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ワイン名称に出てくるフランス語の「Côte」と「Coteaux」の違いとは?

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【ワインの表現用語】Bramble(キイチゴ)の香りとは?

ワインを表す用語の中には、普段の生活の中でなじみのないものが多く出てきます。

WSETでは全世界共通のワイン語彙(Wine-Lexicon)を用意しているためにそのような用語がたくさん登場します。

そのうちの1つである「Bramble(キイチゴ)」の香りがどのように使われるのかをいくつかのサイトを利用して調べてみました。

ちなみに、WSETではBramble(キイチゴ)は、Black fruit(黒系果実)の分類に属しています。



<Brambleに対する説明>
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I mostly see “brambly” as a way to describe Zinfandels or other red wines. A bramble is a wild, tangled, prickly blackberry bush. Used in a wine note, “brambly” refers to the whole bush, as if you were to put your face in it, thorns and all. Think of wild blackberry (or other berry) flavors mingling with a vegetal, green or spicy, peppery undertone or a slight wood note. Depending on the context, it can also refer to prominent, prickly, rustic tannins.

[source] https://www.winespectator.com/articles/what-does-the-wine-descriptor-brambly-mean-52844

・主に、ジンファンデルやその他の赤ワインを表す場合に使われる

・キイチゴは、野生の、もつれあった、とげのある、ブラックベリーの低木

・ワインの特徴で使われる場合は、低木全体を指す。つまり、植物、青さ、スパイス、呼称系の香り、わずかな木の香りの混ざった野生のブラックベリー(もしくはその他のベリー)

・場合によっては、突出した、刺激のある、粗いタンニンも表す


As a wine tasting note, bramble generally refers to the most commonplace example: blackberry bushes, which can be cultivated for their fruit or found growing wild in hedgerows.
...bramble makes for a very useful wine descriptor, because it can express conjoined black fruit, as well as herbaceous or even blossom notes.
The choice to describe a wine as having ‘bramble’ notes, rather than simply ‘blackberry’ ones, could mean that the wine has a black fruit character plus an overtone of leafiness.

[source] https://www.decanter.com/learn/advice/understand-tasting-notes-decoded-344920/

・ワインのテースティングノートでは、キイチゴは通常、ブラックベリーの低木を表すもっともありふれた例である。

・キイチゴは非常に便利なワイン用語である、なぜなら、黒系果実に加えて草や花の香りを表すことができるからである。

・ワインに「キイチゴ」の香りがあるとは、単に「ブラックベリー」の香りを持つというよりは、そのワインが黒系果実に加えて、葉のニュアンスがあることを表す。

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まとめると、Bramble(キイチゴ)とは、黒系果実に植物っぽさや、青っぽさが含まれる場合に用いられているようです。

ジンファンデルは同じ房の中で果実が不均一に育つがために、完熟の果実とまだ青さの残る果実の両方が含まれることがあることを考えると、Bramble(キイチゴ)という表現用語が使われていることは納得がいきます。

WSET L3の講義でも、ローダイのジンファンデルで、Bramble(キイチゴ)の香りが選ばれていました。



ワインスクールに通っても、香り表現をしっかりと言語化してくれる講師はあまり多くはないので(個人的な印象ですが...)、海外のサイトなどを利用して自主調査をすることもWSETでは必要な作業かもしれません。


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WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

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ソムリエ・ワインエキスパート試験で苦労をした年号の覚え方

