スキップしてメイン コンテンツに移動

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

WSET Diploma D1オンライン受講の感想⑤ ~テイスティング課題~

 今回は、以前の記事(記事:WSET Diploma D1受講の感想① ~オンライン受講の流れ~)で紹介をした「テイスティング課題」に関してです。




テイスティングはオンライン受講を始めるにあたって最も心配をしていた部分です。なぜならば、私は今まで通い形式のテイスティングの講義しかやったことが無く、オンラインの場合にはどのようにテイスティングが進められるのかが全く想像できなかったからです。

 

主な疑問点は次のようなことでした。

 

    テイスティング用のワインは誰がどのように準備するのか?

 

    テイスティング用のワインの費用はどのくらいかかるのか?

 

    テイスティングはどのように進められるのか?

 

    講師から個別のフィードバックがもらえるのか?

 

    講師のフィードバックはどの程度的確なのか?(特に、同じボトルのワインを飲めない場合)

 

 

Diplomaの説明会に出席をしたりして事前に明らかになった部分もありましたが、全ての疑問は明らかにならず、結局、多少の不安や疑問を持ったままの受講となりました。

 

そして実際にオンラインでのテイスティングを受講していく中で、それらの疑問点が徐々に明らかになっていきました。それを説明して行きたいと思います。

 


    テイスティング用ワインの「準備」について

 

ワインの準備は与えられたガイドラインに従って、全て自分で準備をすることになります。

 

それぞれの週に用意が必要なワインリストは事前に提示がされているので、毎週のテイスティングに間に合うようにワインの注文や購入をしておきます。

 

一般の店舗では入手が難しいワインもあったので、私は主にオンラインのワインショップを利用しました。自宅への到着までに時間がかかるので、少なくとも1週間前には注文をするように心がけていました。

 

用意するワインのガイドラインは例えば「Pinot Noir from Burgundy of very good quality」のように、「品種(もしくはAOC)」×「品質レベル」の形で与えられることが多いです。これに加えて、「甘さのレベル」や「オーク香の有無」のガイドラインが加えられることもありました。

 

「品質レベル」については、ラベルがそのまま品質レベルに直結しているもの(Grand CruPremier Cruなど)は準備をするのが簡単でしたが、そうでないものについてはどのような基準でワインをさがしたら良いのか迷いました。そのような場合には、D1D3のテキストの当該部分を読み込んで、品質の高いサブリージョンや製造者の情報を調べたり、担当講師に直接質問をしたりして、できるだけガイドラインに近いようなワインを購入するように努めました。


通い形式のテイスティング講義ではワインは全てワインスクールが用意をしてくれていましたが、オンライン講義の場合では、ワインを準備することが結構な手間となりました。しかしその反面、自分でワインを準備することで「ワイン選び」という今まで学ぶことのできなかったスキルを学ぶことができたので、これはこれでとても良い経験となりました。


 

    テイスティング用ワインの「費用」について

 

テイスティング用ワインの費用は、以前の記事で説明をしたオンラインコース費用には含まれていません。

(関連記事:「WSET Level 4 Diploma in Wines(通称、ディプロマ)」について調べてみました


そのため、ガイドラインに従ってどのようなワインを購入するかで、費用は大きく変わってきます。


例えは、「Pinot Noir from Burgundy of very good quality」を用意する場合でも、コート・シャロネーズの村名ワインを購入する場合と、コード・ド・ニュイのグランクリュを購入する場合では、費用は大きく異なります。


毎週のワインの必要購入数は2~5本程度だったので、私の場合、1つ1つのワインに大きな金額を書けることはできませんでした。あくまでもワインは趣味なので、それほどお金はかけられません。。。


そこで条件を満たすワインの中で、最も低価格な部類のワインを購入することが多かったと思います。


店舗購入では選択肢が少ないことから、ほとんどのワインをオンラインショップで購入しました。また、できるだけ品ぞろえの多いオンラインショップを選んで、数週間分のワインを一度に購入することで、できるだけ送料も抑えるように努めました。フルボトル(750ml)は高いので、ハーフボトル(375ml)を積極的に選ぶことも費用を抑えるコツでした。


