スキップしてメイン コンテンツに移動

最新記事

ワイン名称に出てくるフランス語の「Côte」と「Coteaux」の違いとは?

 タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>

ピノ・ノワールの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

今回はピノ・ノワールについて調べてみたいと思います。


まず、ピノ・ノワールワインの特徴は、次のようにまとめられると思います。



・色は淡く、タンニンは低め~中程度

・多くのワインは果実味の豊富な若いうちにのまれるが、特に品質の良いものは熟成能力を持つ

・熟成能力のあるワインはオーク樽で熟成されるが、繊細な香りが特徴であるために、新樽比率が高いと品種由来の香りが樽由来のヴァニラやトーストの香りに圧倒されてしまう


【冷涼~温暖地域の場合】

・赤系果実(イチゴ、ラズベリー、サクランボ)の香りを持つ

・熟成を経ることで、野菜や動物を連想される香り(湿った葉、キノコ、猟鳥類、肉類の香り)に発展する

・涼しすぎると、過剰な野菜の香り(キャベツ、湿った葉)の香りを持つ


【高温の気候の場合】

・過剰なジャムのような香りを持つ



ピノ・ノワールワインは世界中で製造がされていますが、主な生産地域は、「ブルゴーニュ」や「ファルツ、バーデン(独)」、「セントラル・オタゴ(NZ)」、「ソノマ、サンタバーバラ、オレゴン(米)」、「カサブランカヴァレー(チリ)」などがあげられると思います。


それぞれの地域の特徴を、ある程度独断も含めてまとめてみました。




次に、実際のワインのテイスティングを通して、各産地のワインにこのような味わいの特徴が現れているかを確認していきたいと思います。


今回用意をしたワインは次の5つです。


ワイン①:Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])


ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(ブルゴーニュ 1er Cru)


ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])


ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])


ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])





テイスティング


ワイン①: Spätburgunder Qba Trocken Bernhard Koch 2019(ファルツ [独])



ドイツのファルツで製造されるシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)ワインです。


ファルツはドイツのワイン産地の中でも比較的暖かい地域であるために、多くの赤ワインが製造されています。


ドイツのピノノワールの特徴は、軽めのボディと、赤系果実の香り、少なめのタンニン、さらにはオーク樽熟成されるものが多いようです。このワインのこれらの特徴を持っています。


外観は淡いルビー色。


香りの強さは中程度くらいで、軽めの赤系果実の香り(サクランボ、ラズベリー)が感じられます。また、樽由来と思われるスモーキーな煙や焦がした木の香りも感じられます。しかし香りにあまり複雑さは感じられず、かなりシンプルな香りの印象です。


味わいは辛口で、酸味が高くやわらかいタンニンはミディアム(-)くらいです。アルコールは中程度の13.5%で、ボディはミディアムボディくらいです。果実味の凝縮度はあまり感じられず、余韻は比較的短めです。


ドイツのワインだったので、もう少し低めの12~13%程度のアルコール度を予想していましたが、13.5%もあったのは意外でした。


また、もう少しフルーティーでフレッシュなワインを想像していましたが、樽香がしっかりと感じ取れたことも少し意外に感じました。


このワインのテイスティングの結果から、ドイツのピノノワール(シュペートブルグンダー)の特徴は、「淡いルビー色」「軽めのボディ」「赤系果実の香り」「軽くて柔らかいタンニン」「スモーキーな樽香」なのではないかと思いました。




ワイン②:Beaune 1er Cru Les Theurons Albert Moro 2014(コート・ド・ボーヌ 1er Cru [ボーヌ])



ブルゴーニュはコード・ド・ボーヌ、ボーヌ村のプルミエクリュの赤ワインです。


コート・ド・ニュイを用意したかったところですが予算の関係で、コード・ド・ボールの中から選びました。それでも世界有数の高品質なピノ・ノワールの産地であることには変わりはありません。


ブルゴーニュの高品質なピノ・ノワールと言えば、果実の凝縮度とエレガントな樽香のバランスが大きな特徴の1つですが、このワインもその特徴を持っています。


外観は、中程度の濃さのガーネット色。先ほどの若いドイツのワインに比べると、古いワインの特徴を感じます。


香りの強さは中程度で、赤系フルーツの香り(イチゴ、レッドプラム)樽香(ヴァニラ、リコリス、クローブ)の香りが感じられます。これも先ほどのドイツのワインと比べると、高い果実の成熟度が感じられます。また、その果実の香りを甘くエレガントな樽香が包んでいる印象です。


