スキップしてメイン コンテンツに移動

最新記事

発酵温度によるワインスタイルの違いのまとめ

マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>

ピノ・ノワールの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

今回はピノ・ノワールについて調べてみたいと思います。


まず、ピノ・ノワールワインの特徴は、次のようにまとめられると思います。



・色は淡く、タンニンは低め~中程度

・多くのワインは果実味の豊富な若いうちにのまれるが、特に品質の良いものは熟成能力を持つ

・熟成能力のあるワインはオーク樽で熟成されるが、繊細な香りが特徴であるために、新樽比率が高いと品種由来の香りが樽由来のヴァニラやトーストの香りに圧倒されてしまう


【冷涼~温暖地域の場合】

・赤系果実(イチゴ、ラズベリー、サクランボ)の香りを持つ

・熟成を経ることで、野菜や動物を連想される香り(湿った葉、キノコ、猟鳥類、肉類の香り)に発展する

・涼しすぎると、過剰な野菜の香り(キャベツ、湿った葉)の香りを持つ


【高温の気候の場合】

・過剰なジャムのような香りを持つ



ピノ・ノワールワインは世界中で製造がされていますが、主な生産地域は、「ブルゴーニュ」や「ファルツ、バーデン(独)」、「セントラル・オタゴ(NZ)」、「ソノマ、サンタバーバラ、オレゴン(米)」、「カサブランカヴァレー(チリ)」などがあげられると思います。


それぞれの地域の特徴を、ある程度独断も含めてまとめてみました。




次に、実際のワインのテイスティングを通して、各産地のワインにこのような味わいの特徴が現れているかを確認していきたいと思います。


今回用意をしたワインは次の5つです。


ワイン①:Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])


ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(ブルゴーニュ 1er Cru)


ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])


ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])


ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])





テイスティング


ワイン①: Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])



ドイツのファルツで製造されるシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)ワインです。


ファルツはドイツのワイン産地の中でも比較的暖かい地域であるために、多くの赤ワインが製造されています。


ドイツのピノノワールの特徴は、軽めのボディと、赤系果実の香り、少なめのタンニン、さらにはオーク樽熟成されるものが多いようです。このワインのこれらの特徴を持っています。


外観は淡いルビー色。


香りの強さは中程度くらいで、軽めの赤系果実の香り(サクランボ、ラズベリー)が感じられます。また、樽由来と思われるスモーキーな煙や焦がした木の香りも感じられます。しかし香りにあまり複雑さは感じられず、かなりシンプルな香りの印象です。


味わいは辛口で、酸味が高くやわらかいタンニンはミディアム(-)くらいです。アルコールは中程度の13.5%で、ボディはミディアムボディくらいです。果実味の凝縮度はあまり感じられず、余韻は比較的短めです。


ドイツのワインだったので、もう少し低めの12~13%程度のアルコール度を予想していましたが、13.5%もあったのは意外でした。


また、もう少しフルーティーでフレッシュなワインを想像していましたが、樽香がしっかりと感じ取れたことも少し意外に感じました。


このワインのテイスティングの結果から、ドイツのピノノワール(シュペートブルグンダー)の特徴は、「淡いルビー色」「軽めのボディ」「赤系果実の香り」「軽くて柔らかいタンニン」「スモーキーな樽香」なのではないかと思いました。




ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(コート・ド・ボーヌ 1er Cru [ボーヌ])



ブルゴーニュはコード・ド・ボーヌ、ボーヌ村のプルミエクリュの赤ワインです。


コート・ド・ニュイを用意したかったところですが予算の関係で、コード・ド・ボールの中から選びました。それでも世界有数の高品質なピノ・ノワールの産地であることには変わりはありません。


