マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>
「菩提樹」は、JSAソムリエ・ワインエキスパートの白ワイン用の回答用紙でよく登場する香りです。
リースリング特有の香りを表す重要な香り用語なのですが、私は長らく、この香りがどんなものなのかがわからず、そのワインがリースリングだと思ったら、得点稼ぎのために「菩提樹」を選ぶという使い方をしていました。
実際に、私が分析をした範囲ではワインスクールのJSA試験対策においてリースリングのテイスティングシートでほぼ毎回「菩提樹」が選ばれていました。(下の回答シートは典型的なリースリングの回答例です)
しかし、このままでは良くないと思い、「菩提樹」に関して調べてみてこれが何なのか、どんな香りなのか自分なりに研究をしてみました。
リースリングはワインにおいては重要な品種で、JSA試験において頻出の品種です。なので、この品種特徴について把握をしておくことはテイスティング能力を上げるうえで大きな助けになると思います。
私がワインエキスパート試験を受けたときには、実際に、ドイツのリースリングが出題されました。なんとか、その時は何とか品種・産地ともに当てることができました。
菩提樹とは何か?
菩提樹で検索をすると、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木インドボダイジュ」、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木ベンガルボダイジュ」、「中国原産のシナノキ科シナノキ属の落葉高木ボダイジュ」、「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム=リンデン)」が見つかります。
色々調べてみた結果、最後にあげた「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム=リンデン)」が、ワインの香りにおける「菩提樹」に該当しそうだとわかりました。
その理由は、海外の様々なウェブサイトで、リースリングの品種特有の香りとして、「リンデン」があげられていたからです。
リンデンとは何か?
リンデンについて説明しているサイトがあったので、引用をしました。
ヨーロッパではハーブとして使われているようです。
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リンデンはヨーロッパ原産のハーブで、和名はセイヨウボダイジュといいます。お釈迦様が悟りを開いたことで有名な「菩提樹」の仲間です。
リンデンという呼び名はドイツ語で、英語ではライム、フランス語ではティエールと呼ばれています。ちなみに英語の呼び名のライムは、柑橘系のライムとは別のもので関係はありません。
リンデンの木は高さ40ⅿにも成長する高木で、夏には小さいクリーム色の花を垂れ下がるように咲かせます。寒さに強く高温多湿が苦手な性質で、日本では北海道に多く分布しています。
リンデンのハーブには2種類あり、花や葉、苞を使用したものを「リンデンフラワー」、木の部分を使用したものを「リンデンウッド」と呼んでいます。
(source) https://linktea.jp/herbtea/linden/
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リンデン(=菩提樹)の香りとは?
リンデンの香りについては、「深みのあるフローラルな香り」や「上品な甘い香りで、マスカットのよう、とか、フルーティーで、あわい甘みがある」と説明されることがります。
しかし、どのような香りかは実際に嗅いでみないとわからないと思います。
実際の植物を探したいところですが、なかなか都合よく見つかるかどうかはわからないので、おそらく、リンデン製品を試してみるのが最も早いのではないかと思います。
リンデン製品としては、ハーブティーやアロマオイルが販売されています。
このアロマオイルは「誰もがうっとりするほど芳醇で麗しく、深みのある香り」と説明されています。
リンデンの香り成分は?
リンデン(=菩提樹)の香りは「ホトリエノール」という物質に由来するようです。
「ホトリエノール」とは、リースリングに含まれる複数ある「テルペン」という化学物質の1つであるそうです。
テルペンとは、もともと精油の中から大量に見つかった炭素化合物です。
<リンデンの香りと、ホトリエノールに関する説明の引用>
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LIME TREE (LINDEN) - Youthful Riesling. Hotrienol.
(source) https://wine-pages.com/columnist-articles/wine-tastes-and-flavours/
・リンデン(ライムツリー)は、若いリースリングの香り。ホトリエノール(Hotrienol)。
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RIESLING’S TERPENE PROFILE (リースリングのテルペンのプロファイル)
RIESLING’S PRIMARY TERPENES(リースリングの主要なテルペン): Hotrienol
BASIC OLFACTORY DESCRIPTOR(主な嗅覚特徴): Linden (Lime tree)
BOTTLE-AGED AROMATIC POTENTIAL & NOTES(瓶熟成の香りの可能性と備考):
Found in the Japanese Ho Tree (Cinnamomum camphora), hotrienol is a major aromatic component of the Ho leaf oil, and grapefruit peel.
(日本のクスノキで見つかったホトリエノールは、クスノキの葉のオイルおよびグレープフルーツの皮の主要な成分である)
[source] https://wine-pages.com/columnist-articles/tom-stevenson-ponders-on-rieslings-character-and-petrol-aromas/
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テルペンの香りは若いリースリングワインの特徴であり、瓶熟成とともに減少すると言われています。そのため、熟成を経た古いリースリングではあまり感じられないようです。
<リースリングの熟成によるテスペンの減少に関する引用>
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Terpenes - The concentration of these decrease as the Riesling ages, while other derivatives increase with age – creating Riesling’s more developed secondary characters.
TDN - “The ‘aged’ character in Riesling is linked to the formation of the compound TDN (1,1,6-trimethyl-1,2-dihydronaphthalene). TDN is created from flavour compounds called terpenes by acid hydrolysis. TDNs increase in concentration when grapes are exposed to sunlight and warm temperatures. High concentrations of TDN are also linked to bottle age.
(source) https://www.poonawatta.com.au/riesling-the-vibrance-of-youth-and-complexity-of-age/
・テルペンの集積はリースリングの熟成とともに減少する。
・テルペンは酸加水分解によりTDN(トリメチルジヒドロナフタレン)になる。TDNは、ブドウが太陽光や暖かい温度にさらされた時や、瓶熟成されたときに集積される。
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まとめ
リースリング特有の「菩提樹」の香りを知るには、リンデンの木・花の香りを試したり、リンデンのハーブ製品を試してみるのが良さそうです。
JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、「菩提樹」は「花」の香りに分類されるので、特にリンデンフラワー製品を試してみるのが良いかもしれません。
この「菩提樹」の香りは、特に若いリースリングを特徴づける香りのようです。そのため、古いリースリングではこの香りは弱くなるかもしれません。
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