製造元によれば(http://www.albertmorot.fr/fichiers/beaune-1er-cru-les-teurons-en.pdf)、熟成はフレンチオークで14か月で、30%の新樽が使われています。


また、もう一度香りを確認してみると、土やキノコの香りも感じられます。このような湿ったようなドライハーブを感じさせる「旨味(savory)」の香りは、フレッシュな赤系果実や花の香りが酸化して、樽の香りと混合して生まれるのだと想像しました。


味わいは辛口で、ミディアム(+)の酸味、ミディアム(+)くらいのスムーズなタンニン、中程度のアルコール度(13.5%)、ミディアムボディです。果実の凝縮度の影響で、余韻はやや長めに感じられます。しかし、カリフォルニアやセントラルオタゴなどのニューワールドの地域に匹敵するような凝縮度ではありません。


酸味やや低めに感じられましたが、それ以外はおおむね事前の予想通りです。


ブルゴーニュの高品質なピノノワールの特徴は、「甘くエレガントな樽香」「中程度の香りの強さ」「高い酸味」「中程度のタンニン」「中程度のボディ」「余韻の長さ」辺りになるのではいかと思いました。




ワイン③:Roaring Meg Pinot Noir 2016(セントラルオタゴ[NZ])



ニュージーランドのセントラル・オタゴのピノ・ノワールです。


セントラルオタゴのワインは、豊富な日照時間と、昼夜の寒暖差により、高い果実味と骨格を持つと言われています。


まず、外観は中程度の濃さのルビー色です。


香りはミディアム(+)くらいで、赤系果実(レッドプラム)の香りに加えて、黒系果実(ブラックチェリー)の香りも感じられます。ピノノワールは赤系果実の香りが中心のはずですが、これは長くて強い日光による果実の成熟度の高さに影響をしているのかもしれません。


また、樽香(クローブ、ナツメグ)や、皮革、湿った葉の香りもしっかりと感じられます。樽香はブルゴーニュのような甘いリコリスを思わせる香りではなく、より旨味の強いスパイスの香りです。


製造元によれば(https://cdn.shopify.com/s/files/1/1453/4032/files/Mt_Difficulty_Pinot_Noir_2016.pdf?11059952042993868018)、小樽で12か月の熟成を経ているようです。


味わいは、辛口で、酸味は高く、タンニンは成熟して中程度、アルコールは中程度(13.9%)で、ミディアム(+)くらいのボディです。果実の凝縮度があり、余韻はやや長めです。


予想よりもタンニンがやや低めでしたが、それ以外はおおむね予想通りです。


セントラルオタゴのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「クローブを連想させる甘くないスパイスの香り」になるのではないかと思いました。




ワイン④:Pinot Noir Mt.jefferson Cuvee Cristom Vineyards 2016(オレゴン[米])



オレゴンで最も有名なワイン産地であるウィラメット・ヴァレーのピノノワールです。


ウィラメットヴァレーは、海岸沿いの山々の間から入り込む冷たい風の影響で、オレゴンの中でも最も涼しいワイン産地の1つです。また、オレゴンはその緯度の高さから長い日照時間を得ることができ、ブドウの成熟度が高まります。このワインもそのような果実の高い成熟度を感じさせてくれます。


まず外観ですが、淡いのルビー~ガーネット色です。


赤系果実(レッドプラム、イチゴ)と黒系果実(ブラックチェリー)の両方の香りが感じられます。黒系果実の香りはセントラルオタゴと共通する日照時間の長い地域のピノノワールの特徴かもしれません。


樽香もしっかり感じられ、リコリスのような甘いスパイスと、クローブの香りが感じられます。また、熟成を経たピノノワールに感じられる湿った葉や、土の香りも感じられます。しかし、それらは少し強い樽香に隠されてしまっている印象です。


味わいは、辛口で、酸味はミディアム(+)で、タンニンはスムーズで中程度くらいです。アルコール度は中程度の13.5%で、ミディアム(+)ボディです。果実の凝縮感が感じられ、余韻はやや長めです。


香り、味わい共に予想をしていたものとそれほど大きくは変わりませんでした。


セントラル・オタゴのピノノワールに近い特徴を持っているように感じられますが、オレゴンのものは果実の香りに比べて樽香が強く感じられます。一方で、セントラルオタゴの方は、より果実の香りが強調されている気がします。製造元の情報を確認することができなかったのですが、もしかしらたオレゴンの方が新樽比率が高いのかもしれません。


