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カベルネ・ソーヴィニヨンの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

今回は赤ワインについて調べてみようと思います。

赤ワインの中でも最も有名な品種の1つである「カベルネ・ソーヴィニヨン」です。


まず、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴は次の通りです。



・色濃く、タンニンと酸味がたっぷりで、強い香り/風味を持つワインを造る

・香りの特徴は、黒系果実(カシス、ブラックチェリー)で、草の香り(ピーマン、ミント)を伴う

・高価なワインではオーク樽による熟成が行われ、高いタンニンや酸味を和らげるとともに、オーク香(煙、ヴァニラ、コーヒー、スギ)が加えられる

・強い果実味と、しっかりとした骨格(高レベルのタンニンと酸味)を持つために、高い熟成能力を持つ

・(果実が未成熟の場合)渋くて口当たりが悪く、不快な青い香りを持つ

・(果実が十分に成熟している場合)青い香りは少なく、ブラックチェリーの香りが際立ち、タンニンはまろやかになる




そして、主要産地ごとのワインの特徴は、だいたい下のような感じになると思います。

主要産地としては、ボルドー、カリフォルニア、オーストラリア、チリ、アルゼンチンをあげています。その他、ニュージーランド、南アフリカなども主要な産地の1つですが、今回は割愛しました。





実際に、このような味わいになるかをいくつからのワインをピックアップして試してみました。

今回選んだワインは次の通りです。


ワイン①: La Croix d'Austeran Bordeaux Rouge BIO 2020(ボルドーAOC)

ワイン②: Les Allées de Cantemerle 2015(オーメドックAOC、ボルドー

ワイン③: Cabernet Sauvignon Reserva Perez Cruz 2018(マイポヴァレーDO、チリ)

ワイン④: Favourite Son Cabernet Sauvignon Parker Coonawarra Estate 2018(クナワラGI、豪)

ワイン⑤: Decoy Limited Cabernet Sauvignon Napa Valley Duckhorn Vinyards 2018(ナパヴァレー、カリフォルニア)






テイスティング


ワイン①: La Croix d'Austeran Bordeaux Rouge BIO 2020(ボルドーAOC)


1つ目のワインは、ボルドーAOCのワインです。

ボルドーAOCのワインは、手頃な価格で、フルーティーで早飲みのものが多いのですが、これもそのようなワインです。

早飲みのスタイルにするために、メルロー主体となることが多いのですが、これもブレンド比率はメルローが最も多いです。製造元の情報によれば(https://www.croix-austeran.com/#top)、メルロー45%、カベルネソーヴィニヨン40%、カベルネフラン15%です。


外観は中程度のルビー色。

香りの強さは中程度で、赤系果実(レッドプラム)黒系果実(ブラックチェリー、カシス)樽香(ヴァニラ、焦げた木)の香りが感じられます。わずかですが、青い杉のようなニュアンスも感じられます。

味わいは辛口で、中程度の酸味、ミディアム(+)くらいのざらざらしたタンニン、中程度のアルコール度(13.0%)、ミディアムボディです。

後味の余韻は短めです。果実味があまりないために、樽とタンニンの苦みが少し際立ってしまっている印象です。


カベルネソーヴィニヨンの特徴である強い酸味はあまり感じられないワインでした。もしかしたら、メルローのブレンドによって低く抑えられてしまっているのかもしれません。

タンニンは少し粗く、シャープに感じられるため、もしかしたら果実のタンニンは十分に成熟していないのかもしれません。

ニューワールドほど暖かい気候ではないために、アルコール度もそれほど高くはなく、ボディもフルボディには届きません。


中程度の外観の濃さ」、「粗いタンニン」、「中程度の中でもやや低めのアルコール度」、「ミディアムボディ」辺りが、ボルドーAOCのワイン(エントリーレベルのボルドーワイン)を見分けるためのヒントなのだと思います。





ワイン②: Les Allées de Cantemerle 2015(オーメドックAOC)



2つ目は、オーメドックAOCのワインです。

オーメドックはボルドーAOCと比べて、許可されている最大収穫量が少なく、より暖かいグラヴェル土壌であるために、より凝縮された果実からワインが製造されます。

また、メドック格付けシャトーのほぼ全てがこの地域に属しています。

このワイン、「レ・ザレ・ド・カントメルル」は、メドック格付け5級のシャトー・カントメルルのセカンド・ラベルです。

ちなみにセカンド・ラベルのワインとは、栽培過程や醸造過程において、ファースト・ラベルのレベルには満たないとして、除外されたワインです。多少ファーストラベルよりも品質は劣るものの、比較的手ごろな価格で入手ができるため、セカンド・ラベルは世界的に人気を博しています。

