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シラー/シラーズの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

最近は、様々なブドウ品種についての産地による味わいの違いを中心にテイスティングを行っていますが、今回はシラー/シラーズに関してです。



シラー/シラーズは世界中で栽培される国際品種の黒ブドウです。フランスでは「シラー」、オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれています。


シラー/シラーズから造られる一般的なワインの特徴は次の通りです:



・色濃いワインになる(果皮が厚く、色濃く、顆粒が小さいため)

・中程度から高いレベルのタンニンと、中程度の酸味を持つ

・通常フルボディのワインとなり、黒系果実(ブラックベリー)やダークチョコレートの特徴を持つ

・冷涼地域では、ブドウが完熟しない

・温暖地域では、草、燻製肉、黒コショウのニュアンスを持つ

・暑い地域では、より甘いスパイス(リコリス)の香りを持つ

・熟成により、皮革、湿った葉、土の香りを持つ

・多くのシラーワインはオークの香りを持つ(樽熟成や、オークチップやオーク板の利用による)



続いて、主なシラー/シラーズの産地について、主なワインの特徴をまとめてみました。今回も、独断や偏見が含まれます。



さらに、実際のテイスティングを通して、味わいを確認していきたいと思います。

今回用意をしたワインは次の通りです。


ワイン①:E.guigal Crozes Hermitage Rouge 2018(クローズ・エルミタージュ [仏])

ワイン②:E.Guigal Hermitage Rouge (エルミタージュ [仏])

ワイン③:Hidden Pearl Shiraz Berton Vineyards Pty Ltd 2020 (低価格オーストラリアワイン)

ワイン④:Village Shiraz Yering Station 2017 (ヤラヴァレー [豪])

ワイン⑤:Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 (バロッサヴァレー [豪])

ワイン⑥:Hawkes Bay Syrah Cooper‘s Creek Vinyards 2015 (ホークスベイ [NZ])


フランス・ローヌ産2種類と、オーストラリア産3種類、ニュージーランド産1種類です。









テイスティング


ワイン①:E.guigal Crozes Hermitage Rouge 2018(クローズ・エルミタージュ [仏])




北ローヌはクローズ・エルミタージュのシラーです。

クローズ・エルミタージュは、北ローヌでは最大面積のAOCであり、比較的平らな畑が多いため機械収穫も可能であり、比較的手ごろな値段で手に入るワインです。

しかし、土壌は比較的肥沃であり、日照も急斜面ほど得られないために、ブドウの凝縮度は他の北ローヌのAOCに及びません。そのため、ワインの中には高いブドウの成熟度を感じられないものも見受けられます。

このワインも、そのようなクローズ・エルミタージュの特徴的なワインの1つだと思います。

外観は濃い目のルビー色で、シラーの色素の強さが出ています。若いワインの特徴として、やや紫がかった色合いも感じられます。

香りは中程度か、やや弱めの中程度です。香りの特徴は、黒系果実(ブラックチェリー、カシス)スパイス(黒コショウ)の香りが際立ちます。少しだけ、草のような香りも感じられます。

印象としては、また香りが十分に開いていない未熟なブドウを連想させる香りです。シラーの深い黒系果実の香りが、未熟なブドウの青い香りと合わさって、黒コショウの香りを作り出しているように感じられます。黒コショウの香りは、比較的涼しい地域のシラーワインに現れると言われますが、こう考えるととても合点がいきます。

樽香はあまり感じられません。流通元の情報によれば(https://order.luc-corp.co.jp/shop/g/g10200002103/)、大樽で15か月の樽熟成なので、樽香が感じられないのも納得です。

味わいは、辛口で、高い酸味と、未熟な収斂性のあるやや高めのタンニン、高めのアルコール度(14.0%)を持ち、ミディアムボディです。

おおむね当初の予想通りの味わいですが、アルコール度はやや高めです。シラーは比較的アルコール度が高くなりがちな品種なのかもしれません。

高い酸味と、未熟なタンニンは、北ローヌの成熟度の高くないブドウから造られるシラーワインの特徴だと思います。アルコール度は高いのですが、果実の凝縮度が低いために、ボディはミディアム止まりです。そのため、余韻もかなり短めです。

クローズ・エルミタージュの(特に手頃な価格の)ワインの特徴は、このようにシラーの未熟さと、荒々しさが現れたワインなのではないかと思いました。




ワイン②:E.Guigal Hermitage Rouge 2009 (エルミタージュ [仏])