まとめるとオレゴンのピノノワールの特徴は、「赤系+黒系果実の香り」「高めの酸味とタンニン」「ミディアム(+)ボディ」「やや果実味を圧倒する樽香」になるのではないかと思いました。




ワイン⑤:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016(ソノマ[米])



カリフォルニアはソノマ、ソノマ・コーストAVAのピノノワールです。


カリフォルニアでは、フレッシュでミディアムボディのものから、より成熟した果実から造られるフルボディのものまでのピノノワールのワインが造られます。


このワインは、よりフルボディ側のワインです。


外観は、中程度のルビー色です。


香りの強さはやや強めの中程度で、赤系果実(レッドプラム)~黒系果実(ブラックチェリー)までの果実の香りを感じます。果実の高い成熟度を感じます。


樽の香りもしっかりと感じられ、ヴァニラ、シナモン、リコリスなどの香りが感じ取れます。


そしてその奥に、やや土っぽい香りも感じられます。


味わいは、辛口で、酸味は中程度で、成熟したタンニンは中程度よりやや高く感じられます。アルコール度は高く(14.5%)、ボディはフルボディです。果実の凝縮度あるために、余韻はやや長めに感じられます。


セントラルオタゴやオレゴンと比べると、それ以上の果実の成熟度が感じられます。ブラインドテイスティングをした場合、おそらくピノノワールであることがすぐにはわからないと思います。ピノノワールにしてはボディがしっかりしているので、グルナッシュと混同をしてしまうかもしれません。


事前の予測よりも、かなりフルボディのワインでした。また酸味とタンニンは予想よりもやや低めでした。


カリフォルニアのピノノワールの特徴は、果実の非常に高い成熟度(赤系+黒系果実)と、しっかりとした樽香ではないかと思いました。ただし果実の成熟度が高いために、決して樽香が果実味を圧倒しているわけではなく、良いバランスが取れています。



テイスティングのまとめ


他の品種と同様に、冷涼な地域と、比較的暖かい地域では、酸味やボディの厚みに大きな違いがありました。


しかし、比較的暖かい地域については、ワインの特徴にそれほど大きな特徴が感じられず、ブラインドテイスティングでそれぞれの違いを判別できるかは疑問でした。


これからももう少し様々なワインを試してみて、地域ごとの明らかな違いをさらに調べていく必要があると思いました。


よく読まれている記事

WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

繰り返しになりますが、WSET level3の最大の難関は記述式問題です。 (参考記事: WSET Level3 の試験構成 ) WSETの記述式問題では、出題されたテーマに対して、深く理解をしているかが問われます。 (参考記事: 一筋縄ではいかない!とてもWSET的だと思った記述式問題(問題例) ) そのため、記述式問題の基本的な対策は、WSETレベル3のテキストの読み込みと、講義ノートの見直しを主に行いました。 しかし、広大な産地全てについて、万遍無く、深く理解をするというのは途方もない作業に思われました。 さらに私の場合は英語受験だったので、日本語のようにテキストをスラスラ読むこともできるわけはなく、本試験までの日数から逆算をすると、とてもそんな時間は確保できないと思いました。 そこで記述式試験対策の方針としては、いくつか重要と思われる部分にヤマを張って、それらを重点的に勉強することにしました。「重要と思われる部分」は次のような判断基準で抜き出しました。 ・講義中に担当講師が「重要」「試験に頻出」と言っていた部分 ・サンプル問題で、何度も問われていた部分 (参考記事: WSET過去問は共有禁止!それでもWSETレベル3の試験問題の参考にしたウェブサイト ) ・複雑で、しっかり理解をしていないと説明ができないと思った部分(特に醸造工程のオプションなど) ヤマを張った部分に関しては何度もテキストを読み返して、テキストの重要ポイントは何度もノートに書きあげて英文を書く練習を続けました。 (参考記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) (関連記事: WSET試験の記述問題対策では「動詞」が重要!? ) 「重要と思われる部分」として抜き出した具体例を下に紹介します: <ワインの保管とサービス> ワインの保管方法(参考記事: ワインの保管方法 ) ワインの提供温度 (参考記事: チャートで覚えたワインのサービス温度 ) ワインのデカンティング 発泡性ワインの栓の抜き方(参考記事: 非発泡性(スパークリング)ワインの栓の抜き方 ) ワインの保存に使われる方法(参考記事: ワインの保管方法 ) <ブドウ樹の栽培、畑の管理、ワインの醸造> 高接ぎとその特徴(参考記事: grafting(...

ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリットの整理

 ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。 棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。 ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。 そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が 「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」 です。 垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。 そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。 棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット 棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。 そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。 日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。 通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。 また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。 一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。 ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。 (関連記事: 棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り ) 垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット 垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。 したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の...

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

JSA試験、WSET試験を通して酒精強化ワインであるシェリー(Sherry)を学んできましたが、ずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、「 パロ・コルタド・シェリーとは何なのか? 」です。 シェリーとは、スペイン・アンダルシア州カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとその周辺地域で生産される酒精強化ワインのことで、ポート・ワイン(ポルトガル)、マデイラ・ワイン(ポルトガル)とともに、著名な酒精強化ワインと言われています。 シェリーには、フィノ(Fino)/マンサ二ーリャ(Manzanilla)、オロロソ(Oloroso)、アモンティリャード(Almontillado)、 パロ・コルタド(Palo Cortado) 、ペドロヒメネス(Pedro Ximenez)など様々な種類があります。 しかし、JSA、WSETどちらのテキストにおいても、 パロ・コルタド に関する記述 はとても少なく、製法に関する記述もなく、漠然とその特徴が書かれているだけでした。 その特徴は、 ・希少であること ・アモンティリャード(Amontillado)の香りを持つが、味はオロロソ(Oloroso)のボディとこくを持つ という2点だけです。 ずっと疑問に思っていたことを解決すべく、製法を中心にパロ・コルタドについて調べてみました。 参考にしたのは、次のサイトです: https://www.sherrynotes.com/sherry-types/palo-cortado/ https://www.sherrynotes.com/2015/background/palo-cortado-mystery/ まずは、パロ・コルタドの発祥から。パロ・コルタドは、もともとフィノとしては不適合として除外された樽からできたそうです。 <パロ・コルタドの発祥> ------------------------------------------------------------------------ ・パロ・コルタドは、もともとフィノ(Fino)の製造から偶然生まれたワインと言われている。 ・フィノシェリーでは、樽での熟成中にフロールと呼ばれる産膜酵母が発生し、フロールのもとで熟成される。しかし、フィノ樽の中には...

WSETレベル3のテキスト購入方法とテキスト電子化のメリット

WSET英語学習 の難しさはの1つは、 テキストの記述が全て英語 であることです。 テキストが英語だと、やっぱり 内容の理解度が落ちます 。知らない単語を辞書で調べて...翻訳をして...と読み込んでいくのですが、部分的に言い回しが微妙だったり、細かいニュアンスが伝わらなかったりで、理解が難しい文章がいくつかありました。 <理解度対策は、日本語テキストの購入がおすすめ!> 理解度の問題を解決するために私がとった方法は「WSETレベル3日本語テキストの購入」でした。 ワインスクールでWSETレベル3を受ける場合、英語クラスを選択すると、英語テキストが配布されます。 しかし私はこれに加えて、日本語テキストを購入しました。ワインスクールでも購入ができるようなのですが、受講開始前に手にしておきたかったために個人的にWSETの公式ウェブサイト( https://shop.wsetglobal.com/collections/books )から購入しました。 注文から2週間ほどで手元に届いたと思います。レベル3のテキスト自体は £44.95 GBP でしたが、送料に £17.21 GBP かかり、合計費用は £62.16 GBP (8,300円程度) でした。 もう少し安く購入する方法としては、時々 メルカリ に出品されているものを購入する方法もありますが、常に売りに出されているわけではないのであまり期待できないかもしれません。 Amazonでも時々、中古品がでているのでここで検索するのも良いかもしれません。→  https://amzn.to/3YSx0xy  (Amazonへのリンクです) <情報検索にはテキストの電子化がおすすめ!> テキストが英語であることの問題がもう1つありました。それは、 知りたい情報を探すのが大変 であるということでした。 例えば、「カベルネ・ソーヴィニヨン」の産地ごとの特徴を知りたい場合、その情報は様々な章に分散されて書かれていました。醸造工程の章、ボルドーの章、アメリカの章などです。 日本語であれば、走り読みをしながらキーワードを探せばそれほど大変な作業ではありません。しかし、英語ネイティブでない私にとって、英語でこれをやるのはとても大変な作業でした。 英語テキス...

