瓶内熟成の仕組みについて考察をしてみようと思います。
ある種のワインは瓶内熟成で品質が向上すると言われます。
瓶内熟成によってワインに変化が行われる原因は主に「緩やかな酸化反応」であると言われています。
なぜ緩やかな酸化反応が起こるかというと、ワインのコルク栓がわずかな量の酸素の侵入を許すからです。
この緩やかな酸化反応によって、ワインの「外観」、「香り」、「味」に変化が起こります。
「外観」の変化としては、赤白ワイン共に色味が茶色がかります。白ワインでは色が濃くなりますが、赤ワインは色が薄くなります。赤ワインでは、色素であるアントシアニンが酵母により吸収されたり、保存料であるSO2(二酸化硫黄)により脱色されるためだと言われています。
「香り」の変化としては、若いワインの持つ新鮮な果実の香りが徐々に失われ、ドライフルーツやナッツのような香りに変わります。また、醸造・熟成工程で加えられた澱の香りや樽香などが、品種本来の香りと一体化するとも言われます。
「味」の変化は主にタンニンの変化です。タンニンがより柔らかに、口当たりがよくなると言われています。一方で、酸味や、甘味、アルコール度には大きな変化はないと言われています。
では、このような変化が品質にどのような変化を与えるのかを考えてみたいと思います。
まず、全てのワインが瓶熟成によって品質が向上するわけではありません。多くのワインは瓶熟成によって品質が下がります。一般的に、瓶熟成によって品質が向上するワインには次のような要素を持っていると言われています。
・ポジティブに発展する香りや風味
・果実や風味の凝縮度
・風味(果実味と骨格[酸味・タンニン])のバランス
・将来のワインを支える骨格(酸味やタンニン)
以前の記事で、ワインの品質はBLICを使って評価ができると書きました。これは「バランス(Balance)」、「余韻(Length)」、「香り・風味の強さ(Intensity)」、「複雑さ(Complexity)」の頭文字を表します。
(関連記事:良いワインの条件とは?WSETのBLIC)
このBLICの評価軸に当てはめると、瓶熟成が可能なワインは、「バランス」が取れた、「強さと余韻(≒果実味)」が強い/長い、比較的品質の高いワインです。
そして、このようなワインは瓶熟成を経ることで、香りにはドライフルーツなナッツの「複雑性」が増し、香りや風味の一体化やタンニンがまろやかになることで「バランス」はより向上すると考えられます。
一方で、果実味やその他の香り・風味の強さや深みにはそれほど大きな変化はもたらされないため、「余韻」や「強さ」にはそれほど大きな変化は起こらないのではないかと思います。
つまり、瓶熟成によるワインの品質の向上とは、香りや風味の「複雑性」の増加と、香りやタンニンが一体化することによる「バランス」の向上のことを指すのではないかと思います。