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ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

シラー/シラーズの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

最近は、様々なブドウ品種についての産地による味わいの違いを中心にテイスティングを行っていますが、今回はシラー/シラーズに関してです。



シラー/シラーズは世界中で栽培される国際品種の黒ブドウです。フランスでは「シラー」、オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれています。


シラー/シラーズから造られる一般的なワインの特徴は次の通りです:



・色濃いワインになる(果皮が厚く、色濃く、顆粒が小さいため)

・中程度から高いレベルのタンニンと、中程度の酸味を持つ

・通常フルボディのワインとなり、黒系果実(ブラックベリー)やダークチョコレートの特徴を持つ

・冷涼地域では、ブドウが完熟しない

・温暖地域では、草、燻製肉、黒コショウのニュアンスを持つ

・暑い地域では、より甘いスパイス(リコリス)の香りを持つ

・熟成により、皮革、湿った葉、土の香りを持つ

・多くのシラーワインはオークの香りを持つ(樽熟成や、オークチップやオーク板の利用による)



続いて、主なシラー/シラーズの産地について、主なワインの特徴をまとめてみました。今回も、独断や偏見が含まれます。



さらに、実際のテイスティングを通して、味わいを確認していきたいと思います。

今回用意をしたワインは次の通りです。


ワイン①:E.guigal Crozes Hermitage Rouge 2018(クローズ・エルミタージュ [仏])

ワイン②:E.Guigal Hermitage Rouge (エルミタージュ [仏])

ワイン③:Hidden Pearl Shiraz Berton Vineyards Pty Ltd 2020 (低価格オーストラリアワイン)

ワイン④:Village Shiraz Yering Station 2017 (ヤラヴァレー [豪])

ワイン⑤:Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 (バロッサヴァレー [豪])

ワイン⑥:Hawkes Bay Syrah Cooper‘s Creek Vinyards 2015 (ホークスベイ [NZ])


フランス・ローヌ産2種類と、オーストラリア産3種類、ニュージーランド産1種類です。









テイスティング


ワイン①:E.guigal Crozes Hermitage Rouge 2018(クローズ・エルミタージュ [仏])




北ローヌはクローズ・エルミタージュのシラーです。

クローズ・エルミタージュは、北ローヌでは最大面積のAOCであり、比較的平らな畑が多いため機械収穫も可能であり、比較的手ごろな値段で手に入るワインです。

しかし、土壌は比較的肥沃であり、日照も急斜面ほど得られないために、ブドウの凝縮度は他の北ローヌのAOCに及びません。そのため、ワインの中には高いブドウの成熟度を感じられないものも見受けられます。

このワインも、そのようなクローズ・エルミタージュの特徴的なワインの1つだと思います。

外観は濃い目のルビー色で、シラーの色素の強さが出ています。若いワインの特徴として、やや紫がかった色合いも感じられます。

香りは中程度か、やや弱めの中程度です。香りの特徴は、黒系果実(ブラックチェリー、カシス)スパイス(黒コショウ)の香りが際立ちます。少しだけ、草のような香りも感じられます。

印象としては、また香りが十分に開いていない未熟なブドウを連想させる香りです。シラーの深い黒系果実の香りが、未熟なブドウの青い香りと合わさって、黒コショウの香りを作り出しているように感じられます。黒コショウの香りは、比較的涼しい地域のシラーワインに現れると言われますが、こう考えるととても合点がいきます。

樽香はあまり感じられません。流通元の情報によれば(https://order.luc-corp.co.jp/shop/g/g10200002103/)、大樽で15か月の樽熟成なので、樽香が感じられないのも納得です。

味わいは、辛口で、高い酸味と、未熟な収斂性のあるやや高めのタンニン、高めのアルコール度(14.0%)を持ち、ミディアムボディです。

おおむね当初の予想通りの味わいですが、アルコール度はやや高めです。シラーは比較的アルコール度が高くなりがちな品種なのかもしれません。

高い酸味と、未熟なタンニンは、北ローヌの成熟度の高くないブドウから造られるシラーワインの特徴だと思います。アルコール度は高いのですが、果実の凝縮度が低いために、ボディはミディアム止まりです。そのため、余韻もかなり短めです。

