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WSET Diploma D1 試験突破に必要なものは?~ 認定試験の感想と、試験対策に関する後悔 ~



D1の認定試験の結果が返ってきました。結果の通知は受験日から10週後が目安なので、おおむね予定通りです。


(関連記事:「WSET Level 4 Diploma in Wines(通称、ディプロマ)」について調べてみました

 

結果は登録住所(私の場合は自宅)に封書で届きました。

 

数か月間の努力の結果が一瞬で明らかになってしまうので、なかなか開ける勇気がありません。届いてから暫く放置をしておきました。

 

それから心を落ち着けて「えいやっ」と開封しましたが、結果は無事「PASS」でした。

 

しかし、その結果は期待していたほど良いものではありませんでした。

 

合格をしたことは嬉しかったのですが、Diplomaは決して甘くないという現実を突きつけられました。と同時に、試験対策についての大きな後悔も残りました。

 

自分への戒めも込めて、D1の試験対策の後悔を書き留めたいと思います。



 

試験対策の後悔

 

後悔①: 専門用語にとらわれ過ぎた

 

D1は一般的なブドウ栽培からワイン醸造までを詳しく学ぶDiplomaプログラムの根幹となる分野です。

 

そのため、生物や化学分野の日頃は目にしないような英単語や専門用語がたくさん登場します。

 

(関連記事:WSET Diploma D1オンライン受講の感想② ~オンライン テキスト ブックの読み込み~


最初の私の後悔は、これらの英単語のスペルや、専門用語の意味を覚えるのにこだわりすぎてしまったことです。

 

これは、JSAワインエキスパートの試験対策で身についてしまった悪癖なのですが、専門用語を目にするとすぐにそれに飛びついて、その意味を覚えることに多くの時間を割いてしまうことです。ワインエキスパートの試験では、用語の意味を問う問題が多数く出題される傾向にあったためにこのような癖がついてしまっていました。

 

しかし、このような勉強法はDiplomaにおいては学習効率の悪さにつながってしまったと思います。Diplomaでも専門用語の意味を答える問題は出題されます。しかし、その配点はそれほど大きくありません。そのため、専門用語にあまりこだわり過ぎず、より多くの時間をブドウ栽培やワイン醸造に影響を与える要素の対策、つまりこの分野の高い理解を示すことに使うべきでした。

 

英単語についても同様です。使い慣れない英単語が出てくると、「この単語のスペルを試験で間違えたらどうしよう?」という気持ちが先行して、スペルの暗記に多くの時間を使いすぎてしまったような気がします。しかし多くの場合、それらの単語は、別の単語を使って言い換えることが可能だったと思います。例えば、「gelatine(ゼラチン)」という単語は、「fining agent(清澄剤)」というより使い慣れた単語で言い換えが可能です。

 

このような言い換えを活用して、単語学習にはあまり時間を割きすぎないような戦略が必要だったと思います。専門的な英単語を書けることは言いたいことに説得力を増すための加点材料になるかもしれません。しかし、そもそもこの分野を十分に理解しておらず、言いたいことが間違っていたらすべてが水の泡になってしまいます。

 

Diplomaの試験では、専門用語を知っていることは単なる出発点であり、それらを使っていかに自分の理解度の高さを示すことができるかの方がより重要であったと思います。

 

 

 

後悔②: さまざまな方向からの質問に対する準備ができていなかった

 

2つ目の後悔は、テキストブックに沿った見直しに多くの時間を割いてしまったことです。そのために、テキストブックの流れとは異なる方向からの質問に、十分な対策ができていませんでした。

 

D1のテキストブックは、おおむねブドウの育成・栽培プロセスに沿って説明が進みます。おそらく時系列で説明をした方が、読者に分かりやすいからだと思います。しかし、試験で出題される質問は、素直にこのような流れには沿っていません。

 

例えば「温度がブドウ育成・栽培に与える影響を説明せよ」などの、時系列とは関係ない方向からの質問が与えられます。そしてこの質問の答えはテキストブックの様々な場所に散らばっています。なぜなら、温度はブドウ育成・栽培のほとんど全てのプロセスで影響を与える要素であるからです。

 

私の試験対策はあまりにテキストブックの流れに従って行われていたために、このような「横串」の質問に対する備えは十分にできていませんでした。そのために、問題文を読んで面食らってしまうようなこともありました。

 

 

 

後悔③: 過去の試験レポートを熟読していなかった

 

