増えているそうです。
ケープ・サウス・コーストは、大西洋からの冷涼効果を強く受ける地域です。冷涼効果は、おそらく「ベンゲラ海流」と「ケープ・ドクター」によるものです。
5つの地域の中では特に涼しい地域のため、他の地域ではあまり栽培されていないピノノワールが比較的多く栽培されています。また、涼しい地域で栽培されるソーヴィニヨンブランやシャルドネも多く栽培されています。
標高の高いエルギン地区(Elgin ward)は、さらに標高による冷涼効果が加わり、南アフリカの中でも最も涼しいワイン産地の1つと言われています。
オリファンツ・リヴァーは、非常に乾燥した暖かい地域です。ブレード・リヴァー・ヴァレーと同様に、伝統的にブドウは高収穫で栽培され、ブランデーの製造に使われてきたようです。
しかし、大西洋からの風による冷涼効果や、山の近くでは標高による冷涼効果が得られ、高品質なブドウの栽培が増えているようです。
クレイン・カルーは、内陸部の半乾燥地域です。特に南部にそびえるランゲバーグ山脈が、海からの影響からこの地域を守っています。
高温で乾燥した生育環境で育つブドウの木は深く張り、皮が厚く、小さい実をつけます。このようなブドウは濃縮された糖分と風味を持ち、酒精強化ワインの生産に最適であるといわれています。
この地域では伝統的に、ポートスタイルの酒精強化ワインと、マスカット・ブラン・ア・プティ・グランが有名であり、現在でも生産されるワインのかなりの部分を占めていると言われます。
また、ブランデーに使われるシュナンブランやコロンバールの栽培でも有名です。