さて、このワインの特徴ですが、外観は濃いルビー色~ややガーネット色。

香りは中程度よりやや強めで、ヴァニラやリコリスを思わせる樽香による甘い香りが圧倒的です。果実の香りは、瓶内熟成の効果によりプルーンやイチジクのドライフルーツの香りが感じられます。黒系果実の香りもやや感じられますが、樽香やドライフルーツの香りに隠されてしまっているような気がします。

開栓をして少し時間がたってしまったために、カベルネソーヴィニヨン独特の青いスギのような香りは、熟成香に隠されてしまっているように感じられます。

味わいは辛口で、酸味やタンニンは高く、アルコール度は中程度(13.0%)、ミディアム(+)~フルボディです。タンニンはスムーズですがそれでも舌の上でしっかりとタンニンの凝固を感じられます。

味わいは全体的にしっかりとカベルネソーヴィニヨンの特徴がでていると思います。製造元によれば(https://www.cantemerle.com/en/fiche-pdf?pdfid=38&nameid=FT%20Les%20All%C3%A9es%20de%20Cantemerle%202015)、ブレンド比率はカベルネソーヴィニヨン60%、メルロー40%です。

果実の凝縮度がそこまで高くないですが、甘く上品な樽香がそれを補っているような気がします。そのためワインの余韻は比較的長く感じられます。


オーメドックのカベルネソーヴィニヨンの特徴は、「まあまあの果実の凝縮度」「中程度くらいのそれほど高くないアルコール度」「果実を圧倒しない程度の上品なヴァニラの樽香」辺りなのではないかと思います。







ワイン③: Cabernet Sauvignon Reserva Perez Cruz 2018(マイポヴァレーDO、チリ)




3つ目は、マイポ・ヴァレーDOのワインです。

マイポ・ヴェれーは、とても暖かく日照時間に恵まれた地域で、豊富で柔らかなタンニンと、カシスやミントの香りが特徴的なカベルネソーヴィニヨンのワインが造られます。


テイスティングからのワインの特徴ですが、外観は中程度の濃さのルビー色です。

香りの強さは中程度ですが、先程書いたようにミントのような植物の青い香りが特徴的です。後述のクナワラ(豪)のカベルネソーヴィニヨンもミントの香りで有名ですが、こちらのマイポヴァレーのワインの方が、より青々としたピーマンのような香りが感じられます。まるで、カルメネールを思わせるような香りです。

果実の香りは黒系果実(カシス、ブラックチェリー)の香りが中心で、さらに焦げた木のような樽の香りも感じられます。

このワインの香りは例えると、野焼きをした後の草原のような香りです。

味わいは、辛口で、酸味は中程度、タンニンは成熟しておりミディアム(+)くらいです。アルコール度は中程度(13.5%)で、フルボディです。

カベルネソーヴィニヨンの力強さがしっかり出ている印象です。ブレンド比率は、カベルネ ソーヴィニヨン90%、メルロー6%、シラー3%、コット1%ですが、やはりカベルネソーヴィニヨンが十分に成熟するニューワールドでは、カベルネソーヴィニヨンの比率が高いようです。


このワイン1本から想像をするに、チリのカベルネソーヴィニヨンのヒントは、「ピーマンのような青い香り」と「少しラフな樽香(焦げた木の香り)」だと思います。






ワイン④: Favourite Son Cabernet Sauvignon Parker Coonawarra Estate 2018(クナワラGI、豪)





4つ目は、オーストラリアはクナワラGIのカベルネソーヴィニヨンです。


これも、青い香りが特徴的なワインです。この青さはよく、ミントやユーカリの香りで形容されます。

先程のチリのワインと比べると、青い香りの強さはやや弱めで、もう少し爽やかな印象です。チリがピーマンの香りであるとすると、クナワラはミントやユーカリという少し爽やかな言葉で表現される理由がわかるような気なします。


ワインの特徴は、外観は中程度のルビー~ガーネット色です。

香りの強さは中程度で、ミント、ユーカリの香りと、黒系果実の香り(ブラックチェリー、カシス)が圧倒します。また、木を連想させる樽の香りと、ミントの青い香りが相まって、スギのような香りを作り出しています。ヴァニラやリコリスのような甘い香りはそれほど感じられません。製造元の情報(https://www.parkercoonawarraestate.com.au/wine/parker-estate-2019-cabernet-sauvignon)によると熟成は旧樽で12か月なので、それほど強い樽香が感じられないのかもしれません。

