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ピノ・ノワールの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

今回はピノ・ノワールについて調べてみたいと思います。


まず、ピノ・ノワールワインの特徴は、次のようにまとめられると思います。



・色は淡く、タンニンは低め~中程度

・多くのワインは果実味の豊富な若いうちにのまれるが、特に品質の良いものは熟成能力を持つ

・熟成能力のあるワインはオーク樽で熟成されるが、繊細な香りが特徴であるために、新樽比率が高いと品種由来の香りが樽由来のヴァニラやトーストの香りに圧倒されてしまう


【冷涼~温暖地域の場合】

・赤系果実(イチゴ、ラズベリー、サクランボ)の香りを持つ

・熟成を経ることで、野菜や動物を連想される香り(湿った葉、キノコ、猟鳥類、肉類の香り)に発展する

・涼しすぎると、過剰な野菜の香り(キャベツ、湿った葉)の香りを持つ


【高温の気候の場合】

・過剰なジャムのような香りを持つ



ピノ・ノワールワインは世界中で製造がされていますが、主な生産地域は、「ブルゴーニュ」や「ファルツ、バーデン(独)」、「セントラル・オタゴ(NZ)」、「ソノマ、サンタバーバラ、オレゴン(米)」、「カサブランカヴァレー(チリ)」などがあげられると思います。


それぞれの地域の特徴を、ある程度独断も含めてまとめてみました。




次に、実際のワインのテイスティングを通して、各産地のワインにこのような味わいの特徴が現れているかを確認していきたいと思います。


今回用意をしたワインは次の5つです。


ワイン①:Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])


ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(ブルゴーニュ 1er Cru)


ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])


ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])


ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])





テイスティング


ワイン①: Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])



ドイツのファルツで製造されるシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)ワインです。


ファルツはドイツのワイン産地の中でも比較的暖かい地域であるために、多くの赤ワインが製造されています。


ドイツのピノノワールの特徴は、軽めのボディと、赤系果実の香り、少なめのタンニン、さらにはオーク樽熟成されるものが多いようです。このワインのこれらの特徴を持っています。


外観は淡いルビー色。


香りの強さは中程度くらいで、軽めの赤系果実の香り(サクランボ、ラズベリー)が感じられます。また、樽由来と思われるスモーキーな煙や焦がした木の香りも感じられます。しかし香りにあまり複雑さは感じられず、かなりシンプルな香りの印象です。


味わいは辛口で、酸味が高くやわらかいタンニンはミディアム(-)くらいです。アルコールは中程度の13.5%で、ボディはミディアムボディくらいです。果実味の凝縮度はあまり感じられず、余韻は比較的短めです。


ドイツのワインだったので、もう少し低めの12~13%程度のアルコール度を予想していましたが、13.5%もあったのは意外でした。


また、もう少しフルーティーでフレッシュなワインを想像していましたが、樽香がしっかりと感じ取れたことも少し意外に感じました。


このワインのテイスティングの結果から、ドイツのピノノワール(シュペートブルグンダー)の特徴は、「淡いルビー色」「軽めのボディ」「赤系果実の香り」「軽くて柔らかいタンニン」「スモーキーな樽香」なのではないかと思いました。




ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(コート・ド・ボーヌ 1er Cru [ボーヌ])



ブルゴーニュはコード・ド・ボーヌ、ボーヌ村のプルミエクリュの赤ワインです。


コート・ド・ニュイを用意したかったところですが予算の関係で、コード・ド・ボールの中から選びました。それでも世界有数の高品質なピノ・ノワールの産地であることには変わりはありません。


ブルゴーニュの高品質なピノ・ノワールと言えば、果実の凝縮度とエレガントな樽香のバランスが大きな特徴の1つですが、このワインもその特徴を持っています。


外観は、中程度の濃さのガーネット色。先ほどの若いドイツのワインに比べると、古いワインの特徴を感じます。


香りの強さは中程度で、赤系フルーツの香り(イチゴ、レッドプラム)樽香(ヴァニラ、リコリス、クローブ)の香りが感じられます。これも先ほどのドイツのワインと比べると、高い果実の成熟度が感じられます。また、その果実の香りを甘くエレガントな樽香が包んでいる印象です。