ブルゴーニュの高品質なピノ・ノワールと言えば、果実の凝縮度とエレガントな樽香のバランスが大きな特徴の1つですが、このワインもその特徴を持っています。


外観は、中程度の濃さのガーネット色。先ほどの若いドイツのワインに比べると、古いワインの特徴を感じます。


香りの強さは中程度で、赤系フルーツの香り(イチゴ、レッドプラム)樽香(ヴァニラ、リコリス、クローブ)の香りが感じられます。これも先ほどのドイツのワインと比べると、高い果実の成熟度が感じられます。また、その果実の香りを甘くエレガントな樽香が包んでいる印象です。


製造元によれば(http://www.albertmorot.fr/fichiers/beaune-1er-cru-les-teurons-en.pdf)、熟成はフレンチオークで14か月で、30%の新樽が使われています。


また、もう一度香りを確認してみると、土やキノコの香りも感じられます。このような湿ったようなドライハーブを感じさせる「旨味(savory)」の香りは、フレッシュな赤系果実や花の香りが酸化して、樽の香りと混合して生まれるのだと想像しました。


味わいは辛口で、ミディアム(+)の酸味、ミディアム(+)くらいのスムーズなタンニン、中程度のアルコール度(13.5%)、ミディアムボディです。果実の凝縮度の影響で、余韻はやや長めに感じられます。しかし、カリフォルニアやセントラルオタゴなどのニューワールドの地域に匹敵するような凝縮度ではありません。


酸味やや低めに感じられましたが、それ以外はおおむね事前の予想通りです。


ブルゴーニュの高品質なピノノワールの特徴は、「甘くエレガントな樽香」「中程度の香りの強さ」「高い酸味」「中程度のタンニン」「中程度のボディ」「余韻の長さ」辺りになるのではいかと思いました。




ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])



ニュージーランドのセントラル・オタゴのピノ・ノワールです。


セントラルオタゴのワインは、豊富な日照時間と、昼夜の寒暖差により、高い果実味と骨格を持つと言われています。


まず、外観は中程度の濃さのルビー色です。


香りはミディアム(+)くらいで、赤系果実(レッドプラム)の香りに加えて、黒系果実(ブラックチェリー)の香りも感じられます。ピノノワールは赤系果実の香りが中心のはずですが、これは長くて強い日光による果実の成熟度の高さに影響をしているのかもしれません。


また、樽香(クローブ、ナツメグ)や、皮革、湿った葉の香りもしっかりと感じられます。樽香はブルゴーニュのような甘いリコリスを思わせる香りではなく、より旨味の強いスパイスの香りです。


製造元によれば(https://cdn.shopify.com/s/files/1/1453/4032/files/Mt_Difficulty_Pinot_Noir_2016.pdf?11059952042993868018)、小樽で12か月の熟成を経ているようです。


味わいは、辛口で、酸味は高く、タンニンは成熟して中程度、アルコールは中程度(13.9%)で、ミディアム(+)くらいのボディです。果実の凝縮度があり、余韻はやや長めです。


予想よりもタンニンがやや低めでしたが、それ以外はおおむね予想通りです。


セントラルオタゴのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「クローブを連想させる甘くないスパイスの香り」になるのではないかと思いました。




ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])



オレゴンで最も有名なワイン産地であるウィラメット・ヴァレーのピノノワールです。


ウィラメットヴァレーは、海岸沿いの山々の間から入り込む冷たい風の影響で、オレゴンの中でも最も涼しいワイン産地の1つです。また、オレゴンはその緯度の高さから長い日照時間を得ることができ、ブドウの成熟度が高まります。このワインもそのような果実の高い成熟度を感じさせてくれます。


まず外観ですが、淡いのルビー~ガーネット色です。


赤系果実(レッドプラム、イチゴ)と黒系果実(ブラックチェリー)の両方の香りが感じられます。黒系果実の香りはセントラルオタゴと共通する日照時間の長い地域のピノノワールの特徴かもしれません。


樽香もしっかり感じられ、リコリスのような甘いスパイスと、クローブの香りが感じられます。また、熟成を経たピノノワールに感じられる湿った葉や、土の香りも感じられます。しかし、それらは少し強い樽香に隠されてしまっている印象です。