クローズ・エルミタージュの(特に手頃な価格の)ワインの特徴は、このようにシラーの未熟さと、荒々しさが現れたワインなのではないかと思いました。




ワイン②:E.Guigal Hermitage Rouge 2009 (エルミタージュ [仏])



北ローヌはエルミタージュのシラーワインです。

栽培エリアは、クローズ・エルミタージュの10分の1にも届かない小さいアペラシオンです。

石の多い南向きの土壌で、ほとんどの作業が手作業で行われ、ワインの価格は高めです。しかし、成熟度の高いブドウから造られるワインは、非常に高い評価を集めています。

外観は、濃いルビー色で、シラーの特徴が現れています。

香りの強さは強く、赤系果実(赤プラム)、黒系果実(ブルーベリー、ブラックチェリー)などの果実の香りに加えて、甘いスパイス(ヴァニラ、リコリス)の香りがしっかりと感じられます。また、スミレのような華やかな香りも感じられます。

香りがとても閉じていると感じられたクローズ・エルミタージュと異なり、こちらはずっと開いた果実の香りが感じられます。また、その香りとバランスをとるように、樽由来の甘いスパイスの香りがしっかり加えられています。フランスらしい、とてもエレガントな樽香です。

製造元の情報によれば(https://www.guigal.com/en/vins.php?id_millesime=10&id_produit=14)、新樽比率が50%で、36か月の小樽熟成が行われているので、しっかりとした樽香にも納得です。

味わいは、辛口で、酸味は高く、スムーズなミディアム(+)のタンニン、高いアルコール度(14.0%)、フルボディです。果実の凝縮度がしっかりと感じられ、余韻が長く感じられるとても品質の高いワインです。

アルコール度は当初の予想よりもやや高めです。また、香りについてはクローズ・エルミタージュのようにシラーの特徴である黒コショウの香りは感じられません。これはブドウの成熟度が高いために、暑い地域の特徴である甘いスパイスの香りにとって代わられたのかもしれません。

エルミタージュのシラーワインは、クローズ・エルミタージュとは大きく異なり、ニューワールド産のようなより暑い地域のシラーの特徴(フルボディ、熟したタンニン、甘いスパイス)がでていると思いました。

エルミタージュのワインであることを見抜くヒントは、エレガントな甘い樽の香りと、高い酸味にあるのではないかと思います。





ワイン③:Hidden Pearl Shiraz Berton Vineyards Pty Ltd 2020 (低価格オーストラリアワイン)




サウス・イースタン・オーストラリアGIのシラーズワインです。

「サウス・イースタン・オーストラリアGI」はオーストラリアのGI階層の中で最も広域な階層である「Zone」に属するGIです。このGIに使われるブドウは、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州、南オーストラリア州、クイーンズランド州などの複数の州をまたいだ広域から集められます。

ブドウの多くは暑い地域で栽培されるため、このGIのワインの多くは、熟したフルーツの香りと、高いアルコール度、低めの酸味、ミディアムボディを持つことが特徴であると言われています。このワインも同様の特徴を持ったワインです。

まず外観は、中程度のルビー色です。

香りの強さはミディアム(+)程度で、黒系果実の香り(カシス)に加え、乾燥果実(プルーン)や煮込んだ果実の香り(ブルーベリージャム)が感じられます。また酸化を占めすキャラメルのような香りも感じられますが、これは開けてから少し時間がたったために酸化をしてしまったのだと思います。全体的に香りはいたってシンプルです。

味わいは、辛口で、酸味は中程度、成熟したミディアム(+)のタンニン、高アルコール度(14.0%)の特徴を持ちます。アルコール度は高いのですが果実の凝縮度がそれほど感じられないために、ボディはミディアム程度です。余韻もそれほど長くは感じられません。

全体的な香りや味わいは、当初予想をしていた通りです。

香りがシンプルでシラーズの特徴的な香りはあまり感じられないために、ブラインドで出されたら品種の特定は難しそうです。しかし、暑い地域の黒系果実の特徴を持つワインであることはわかるので、シラーかカベルネソーヴィニヨンまでは割り出せそうです。