北ローヌはエルミタージュのシラーワインです。

栽培エリアは、クローズ・エルミタージュの10分の1にも届かない小さいアペラシオンです。

石の多い南向きの土壌で、ほとんどの作業が手作業で行われ、ワインの価格は高めです。しかし、成熟度の高いブドウから造られるワインは、非常に高い評価を集めています。

外観は、濃いルビー色で、シラーの特徴が現れています。

香りの強さは強く、赤系果実(赤プラム)、黒系果実(ブルーベリー、ブラックチェリー)などの果実の香りに加えて、甘いスパイス(ヴァニラ、リコリス)の香りがしっかりと感じられます。また、スミレのような華やかな香りも感じられます。

香りがとても閉じていると感じられたクローズ・エルミタージュと異なり、こちらはずっと開いた果実の香りが感じられます。また、その香りとバランスをとるように、樽由来の甘いスパイスの香りがしっかり加えられています。フランスらしい、とてもエレガントな樽香です。

製造元の情報によれば(https://www.guigal.com/en/vins.php?id_millesime=10&id_produit=14)、新樽比率が50%で、36か月の小樽熟成が行われているので、しっかりとした樽香にも納得です。

味わいは、辛口で、酸味は高く、スムーズなミディアム(+)のタンニン、高いアルコール度(14.0%)、フルボディです。果実の凝縮度がしっかりと感じられ、余韻が長く感じられるとても品質の高いワインです。

アルコール度は当初の予想よりもやや高めです。また、香りについてはクローズ・エルミタージュのようにシラーの特徴である黒コショウの香りは感じられません。これはブドウの成熟度が高いために、暑い地域の特徴である甘いスパイスの香りにとって代わられたのかもしれません。

エルミタージュのシラーワインは、クローズ・エルミタージュとは大きく異なり、ニューワールド産のようなより暑い地域のシラーの特徴(フルボディ、熟したタンニン、甘いスパイス)がでていると思いました。

エルミタージュのワインであることを見抜くヒントは、エレガントな甘い樽の香りと、高い酸味にあるのではないかと思います。





ワイン③:Hidden Pearl Shiraz Berton Vineyards Pty Ltd 2020 (低価格オーストラリアワイン)




サウス・イースタン・オーストラリアGIのシラーズワインです。

「サウス・イースタン・オーストラリアGI」はオーストラリアのGI階層の中で最も広域な階層である「Zone」に属するGIです。このGIに使われるブドウは、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州、南オーストラリア州、クイーンズランド州などの複数の州をまたいだ広域から集められます。

ブドウの多くは暑い地域で栽培されるため、このGIのワインの多くは、熟したフルーツの香りと、高いアルコール度、低めの酸味、ミディアムボディを持つことが特徴であると言われています。このワインも同様の特徴を持ったワインです。

まず外観は、中程度のルビー色です。

香りの強さはミディアム(+)程度で、黒系果実の香り(カシス)に加え、乾燥果実(プルーン)や煮込んだ果実の香り(ブルーベリージャム)が感じられます。また酸化を占めすキャラメルのような香りも感じられますが、これは開けてから少し時間がたったために酸化をしてしまったのだと思います。全体的に香りはいたってシンプルです。

味わいは、辛口で、酸味は中程度、成熟したミディアム(+)のタンニン、高アルコール度(14.0%)の特徴を持ちます。アルコール度は高いのですが果実の凝縮度がそれほど感じられないために、ボディはミディアム程度です。余韻もそれほど長くは感じられません。

全体的な香りや味わいは、当初予想をしていた通りです。

香りがシンプルでシラーズの特徴的な香りはあまり感じられないために、ブラインドで出されたら品種の特定は難しそうです。しかし、暑い地域の黒系果実の特徴を持つワインであることはわかるので、シラーかカベルネソーヴィニヨンまでは割り出せそうです。

フルーティーで、ボディが軽めの、シンプルな香りの飲みやすいワインです。




ワイン④:Village Shiraz Yering Station 2017 (ヤラヴァレー [豪])


オーストラリアはヤラヴァレーGIのシラーズです。

ヤラヴァレーは、全体的に暑い気候を持つオーストラリアの中でも比較的涼しい気候を持つ地域です。冷涼地域から温暖地域までが含まれており、中程度から高価格帯のワインが造られることで有名な産地です。

シラーズは主に温暖地域で造られますが、それでも後述のバロッサヴァレーのものと比べると、よりエレガントなスタイルのものが造られます。

まずワインの外観ですが、中程度からやや濃い目のルビー色です。

香りの強さはミディアム(+)で、黒系果実(ブラックベリー、ブラックチェリー、ブラックプラム)の香りに、甘いスパイス(リコリス)と樽香(ヴァニラ)の香りが感じられます。また、黒コショウや青い香り(ユーカリ)の香りも感じられます。