WSETで納得!JSAで疑問だったギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い

JSAワインエキスパートを学んでいた時に、ブドウ樹の仕立て方でずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、 「ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い」 。 両者ともに世界的に広く採用されている仕立て方である「 垣根仕立て 」の代表例なのですが、 ギヨドゥブルは長梢剪定 、 コルドンロワイヤは短梢剪定 の例として紹介されていました。 (参考記事: ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは? ) それぞれぱっと見の形はすごく似ていて、その違いは、枝の太さの違いだけ。ギヨドゥブルは2本に分かれる枝が細くて、コルドンロワイヤはそれが太い。 なぜこのような似通った2つの仕立て方が用いられているのか が、当時の私にはわかりませんでした。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、ブドウの栽培方法、特に仕立て方に関してはあまり深い知識は必要なかったために、この2つの機能的な違いや、長梢剪定、短梢剪定に関する説明は試験対策講座でも省略されていました。また、当時、独自でネット検索をして色々調べてみたのですが、結局答えはわからず終いでした。 それから一年、こんな疑問があったことも忘れてしまった頃、WSETレベル3の講義を受けて この疑問を解決することができました! ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの選定の流れ WSET の講義を受けて分かったことは、次のようなこと: ギヨ・ドゥブル では、前年の新梢が一本だけ残され、その枝(長梢)が水平方向に延ばされる ギヨ・ドゥブル では、水平に伸ばされた長梢の上に、その年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル では、その年の収穫が終わったら、その年の新梢1本だけを残して、残りの枝は刈り取られる コルドン・ロワイヤ では、一昨年かそれ以前に作られた腕枝(コルドン)の上に、去年の新梢の一部(短梢)が残される コルドン・ロワイヤ では、短梢から今年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル、コルドン・ロワイヤともに 、新しいブドウの房は新梢の上にできる (ギヨ・サンプル/ドゥブルの剪定の流れ) (コルドン・ロワイヤの剪定の流れ) 仕立てが出来上がった状態では、それぞれとても似通った形になって...

ブドウ品種「ピクプール(Piquepoul)」とは?

ピクプール(Piquepoul) というブドウ品種について調べてみました。 この品種は、主にフランスのローヌ渓谷や、ラングドック地方、また、スペインのカタルーニャで栽培されているワイン用ブドウ品種です。萌芽が遅く、ウドンコ病の影響を受けやすい品種です。 ピクプールには果皮の色が異なる 「ピクプール・ノワール」 、 「ピクプール・ブラン」 、 「ピクプール・グリ」 の3種類があります。 ラングドック地方では長い歴史があり、最も古い土着品種の1つのようです。ここでは、ブレンドワインとヴァラエタルワインの両方に使われています。特に、ピクプール・ノワールから生産される赤ワインは、アルコール度数が高く、香りが豊かですが、非常に色が薄いため、ブレンドに使われることが多いようです。 ローヌ渓谷では、ピクプール・ノワール、ピクプール・ブランがシャトーヌフ・デュ・パプAOCのブレンド品種として許可されています。また、広域のコート・デュ・ローヌAOCにも使われています。 ピクプール・ノワール、ピクプール・ブラン、ピクプール・グリのうち、最もよく知られているものは「ピクプール・ブラン」であり、栽培面積は増加傾向にあるようです。 フランスだけではなく、ピクプール・ブランはカリフォルニア州ソノマやオーストラリアでも栽培がされているようです。 ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC ピクプールを使った最も有名なワインの1つはラングドック地方の 「ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC」 だと思います。 このワインは、その名が表す通り、ピクプール品種から造られており 「ピクプール・ブラン」100%の白ワイン です。しかし、品種( Piquepoul )とワイン名( Picpoul )で「ピクプール」のスペルが若干異なります。 この地域では、ピクプールはもともと主にベルモットのベースワインとして利用されていましたが、醸造技術の発展により、フルーティーなヴァラエタルワインとして造られるようになりました。 ピクプール・ブランは、温暖な気候にあっても成熟時に高い酸味を保持することができ、ピクプール・ド・ピネAOCワインは、高いレベルの酸味を持つことが特徴です。 レモンや花の香りを持つ、ミディアムボディの辛口ワインとして造られます。 下のような特徴的なボトル...