味わいは、辛口で、酸味はミディアム(+)で、タンニンはスムーズで中程度くらいです。アルコール度は中程度の13.5%で、ミディアム(+)ボディです。果実の凝縮感が感じられ、余韻はやや長めです。


香り、味わい共に予想をしていたものとそれほど大きくは変わりませんでした。


セントラル・オタゴのピノノワールに近い特徴を持っているように感じられますが、オレゴンのものは果実の香りに比べて樽香が強く感じられます。一方で、セントラルオタゴの方は、より果実の香りが強調されている気がします。製造元の情報を確認することができなかったのですが、もしかしらたオレゴンの方が新樽比率が高いのかもしれません。


まとめるとオレゴンのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「やや果実味を圧倒する樽香」になるのではないかと思いました。




ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])



カリフォルニアはソノマ、ソノマ・コーストAVAのピノノワールです。


カリフォルニアでは、フレッシュでミディアムボディのものから、より成熟した果実から造られるフルボディのものまでのピノノワールのワインが造られます。


このワインは、よりフルボディ側のワインです。


外観は、中程度のルビー色です。


香りの強さはやや強めの中程度で、赤系果実(レッドプラム)~黒系果実(ブラックチェリー)までの果実の香りを感じます。果実の高い成熟度を感じます。


樽の香りもしっかりと感じられ、ヴァニラ、シナモン、リコリスなどの香りが感じ取れます。


そしてその奥に、やや土っぽい香りも感じられます。


味わいは、辛口で、酸味は中程度で、成熟したタンニンは中程度よりやや高く感じられます。アルコール度は高く(14.5%)、ボディはフルボディです。果実の凝縮度あるために、余韻はやや長めに感じられます。


セントラルオタゴやオレゴンと比べると、それ以上の果実の成熟度が感じられます。ブラインドテイスティングをした場合、おそらくピノノワールであることがすぐにはわからないと思います。ピノノワールにしてはボディがしっかりしているので、グルナッシュと混同をしてしまうかもしれません。


事前の予測よりも、かなりフルボディのワインでした。また酸味とタンニンは予想よりもやや低めでした。


カリフォルニアのピノノワールの特徴は、果実の非常に高い成熟度(赤系+黒系果実)と、しっかりとした樽香ではないかと思いました。ただし果実の成熟度が高いために、決して樽香が果実味を圧倒しているわけではなく、良いバランスが取れています。



テイスティングのまとめ


他の品種と同様に、冷涼な地域と、比較的暖かい地域では、酸味やボディの厚みに大きな違いがありました。


しかし、比較的暖かい地域については、ワインの特徴にそれほど大きな特徴が感じられず、ブラインドテイスティングでそれぞれの違いを判別できるかは疑問でした。


これからももう少し様々なワインを試してみて、地域ごとの明らかな違いをさらに調べていく必要があると思いました。


よく読まれている記事

ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリットの整理

 ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。 棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。 ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。 そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が 「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」 です。 垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。 そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。 棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット 棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。 そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。 日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。 通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。 また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。 一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。 ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。 (関連記事: 棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り ) 垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット 垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。 したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の機械化」

