ドイツワインのブドウ品種は、シノニム(別呼称)や交配種が多くて何かと覚えるのが大変です。
そこで、品種の歴史を追って、1枚の絵にまとめて覚えるのはどうでしょうか?
今回は、ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau)についてまとめてみました。
この品種は、スイスのトゥルガウ州出身の、ヘルマン・ミュラー(Hermann Müller)という植物学者によって作られました。一説によれば、彼は自身をミュラー・トゥルガウと名乗っていたので、その名をそのままつけたのかもしれません。
彼はドイツのガイゼンハイムブドウ育種研究所でブドウの交配品種の研究をしていました。リースリング種(Riesling)の優れた香りや複雑性を保ちつつ、シルヴァーナー種(Sylvaner)の早熟という特徴を持つ新たな品種の開発を目指していたようです。
ドイツの寒い気候では、リースリング種が安定的に成熟しないために、新たな品種の開発が求められていたのではないかと思います。
そして開発されたのが、「ミュラー・トゥルガウ」です。最初は、リースリングとシルヴァーナーの交配品種だと思われていたようですが、DNA鑑定の結果、リースリングとマドレーヌ・ロイヤル(Madeleine Royale)の交配種であると判定されました。
マドレーヌ・ロイヤルは、食用や観賞用として栽培される白ブドウであり、超早熟という特徴を持っているようです。
マドレーヌ・ロイヤルの特徴を引き継いだおかげか、ミュラー・トゥルガウはリースリングよりも早熟という特徴を持ちました。
結局、リースリングの風味や複雑性を保持することはできませんでしたが、ミュラー・トゥルガウは早熟でどんな環境であっても多くの収穫をもたらすことができたので、瞬く間にドイツ全土に広がり、多くは低価格ワインの製造に利用されました。
低価格ワイン離れが進んだ近年は大きく栽培面積を減らしましたが、それでもその生産量は、リースリング種に次ぐ第2位を維持しています。
ミュラー・トゥルガウにはシノニムがあり、「リヴァーナー(Rivaner)」とも呼ばれています。この呼称の起源を調べてみようとおもったのですが、結局はよくわかりませんでした。