製造元によれば(http://www.albertmorot.fr/fichiers/beaune-1er-cru-les-teurons-en.pdf)、熟成はフレンチオークで14か月で、30%の新樽が使われています。


また、もう一度香りを確認してみると、土やキノコの香りも感じられます。このような湿ったようなドライハーブを感じさせる「旨味(savory)」の香りは、フレッシュな赤系果実や花の香りが酸化して、樽の香りと混合して生まれるのだと想像しました。


味わいは辛口で、ミディアム(+)の酸味、ミディアム(+)くらいのスムーズなタンニン、中程度のアルコール度(13.5%)、ミディアムボディです。果実の凝縮度の影響で、余韻はやや長めに感じられます。しかし、カリフォルニアやセントラルオタゴなどのニューワールドの地域に匹敵するような凝縮度ではありません。


酸味やや低めに感じられましたが、それ以外はおおむね事前の予想通りです。


ブルゴーニュの高品質なピノノワールの特徴は、「甘くエレガントな樽香」「中程度の香りの強さ」「高い酸味」「中程度のタンニン」「中程度のボディ」「余韻の長さ」辺りになるのではいかと思いました。




ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])



ニュージーランドのセントラル・オタゴのピノ・ノワールです。


セントラルオタゴのワインは、豊富な日照時間と、昼夜の寒暖差により、高い果実味と骨格を持つと言われています。


まず、外観は中程度の濃さのルビー色です。


香りはミディアム(+)くらいで、赤系果実(レッドプラム)の香りに加えて、黒系果実(ブラックチェリー)の香りも感じられます。ピノノワールは赤系果実の香りが中心のはずですが、これは長くて強い日光による果実の成熟度の高さに影響をしているのかもしれません。


また、樽香(クローブ、ナツメグ)や、皮革、湿った葉の香りもしっかりと感じられます。樽香はブルゴーニュのような甘いリコリスを思わせる香りではなく、より旨味の強いスパイスの香りです。


製造元によれば(https://cdn.shopify.com/s/files/1/1453/4032/files/Mt_Difficulty_Pinot_Noir_2016.pdf?11059952042993868018)、小樽で12か月の熟成を経ているようです。


味わいは、辛口で、酸味は高く、タンニンは成熟して中程度、アルコールは中程度(13.9%)で、ミディアム(+)くらいのボディです。果実の凝縮度があり、余韻はやや長めです。


予想よりもタンニンがやや低めでしたが、それ以外はおおむね予想通りです。


セントラルオタゴのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「クローブを連想させる甘くないスパイスの香り」になるのではないかと思いました。




ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])



オレゴンで最も有名なワイン産地であるウィラメット・ヴァレーのピノノワールです。


ウィラメットヴァレーは、海岸沿いの山々の間から入り込む冷たい風の影響で、オレゴンの中でも最も涼しいワイン産地の1つです。また、オレゴンはその緯度の高さから長い日照時間を得ることができ、ブドウの成熟度が高まります。このワインもそのような果実の高い成熟度を感じさせてくれます。


まず外観ですが、淡いのルビー~ガーネット色です。


赤系果実(レッドプラム、イチゴ)と黒系果実(ブラックチェリー)の両方の香りが感じられます。黒系果実の香りはセントラルオタゴと共通する日照時間の長い地域のピノノワールの特徴かもしれません。


樽香もしっかり感じられ、リコリスのような甘いスパイスと、クローブの香りが感じられます。また、熟成を経たピノノワールに感じられる湿った葉や、土の香りも感じられます。しかし、それらは少し強い樽香に隠されてしまっている印象です。


味わいは、辛口で、酸味はミディアム(+)で、タンニンはスムーズで中程度くらいです。アルコール度は中程度の13.5%で、ミディアム(+)ボディです。果実の凝縮感が感じられ、余韻はやや長めです。