味わいは、辛口で、ミディアム(+)程度の酸味で、成熟した高いレベルのタンニンが感じられます。アルコールは高く(14.5%)、ボディはフルボディです。

果実の凝縮度が高く、余韻はやや長めに感じられます。


クナワラのカベルネソーヴィニヨンの特徴をまとめると、青いミントやユーカリのような香りと、高い果実の成熟度、またそれに伴う高めのアルコール度成熟した高いタンニン、だと思います。






ワイン⑤: Decoy Limited Cabernet Sauvignon Napa Valley Duckhorn Vinyards 2018(ナパヴァレー、カリフォルニア)




最後はナパヴァレー(カリフォルニア)のカヴェルネ・ソーヴィニヨンです。

カリフォルニアのワインと言えば、樽香がしっかりつけられているイメージですが、このワインも比較的樽香がしっかりしているワインだと思います。

マイポヴァレーやクナワラのワインでは青々しい香りが特徴的だったのに対して、このナパヴァレーのワインでは、青い香りはややなりを潜めて、ヴァニラやリコリス(甘草)を思わせる甘い樽香がワイン全体を覆っています。フレンチオークで14か月の熟成が行われており、そのうち新樽比率は40%と比較的高めです。


外観は濃いルビー色です。

香りの強さは中程度で、黒系果実(ブラックベリー、ブラックプラム)の香り樽香(ヴァニラ、リコリス、コーヒー)の香りが全体的に感じられます。その中に、かすかにスギのような緑を思わせる香りも感じられます。しかし繰り返しになりますが、マイポやクナワラのワインに比べるとかなり控えめです。

味わいは、辛口で、酸味は高く、十分に成熟をしたミディアム(+)くらいのタンニンが感じられます。アルコール度は高く(14.5%)、フルボディです。

クナワラのワインのように、しっかりとした果実の凝縮感が感じられ、余韻はやや長めです。

ナパヴァレーAVAのようなプレミアム価格のカヴェルネソーヴィニヨンの特徴は、「しっかりとした甘い樽香」、「凝縮された黒系果実の果実味」、「しっかりとした骨格(酸味+タンニン)」、「成熟したまろやかなタンニン」、「高めアルコール度とボディ」なのだと思います。




テイスティングのまとめ

各ワインの味や香りは、おおむね予め表にまとめた通りに感じられました。

しかし、香りの強さや、酸味については、表でまとめた内容との違いもあり、製品によってばらつきがあると思われました。

カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴は、どの産地にも共通して、色素・タンニン・酸味が豊富であること、青い香りを持つこと、樽熟成との相性が良いことでした。

そして、青い香りと樽の香りが合わさって、独特な品種特徴であるスギの香りを生み出しているのだとも思いました。



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ワインの素人だった私が、ワインの勉強をまじめに始めて2年目にWSETレベル3の英語試験を合格した勉強法を紹介したいと思います。 WSETは世界で通用するワイン資格です。主催団体によればレベル3は、 「 ワインの業界で働くプロフェッショナルおよびワイン愛好家を対象とした上級レベルの資格 」 です。 全世界で通用する資格であるために、海外のワイナリーに行ってWSETのレベル3を持っていると言えば、ワインについてはそれなりに知っていると思ってもらえるようです。 いつか海外のワイナリーを訪れることを思い描きながら、WSETレベル3に挑戦をした軌跡を紹介します。 (参考記事: 意外に高い?WSETの合格率 ) なぜWSETレベル3を受験? 私にとってのワインの勉強は、 飲み友達作り にワインスクールに通ったことから始まりました。 当時はワインの勉強などそっちのけで、中途半端な知識でワインスクールのクラスメートとワインを飲み明かすことだけを楽しんでいました。 折角ワインスクールに通ったのに、フランスのワイン産地はブルゴーニュとボルドーしか頭に残っていませんでした。 そんなワイン素人の私がまわりの飲み友達に影響されて、JSAワインエキスパート試験に挑戦をしました。まじめなワインの勉強はゼロから始めたこともあり、はじめはイチかバチかくらいの気持ちで始めた挑戦でしたが、ワインスクールのサポートにも助けられてなんとか一回で合格をすることができました。 次に挑戦すべきは上位資格である「JSAワインエキスパート・エクセレンス」だと思い、この資格は5年間待たなければならないことを知って、ワインの勉強はしばらくお預けだと少し寂しく思っていました。 しかし、ひょんなことからWSETは英語でワインが学べるということを知って、今度も大きな挑戦でしたが、WSETレベル3の英語講座に通うことに決めました。 (参考記事: WSETとは?WSETワインレベル3資格とは? ) (参考記事: ワインを英語で学ぼうと思ったきっかけと意外な発見 ) WSETレベル3を受講してよかったこと WSETレベル3を受講した良かったことは、ワインを英語で学んで、資格試験にも合格をしたことで、英語の環境でも臆せずワインについて話ができるようになっ...

