数年間にかけてワインの学習をしてきた経験から、ワインの学習範囲を、独断と偏見で、英語学習に例えてみました。
このような例えを用いることで、ワイン学習をしたことのない人に、少しはワインの学習範囲の構成が伝わるかもしれません。
まず、ワイン学習において最初に圧倒されてしまう「ワイン名称やワイン用語」は、「英単語」のようなものだと思います。これを知らないと、ワインについて語ることさえできません。
次に、ワイン学習を始めたばかりではおそらくとっつきにくい「ワイン法」は、「英文法」のようなものだと思います。ブドウ栽培やワイン醸造は、すべでこの「ワイン法」に定められたルールに則っておこなわなければなりません。AOCやPDO、GIなどのルールや、各ワインに使われるブドウ品種や、製造可能色(赤・白・ロゼなど)もこの範囲に含まれると思います。
「ワイン理論」は、ワインを読み解き、なぜそのようなワインが造られるのかを説明するための理論です。「ワイン理論」による「ワインの読解」や「ワインの説明」は、「英文読解」や「英作文」にあたる部分だと思いまます。
最後に「テイスティング」は、ワインを感じ取る学習なので、「英会話」や「リスニング」にあたる分野だと思います。正確に、ワインの声を感じ取る力が養われます。
これをもとにいくつかの資格の特徴を考察してみると?
日本で最もメジャーなワイン資格であるJSAのソムリエ・ワイン資格を、英語学習の例えにあてはめてみようと思います。これもあくまでも独断と偏見です。
私の印象では、JSA試験は「英単語」と「英文法」にあたる、「ワイン名称・ワイン用語」と「ワイン法」に非常にウェイトを置いた試験だと思います。
なぜならば、この試験では、ワイン名称やワイン産地の名称に加えて、大量のワインについての主要品種や生産可能色を覚えるという膨大な暗記を行う必要があるためです。
一方で、個々のワインを読み解いたり、ワインを説明するための「ワイン理論」にはほとんどといってよいほどウェイトがかけられていない印象です。
「テイスティング」はある程度重視されてるのですが、「ワイン理論」の部分がすっぽりと抜けているので、「ワイン名称・ワイン用語/ワイン法」と「テイスティング」の関係性が少しわかりにくいカリキュラムだと思いました。
しかし、「英単語」や「英文法」の試験のように絶対的な正解を求めやすい問題が出しやすいので、マーク式中心の試験内容で多くの受験生を対象に試験が開催できるのだと思います。
ただし繰り返しになりますが、「ワイン理論」の部分がすっぽり抜けてしまっていることから、「知識だけのワイン有資格者」を生みやすい試験なのではないかと感じています。
一方で、WSETの試験では、レベル2までは知識に対する比重が高い気がするのですが、レベル3からは「ワイン理論」の部分もしっかり学びます。
JSA試験に比べると、学習対象のワインの種類や生産地域の数は少ないのですが、英語で言うと、英単語、英文法、リーディング、ライティング、リスニングをバランスよく学んでいく印象です。
そのため、ワイン名称・ワイン用語の暗記、ワイン法、ワイン理論、テイスティングまでのつながりが分かりやすいカリキュラムになっている気がします。
一方で、学習の範囲としては、あまりマイナーな産地や、マイナーなワインは扱わないので、知識としてはJSAの有資格者にはかなわないかもしれません。
また、試験は論述形式が大きなウェイトを占めるので、いっぺんに大量の受講者を受け入れられるタイプの試験ではないように思われます。実際に試験の結果を得るまでには、JSAよりも時間がかります。
絶対的な正解を求める問題よりも、理解度を測る問題が多いので、受験生にとっては単なる詰込みでは対応が難しい試験だと思います(特にレベル3以降)。
誰もが経験したことのある英語学習に例えてみると、あまりワインに馴染みのない初心者向けにも、ワイン学習やワイン資格の特徴が伝わりやすいのではないかと感じました。