WSETで納得!JSAで疑問だったギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い

JSAワインエキスパートを学んでいた時に、ブドウ樹の仕立て方でずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、 「ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い」 。 両者ともに世界的に広く採用されている仕立て方である「 垣根仕立て 」の代表例なのですが、 ギヨドゥブルは長梢剪定 、 コルドンロワイヤは短梢剪定 の例として紹介されていました。 (参考記事: ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは? ) それぞれぱっと見の形はすごく似ていて、その違いは、枝の太さの違いだけ。ギヨドゥブルは2本に分かれる枝が細くて、コルドンロワイヤはそれが太い。 なぜこのような似通った2つの仕立て方が用いられているのか が、当時の私にはわかりませんでした。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、ブドウの栽培方法、特に仕立て方に関してはあまり深い知識は必要なかったために、この2つの機能的な違いや、長梢剪定、短梢剪定に関する説明は試験対策講座でも省略されていました。また、当時、独自でネット検索をして色々調べてみたのですが、結局答えはわからず終いでした。 それから一年、こんな疑問があったことも忘れてしまった頃、WSETレベル3の講義を受けて この疑問を解決することができました! ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの選定の流れ WSET の講義を受けて分かったことは、次のようなこと: ギヨ・ドゥブル では、前年の新梢が一本だけ残され、その枝(長梢)が水平方向に延ばされる ギヨ・ドゥブル では、水平に伸ばされた長梢の上に、その年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル では、その年の収穫が終わったら、その年の新梢1本だけを残して、残りの枝は刈り取られる コルドン・ロワイヤ では、一昨年かそれ以前に作られた腕枝(コルドン)の上に、去年の新梢の一部(短梢)が残される コルドン・ロワイヤ では、短梢から今年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル、コルドン・ロワイヤともに 、新しいブドウの房は新梢の上にできる (ギヨ・サンプル/ドゥブルの剪定の流れ) (コルドン・ロワイヤの剪定の流れ) 仕立てが出来上がった状態では、それぞれとても似通った形になって

WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

繰り返しになりますが、WSET level3の最大の難関は記述式問題です。 (参考記事: WSET Level3 の試験構成 ) WSETの記述式問題では、出題されたテーマに対して、深く理解をしているかが問われます。 (参考記事: 一筋縄ではいかない!とてもWSET的だと思った記述式問題(問題例) ) そのため、記述式問題の基本的な対策は、WSETレベル3のテキストの読み込みと、講義ノートの見直しを主に行いました。 しかし、広大な産地全てについて、万遍無く、深く理解をするというのは途方もない作業に思われました。 さらに私の場合は英語受験だったので、日本語のようにテキストをスラスラ読むこともできるわけはなく、本試験までの日数から逆算をすると、とてもそんな時間は確保できないと思いました。 そこで記述式試験対策の方針としては、いくつか重要と思われる部分にヤマを張って、それらを重点的に勉強することにしました。「重要と思われる部分」は次のような判断基準で抜き出しました。 ・講義中に担当講師が「重要」「試験に頻出」と言っていた部分 ・サンプル問題で、何度も問われていた部分 (参考記事: WSET過去問は共有禁止!それでもWSETレベル3の試験問題の参考にしたウェブサイト ) ・複雑で、しっかり理解をしていないと説明ができないと思った部分(特に醸造工程のオプションなど) ヤマを張った部分に関しては何度もテキストを読み返して、テキストの重要ポイントは何度もノートに書きあげて英文を書く練習を続けました。 (参考記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) (関連記事: WSET試験の記述問題対策では「動詞」が重要!? ) 「重要と思われる部分」として抜き出した具体例を下に紹介します: <ワインの保管とサービス> ワインの保管方法(参考記事: ワインの保管方法 ) ワインの提供温度 (参考記事: チャートで覚えたワインのサービス温度 ) ワインのデカンティング 発泡性ワインの栓の抜き方(参考記事: 非発泡性(スパークリング)ワインの栓の抜き方 ) ワインの保存に使われる方法(参考記事: ワインの保管方法 ) <ブドウ樹の栽培、畑の管理、ワインの醸造> 高接ぎとその特徴(参考記事: grafting(=接ぎ木