リースリングの「菩提樹」の香りを知るヒント|ワインの香り用語

「菩提樹」 は、JSAソムリエ・ワインエキスパートの白ワイン用の回答用紙でよく登場する香りです。 リースリング 特有の香りを表す重要な香り用語なのですが、私は長らく、 この香りがどんなものなのかがわからず 、そのワインが リースリング だと思ったら、得点稼ぎのために 「菩提樹」 を選ぶという使い方をしていました。 実際に、私が分析をした範囲ではワインスクールの JSA試験対策 において リースリング のテイスティングシートでほぼ毎回 「菩提樹」 が選ばれていました。(下の回答シートは典型的なリースリングの回答例です) しかし、このままでは良くないと思い、 「菩提樹」 に関して調べてみてこれが何なのか、どんな香りなのか自分なりに研究をしてみました。 リースリングはワインにおいては重要な品種で、JSA試験において頻出の品種です。なので、この品種特徴について把握をしておくことはテイスティング能力を上げるうえで大きな助けになると思います。 私がワインエキスパート試験を受けたときには、実際に、ドイツのリースリングが出題されました。なんとか、その時は何とか品種・産地ともに当てることができました。 菩提樹とは何か? 菩提樹で検索をすると、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木インドボダイジュ」、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木ベンガルボダイジュ」、「中国原産のシナノキ科シナノキ属の落葉高木ボダイジュ」、「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム=リンデン)」が見つかります。 色々調べてみた結果、最後にあげた「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム= リンデン )」が、ワインの香りにおける「菩提樹」に該当しそうだとわかりました。 その理由は、海外の様々なウェブサイトで、リースリングの品種特有の香りとして、 「リンデン」 があげられていたからです。 リンデンとは何か? リンデンについて説明しているサイトがあったので、引用をしました。 ヨーロッパでは ハーブ として使われているようです。 ------------------------------------------------------ リンデンはヨーロッパ原産のハーブで、和名はセイヨウボダイジュといいます。お釈...

「ジンファンデル」と「テンプラニーリョ」の違いをしらべる!比較テイスティング

 今回は、ジンファンデルとテンプラニーリョの品種比較テイスティングをしてみたいと思います。 なぜこの2つを選んだかというと、どちらも赤系~黒系果実の香りを持ち、ミドル~フルボディのワインを造り、オーク樽との相性が良いという共通点を持っているからです。 今まであまり比較をする機会が無かったので、どのような違いがあるのかを調べてみたいと思います。 今回用意をしたワインは次の通り: ----------------- ①ジンファンデル / ドライ・クリーク・ヴァレー(ソノマ、カリフォルニア) ・ワイン名:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017 ②テンプラニーリョ / リオハ(スペイン)ー 伝統的スタイル(アメリカンオーク+フレンチオーク利用で、新樽比率高め) ・ワイン名:Dominio de Ugarte Reserva 2013 ③テンプラニーリョ/ リオハ(スペイン)ー モダンスタイル(フレンチオーク利用で、新樽比率は低め) ・ワイン名:Remelluri Lindes de Remelluri Viñedos de Labastida 2014 ----------------- リオハのテンプラニーリョは、念のために異なる2つのスタイルのものを用意しました。結果としては、ワイン②(伝統的スタイル)の樽香が強すぎて、ワイン①(ジンファンデル)との比較にならなかったので、ワイン③(モダンスタイル)も用意をしておいて正解でした。 外観の比較 まずは外観ですが、どれも濃いルビー色で、それほど大きな違いは見られません。 外観での判別は難しいと思います。 香りの比較 次に香りの比較ですが、用意したジンファンデル(ワイン①)は、よりモダンスタイルのリオハ(ワイン③)に近い香りを持っていました。 反対に、ワイン②はヴァニラの甘い香りが特徴的で、ワイン①とワイン③とは少し香りの質が異なります。 これは、ワイン①、ワイン③ともに、それほど新樽比率の高くないフレンチオークで熟成をしているためだと思います。 香りの近いワイン①(ジンファンデル)とワイン③(テンプラニーリョ)を比べると、ワイン①はより成熟度の高いジャムのようなレーズンのような果実の香りを持っていることが特徴的でした。 また、ワイン①(ジンファンデル)は成熟度の高いジャムのような香...