フルーティーで、ボディが軽めの、シンプルな香りの飲みやすいワインです。




ワイン④:Village Shiraz Yering Station 2017 (ヤラヴァレー [豪])


オーストラリアはヤラヴァレーGIのシラーズです。

ヤラヴァレーは、全体的に暑い気候を持つオーストラリアの中でも比較的涼しい気候を持つ地域です。冷涼地域から温暖地域までが含まれており、中程度から高価格帯のワインが造られることで有名な産地です。

シラーズは主に温暖地域で造られますが、それでも後述のバロッサヴァレーのものと比べると、よりエレガントなスタイルのものが造られます。

まずワインの外観ですが、中程度からやや濃い目のルビー色です。

香りの強さはミディアム(+)で、黒系果実(ブラックベリー、ブラックチェリー、ブラックプラム)の香りに、甘いスパイス(リコリス)と樽香(ヴァニラ)の香りが感じられます。また、黒コショウや青い香り(ユーカリ)の香りも感じられます。

味わいは辛口で、ミディアム(+)程度の酸味、成熟したミディアム(+)のタンニン、高いアルコール度(14.0%)、ミディアム(+)くらいです。果実味の凝縮度がしっかりと感じられ、余韻はやや長めです。

香りや味わいは、当初予定していたものとそれほど大きく異なる部分はありませんでした。オーストラリアでも比較的涼しい地域で造られるため、ブラックペッパーや、やや草っぽい香りが出るのが特徴なのではないかと思いました。

それでも北ローヌのシラーに比べると、果実やタンニンはしっかりと成熟をしている印象です。特に、クローズエルミタージュのようなタンニンの収斂性はまったく感じられませんでした。しかし、後述のバロッサヴァレーほどの果実の凝縮度は感じられませんでした。




ワイン⑤:Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 (バロッサヴァレー [豪])



オーストラリアはバロッサ・ヴァレーのシラーズです。

バロッサヴァレーはオーストラリアのシラーズの産地の中でも比較的暖かい地域であり、フルボディで、アルコール度が高く、タンニンの豊富なシラーズワインが造られます。

このワインの外観は、濃いルービー色です。

香りは中程度よりやや強めで、黒系果実(カシス、ブラックプラム)の香りが強く感じられます。黒系果実の高い成熟度によって、タバコや、土、湿った葉などの、非常に深みのある香りまで感じられます。また、やや甘いリコリスの香りも感じます。

樽香はそれほど明らかには感じられません。新樽比率はもしかしたら高くないのかもしれません。

味わいは、辛口で、酸味はミディアム(+)で、熟したタンニンレベルは高く、アルコール度も高く(14.5%)、ボディはフルボディです。余韻はやや長く感じられます。

バロッサヴァレーのシラーズの一番の特徴は、非常に熟した深い黒系果実の香りと、高いアルコール度、フルボディだと思います。ここまで熟したシラーズのワインはなかなかないと思います。

おおむね当初の予想通りのワインですが、唯一樽香があまり感じられなかったのが予想外でした。これは、もしかしたら同じ産地でもワインの品質やタイプで異なるのかもしれません。




ワイン⑥:Hawkes Bay Syrah Cooper‘s Creek Vinyards 2015 (ホークスベイ [NZ])



ニュージーランドはホークスベイのシラーです。

ニュージーランド産のシラーの産地としては有名であり、国内のシラーの栽培量の75%を占めるそうです。ボルドーに似た温暖な海洋性気候ですが、シラーは石の多い暖かい畑で栽培されることが多いようです。

ワインの特徴は、バロッサヴァレーよりはヤラヴァレーに近い、ミディアム~ミディアム(+)ボディのワインのようです。

まず、ワインの外観ですが、シラーにしてはやや薄めの中程度のルビー色です。

香りは黒系果実(ブラックベリー、ブラックチェリー)の香りに、スパイスの香り(黒コショウ、ヴァニラ、リコリス)がワイン全体を占めています。ニューワールドのワインの中ではやや涼しい地域の特徴が現れていると思います。