ソノマ・ナパ カウンティのサブリージョン(AVA)の私的な覚え方【語呂合わせ】

アメリカ、カリフォルニアの暗記の難関と言えば、ソノマ・ナパのサブリージョン(AVA)の暗記です。 正攻法で覚えると結構大変なので、ポイントを絞った覚え方を考えてみました。 (参考記事: ナパヴァレーAVAの覚え方を正攻法で考えてみる ) そのポイントとは、「 そのAVAが、ナパ、ソノマどちらに属するのか? 」ということです。 あるAVAが取り上げられて、「これはナパ、ソノマどちらのAVAでしょう?」という問題が結構頻出なので、個人的には結構つかえる覚え方ではないかと思っています。 ソノマと、ナパのAVAを五十音順に並べてみると、意外と頭文字が重ならないことに気が付きます。 「ア」と「チ」が頭文字のものは両者に含まれるので、「アレ」と「チョ」で覚えます。 重複する「ロスカーネロス」は超重要なので、これは自力で覚えます。 名前に「ソノマ」が含まれるものは、わざわざ頭文字を覚えるまでもないので、除外しています。 あとはこの頭文字を語呂合わせなどで覚えます。 例えば、下のように。 ソノマさえ覚えてしまえば、「ソノマ」と「ナパ」の2択の場合は、ソノマの頭文字に含まれていなければ自動的に「ナパ」であることがわかります。 一応、下はナパの頭文字の語呂合わせです。 (関連記事: JSAワインエキスパート試験6ヵ月(半年)集中勉強法 )

チリの主要ワイン産地(リージョン)の覚え方【語呂合わせ】

チリの主要ワイン産地の覚え方を考えました。 チリの産地には、「リージョン」→「サブリージョン」→「ゾーン」→「エリア」の4つの階層がありますが、今回は最上位階層である「リージョン」についてです。 北から、「アタカマ」、「コキンボ」、「アコンカグア」、「セントラル」、「スール」、「アウストラル」の6つのリージョンがあります。 「チリチリ (チリ) あたまに (アタカマ) コキン (コキンボ) あかん! (アコンカグア) センター (セントラル) スルーで (スール) アウトとれん (アウストラル)」 と覚えます。 チリの産地は、アルゼンチンの産地と混同しがちなので注意が必要だと思います。

アルゼンチンの主要ワイン産地(地方・州)の覚え方【語呂合わせ】

アルゼンチンの主要ワイン産地の覚え方を考えてみました。 アルゼンチンのワイン産地は、「北部」、「クージョ」、「パタゴニア」の3つの「地方」に分かれており、それぞれの「地方」に行政区画である「州」が含まれています。 地図をみると、主要なワイン産地の全てがアンデス山脈のふもとにあるのが特徴です。 アルゼンチンは、チリのように海風による冷却効果が得られないため、特に緯度の低い暑い地域では、標高による冷涼効果を得ています。 主要産地としては、サルタ州(北部地方)、ラ・リオハ州、サン・ファン州、メンドーサ州(クージョ地方)、ネウケン州、リオ・ネグロ州(パタゴニア地方)の6つを取り上げました。 このうち、ワインの生産量の多い州のトップ3は全てクージョ地方に位置しています。 ・メンドーサ州(1位) ・サン・ファン州(2位) ・ラ・リオハ州(3位) ちなみに4位には、トロンテスで有名な北部地方の サルタ州 が続きます。