WSETレベル3で一発合格できたテイスティング対策

WSETレベル3 の試験には、筆記試験に加えて、 テースティング試験 が含まれます。 WSETのテースティングでは、 SATという名のテイスティング・ツール を用いて、ワインの描写と品質・飲み頃に関する評価を行います。本試験においても、このSATに則って、出題される2種類のワイン(通常、赤ワイン1種と白ワイン1種)についての評価を回答用紙に記述します。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング回答のルール ) 一般的に、 WSETレベル3のテースティング試験は筆記試験に比べて合格をしやすい と言われています。しかしそれでも、試験をパスするためにはある程度の学習と練習が必要だと思います。 WSETレベル3のテイスティング対策を行うにあたって、私が感じたのは、どのように準備をしたら良いのかという情報がJSA試験ほどに豊富には手に入らないということでした。 そこで、この記事では私がテイスティング試験に向けて行った準備を紹介したいと思います。一度の試験で合格ができたので、それなりの効果はあったのだと思っています。 試験突破のカギは「SATの理解」と「品質評価」 テイスティング試験対策に取り組む中で、私が最も重要だと思い、時間を割いたのは、「 SATの記述ルールを理解すること 」と「 ワインの品質レベルを正確にとらえる 」ことでした。 テイスティング試験の合格基準は「55%」の得点率なので、この2つさえできていれば、まず落ちることはないと思いました。 反対にこの2つのいずれかが欠けていると、大きく減点をされてしまう可能性があります。例えば、SATでは、「テイスティングの記述に用いる用語」と「評価をすべき項目」がしっかりと決まっています。間違った用語を用いたり、評価すべき項目が記述されていなければ、全く得点は得られません。用語や評価項目以外にも、いくつか記述のルールが存在するので、ワークブックをしっかり読んで全てを把握しておくことが必須です。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング試験でやりがちな失敗トップ10 ) (参考記事: WSET SATのちょっとわかりにくかった香りと風味の選択・記述ルール ) ルールに関してはJSAのテイスティングのルールとは少し異なると思われる部分もあったので要注意です。 ...

IGPペイ・ドック(IGP Pays d’Oc)とは?ラングドック&ルーション地方で大きな存在感を持つ理由の考察

 IGPペイ・ドックとは、 ラングドック・ルーション地方のIGPワイン のことです。 図のように広域のラングドックAOCを包含しています。ちなみにラングドックAOCには、ルーション地方に加えて、ルーション地方も含まれています。 IGPワインとは、3段階あるフランスワインの品質分類のうち、2段階目に位置するワインです。 (関連記事: EU各国とその他の国々のワインの品質分類の整理 ) (関連記事: ワインの原産地統制名称 -  AOC、AOP、PDOのざっくり整理 ) 簡単に言ってしまうと、AOCワインほど製造方法やブドウ品種に対するルールは細かく規定されてはいませんが、特定の地域でのブドウ栽培と醸造が求められているワインです。 IGPペイ・ドックは、ラングドック・リューション地方での栽培・製造が求められており、この地域全体をカバーしている広域IGPです。 IGPペイ・ドックは、IGPの中でも最大の生産量を誇り、フランスワインの10-15%をも占める生産量だということです。 なぜ、最大のIGPがラングドック&ルーション地方にあるのか? ここからは、なぜラングドック&ルーション地方にこのような大きなIGPがあるのかを考察したいと思います。 それには次の3点が関係していると思います: ・ブドウ栽培に非常に適した気候 ・お手頃価格のIGPワイン ・長いブドウ栽培の歴史 ラングドック&ルーション地方の気候 地中海に面するラングドック&ルーション地方の気候は、 地中海性気候 です。 夏は温暖で雨は少なく、非常に日照量が豊富で、ブドウが成熟するのに最適な気候です。 また、トラモンタンと呼ばれる乾燥した北西の風が年間を通して吹き、ブドウ樹や果実の病気を減らしてくれます。病気の心配が少ないため、オーガニックワインの生産も盛んで、フランスのオーガニックワインの製造の1/3を占めているそうです。 このようにラングドック&ルーション地方は、非常にブドウ栽培に適した環境に恵まれています。 そのため幅広い土地がブドウ栽培に適しており、ブドウの栽培面積は大きく、それらを使って大量のワインが生産されていると考えられます。 お手頃価格のIGPワイン 品質階級最上位のAOCワインに比べ、一般的に、IGPワインの価格は安いと言われています。その理由は、IGPワインのブドウ栽培・ワイン醸...