味わいは辛口で、高い酸味、ミディアム(+)の熟したタンニン、中程度のアルコール(13.0%)、ミディアムボディくらいです。果実の凝縮度が感じられ、余韻はやや長めです。

ニューワールドのワインにしては、ボディが軽めで、酸味が強く、アルコールがやや軽めであるのが特徴であると感じました。フランス産のものに近い印象ですが、タンニンは十分に成熟しています。

予測としてはヤラヴァレーのシラーズに近い印象を持っていましたが、ボディは同じくらいのミディアム(+)ボディでした。ただし香りは、ヤラヴァレーのものに比べると、やや深みがある反面華やかさに欠ける印象でした。





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WSETレベル3で一発合格できたテイスティング対策

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WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

繰り返しになりますが、WSET level3の最大の難関は記述式問題です。 (参考記事: WSET Level3 の試験構成 ) WSETの記述式問題では、出題されたテーマに対して、深く理解をしているかが問われます。 (参考記事: 一筋縄ではいかない!とてもWSET的だと思った記述式問題(問題例) ) そのため、記述式問題の基本的な対策は、WSETレベル3のテキストの読み込みと、講義ノートの見直しを主に行いました。 しかし、広大な産地全てについて、万遍無く、深く理解をするというのは途方もない作業に思われました。 さらに私の場合は英語受験だったので、日本語のようにテキストをスラスラ読むこともできるわけはなく、本試験までの日数から逆算をすると、とてもそんな時間は確保できないと思いました。 そこで記述式試験対策の方針としては、いくつか重要と思われる部分にヤマを張って、それらを重点的に勉強することにしました。「重要と思われる部分」は次のような判断基準で抜き出しました。 ・講義中に担当講師が「重要」「試験に頻出」と言っていた部分 ・サンプル問題で、何度も問われていた部分 (参考記事: WSET過去問は共有禁止!それでもWSETレベル3の試験問題の参考にしたウェブサイト ) ・複雑で、しっかり理解をしていないと説明ができないと思った部分(特に醸造工程のオプションなど) ヤマを張った部分に関しては何度もテキストを読み返して、テキストの重要ポイントは何度もノートに書きあげて英文を書く練習を続けました。 (参考記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) (関連記事: WSET試験の記述問題対策では「動詞」が重要!? ) 「重要と思われる部分」として抜き出した具体例を下に紹介します: <ワインの保管とサービス> ワインの保管方法(参考記事: ワインの保管方法 ) ワインの提供温度 (参考記事: チャートで覚えたワインのサービス温度 ) ワインのデカンティング 発泡性ワインの栓の抜き方(参考記事: 非発泡性(スパークリング)ワインの栓の抜き方 ) ワインの保存に使われる方法(参考記事: ワインの保管方法 ) <ブドウ樹の栽培、畑の管理、ワインの醸造> 高接ぎとその特徴(参考記事: grafting(=接ぎ木

ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは?

ブドウ樹は、その土地に合わせて様々な形をしています。このブドウ樹の形は「仕立て」と呼ばれ、休眠期の剪定によって整えられます。 例えば、ボルドーやブルゴーニュでは針金と柱を用いて枝を地面と垂直方向に伸ばす「垣根仕立て」が多く採用されています。 一方で日本では、ブドウや葉を棚の天面に広げる棚仕立て(Pergola ペルゴラ)が多く採用されています。 このような仕立てや選定は、気温、日照、水、土壌の栄養分などのブドウ樹が必要とする要素や、ブドウ畑の機械の使用などを考慮して、そのブドウ畑に最適なものが選ばれます。 WSETレベル3では、この「仕立て」、「剪定」について比較的しっかりと学ぶのですが、ブドウ畑に馴染みのない私にとっては少し理解が難しい部分でした。 特に私が混乱してしまったのは、「仕立て(training)」と「剪定(pruning)」の違いでした。両者はお互いに深い関係があり、テキストの説明だけでは直感的にわかりにくかったので、個人的に図などを利用してまとめてみました。 (関連記事:t rellis の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) <仕立てと剪定の違い> WSETテキストによれば「仕立て」と「剪定」は次のように説明されています。 「ブドウ樹の整枝・仕立てとは一般に株の形状のことをいい、大きく分けて、株仕立てとコルドン仕立ての二つに分類できる。」(株…ブドウ樹で一年以上経っている木質部のこと) 「剪定とは、冬または生育期間中に、望ましくない葉や長梢、株を除去することである。剪定によって樹の形が決まり、大きさが制限される。」 つまり、仕立てとは「ブドウ樹の形」を意味し、剪定とはその「ブドウ樹の形をつくるための作業」ということになります。 <仕立てと剪定の種類> 「仕立て」は株(一年以上経っている木質部)の形によって大きく「株仕立て(head training)」と「コルドン仕立て(cordon training)」の二つに分類ができるようです。 「株仕立て」は株の部分が比較的小さいのに対して、「コルドン仕立て」はコルドンと呼ばれる腕枝があるのが特徴です。コルドンは通常1~2本ですが、4本以上のコルドンを持つ「大木仕立て(big vine)」と呼ばれるものもあるようです。

