マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>
醸造法で分けるとワインには次の4つのタイプがあるのですが、
① Still wine (スティルワイン)
② Sparkling wine (スパークリングワイン)
③ Fortified wine (フォーティファイドワイン/ 酒精強化ワイン)
④ Flavored wine (フレーヴァードワイン)
VDNとVDLは、フランスを代表するフォーティファイドワイン(③)として登場します。
VDNはVins Doux Naturels (ヴァン・ドゥー・ナチュレル = 天然甘口ワイン)、VDLはVins de Liqueurs (ヴァン・ド・リキュール = リキュールワイン)の略称です。
VDNの代表的なワインは「ミュスカ・ボーム・ド・ヴニーズ」で、一方、VDLは「ピノー・デ・シャラント」などです。
名前も似ており、紛らわしいこの2つのワインですが、大きく違うのは酒精強化のタイミングです。
酒精強化とは、ワインにコクや保存性を持たせるために醸造中にブランデーやアルコールを添加する処理のことです。
VDNでは酒精強化を果汁の発酵中に行うのに対して、VDLでは未発酵の状態(一部例外もある)で行います。
主なフォーティファイドワインの酒精強化のタイミングをまとめてみました。
VDNでは酒精強化が行われることで、ワイン酵母が活動できなくなりアルコール発酵はこのタイミングで止まります(このことを、Mutage ミュタージュといいます)。甘味を残すために醗酵を途中で止めるという製法は、一般的な甘口ワインと同様です(ただし、一般の甘口ワインでは、発酵を止めるための方法としてアルコール添加は行いません)。
このことから、VDNの「天然の糖から造られた甘口ワイン」というネーミングが何となく関連付けられます。
一方で、VDLは基本的に、ブドウジュースにアルコールを加えただけの飲み物です。ワインの定義を「ブドウの果汁を発酵させたアルコール飲料」とすると、ワインと言えるかどうかも怪しいです。むしろ、蒸留酒に風味成分や甘味を加えるリキュールに近い製法です。
これが理由ではありませんが、VDLの名前にリキュールが含まれていると、なんとなくその製法と関連付けるのが簡単です。