味わいは辛口で、ミディアム(+)程度の酸味、成熟したミディアム(+)のタンニン、高いアルコール度(14.0%)、ミディアム(+)くらいです。果実味の凝縮度がしっかりと感じられ、余韻はやや長めです。

香りや味わいは、当初予定していたものとそれほど大きく異なる部分はありませんでした。オーストラリアでも比較的涼しい地域で造られるため、ブラックペッパーや、やや草っぽい香りが出るのが特徴なのではないかと思いました。

それでも北ローヌのシラーに比べると、果実やタンニンはしっかりと成熟をしている印象です。特に、クローズエルミタージュのようなタンニンの収斂性はまったく感じられませんでした。しかし、後述のバロッサヴァレーほどの果実の凝縮度は感じられませんでした。




ワイン⑤:Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 (バロッサヴァレー [豪])



オーストラリアはバロッサ・ヴァレーのシラーズです。

バロッサヴァレーはオーストラリアのシラーズの産地の中でも比較的暖かい地域であり、フルボディで、アルコール度が高く、タンニンの豊富なシラーズワインが造られます。

このワインの外観は、濃いルービー色です。

香りは中程度よりやや強めで、黒系果実(カシス、ブラックプラム)の香りが強く感じられます。黒系果実の高い成熟度によって、タバコや、土、湿った葉などの、非常に深みのある香りまで感じられます。また、やや甘いリコリスの香りも感じます。

樽香はそれほど明らかには感じられません。新樽比率はもしかしたら高くないのかもしれません。

味わいは、辛口で、酸味はミディアム(+)で、熟したタンニンレベルは高く、アルコール度も高く(14.5%)、ボディはフルボディです。余韻はやや長く感じられます。

バロッサヴァレーのシラーズの一番の特徴は、非常に熟した深い黒系果実の香りと、高いアルコール度、フルボディだと思います。ここまで熟したシラーズのワインはなかなかないと思います。

おおむね当初の予想通りのワインですが、唯一樽香があまり感じられなかったのが予想外でした。これは、もしかしたら同じ産地でもワインの品質やタイプで異なるのかもしれません。




ワイン⑥:Hawkes Bay Syrah Cooper‘s Creek Vinyards 2015 (ホークスベイ [NZ])



ニュージーランドはホークスベイのシラーです。

ニュージーランド産のシラーの産地としては有名であり、国内のシラーの栽培量の75%を占めるそうです。ボルドーに似た温暖な海洋性気候ですが、シラーは石の多い暖かい畑で栽培されることが多いようです。

ワインの特徴は、バロッサヴァレーよりはヤラヴァレーに近い、ミディアム~ミディアム(+)ボディのワインのようです。

まず、ワインの外観ですが、シラーにしてはやや薄めの中程度のルビー色です。

香りは黒系果実(ブラックベリー、ブラックチェリー)の香りに、スパイスの香り(黒コショウ、ヴァニラ、リコリス)がワイン全体を占めています。ニューワールドのワインの中ではやや涼しい地域の特徴が現れていると思います。

味わいは辛口で、高い酸味、ミディアム(+)の熟したタンニン、中程度のアルコール(13.0%)、ミディアムボディくらいです。果実の凝縮度が感じられ、余韻はやや長めです。

ニューワールドのワインにしては、ボディが軽めで、酸味が強く、アルコールがやや軽めであるのが特徴であると感じました。フランス産のものに近い印象ですが、タンニンは十分に成熟しています。

予測としてはヤラヴァレーのシラーズに近い印象を持っていましたが、ボディは同じくらいのミディアム(+)ボディでした。ただし香りは、ヤラヴァレーのものに比べると、やや深みがある反面華やかさに欠ける印象でした。