シャンパーニュのサブリージョンとグランクリュ村の覚え方【語呂合わせ】

 シャンパーニュには5つのサブリージョンがあります。 そのうち、重要とされる「 モンターニュ・ド・ランス( Montagne de Reims ) 」、「 ヴァレ・ド・ラ・マルヌ( Vallée de la Marne ) 」、「 コート・デ・ブラン( Côte des Blancs ) 」の3つについてまとめてみました。 (※「 コート・ド・セザンヌ( Côte de Sézanne ) 」と「 コート・デ・バール( Côte des Bar ) 」についても追記をしました。) (関連記事: シャンパーニュ地方は、なぜ発泡性ワインの生産に向いているのか? ) まず、シャンパーニュ地方はパリの北東に位置しています。 そして、有名な3つのサブリージョンは、ランス(Reims)とエペルネ(Epernay)の近く下の図のように広がっています。 そして3つのサブリージョンの特徴をまとめてみました。 Googleマップ上に位置を表してみると、地形的な特徴の違いがよく分かります。 3つの地域では、それぞれ主に栽培されているブドウ品種に違いがあります。主要な栽培品種は次の通りです: モンターニュ・ド・ランス → ピノ・ノワール ヴァレ・ド・ラ・マルヌ  →  ムニエ コート・デ・ブラン  →  シャルドネ ムニエは、マルヌ川に沿った谷にあるのですが、谷であるために、霜の影響があったり、土壌が粘土で、ピノ・ノワールやシャルドネの栽培に向かないようです。そのため、霜に強く、粘土土壌でも成熟するムニエ種が栽培されています。 なぜ、「モンターニュ・ド・ランス=ピノ・ノワール」、「コード・デ・ブラン=シャルドネ」なのかは分かりませんが、ブラン(=白)で白品種のシャルドネが造られているのは覚えやすいです。両者ともに土壌は、チョーク質土壌であるようです。 サブリージョンの地形と、グランクリュ村の位置関係 モンターニュ・ド・ランス モンターニュ・ド・ランス には 「マイィ( Mailly )」 、 「ヴェルゼネ( Verzenay )」 、 「ヴェルジー( Verzy )」 、 「アンボネ( Ambonnay )」 、 「ブジー( Bouzy )」 などのグラン・クリュに格付けされている村があります。この地域では、これらを含め、9つの村がグラン・クリュに格付けされています。 そのうち主要な5つの

ブドウに含まれる主な酸とその英語名(リンゴ酸、酒石酸、クエン酸)

ブドウに含まれる主な酸は、「 リンゴ酸 」「 酒石酸 」「 クエン酸 」の3つです。 そのうち「リンゴ酸」「酒石酸」の2つでブドウの持つ酸の90%を占め、クエン酸は酒石酸の約20分の1と少量しか含まれません。 リンゴ酸 は英語で、「 malic acid 」。 「malic」は、ラテン語で リンゴ を表す「malus」に由来する言葉で、また英語では「Malus」は リンゴ属 を表します。 リンゴ酸という名前は、この酸が最初にリンゴから見つかったことに由来するそうです。 リンゴ酸は非常にシャープな酸味を持ちますが、マロラクティック発酵(malo-lactic fermentation)を経ることで、より酸味の弱い乳酸に変えられます。 リンゴ酸はブドウのエネルギー源として消費されるため、その量はブドウが成熟するにつれて減るようです。 一方、 酒石酸 は英語で、「 tartaric acid 」。 英語で「tartar」は 酒石 を意味します ワインの樽に沈殿としてたまる酒石がその名前の由来のようです。 酒石酸はブドウで多く見つかりますが、それ以外にもバナナや柑橘類などのフルーツにも含まれるそうです。 酒石酸は糖の合成の副産物として生成されるため、ブドウが成熟するにつれてその割合は増えるようです。 酒石酸は、ほとんどの最終製品としてのワインで見つかる主要な酸となります。 クエン酸 は英語で、「 citric acid 」。 柑橘類(citrus) に多く含まれる酸のためにこの名前が付いたようです。 ちなみに、クエンとは漢字で書くと「 枸櫞 」。枸櫞とはミカン科ミカン属の常緑低木樹のことのようです。 資格試験でもブドウ由来を問われることがありますが、このうち要注意なのは「 酒石酸 (tartaric acid)」です。 「リンゴ酸(malic acid)」と「クエン酸citric acid」はフルーツの名前に由来するので、ブドウに含まれることは何となく想像できるのですが、「酒石酸」はついつい醸造過程で生成される酸と勘違いしてしまいそうです。

2次試験でも役立つ?酒精強化ワインの見分け方(シェリー、ポートワイン、マデイラ、VDN、ラザグレン・マスカット)

