タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>
醸造法で分けるとワインには次の4つのタイプがあるのですが、
① Still wine (スティルワイン)
② Sparkling wine (スパークリングワイン)
③ Fortified wine (フォーティファイドワイン/ 酒精強化ワイン)
④ Flavored wine (フレーヴァードワイン)
VDNとVDLは、フランスを代表するフォーティファイドワイン(③)として登場します。
VDNはVins Doux Naturels (ヴァン・ドゥー・ナチュレル = 天然甘口ワイン)、VDLはVins de Liqueurs (ヴァン・ド・リキュール = リキュールワイン)の略称です。
VDNの代表的なワインは「ミュスカ・ボーム・ド・ヴニーズ」で、一方、VDLは「ピノー・デ・シャラント」などです。
名前も似ており、紛らわしいこの2つのワインですが、大きく違うのは酒精強化のタイミングです。
酒精強化とは、ワインにコクや保存性を持たせるために醸造中にブランデーやアルコールを添加する処理のことです。
VDNでは酒精強化を果汁の発酵中に行うのに対して、VDLでは未発酵の状態(一部例外もある)で行います。
主なフォーティファイドワインの酒精強化のタイミングをまとめてみました。
VDNでは酒精強化が行われることで、ワイン酵母が活動できなくなりアルコール発酵はこのタイミングで止まります(このことを、Mutage ミュタージュといいます)。甘味を残すために醗酵を途中で止めるという製法は、一般的な甘口ワインと同様です(ただし、一般の甘口ワインでは、発酵を止めるための方法としてアルコール添加は行いません)。
このことから、VDNの「天然の糖から造られた甘口ワイン」というネーミングが何となく関連付けられます。
一方で、VDLは基本的に、ブドウジュースにアルコールを加えただけの飲み物です。ワインの定義を「ブドウの果汁を発酵させたアルコール飲料」とすると、ワインと言えるかどうかも怪しいです。むしろ、蒸留酒に風味成分や甘味を加えるリキュールに近い製法です。
これが理由ではありませんが、VDLの名前にリキュールが含まれていると、なんとなくその製法と関連付けるのが簡単です。