できるだけ費用をおさえましたが、それでもD1だけで3~4万程度はワインの購入代金としてかかったと思います。


一般論で言うと、より高い価格のワインの方が、よりそのワインの典型的な特徴を持っていることが多いので、もう1ランク上のワインを買いたいと思うことは多々ありました。しかし、このような経験をしたことで、できるだけリーズナブルにそこその品質の良いワインを選ぶことができるようになったと思います。



    テイスティングの「進め方」について


オンライン受講では、座学のような仰々しい講義はありません。


1週間の流れでは、週の始めに講師がその週に伝えたいことをビデオメッセージで送ってくれます。


主に伝える内容は、Diplomaでのテイスティングノートの書き方です。


Diploma(レベル4)とレベル3のテイスティングノートの大きな違いは、ワインに対する結論の部分です。レベル3ではワインの特徴と品質レベルを評価して終わりでしたが、Diplomaでは「品質レベルの根拠」と、「熟成ポテンシャル」を文章で説明することが求められます。


受講者は、そのビデオメッセージを参考にしながら、自分のスケジュールでその週のうちに自分で用意をしたワインのテイスティングを行い、テイスティングノートの作成および提出を行います。テイスティングのノートをオンラインプラットフォームに提出をすると、担当講師が個別のフィードバックを書き込んでくれます。


週の中盤くらいには、担当講師が一部の受講者から提出されたテイスティングノートをもとに、追加のアドバイスをビデオメッセージや電子メールで送ってくれます。例えば、「こんな書き方をしている人が多いですが、この部分はもっと具体的に書いてください」などです。


自分が提出をしたテイスティングノートは他の受講者から見られることはなかったので特にプレッシャーはありませんでしたが、じっくりと見直しをしてから提出をすることが多かったので、提出のタイミングは週の後半になることが多かったと思います。


テイスティングノートの書き方は、担当講師からのメッセージに加えて、オンラインプラットフォームに用意されている「Dimloma Tasting Guidance」という資料を参考にしました。課題や、認定試験で求められるテイスティングノートの書き方は、全てこの資料にまとめられていました。


ちなみにD1の認定試験にはテイスティングは含まれていませんでしたので、D1のテイスティング課題は、のちのD3~D5のテイスティング試験のための練習という位置づけだと思いました。


オンライン講座でのテイスティングにはメリット、デメリットがありますが、自分の気が済むまで何度でも、何杯でもテイスティングができることは大きなメリットだと思いました。一度完成させたテイスティングノートでも、次の日に気になる部分があるともう1度テイスティングを行って書き直すこともありました。


余ったワインは、またいつでも味わえるように小瓶に入れて保存をしています。



    テイスティングノートへのフィードバックについて


先程書いたように、テイスティングノートへのフィードバックは受講者ごとに個別にもらうことができました。


その週の半ばくらいまでに提出をすれば、次の週にはフィードバックをくれるので、次のテイスティングノートに活かせるように徐々に早く提出することを心掛けました。


フィードバックの内容についてですが、主な指摘のポイントは、「品質レベルの根拠」の部分と、「熟成ポテンシャル」の文章での説明についてでした。とにかく、具体的な説明が欠如していることについての指摘が多かったと思います。


例えば、「このワインはバランスが取れている/複雑性がある」と書いた場合に、「どのような要素同士の間でバランスが取れているのか具体的に書きなさい」や、「どのような要素が複雑性を生み出しているのか具体的に書きなさい」などのものでした。


また熟成ポテンシャルの説明については、「なぜ熟成ポテンシャルがあるのか?」や「瓶熟成によってワインはどのようになるのかを具体的に書きなさい」というものが多かったと思います。



