ハイパーオキシデーション(Hyperoxidation)とは、発酵前のマストを大量の酸素にさらす白ワインの醸造手法です。
酸素にさらす部分は、ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygénation)に似ていますが、パイパーオキシデーションはこれとは異なる手法です。
大きな違いは、ミクロオキシジェナシオンではワインを酸素にさらすのに対して、ハイパーオキシデーションではマストを酸素にさらします。
また、ミクロオキシジェナシオンは赤白どちらのワインに対しても行われ得るのに対して、ハイパーオキシデーションは基本的には白ワインに対して行われるようです。
ミクロオキシジェナシオンは、ワインの熟成プロセスとして行われますが、ハイパーオキシデーションは熟成プロセスではありません。
ハイパーオキシデーションは、発酵後の酸化に対してより安定したワインを造ること(また、それによりワインの熟成能力を高める)を目的に行われます。
白ワインの酸化による悪影響としては次のようなことが知られています:
・フルーティーな香りを喪失させる
・本来は意図していない香りを生み出す(アセトアルデヒドのナッツや傷んだリンゴの香りなど)
・ワインの色をゴールド→茶色と望まない色に変えてしまう
ワインを醸造したあとに急にこのような意図しない変化が起きないように予めある程度、酸素に接触させておく、そして、緩やかな酸化に対応できるワインを造る、というのがハイパーオキシデーションの意図するところだと思います。
過度に酸素から保護されたワイン醸造では、発酵プロセスにおいて酵母の健全な活動が妨げられ、不快な還元臭が発生することも知られています。ハイパーオキシデーションは、このような過度な還元環境のリスクも回避されます。
ハイパーオキシデーションのその他の効果
酸化に対する安定化に加えて、ハイパーオキシデーションには他にも効果があると言われています。それは、
・苦みや渋み成分の除去(未熟な果皮、種、茎などに由来するフェノール類など)
・不要な香り成分の除去(揮発性チオールやメトキシピラジンなど)
です。
香り成分の除去はアロマティック品種ではネガティブに作用してしまうために、シャルドネなどのニュートラル品種で採用されることが多いそうです。
ちなみにハイパーオキシデーションを行うと、マストは酸化の影響によって、茶色く変色してしまうそうです。しかし、アルコール発酵の過程でその原因となる成分は沈殿し、ワインの色は正常に戻るそうです。
そう言えば、昔見た「ボトル ドリーム カリフォルニアワインの奇跡(原題:Bottle Shock)」という映画の中で、出来上がったシャルドネのワインが全て茶色に変色し、その後まもなく正常な色に戻ったという場面がありました。
(映画はこちらの記事で紹介しています→ ワイン学習のモチベーションが上がる!(自粛期間にも)おすすめのワイン映画や読み物)
詳しくはわかりませんが、もしかしたら、ハイパーオキシデーションを経ていれば、このような現象は起こらなかったのかもしれないと思いました。