クリアンサ、レゼルバ、グランレゼルバとは?スペインワインの熟成規定(最低熟成期間)の私的暗記法

スペインの赤ワインのうち、最良のワインにはほぼ確実にオークを使用した熟成がされていると言われています。白ワインの大半はフレッシュで果実味が豊かなワインと言われていますが、一部のワインではオークを使った熟成が行われ、異なる風味が加えられています。 スペインのワイン法でもワインの熟成表記に関する規定が定められており、最低熟成期間の長さによって、「 クリアンサ(Crianza) 」、「 レゼルバ(Reserva) 」、「 グラン・レゼルバ(Gran Reserva) 」などのカテゴリーが規定されています。 最低熟成期間には、総熟成期間と樽熟成期間があり、総熟成期間は樽熟成期間を含めたトータルの熟成期間を示しています。 いくつかのワイン試験では、この最低熟成期間をワインの種類(赤、白・ロゼ)ごと、カテゴリーごとに覚えなければならないのですが、この数字の羅列を覚えるのはなかなか至難の業です。 そこで、個人的に考えた、このスペインワインの熟成規定の覚え方を紹介したいと思います。 1. 表を年表示にする まずは、数字を覚えやすくするために、表の単位を「月」から「年」に変換します。 まるで囲んだ部分だけ、語呂合わせなどを使って覚えます。 2. 赤ワインの「グラン・レゼルバ」の熟成期間を覚える 赤ワインのグラン・レゼルバの最低熟成期間は、偶然にもクリアンサとレゼルバの最低熟成期間を足し合わせた期間なので、簡単に覚えられます。 3. 白・ロゼワインの「クリアンサ」、「レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 白・ロゼワインにおいて、クリアンサ、レゼルバの最低の総熟成期間は、偶然にも赤ワインの「最低総熟成期間ー最低樽熟成期間」に一致します。これを覚えます。 4. 白・ロゼワインの「グラン・ レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 今までの法則で行くと、「グラン・レゼルバ」の最低の総熟成期間は3.5年が望ましいですが、 実際は4年 です。ここだけ、例外的に 0.5年だけずれる と覚えます。 5. 白・ロゼワインの 最低樽熟成期間を覚える 白・ロゼワインの最低の樽熟成期間は、全て同一の0.5年です。 赤ワインの「クリアンサ」のものと同じと覚えておくと、覚えやすいかもしれません。 最後に、この表を法則とともに覚えておくことで、暗記作業は完了です。 関連記事: スペインの「グラン・レセルバ(Gran Re...

WSETレベル3のテキスト購入方法とテキスト電子化のメリット

WSET英語学習 の難しさはの1つは、 テキストの記述が全て英語 であることです。 テキストが英語だと、やっぱり 内容の理解度が落ちます 。知らない単語を辞書で調べて...翻訳をして...と読み込んでいくのですが、部分的に言い回しが微妙だったり、細かいニュアンスが伝わらなかったりで、理解が難しい文章がいくつかありました。 <理解度対策は、日本語テキストの購入がおすすめ!> 理解度の問題を解決するために私がとった方法は「WSETレベル3日本語テキストの購入」でした。 ワインスクールでWSETレベル3を受ける場合、英語クラスを選択すると、英語テキストが配布されます。 しかし私はこれに加えて、日本語テキストを購入しました。ワインスクールでも購入ができるようなのですが、受講開始前に手にしておきたかったために個人的にWSETの公式ウェブサイト( https://shop.wsetglobal.com/collections/books )から購入しました。 注文から2週間ほどで手元に届いたと思います。レベル3のテキスト自体は £44.95 GBP でしたが、送料に £17.21 GBP かかり、合計費用は £62.16 GBP (8,300円程度) でした。 もう少し安く購入する方法としては、時々 メルカリ に出品されているものを購入する方法もありますが、常に売りに出されているわけではないのであまり期待できないかもしれません。 Amazonでも時々、中古品がでているのでここで検索するのも良いかもしれません。→  https://amzn.to/3YSx0xy  (Amazonへのリンクです) <情報検索にはテキストの電子化がおすすめ!> テキストが英語であることの問題がもう1つありました。それは、 知りたい情報を探すのが大変 であるということでした。 例えば、「カベルネ・ソーヴィニヨン」の産地ごとの特徴を知りたい場合、その情報は様々な章に分散されて書かれていました。醸造工程の章、ボルドーの章、アメリカの章などです。 日本語であれば、走り読みをしながらキーワードを探せばそれほど大変な作業ではありません。しかし、英語ネイティブでない私にとって、英語でこれをやるのはとても大変な作業でした。 英語テキス...