 最近、さまざまな酒精強化ワインを飲む機会に恵まれたため、私的な酒精強化ワインの見分け方を表にまとめてみました。 対象とした酒精強化ワインは次の通りです: シェリー ポート マデイラ VDN ラザグレン マスカット まだまだ酒精強化ワインは飲み始めなので間違っているところもあるかもしれませんので、気が付くたびに修正をしていきたいと思います。 この見分け方は、個人的には、JSAソムリエ・ワインエキスパートの二次試験でもかなり有用なのではないかと思っています。 以下、この表の詳細です。 【レモン色 x 辛口】のタイプ ・フィノ/マンサニーリャ(シェリー) レモン色で辛口の酒精強化ワインと言えば、ほぼ「フィノ」か「マンサニーリャ」シェリーで決まりだと思います。 さらに、フロール(産膜酵母)由来のアセトアルデヒドのツンとした香りや、ナッツ系の香りが感じられたらまず間違いないなしです。 「フィノ」と「マンサニーリャ」は気候の違いによりフロールの形成に違いがあり、香りにも若干の違いが出るようなのですが、この香りをかぎ分けるのは相当至難の業だと思います。試験などでも問われることはまずないようなので、私はかぎ分けることはほぼあきらめています。 【レモン色~黄金色 x 辛口】 のタイプ このタイプには、「ペールクリーム シェリー」、「ホワイトポート」、「VDN(白)」が含まれます。 見た目やアルコール度で判断するのは難しいので、この3つは個人的には香りで判断をするしかないと思っています。 ・ペールクリーム(シェリー) ペールクリームは、フロールの下での熟成を経ているため、フィノやマンサニーリャと同様に、「フロール由来のアセトアルデヒドのツンとくる香り」や「ナッツ系の香り」を持つことが特徴だと思います。 ・VDN(白) VDN(白)には具体的には、「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ」、「ミュスカ・ド・フロンティニャン」、「ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ」などが含まれます。 VDN(白)は、マスカット由来の華やかでさわやかな香りが特徴だと思います。個人的には、「はちみつレモンのようなフレッシュな香り」で覚えています。 ・ホワイトポート ホワイトポートはレモンのさわやかさというよりは、熟したモモやアプリコットに近い香りだと思います。個人的には「煮詰めたリンゴの香り」で覚えて

シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、リースリング、ミュスカデの味わいの違いは? ~冷涼地域の白ワイン品種の特徴の比較~

これまで、「リースリング」、「シャルドネ」、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「シュナン・ブラン」と、主要な白ワイン品種の産地による違いをまとめてきましたが、今回はまとめとして品種ごとの味わいの違いをまとめてみようと思います。 幅広い産地のワインを集めても品種特徴による違いが分かりにくいので、今回はヨーロッパ、特に冷涼な地域を中心に6種類の品種のワインを集めてみました。 今回のワインは次の通りです: ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ) ワイン②:『 Domaines Saint Martin Muscadet Sevre et Maine Sur Lie 2019 』(ミュスカデ) ワイン③:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc 2020』(ソーヴィニヨン・ブラン) ワイン④:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(シュナン・ブラン) ワイン⑤:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(リースリング) ワイン⑥:『Just B Wines 2017』(アルバリーニョ) いままで登場した主要品種に加え、「ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)」と「アルバリーニョ」を加えてみました。 それぞれのワインは表でまとめると次のような特徴を持つはずですが、実際にテイスティングをして試してみました。 テイスティング ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ) ラ シャブリジェンヌ / シャブリ ラ ピエレレ [2018][2019] 白ワイン 辛口 750ml / フランス ブルゴーニュ AOC シャブリ La Chablisienne Chablis La Pierrelee リュット レゾネ 価格:2680円(税込、送料別)   (2022/6/30時点) 楽天で購入 まずは、冷涼地域のシャルドネの代表として、シャブリを選んでみました。 ワインは、シャルドネのテイスティングで用いたものと同じです。 (関連記事: シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか? ~特徴のまとめと、テイスティン