 フィードバックの妥当性について


オンライン受講では、決して講師は受講者と同じワインを味わっているわけではありませんでした。


そのため、香りや風味の各要素についての細かいフィードバックはそれほど多くはありませんでした。(この点は担当講師も、「同じボトルのワインを飲んでいるわけではないので、細かい指摘はできないと事前に断っていました。」)


しかし、一般的にありえない回答をしたときには、きちんと指摘をしてくれました。


例えば、「Petit Chablis」のテイスティングをしたときに、「medium acidity」、「full body」などと書けば、「それはあり得ない」と指摘をしてくれます。しかし、「medium(+) acidity」、「medium(-) body」と書いた時には、たとえ正解が「high acidity」、「light body」だったとしてもそこまで細かくは指摘をしてくれませんでした。


また、同様に「Petit Chablis」の香りの表現として「vanilla(樽香)」と書けばおそらくそれはあり得ないと指摘をしてくれますが、「dill」と書いた場合に例え実際にはその香りが無かったとしても(Petit Chablisがdillの香りを持つ可能性は十分にあるので)指摘はしてもらえなかったと思います。


先程、オンライン受講でのテイスティングのメリット、デメリットの話をしましたが、このように香りや風味の各要素について細かい指摘を得られないことはオンライン受講のデメリットだと思いました。



≫ WSET diploma(ディプロマ)に関する記事一覧



よく読まれている記事

WSETで納得!JSAで疑問だったギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い

JSAワインエキスパートを学んでいた時に、ブドウ樹の仕立て方でずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、 「ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い」 。 両者ともに世界的に広く採用されている仕立て方である「 垣根仕立て 」の代表例なのですが、 ギヨドゥブルは長梢剪定 、 コルドンロワイヤは短梢剪定 の例として紹介されていました。 (参考記事: ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは? ) それぞれぱっと見の形はすごく似ていて、その違いは、枝の太さの違いだけ。ギヨドゥブルは2本に分かれる枝が細くて、コルドンロワイヤはそれが太い。 なぜこのような似通った2つの仕立て方が用いられているのか が、当時の私にはわかりませんでした。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、ブドウの栽培方法、特に仕立て方に関してはあまり深い知識は必要なかったために、この2つの機能的な違いや、長梢剪定、短梢剪定に関する説明は試験対策講座でも省略されていました。また、当時、独自でネット検索をして色々調べてみたのですが、結局答えはわからず終いでした。 それから一年、こんな疑問があったことも忘れてしまった頃、WSETレベル3の講義を受けて この疑問を解決することができました! ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの選定の流れ WSET の講義を受けて分かったことは、次のようなこと: ギヨ・ドゥブル では、前年の新梢が一本だけ残され、その枝(長梢)が水平方向に延ばされる ギヨ・ドゥブル では、水平に伸ばされた長梢の上に、その年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル では、その年の収穫が終わったら、その年の新梢1本だけを残して、残りの枝は刈り取られる コルドン・ロワイヤ では、一昨年かそれ以前に作られた腕枝(コルドン)の上に、去年の新梢の一部(短梢)が残される コルドン・ロワイヤ では、短梢から今年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル、コルドン・ロワイヤともに 、新しいブドウの房は新梢の上にできる (ギヨ・サンプル/ドゥブルの剪定の流れ) (コルドン・ロワイヤの剪定の流れ) 仕立てが出来上がった状態では、それぞれとても似通った形になって

ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリットの整理

 ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。 棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。 ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。 そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が 「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」 です。 垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。 そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。 棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット 棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。 そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。 日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。 通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。 また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。 一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。 ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。 (関連記事: 棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り ) 垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット 垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。 したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の機械化」