良いワインの条件とは?WSETのBLIC

ワインの 「品質レベル」 を学ぶことは、WSETのカリキュラムに従ってワインを学ぶ醍醐味の1つだと思います。 「品質レベル」 とは、その ワインの品質の高さ です。つまり、良いワインなのか、そうではないワインなのかということです。 WSETには「品質レベル」を評価する考え方として、「BLIC」という方法があるそうです。 BLICとは、Balance(バランス), Length(余韻), Intensity(凝縮度), Complexity(複雑さ)の頭文字です。 一般に、 これら4つの評価基準を全て満たしているワインは「素晴らしい(outstanding)」ワイン、3つを満たすものは「非常に良い(very good)」ワイン、2つを満たすものは「良い(good)」ワイン、1つしか満たさないものは「妥当な(acceptable)」ワインと言われるようです。そして、1つも満たさないものは「悪い(poor)」ワインです。 (※これは1つのガイドラインであって、必ずしもこの点数だけで厳密にはこの点数だけでワインの評価はできないそうです) 私もWSETを通してこの考え方を学びましたが、「なるほど!便利!わかりやすい!」と思いました。 しかし、実際にそれを実践しようとするとなかなかわかりにくかった部分もあったので、個人的な感想を紹介したいと思います。 Balance まず1つめは、4つの評価基準のうち、もっとも基本的な基準の 「バランス」 です。この「バランス」を満たしていない場合、ほとんどのワインは「悪い」ワインとみなされてしまいます。 バランスとは、例えば、次のようなポイントで評価がされるようです。 ・(果実味+糖分) vs (酸味+タンニン)はバランスがとれているか? ・甘味、酸味、タンニン、アルコールのいずれかが突出していないか? ・オークの香りが突出していないか? WSETをやり始めたころは、何が「正しいバランスなのか?」を判断することがとても大変でした。それはWSETを始めるまでに、あまりワインの品質について考えることがなかったからです。 しかし、いくつもテイスティングを重ねて、良いワインと言われるものをいくつか味わって、なんとなく「バランス」というものがわかってきたような気がしました。 多くのワインがバランスを満たしていると思うのですが、個人的には... ・寒い地

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ワインから醤油の香りを感じたことはないでしょうか? 私は時々、フルボディの赤ワインから醤油を連想させる香りを感じることがありました。 特にある種のシラーワインの香りをとると、どうしても醤油にしか感じられないことが何度かありました。 しかし、日本由来の調味料である「醤油」など、ワインの表現として役に立つことはないだろうと、ずっと自分の心にだけとどめておきました…。 それから暫くたって、先日あるウェブサイトで「醤油(Soy sauce)」がテイスティング用語として説明されているのを見つけて驚きました! それが時々参考にしている「Decanter」のこのページ( https://www.decanter.com/learn/advice/understand-tasting-notes-decoded-344920/ )。「Fermentation / Winemaking(発酵/ワイン醸造)」のカテゴリのテイスティング用語として、なんと!「Soy sauce」が説明されていました。 このページによれば、醤油は肉のような旨味を表す表現用語であり、一般的に辛口でフルボディの赤ワインで、酸味が強く、樽熟成が進んでいるものを表すようです。例えば、リオハのテンプラニーリョや、ピエモンテのバルベーラ、サンジョヴェーゼを用いたキアンティなどです。 醤油の旨味は発酵中にタンパク質が分解されることで生まれます。ワイン醸造においても、同様に、ブドウのタンパク質が酵母の働きで分解され、この旨味の風味が生まれると考えられているようです。 このページではシラーのワインは例としてあげられていませんでしたが、辛口、フルボディ、赤ワイン、酸味が強い、という条件を満たしていたために、醤油の風味が感じられたのかもしれません。

WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ?

