今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
イタリアのDOCG暗記は大変な作業ですが、トスカーナ州はその中でも暗記が大変な地域の1つです。
その理由は、この州が、ピエモンテ州、ヴェネト州に次いで、3番目に多いDOCGの数を抱えているためです。
私がJSAソムリエ・ワインエキスパートを受験した時は、トスカーナ全体で11のDOCGがありました。JSA試験の場合、トスカーナのDOCGは、大体の位置を含めて、全て暗記しておくことがおすすめです。(トスカーナ、ヴェネト、ピエモンテのDOCGは頻出です)
一見大変なトスカーナ州のDOCG暗記作業ですが、暗記をする際は地域を3つに分けるのがおすすめです。
3つの地域は、「北部のアペニン山脈の麓の丘陵地帯」、「南部の温暖な気候の丘陵と渓谷」、そして、「沿岸部の平野」です。
各地域のDOCG
【北部のアペニン山脈の麓の丘陵地帯】(DOCG4つ)
この地域には、ピサ市、フィレンツェ、シエナの3つの都市に広がる広大なキアンティ(Chianti)DOCGの生産地域が広がります。
キアンティの中心部のより標高の高い地域には、キアンティ・クラシコ(Chianti Classico)DOCGが存在します。ここでは、ブドウの成熟が遅くなり酸味が増してその結果、より質の高いワインが生まれます。気をつけなければならないのは、キアンティ・クラシコDOCGは、キアンティDOCGに含まれる小地区ではなく、独立したDOCGであるということです。
キアンティ・クラシコのDOCGの西側には、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ(Vernaccia di San Gimignano)DOCGが位置します。これはトスカーナで唯一白ワインを生産できるDOCGです。
さらに、この地域の北部には、カルミニャーノ(Carmignano)DOCGが位置します。これは、1716年にトスカーナ大公コジモ3世によって、世界最初の原産地保護の例として生産地域の境界線が引かれた4つのワイン産地の1つです。他の3つのワイン産地は、キアンティ、ポミーノ(Pomino)、ヴァル・ダルノ・ディ・ソプラ(Val d'Arno di Sopra)です。
【南部の温暖な気候の丘陵と渓谷】(DOCG4つ)
トスカーナ南部のブドウ栽培地は、北部の畑よりも標高が低く、気候も温暖になります。一方で、南西から吹く冷たい海洋性の風により温暖な気候は緩和されます。
この地域の伝統的なDOCGワインは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)DOCGとヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ(Vino Nobile di Montepulciano)DOCGです。
さらに南部には、比較的新しいDOCGのモンテクッコ・サンジョヴェーゼ(Montecucco Sangiovese)、モレッリーノ・ディ・スカンサーノ(Morellino di Scansano)が存在します。
この地域のDOCGも全てサンジョヴェーゼを主体とした赤ワインです(モレッリーノ・ディ・スカンサーノの主要品種であるモレッリーノ(Morellino)はサンジョヴェーゼの亜種と言われています)。南部のワインは温暖な気候のおかげで、北部のワインよりも凝縮されてボディも重厚になることが多いと言われています。
偶然なのか、この地域のDOCGは名称が「Mo」から始まるものが多いのも特徴です。
【沿岸部の平野】(DOCG3つ)
沿岸地域は比較的平たんで、ブドウ畑は海風によって冷やされます。ここは、「スーパー・タスカン(Super-Tuscan)」(モダンスタイルのイタリアワイン)が誕生した地であり、ボルドー原産の黒ブドウ品種やその他多数の国際的な品種が広く栽培されていることが特徴です。また、新しいDOCGが多いことも特徴です。
ここには、ロッソ・デッラ・ヴァル・ディ・コルニア/ヴァル・ディ・コルニア・ロッソ(Rosso della Val di Cornia/ Val di Comia Rosso)DOCG、スヴェレート(Suvereto)DOCGが存在します。両者ともに、国際品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロの使用が認められています。
エルバ島には、エルバ・アレアティコ・パッシート/アレアティコ・パッシート・デッレルバ(Elba Aleatico Passito/ Aleatico Passito dell'Elba)DOCGというアレアティコ(Aleatico)を主体とした陰干しブドウから造った甘口ワイン(Passito)のDOCGがあります。
主要なワインの熟成規定
トスカーナのDOCGワインのいくつかには熟成規定があります。
JSAワインエキスパート試験の時にはほとんど覚えずに試験に臨みましたが、WSETレベル3の場合は出題される可能性が高いのが、この主なワインの熟成規定(年数)です。
主要なワインの熟成規定を紹介します。
キアンティ・クラッシコDOCG
キアンティ・クラッシコDOCGのワインは、販売前に12ヵ月間熟成させなければなりません。
キアンティ・クラッシコDOCGの中には、キアンティ・クラッシコ・リゼルヴァ(Reserva)と呼ばれる通常の熟成規定よりも長く熟成したワインがありますが、これを名乗るためには24ヵ月の熟成が必要です。さらにそのうち少なくとも3ヵ月は瓶熟成が必要とされます。
キャンティ・クラッシコDOCGの最高水準のワインは、キアンティ・クラッシコ・セレツィオーネ(Gran Selezione)と呼ばれ、単一エステートのブドウから造られます。このワインは、最低30ヵ月の熟成と、そのうち少なくとも3ヵ月の熟成規定が定められています。
その他の主なDOCGの熟成期間
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCGのワインは、規定によって、サンジョヴェーゼ種だけで造り、販売前に最低5年間の熟成期間を経る必要があり、そのうち2年はオークで熟成させなければならないことが定められています。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノDOCGのワインは、サンジョヴェーゼ種と他の許可されている品種をブレンドして造ることができ、販売前に最低2年間熟成させなければならないことが規定されています。