WSETと比較をしてみると、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験で特徴的な部分は、ワインに関する歴史が問われることでした。 (関連記事: WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ? ) ワインやワイン産地には興味があるんですが、正直、ワインの歴史にはそこまで興味を持てませんでした。ワイン愛好家にとって重要なことは、おいしいワインを見つけることや、おいしいワインを飲むことであり、ワインがどんな歴史をたどってきたかなんて近代を除いてそんなに重要なことではないと思えるからです。 「歴史なんか覚えて、何の役に立つの?」正直こんな気持ちでした。 だから、いざ覚えようと思っても、興味のないことはなかなか覚えられません。ワインの色などは語呂合わせを駆使して覚えてきたのですが、年号関連は語呂を作っても同じような語呂ばかりになってしまい、この方法もあまり役に立ちませんでした。 そこで始めたのが、正確な年号を覚えるのはとりあえず置いておいて、年号の順番を覚えるというやり方。特定のトピックにおいて、関連した年号を1つの図にまとめていくと、何となく時代背景が見えてきて、少しずつ頭に入ってくるような気がします。さらに、キーとなる年号だけ覚えておけばその前後関係を覚えておくだけで、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験は4択なので十分対応可能だと思いました。 例えば原産地管理法の年号は、ヨーロッパ→北米・南ア→南米・豪州→NZ・日本のように広まっていくのがわかります。 また、ブドウの伝来もヨーロッパ→南米→アメリカ・南ア→豪州→NZ→日本のように広がっています。 そして、日本も長野・山梨から始まり、北海道や山形に広がっていくのがわかります。 正確な年号を語呂合わせで覚えるよりも、こちらの方が時代背景がわかるので後々役に立つ知識になるとおもいました。 このような類似のトピックで情報を1つの図にまとめていくやり方は、その他覚えにくい生産量のデータや、気候区分を覚えるのにも役に立ちました。単なる数字を覚えるよりもずっと楽に暗記ができました。 例えば、フランス各地の栽培面積とワイン生産量。 そして、各地の気候区分。 試験中に具体的な数字が浮かばなくても、なんどなくこれらの図が頭に浮か...

似て非なるワイン ~イタリアとギリシャの「ヴィンサント」の違いを考察~

イタリアとギリシャでは 「ヴィンサント」 という名前のワインが造られています。 どちらも干したブドウから造られる甘口ワインという似た特徴を持っていますが、実は異なるワインです。 そこで、イタリアとギリシャの「ヴィンサント」の違いを考察してみたいと思います。 生産地域 まずは生産地域の違いです。 イタリアのヴィンサントは主にトスカーナ州で製造されています。しかし、一部トレンティーノ・アルト・アディジェ州でも製造されているようです。 一方で、ギリシャのヴィンサントはサントリーニ島で製造されています。 名称の違い イタリアのヴィンサントは 「Vin Santo」 と2語で表記されます。 一方で、ギリシャのヴィンサントは 「Vinsanto」 と1語で表記されます。 製造方法の違い 製造工程を見てみると、2つのヴィンサントには大きな違いがみられます。 イタリアのヴィンサントには陰干しされたブドウが使われます。この陰干しの方法は、アパッシメント・メソッドと呼ばれます。 (関連記事: アパッシメント(appassimento)とパッシート(passito)の違いに関する考察 ) 一方で、ギリシャのヴィンサントでは、天日干しをした遅摘みのブドウが使われます。 両者ともにオーク樽での酸化熟成が行われますが、イタリアでは小さめの樽で、ギリシャでは、大きめの樽で長期熟成が行われます。 ブドウ品種の違い イタリア、特に主な産地であるトスカーナでは、ヴィンサントの主要品種としてトレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)とマルヴァジア(Malvasia)が用いられています。 トレンティーノ・アルト・アディジェ(トレンティーノDOC)では、ノジオーラ(Nosiola)という品種が主要品種として用いられています。 一方で、ギリシャ(サントリーニ)のヴィンサントの主要品種は、アシルティコ(Assyrtiko)です。 トレッビアーノ・トスカーノとアシルティコに共通している点は、強い甘味とバランスをとるための高い酸味を持っているという点です。多くのブドウは成熟とともに徐々に酸味を失いますが、両品種ともに成熟しても強い酸味が保持されます。 ヴィンサントは基本的には白ブドウ品種から造られていますが、トスカーナでは黒ブドウ品種サンジョヴェーゼからも製造されており、このワインはオッキオ・...

