タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>
ワインのテイスティングでずっと違和感のあることがありました。
それは、ワインをブドウ以外の果物で例えるということです。
ブドウから造られたお酒なのに、なぜブドウ以外の香りで例えられるんだろう?
ずっと不思議に思っていましたが、これもワイン業界のしきたりのようなものだと思い、あまり深くは考えていませんでした。
しかし、調べてみるとワインからは実際に他の果物の香りがするようなのです。
その主な原因物質は、「エステル(Ester)」です。
エステルとは、酸とアルコールの反応の結果生まれる化学物質であり、その多くはパイナップル、バナナ、ストロベリー、ラズベリーなどの顕著な果物の香りを持ちます。
例えば、ワインにおける主要なエステルは「酢酸エチル(ethyl acetate)」で次のような化学反応で生成されます:
CH3CO OH + H OCH2CH3 → CH3COOCH2CH3 + H2O
(acetic acid) (ethanol) (ethyl acetate) (water)
エステルは、新鮮なブドウ果汁の中にも含まれていますが、そのほとんどはワインの発酵と熟成の工程を経て造り出されるそうです。
ブドウ果汁にはもともと酒石酸とリンゴ酸という天然の酸が存在しますが、アルコール発酵やマロラクティック発酵を経ることで、乳酸とコハク酸という2つの主要な酸が造られます。さらに、プロピオン酸、ピルビン酸、グリコール酸、フマル酸、ガラクチュロン酸(ガラクツロン酸)、粘液酸、シュウ酸などもこの工程中に生成されます。これらのさまざまな酸はアルコールと反応し、エステルを形成します。
アルコール発酵の温度が低すぎると、過剰な揮発性のエステルが取り込まれ、エステルのパイナップルの香り(エステル香)が顕著になります。
エステルの多くは瓶熟成などの嫌気的熟成中に形成されるようです。そして、これらのエステルは、加水分解による酸とアルコールへの分解と、再結合を繰り返し、複雑で、フルーティーな、魅力的な香りを造り出します。
このように、ワイン中にはエステルという香り物質が形成され、中には形容される実際の果物と同じ香り物質を持つものもあるようです。