これが一番の後悔なのですが、過去の試験レポートをあまり読まずに試験に臨んだことです。


(関連記事:WSET Diploma D1オンライン受講の感想⑦ ~D1認定試験の準備~

 

試験レポートを読むと過去の出題の傾向が分かります。具体的な出題内容がかかれているわけではありませんが、どんなタイプの問題が出題されたのかが分かります。また、受験生の多くがどのような問題でつまずいたのかも分かります。

 

今思えば非常に参考になるレポートだったのですが、テキストブックやセオリーガイダンスの読み込みに時間を優先させてしまい、このレポートの読み込みにかける時間を怠ってしまいました。

 

後悔②にもつながる部分なのですが、過去の試験レポートを読むことで、より多面的な試験対策ができていたのではないかと思っています。

 

 

 

PSAAにつながったと思うこと

 

一方で、私の試験対策にも良い面はいくつかありました。そのために準備が不十分だったにも関わらず、何とかPASSができたのだと思います。

 

・何を問われているのかがしっかり理解できた

 

これは主に、「セオリーガイダンス」に書かれている部分です。Diplomaでは質問文の動詞のタイプによって、どのような回答をしなければならないのかが決まります。

 

この対策はきっちりと行っていたので、大きく的を外した回答はなかったのだと思います。


(関連記事:WSET Diploma D1オンライン受講の感想⑦ ~D1認定試験の準備~


 

・予定通りの時間配分ができた

 

試験時間はあっという間に過ぎてしまいます。1問目にあまりに多くの時間を使いすぎると、最後の問題に取り掛かる前にタイムオーバーとなってしまいます。

 

試験では得点配分が明記されているので、基本戦略はその配点に見合っただけの時間を使うことです。

 

多少の想定外はありましたが、事前に予定をしていた通り、全ての質問に対してそれなりに時間を配分できたことは良かったのだと思います。

 

 

・満遍なく、全範囲がカバーできた

 

テスト対策ではテキストブックの全ての範囲をカバーして、満遍なく時間を割いて学習をしました。

 

そのために、試験前に特に弱点となる部分はありませんでした。

 

結果として、本試験において「何を書いたらよいかわからない」問題がなかったことが良かったのだと思います。



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JSAソムリエ・ワインエキスパート試験 、 WSET Level 3試験 で自分なりに工夫をした試験対策の暗記のコツを紹介したいと思います。 ワイン試験はとにかく理屈で覚えられないことが多い! 私はもともと物事を理屈で覚えるタイプだったのですが、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験をやってみて、そのような理屈で覚える方法が ほとんど役に立たない ことに気が付きました。 その理由は、 覚える量が膨大なこと 、そして、 理屈で覚えられることが非常に少なかったこと でした。 例えば、JSAソムリエ・ワインエキスパートでは、世界各国のワイン産地の名前、そこで造られるワインの名前、使われているブドウ品種、そこで造ることのできるワインの種類(赤、白、ロゼなど)と、その地域のワインを管理する法律など、聞き覚えの無い様なさまざまなことを覚えていきます。 さらに、各地域のワインにまつわる歴史上の出来事やその年号、ワインに合う料理、ワイン以外のお酒の材料やアルコール度数、日本酒の製法など、一見ワインとは直接関係のない事柄など、覚える量はほんとうに膨大です。 そして、これら覚えるべき内容のほどんどは、理屈で覚えられるようなことはほとんどありません。例えば、「なぜ、ドルドーニュ川という名称なのか?」や「なぜ、グラーヴAOCにロゼワインがないのか?」、「なぜ、AOC法制定が1935年なのか?」などにはほとんど明確な理由はなく、理屈で覚えられるようなことではありません。 WSETレベル3試験に関しても、暗記をする量はこれほど膨大ではありませんでしたが、それでも、暗記をすべき内容はそれなりにありました。 ワイン試験のための暗記のコツ JSA試験、WSET試験を通して、これまで膨大な量の暗記をするためにさまざまな方法を試行錯誤してきました。 その中で、暗記のコツとして特に重要だと思ったのは次の3つです。 ①記憶のペンキ塗りをする(何度も繰り返す) ②左脳と右脳をフル活用する ③繰り返し記憶を確かめる ではそれぞれを詳しく説明していきます。 ①記憶のペンキ塗りをする(何度も繰り返す) あるワインスクールの講師が言っていたのですが、ワインの勉強は 「ペンキ塗り」 と似たような作業です。 知識という名のペンキを