WSETレベル3のテキスト購入方法とテキスト電子化のメリット

WSET英語学習 の難しさはの1つは、 テキストの記述が全て英語 であることです。 テキストが英語だと、やっぱり 内容の理解度が落ちます 。知らない単語を辞書で調べて...翻訳をして...と読み込んでいくのですが、部分的に言い回しが微妙だったり、細かいニュアンスが伝わらなかったりで、理解が難しい文章がいくつかありました。 <理解度対策は、日本語テキストの購入がおすすめ!> 理解度の問題を解決するために私がとった方法は「WSETレベル3日本語テキストの購入」でした。 ワインスクールでWSETレベル3を受ける場合、英語クラスを選択すると、英語テキストが配布されます。 しかし私はこれに加えて、日本語テキストを購入しました。ワインスクールでも購入ができるようなのですが、受講開始前に手にしておきたかったために個人的にWSETの公式ウェブサイト( https://shop.wsetglobal.com/collections/books )から購入しました。 注文から2週間ほどで手元に届いたと思います。レベル3のテキスト自体は £44.95 GBP でしたが、送料に £17.21 GBP かかり、合計費用は £62.16 GBP (8,300円程度) でした。 もう少し安く購入する方法としては、時々 メルカリ に出品されているものを購入する方法もありますが、常に売りに出されているわけではないのであまり期待できないかもしれません。 Amazonでも時々、中古品がでているのでここで検索するのも良いかもしれません。→  https://amzn.to/3YSx0xy  (Amazonへのリンクです) <情報検索にはテキストの電子化がおすすめ!> テキストが英語であることの問題がもう1つありました。それは、 知りたい情報を探すのが大変 であるということでした。 例えば、「カベルネ・ソーヴィニヨン」の産地ごとの特徴を知りたい場合、その情報は様々な章に分散されて書かれていました。醸造工程の章、ボルドーの章、アメリカの章などです。 日本語であれば、走り読みをしながらキーワードを探せばそれほど大変な作業ではありません。しかし、英語ネイティブでない私にとって、英語でこれをやるのはとても大変な作業でした。 英語テキストの情報検索の問題を解決する

WSETレベル3で一発合格できたテイスティング対策

WSETレベル3 の試験には、筆記試験に加えて、 テースティング試験 が含まれます。 WSETのテースティングでは、 SATという名のテイスティング・ツール を用いて、ワインの描写と品質・飲み頃に関する評価を行います。本試験においても、このSATに則って、出題される2種類のワイン(通常、赤ワイン1種と白ワイン1種)についての評価を回答用紙に記述します。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング回答のルール ) 一般的に、 WSETレベル3のテースティング試験は筆記試験に比べて合格をしやすい と言われています。しかしそれでも、試験をパスするためにはある程度の学習と練習が必要だと思います。 WSETレベル3のテイスティング対策を行うにあたって、私が感じたのは、どのように準備をしたら良いのかという情報がJSA試験ほどに豊富には手に入らないということでした。 そこで、この記事では私がテイスティング試験に向けて行った準備を紹介したいと思います。一度の試験で合格ができたので、それなりの効果はあったのだと思っています。 試験突破のカギは「SATの理解」と「品質評価」 テイスティング試験対策に取り組む中で、私が最も重要だと思い、時間を割いたのは、「 SATの記述ルールを理解すること 」と「 ワインの品質レベルを正確にとらえる 」ことでした。 テイスティング試験の合格基準は「55%」の得点率なので、この2つさえできていれば、まず落ちることはないと思いました。 反対にこの2つのいずれかが欠けていると、大きく減点をされてしまう可能性があります。例えば、SATでは、「テイスティングの記述に用いる用語」と「評価をすべき項目」がしっかりと決まっています。間違った用語を用いたり、評価すべき項目が記述されていなければ、全く得点は得られません。用語や評価項目以外にも、いくつか記述のルールが存在するので、ワークブックをしっかり読んで全てを把握しておくことが必須です。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング試験でやりがちな失敗トップ10 ) (参考記事: WSET SATのちょっとわかりにくかった香りと風味の選択・記述ルール ) ルールに関してはJSAのテイスティングのルールとは少し異なると思われる部分もあったので要注意です。

WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

繰り返しになりますが、WSET level3の最大の難関は記述式問題です。 (参考記事: WSET Level3 の試験構成 ) WSETの記述式問題では、出題されたテーマに対して、深く理解をしているかが問われます。 (参考記事: 一筋縄ではいかない!とてもWSET的だと思った記述式問題(問題例) ) そのため、記述式問題の基本的な対策は、WSETレベル3のテキストの読み込みと、講義ノートの見直しを主に行いました。 しかし、広大な産地全てについて、万遍無く、深く理解をするというのは途方もない作業に思われました。 さらに私の場合は英語受験だったので、日本語のようにテキストをスラスラ読むこともできるわけはなく、本試験までの日数から逆算をすると、とてもそんな時間は確保できないと思いました。 そこで記述式試験対策の方針としては、いくつか重要と思われる部分にヤマを張って、それらを重点的に勉強することにしました。「重要と思われる部分」は次のような判断基準で抜き出しました。 ・講義中に担当講師が「重要」「試験に頻出」と言っていた部分 ・サンプル問題で、何度も問われていた部分 (参考記事: WSET過去問は共有禁止!それでもWSETレベル3の試験問題の参考にしたウェブサイト ) ・複雑で、しっかり理解をしていないと説明ができないと思った部分(特に醸造工程のオプションなど) ヤマを張った部分に関しては何度もテキストを読み返して、テキストの重要ポイントは何度もノートに書きあげて英文を書く練習を続けました。 (参考記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) (関連記事: WSET試験の記述問題対策では「動詞」が重要!? ) 「重要と思われる部分」として抜き出した具体例を下に紹介します: <ワインの保管とサービス> ワインの保管方法(参考記事: ワインの保管方法 ) ワインの提供温度 (参考記事: チャートで覚えたワインのサービス温度 ) ワインのデカンティング 発泡性ワインの栓の抜き方(参考記事: 非発泡性(スパークリング)ワインの栓の抜き方 ) ワインの保存に使われる方法(参考記事: ワインの保管方法 ) <ブドウ樹の栽培、畑の管理、ワインの醸造> 高接ぎとその特徴(参考記事: grafting(=接ぎ木

ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは?

ブドウ樹は、その土地に合わせて様々な形をしています。このブドウ樹の形は「仕立て」と呼ばれ、休眠期の剪定によって整えられます。 例えば、ボルドーやブルゴーニュでは針金と柱を用いて枝を地面と垂直方向に伸ばす「垣根仕立て」が多く採用されています。 一方で日本では、ブドウや葉を棚の天面に広げる棚仕立て(Pergola ペルゴラ)が多く採用されています。 このような仕立てや選定は、気温、日照、水、土壌の栄養分などのブドウ樹が必要とする要素や、ブドウ畑の機械の使用などを考慮して、そのブドウ畑に最適なものが選ばれます。 WSETレベル3では、この「仕立て」、「剪定」について比較的しっかりと学ぶのですが、ブドウ畑に馴染みのない私にとっては少し理解が難しい部分でした。 特に私が混乱してしまったのは、「仕立て(training)」と「剪定(pruning)」の違いでした。両者はお互いに深い関係があり、テキストの説明だけでは直感的にわかりにくかったので、個人的に図などを利用してまとめてみました。 (関連記事:t rellis の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) <仕立てと剪定の違い> WSETテキストによれば「仕立て」と「剪定」は次のように説明されています。 「ブドウ樹の整枝・仕立てとは一般に株の形状のことをいい、大きく分けて、株仕立てとコルドン仕立ての二つに分類できる。」(株…ブドウ樹で一年以上経っている木質部のこと) 「剪定とは、冬または生育期間中に、望ましくない葉や長梢、株を除去することである。剪定によって樹の形が決まり、大きさが制限される。」 つまり、仕立てとは「ブドウ樹の形」を意味し、剪定とはその「ブドウ樹の形をつくるための作業」ということになります。 <仕立てと剪定の種類> 「仕立て」は株(一年以上経っている木質部)の形によって大きく「株仕立て(head training)」と「コルドン仕立て(cordon training)」の二つに分類ができるようです。 「株仕立て」は株の部分が比較的小さいのに対して、「コルドン仕立て」はコルドンと呼ばれる腕枝があるのが特徴です。コルドンは通常1~2本ですが、4本以上のコルドンを持つ「大木仕立て(big vine)」と呼ばれるものもあるようです。