香り、味わい共に予想をしていたものとそれほど大きくは変わりませんでした。


セントラル・オタゴのピノノワールに近い特徴を持っているように感じられますが、オレゴンのものは果実の香りに比べて樽香が強く感じられます。一方で、セントラルオタゴの方は、より果実の香りが強調されている気がします。製造元の情報を確認することができなかったのですが、もしかしらたオレゴンの方が新樽比率が高いのかもしれません。


まとめるとオレゴンのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「やや果実味を圧倒する樽香」になるのではないかと思いました。




ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])



カリフォルニアはソノマ、ソノマ・コーストAVAのピノノワールです。


カリフォルニアでは、フレッシュでミディアムボディのものから、より成熟した果実から造られるフルボディのものまでのピノノワールのワインが造られます。


このワインは、よりフルボディ側のワインです。


外観は、中程度のルビー色です。


香りの強さはやや強めの中程度で、赤系果実(レッドプラム)~黒系果実(ブラックチェリー)までの果実の香りを感じます。果実の高い成熟度を感じます。


樽の香りもしっかりと感じられ、ヴァニラ、シナモン、リコリスなどの香りが感じ取れます。


そしてその奥に、やや土っぽい香りも感じられます。


味わいは、辛口で、酸味は中程度で、成熟したタンニンは中程度よりやや高く感じられます。アルコール度は高く(14.5%)、ボディはフルボディです。果実の凝縮度あるために、余韻はやや長めに感じられます。


セントラルオタゴやオレゴンと比べると、それ以上の果実の成熟度が感じられます。ブラインドテイスティングをした場合、おそらくピノノワールであることがすぐにはわからないと思います。ピノノワールにしてはボディがしっかりしているので、グルナッシュと混同をしてしまうかもしれません。


事前の予測よりも、かなりフルボディのワインでした。また酸味とタンニンは予想よりもやや低めでした。


カリフォルニアのピノノワールの特徴は、果実の非常に高い成熟度(赤系+黒系果実)と、しっかりとした樽香ではないかと思いました。ただし果実の成熟度が高いために、決して樽香が果実味を圧倒しているわけではなく、良いバランスが取れています。



テイスティングのまとめ


他の品種と同様に、冷涼な地域と、比較的暖かい地域では、酸味やボディの厚みに大きな違いがありました。


しかし、比較的暖かい地域については、ワインの特徴にそれほど大きな特徴が感じられず、ブラインドテイスティングでそれぞれの違いを判別できるかは疑問でした。


これからももう少し様々なワインを試してみて、地域ごとの明らかな違いをさらに調べていく必要があると思いました。


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ワインの 「品質レベル」 を学ぶことは、WSETのカリキュラムに従ってワインを学ぶ醍醐味の1つだと思います。 「品質レベル」 とは、その ワインの品質の高さ です。つまり、良いワインなのか、そうではないワインなのかということです。 WSETには「品質レベル」を評価する考え方として、「BLIC」という方法があるそうです。 BLICとは、Balance(バランス), Length(余韻), Intensity(凝縮度), Complexity(複雑さ)の頭文字です。 一般に、 これら4つの評価基準を全て満たしているワインは「素晴らしい(outstanding)」ワイン、3つを満たすものは「非常に良い(very good)」ワイン、2つを満たすものは「良い(good)」ワイン、1つしか満たさないものは「妥当な(acceptable)」ワインと言われるようです。そして、1つも満たさないものは「悪い(poor)」ワインです。 (※これは1つのガイドラインであって、必ずしもこの点数だけで厳密にはこの点数だけでワインの評価はできないそうです) 私もWSETを通してこの考え方を学びましたが、「なるほど!便利!わかりやすい!」と思いました。 しかし、実際にそれを実践しようとするとなかなかわかりにくかった部分もあったので、個人的な感想を紹介したいと思います。 Balance まず1つめは、4つの評価基準のうち、もっとも基本的な基準の 「バランス」 です。この「バランス」を満たしていない場合、ほとんどのワインは「悪い」ワインとみなされてしまいます。 バランスとは、例えば、次のようなポイントで評価がされるようです。 ・(果実味+糖分) vs (酸味+タンニン)はバランスがとれているか? ・甘味、酸味、タンニン、アルコールのいずれかが突出していないか? ・オークの香りが突出していないか? WSETをやり始めたころは、何が「正しいバランスなのか?」を判断することがとても大変でした。それはWSETを始めるまでに、あまりワインの品質について考えることがなかったからです。 しかし、いくつもテイスティングを重ねて、良いワインと言われるものをいくつか味わって、なんとなく「バランス」というものがわかってきたような気がしました。 多くのワインがバランスを満たしていると思うのですが、個人的には... ・寒い地