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醸造法で分けるとワインには次の4つのタイプがあるのですが、 ① Still wine (スティルワイン) ② Sparkling wine (スパークリングワイン) ③ Fortified wine (フォーティファイドワイン/ 酒精強化ワイン) ④ Flavored wine (フレーヴァードワイン) VDNとVDLは、フランスを代表するフォーティファイドワイン(③)として登場します。 VDNはVins Doux Naturels (ヴァン・ドゥー・ナチュレル = 天然甘口ワイン)、VDLはVins de Liqueurs (ヴァン・ド・リキュール = リキュールワイン)の略称です。 VDNの代表的なワインは「ミュスカ・ボーム・ド・ヴニーズ」で、一方、VDLは「ピノー・デ・シャラント」などです。 名前も似ており、紛らわしいこの2つのワインですが、大きく違うのは 酒精強化のタイミング です。 酒精強化とは、ワインにコクや保存性を持たせるために醸造中にブランデーやアルコールを添加する処理のことです。 VDNでは酒精強化を 果汁の発酵中 に行うのに対して、VDLでは 未発酵の状態 (一部例外もある)で行います。 主なフォーティファイドワインの酒精強化のタイミングをまとめてみました。 VDNでは酒精強化が行われることで、ワイン酵母が活動できなくなりアルコール発酵はこのタイミングで止まります(このことを、 Mutage ミュタージュ といいます)。甘味を残すために醗酵を途中で止めるという製法は、一般的な甘口ワインと同様です(ただし、一般の甘口ワインでは、発酵を止めるための方法としてアルコール添加は行いません)。 このことから、VDNの「天然の糖から造られた 甘口ワイン 」というネーミングが何となく関連付けられます。 一方で、VDLは基本的に、ブドウジュースにアルコールを加えただけの飲み物です。ワインの定義を「ブドウの果汁を発酵させたアルコール飲料」とすると、ワインと言えるかどうかも怪しいです。むしろ、蒸留酒に風味成分や甘味を加えるリキュールに近い製法です。 これが理由ではありませんが、VDLの名前に リキュール が含まれていると、...

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

JSA試験、WSET試験を通して酒精強化ワインであるシェリー(Sherry)を学んできましたが、ずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、「 パロ・コルタド・シェリーとは何なのか? 」です。 シェリーとは、スペイン・アンダルシア州カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとその周辺地域で生産される酒精強化ワインのことで、ポート・ワイン(ポルトガル)、マデイラ・ワイン(ポルトガル)とともに、著名な酒精強化ワインと言われています。 シェリーには、フィノ(Fino)/マンサ二ーリャ(Manzanilla)、オロロソ(Oloroso)、アモンティリャード(Almontillado)、 パロ・コルタド(Palo Cortado) 、ペドロヒメネス(Pedro Ximenez)など様々な種類があります。 しかし、JSA、WSETどちらのテキストにおいても、 パロ・コルタド に関する記述 はとても少なく、製法に関する記述もなく、漠然とその特徴が書かれているだけでした。 その特徴は、 ・希少であること ・アモンティリャード(Amontillado)の香りを持つが、味はオロロソ(Oloroso)のボディとこくを持つ という2点だけです。 ずっと疑問に思っていたことを解決すべく、製法を中心にパロ・コルタドについて調べてみました。 参考にしたのは、次のサイトです: https://www.sherrynotes.com/sherry-types/palo-cortado/ https://www.sherrynotes.com/2015/background/palo-cortado-mystery/ まずは、パロ・コルタドの発祥から。パロ・コルタドは、もともとフィノとしては不適合として除外された樽からできたそうです。 <パロ・コルタドの発祥> ------------------------------------------------------------------------ ・パロ・コルタドは、もともとフィノ(Fino)の製造から偶然生まれたワインと言われている。 ・フィノシェリーでは、樽での熟成中にフロールと呼ばれる産膜酵母が発生し、フロールのもとで熟成される。しかし、フィノ樽の中には...

ソノマ・ナパ カウンティのサブリージョン(AVA)の私的な覚え方【語呂合わせ】

アメリカ、カリフォルニアの暗記の難関と言えば、ソノマ・ナパのサブリージョン(AVA)の暗記です。 正攻法で覚えると結構大変なので、ポイントを絞った覚え方を考えてみました。 (参考記事: ナパヴァレーAVAの覚え方を正攻法で考えてみる ) そのポイントとは、「 そのAVAが、ナパ、ソノマどちらに属するのか? 」ということです。 あるAVAが取り上げられて、「これはナパ、ソノマどちらのAVAでしょう?」という問題が結構頻出なので、個人的には結構つかえる覚え方ではないかと思っています。 ソノマと、ナパのAVAを五十音順に並べてみると、意外と頭文字が重ならないことに気が付きます。 「ア」と「チ」が頭文字のものは両者に含まれるので、「アレ」と「チョ」で覚えます。 重複する「ロスカーネロス」は超重要なので、これは自力で覚えます。 名前に「ソノマ」が含まれるものは、わざわざ頭文字を覚えるまでもないので、除外しています。 あとはこの頭文字を語呂合わせなどで覚えます。 例えば、下のように。 ソノマさえ覚えてしまえば、「ソノマ」と「ナパ」の2択の場合は、ソノマの頭文字に含まれていなければ自動的に「ナパ」であることがわかります。 一応、下はナパの頭文字の語呂合わせです。 (関連記事: JSAワインエキスパート試験6ヵ月(半年)集中勉強法 )