ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation)とは、ワインに酸素を吹き込むワインの醸造手法です。
別名、ミクロ・ビラージュとも呼ばれます。また、ミクロ・オキシジェナシオンはフランス語読みですが、英語読みでは、マイクロ・オクシジェネーションです。
ミクロ・オキシジェナシオンはもともとは、タンニンの非常に強いワインの口当たりを良くするために開発された手法のようです。
ワインに酸素を吹き込むことで、タンニンはポリフェノールと結合し、口当たりがまろやかになると言われています。
ミクロ・オキシジェナシオンは通常、ステンレスタンクを用いて、アルコール発酵後、数か月の期間をかけて行うそうです。
これはいわゆる「ワインの熟成」手法の1つです。
通常のステンレスタンクの熟成では、樽熟成のような「緩やかな酸化」の効果は得られませんが、ミクロ・オキシジェナシオンを用いると同様の効果が得られると言われています。
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当然、樽香などが付加されることはないのですが、「緩やかな酸化」により次のような効果が得られます:
・ワインの色が安定する
・タンニンがまろやかになる
・口当たりがよくなる
・未熟な果実からの青い香りが和らげられる
・しかし、微生物(酢酸菌やブレタノマイセスなど)による汚染のリスクが高まる
樽熟成では、樽の購入や、樽の管理にかなりのコストがかかりますが、ミクロ・オキシジェナシオンでは樽熟成ほどコストがかからないことが大きなメリットです。
はじめのうちは、比較的価格の低いワインを中心に利用されていたミクロ・オキシジェナシオンですが、このようなメリットがあることから、徐々に高価なワインの醸造工程においても利用がされるようになってきているようです。
ちなみに、ミクロ・オキシジェナシオンの開発のきっかけとなったタンニンの強いワインとは、フランス南西地方のマディラン(Madiran)で造られるタナ(Tannat)いう名の黒ブドウから造られるワインです。
マディランのタナ種から造られるワインとは?
マディランは、フランス南西地方にあり、ボルドーとピレネー山脈の間くらいに位置します。
大西洋に近いため比較的雨が多く降る地域です。
しかし雨は主に冬から春に集中するため、夏場は暖かく日照も確保でき、秋は乾燥した気候となります。また、ピレネー山脈を越えてくる南風によるフェーン現象の影響も相まって、タナ種のブドウが十分に成熟する環境にある地域です。
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タナ種は、先述の通り、高いタンニンを持つことで知られる黒ブドウ品種です。
マディラン(Madiran)AOCでは、タナ種を主体とするブレンドワインが造られます。タナ種を60-80%含み、残りはカベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、土着品種のフェル(Fer)とブレンドされます。
色の濃さ、強いブラックベリーやカシスの香りに加え、熟成による樽の香り、しっかりとした骨格(高タンニン+高い酸味)、フルボディ、高めのアルコール度などが特徴のワインで、長期熟成向けのワインが造られてきました。
しかし、ミクロ・オキシジェナシオンなどの醸造技術の発展により、早飲みタイプのワインの製造も増えているそうです。