良いワインの条件とは?WSETのBLIC

ワインの 「品質レベル」 を学ぶことは、WSETのカリキュラムに従ってワインを学ぶ醍醐味の1つだと思います。 「品質レベル」 とは、その ワインの品質の高さ です。つまり、良いワインなのか、そうではないワインなのかということです。 WSETには「品質レベル」を評価する考え方として、「BLIC」という方法があるそうです。 BLICとは、Balance(バランス), Length(余韻), Intensity(凝縮度), Complexity(複雑さ)の頭文字です。 一般に、 これら4つの評価基準を全て満たしているワインは「素晴らしい(outstanding)」ワイン、3つを満たすものは「非常に良い(very good)」ワイン、2つを満たすものは「良い(good)」ワイン、1つしか満たさないものは「妥当な(acceptable)」ワインと言われるようです。そして、1つも満たさないものは「悪い(poor)」ワインです。 (※これは1つのガイドラインであって、必ずしもこの点数だけで厳密にはこの点数だけでワインの評価はできないそうです) 私もWSETを通してこの考え方を学びましたが、「なるほど!便利!わかりやすい!」と思いました。 しかし、実際にそれを実践しようとするとなかなかわかりにくかった部分もあったので、個人的な感想を紹介したいと思います。 Balance まず1つめは、4つの評価基準のうち、もっとも基本的な基準の 「バランス」 です。この「バランス」を満たしていない場合、ほとんどのワインは「悪い」ワインとみなされてしまいます。 バランスとは、例えば、次のようなポイントで評価がされるようです。 ・(果実味+糖分) vs (酸味+タンニン)はバランスがとれているか? ・甘味、酸味、タンニン、アルコールのいずれかが突出していないか? ・オークの香りが突出していないか? WSETをやり始めたころは、何が「正しいバランスなのか?」を判断することがとても大変でした。それはWSETを始めるまでに、あまりワインの品質について考えることがなかったからです。 しかし、いくつもテイスティングを重ねて、良いワインと言われるものをいくつか味わって、なんとなく「バランス」というものがわかってきたような気がしました。 多くのワインがバランスを満たしていると思うのですが、個人的には... ・寒い地

ワインから感じられる「醤油」の香り!?

ワインから醤油の香りを感じたことはないでしょうか? 私は時々、フルボディの赤ワインから醤油を連想させる香りを感じることがありました。 特にある種のシラーワインの香りをとると、どうしても醤油にしか感じられないことが何度かありました。 しかし、日本由来の調味料である「醤油」など、ワインの表現として役に立つことはないだろうと、ずっと自分の心にだけとどめておきました…。 それから暫くたって、先日あるウェブサイトで「醤油(Soy sauce)」がテイスティング用語として説明されているのを見つけて驚きました! それが時々参考にしている「Decanter」のこのページ( https://www.decanter.com/learn/advice/understand-tasting-notes-decoded-344920/ )。「Fermentation / Winemaking(発酵/ワイン醸造)」のカテゴリのテイスティング用語として、なんと!「Soy sauce」が説明されていました。 このページによれば、醤油は肉のような旨味を表す表現用語であり、一般的に辛口でフルボディの赤ワインで、酸味が強く、樽熟成が進んでいるものを表すようです。例えば、リオハのテンプラニーリョや、ピエモンテのバルベーラ、サンジョヴェーゼを用いたキアンティなどです。 醤油の旨味は発酵中にタンパク質が分解されることで生まれます。ワイン醸造においても、同様に、ブドウのタンパク質が酵母の働きで分解され、この旨味の風味が生まれると考えられているようです。 このページではシラーのワインは例としてあげられていませんでしたが、辛口、フルボディ、赤ワイン、酸味が強い、という条件を満たしていたために、醤油の風味が感じられたのかもしれません。

WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ?