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

JSA試験、WSET試験を通して酒精強化ワインであるシェリー(Sherry)を学んできましたが、ずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、「 パロ・コルタド・シェリーとは何なのか? 」です。 シェリーとは、スペイン・アンダルシア州カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとその周辺地域で生産される酒精強化ワインのことで、ポート・ワイン(ポルトガル)、マデイラ・ワイン(ポルトガル)とともに、著名な酒精強化ワインと言われています。 シェリーには、フィノ(Fino)/マンサ二ーリャ(Manzanilla)、オロロソ(Oloroso)、アモンティリャード(Almontillado)、 パロ・コルタド(Palo Cortado) 、ペドロヒメネス(Pedro Ximenez)など様々な種類があります。 しかし、JSA、WSETどちらのテキストにおいても、 パロ・コルタド に関する記述 はとても少なく、製法に関する記述もなく、漠然とその特徴が書かれているだけでした。 その特徴は、 ・希少であること ・アモンティリャード(Amontillado)の香りを持つが、味はオロロソ(Oloroso)のボディとこくを持つ という2点だけです。 ずっと疑問に思っていたことを解決すべく、製法を中心にパロ・コルタドについて調べてみました。 参考にしたのは、次のサイトです: https://www.sherrynotes.com/sherry-types/palo-cortado/ https://www.sherrynotes.com/2015/background/palo-cortado-mystery/ まずは、パロ・コルタドの発祥から。パロ・コルタドは、もともとフィノとしては不適合として除外された樽からできたそうです。 <パロ・コルタドの発祥> ------------------------------------------------------------------------ ・パロ・コルタドは、もともとフィノ(Fino)の製造から偶然生まれたワインと言われている。 ・フィノシェリーでは、樽での熟成中にフロールと呼ばれる産膜酵母が発生し、フロールのもとで熟成される。しかし、フィノ樽の中には...

クローン・セレクションとマサル・セレクションの違いと特徴を調べてみました

ワインの学習をしていると、 「クローン・セレクション(clonal selection)」 と 「マサル・セレクション(mass selection)」 というブドウ樹の選抜方法がでてきます。 良いワインは、良いブドウ樹から収穫されるブドウから造られます。そのために、これらのブドウ樹の選抜方法は、ブドウ栽培において重要な要素となります。 しかし、ワイン書籍においてこれらは比較的簡易に説明がされていることが多く、私はこれまでしっかりと理解をすることができませんでした。 今回、様々な書籍に目を通す機会があり、少し理解が進んだので、自身の理解を深める意味も込めて、この2つがどのような特徴を持っているのかをまとめてみました。(一部理解が足りず誤っている部分があるかもしれません) クローン・セレクション(clonal selection) これはブドウ樹の選抜を、クローン単位で行っていくという考え方のようです。クローンとは、同一遺伝子を持つブドウ樹の集合のことです。 クローンは「ピノノワール クローン115」のような番号で管理されており、それぞれのクローンは独自の特徴を持っています。例えば、高級ワインに向いた小さな実をつけるという特徴や、特定の病気に強いという特徴などです。 ブドウ栽培者は、自分の希望にあったクローンの苗木を選び、それを新たにブドウ樹を育てる畑に植えていきます。 畑に植えられる苗木はすべて同じ遺伝子を持ったクローンなので、そこから育つブドウ樹はすべて同じものになるはずです。 しかし、ブドウは突然変異を起こしやすい植物であり、他のブドウ樹とは異なる特徴をもったブドウ樹が育つ場合があります。例えば、実の大きさが違ったり、色が違ったり、病気や環境に対する耐性が異なるなどです。 この特徴が好ましい特徴の場合、この突然変異を起こしたブドウ樹は新たなクローンとして管理され、異なる番号で識別されます。 このような、特別変異によってより好ましいブドウ樹を選抜していく方法を「クローン・セレクション」というようです。 比較的新しい選抜方法ですが、多くのブドウ栽培者が用いている方法であり、新たなブドウ樹を育てる栽培者の多くは苗木屋から特定のクローンを購入するようです。 この手法の良いところは、畑一帯に同じクローンが植えられるため、萌芽、開花、結実などのタイミングが均一で、ブドウ樹の...