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ある程度、体系的にワインの事を学びたいと思ったらワインの資格取得はおすすめです。 資格を取得するためには決められた範囲を満遍なく学ばなければならないために、試験勉強を終えた頃にはしっかりと 体系立ったワインの知識 が頭の中に残ります。 メジャーなワイン資格といえば何と言っても、日本ソムリエ協会(JSA)の運営する ソムリエ・ワインエキスパート試験 。これはおそらく日本でもっとも有名なワイン資格です。大雑把に言うと、ソムリエ試験はソムリエ向け、ワインエキスパートは私のようなそれ以外の受験者向けです。 そしてもう一つ、世界的にメジャーなワイン資格といえば、 WSET 。この資格はレベル1〜4までありますが、JSAソムリエ・ワインエキスパート資格と同等レベルと言われるのはWSETレベル3です。WSETレベル3は、レベル2を取得していなくても取得が可能ですが、レベル4を取得するにはレベル3の取得が必須です。 私はこの「JSAワインエキスパート」と「WSETレベル3」の両方を受験しましたが、実際に経験をしてみて様々な違いを感じました。 違いは様々ありますが、一番違いを感じたのは学習内容。 ・JSAワインエキスパート=膨大な情報の詰め込み ・WSET=なぜ?なぜ?なぜ?を突き詰める こんなイメージです。 JSAワインエキスパートではとにかくワインの名前や、世界の地理、 ワインの色、品種、格付けなど覚えることが盛りだくさんです。 代表的な例は、ボルドーメドックの格付け1級〜5級を全て覚えなければならないことです。 一方、WSETでは覚えることは各地、各国の代表的な産地やワインくらい。 その反面、 なぜそこでそのようなワインが作られていて、 なぜそのようなブドウが作られているのか? なぜ、そのようなブドウ栽培方法がとられているのか? など、ひたすら理由を追求して、試験ではそれを文章で説明しなければなりません。 この2つは、 ・「知識の幅」 (JSA) ・「知識の深さ」 (WSET) というそれぞれの強みがあるために、 両方学ぶ事で一段とワインへの理解が深まります。 私は、JSAワインエキスパートを合格した後にWSETを受講したのですが、 JSAで詰め込みで覚

ワインから感じられるバナナの香りとは?

特定のワインはバナナの香りを持っていると言われます。 例えば、マセラシオン・カルボニック製法で造られたボージョレワイン、南アフリカのピノタージュ、スペインのガリシア地方で造られるアルバリーニョなどが該当します。 バナナの香りの元となる化学物質は酢酸イソアミル(isoamyl acetate)と呼ばれるエステルです。この物質は、マセラシオン・カルボニックの副産物として、または、通常のアルコール発酵において酵母から発生すると言われています。酢酸イソアミルの香りは、洋ナシや風船ガムの香りとも形容されます。 (関連記事: 【ワインの表現用語】Pear(洋ナシ)、Pear drop(洋ナシ香味のキャンディー)の香りとは? ) 酢酸イソアミルに代表されるワイン中のエステルは、特に低温(例えば15°C前後)で発酵された場合に多く発生すると言われています。 エステルは、ワインにフレッシュでフルーティなアロをもたらすために、若いスタイルのワイン、特に白ワインには欠かせないと言われています。 そのため、多くの白ワインでは赤ワインよりも低い発酵温度が好まれるとも言われます。 反対に、白ワインの中でもフレッシュでフルーティーな香りが好まれないワインでは、やや高めの発酵温度(例えば、17~25°Cなど)で発酵を行い、エステルの生成が抑制されます。