ある程度、体系的にワインの事を学びたいと思ったらワインの資格取得はおすすめです。 資格を取得するためには決められた範囲を満遍なく学ばなければならないために、試験勉強を終えた頃にはしっかりと 体系立ったワインの知識 が頭の中に残ります。 メジャーなワイン資格といえば何と言っても、日本ソムリエ協会(JSA)の運営する ソムリエ・ワインエキスパート試験 。これはおそらく日本でもっとも有名なワイン資格です。大雑把に言うと、ソムリエ試験はソムリエ向け、ワインエキスパートは私のようなそれ以外の受験者向けです。 そしてもう一つ、世界的にメジャーなワイン資格といえば、 WSET 。この資格はレベル1〜4までありますが、JSAソムリエ・ワインエキスパート資格と同等レベルと言われるのはWSETレベル3です。WSETレベル3は、レベル2を取得していなくても取得が可能ですが、レベル4を取得するにはレベル3の取得が必須です。 私はこの「JSAワインエキスパート」と「WSETレベル3」の両方を受験しましたが、実際に経験をしてみて様々な違いを感じました。 違いは様々ありますが、一番違いを感じたのは学習内容。 ・JSAワインエキスパート=膨大な情報の詰め込み ・WSET=なぜ?なぜ?なぜ?を突き詰める こんなイメージです。 JSAワインエキスパートではとにかくワインの名前や、世界の地理、 ワインの色、品種、格付けなど覚えることが盛りだくさんです。 代表的な例は、ボルドーメドックの格付け1級〜5級を全て覚えなければならないことです。 一方、WSETでは覚えることは各地、各国の代表的な産地やワインくらい。 その反面、 なぜそこでそのようなワインが作られていて、 なぜそのようなブドウが作られているのか? なぜ、そのようなブドウ栽培方法がとられているのか? など、ひたすら理由を追求して、試験ではそれを文章で説明しなければなりません。 この2つは、 ・「知識の幅」 (JSA) ・「知識の深さ」 (WSET) というそれぞれの強みがあるために、 両方学ぶ事で一段とワインへの理解が深まります。 私は、JSAワインエキスパートを合格した後にWSETを受講したのですが、 JSAで詰め込みで覚

ワインから感じられるバナナの香りとは?

特定のワインはバナナの香りを持っていると言われます。 例えば、マセラシオン・カルボニック製法で造られたボージョレワイン、南アフリカのピノタージュ、スペインのガリシア地方で造られるアルバリーニョなどが該当します。 バナナの香りの元となる化学物質は酢酸イソアミル(isoamyl acetate)と呼ばれるエステルです。この物質は、マセラシオン・カルボニックの副産物として、または、通常のアルコール発酵において酵母から発生すると言われています。酢酸イソアミルの香りは、洋ナシや風船ガムの香りとも形容されます。 (関連記事: 【ワインの表現用語】Pear(洋ナシ)、Pear drop(洋ナシ香味のキャンディー)の香りとは? ) 酢酸イソアミルに代表されるワイン中のエステルは、特に低温(例えば15°C前後)で発酵された場合に多く発生すると言われています。 エステルは、ワインにフレッシュでフルーティなアロをもたらすために、若いスタイルのワイン、特に白ワインには欠かせないと言われています。 そのため、多くの白ワインでは赤ワインよりも低い発酵温度が好まれるとも言われます。 反対に、白ワインの中でもフレッシュでフルーティーな香りが好まれないワインでは、やや高めの発酵温度(例えば、17~25°Cなど)で発酵を行い、エステルの生成が抑制されます。