ある程度、体系的にワインの事を学びたいと思ったらワインの資格取得はおすすめです。 資格を取得するためには決められた範囲を満遍なく学ばなければならないために、試験勉強を終えた頃にはしっかりと 体系立ったワインの知識 が頭の中に残ります。 メジャーなワイン資格といえば何と言っても、日本ソムリエ協会(JSA)の運営する ソムリエ・ワインエキスパート試験 。これはおそらく日本でもっとも有名なワイン資格です。大雑把に言うと、ソムリエ試験はソムリエ向け、ワインエキスパートは私のようなそれ以外の受験者向けです。 そしてもう一つ、世界的にメジャーなワイン資格といえば、 WSET 。この資格はレベル1〜4までありますが、JSAソムリエ・ワインエキスパート資格と同等レベルと言われるのはWSETレベル3です。WSETレベル3は、レベル2を取得していなくても取得が可能ですが、レベル4を取得するにはレベル3の取得が必須です。 私はこの「JSAワインエキスパート」と「WSETレベル3」の両方を受験しましたが、実際に経験をしてみて様々な違いを感じました。 違いは様々ありますが、一番違いを感じたのは学習内容。 ・JSAワインエキスパート=膨大な情報の詰め込み ・WSET=なぜ?なぜ?なぜ?を突き詰める こんなイメージです。 JSAワインエキスパートではとにかくワインの名前や、世界の地理、 ワインの色、品種、格付けなど覚えることが盛りだくさんです。 代表的な例は、ボルドーメドックの格付け1級〜5級を全て覚えなければならないことです。 一方、WSETでは覚えることは各地、各国の代表的な産地やワインくらい。 その反面、 なぜそこでそのようなワインが作られていて、 なぜそのようなブドウが作られているのか? なぜ、そのようなブドウ栽培方法がとられているのか? など、ひたすら理由を追求して、試験ではそれを文章で説明しなければなりません。 この2つは、 ・「知識の幅」 (JSA) ・「知識の深さ」 (WSET) というそれぞれの強みがあるために、 両方学ぶ事で一段とワインへの理解が深まります。 私は、JSAワインエキスパートを合格した後にWSETを受講したのですが、 JSAで詰め込みで覚

ワインから感じられるバナナの香りとは?

特定のワインはバナナの香りを持っていると言われます。 例えば、マセラシオン・カルボニック製法で造られたボージョレワイン、南アフリカのピノタージュ、スペインのガリシア地方で造られるアルバリーニョなどが該当します。 バナナの香りの元となる化学物質は酢酸イソアミル(isoamyl acetate)と呼ばれるエステルです。この物質は、マセラシオン・カルボニックの副産物として、または、通常のアルコール発酵において酵母から発生すると言われています。酢酸イソアミルの香りは、洋ナシや風船ガムの香りとも形容されます。 (関連記事: 【ワインの表現用語】Pear(洋ナシ)、Pear drop(洋ナシ香味のキャンディー)の香りとは? ) 酢酸イソアミルに代表されるワイン中のエステルは、特に低温(例えば15°C前後)で発酵された場合に多く発生すると言われています。 エステルは、ワインにフレッシュでフルーティなアロをもたらすために、若いスタイルのワイン、特に白ワインには欠かせないと言われています。 そのため、多くの白ワインでは赤ワインよりも低い発酵温度が好まれるとも言われます。 反対に、白ワインの中でもフレッシュでフルーティーな香りが好まれないワインでは、やや高めの発酵温度(例えば、17~25°Cなど)で発酵を行い、エステルの生成が抑制されます。