今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
ワインのテイスティングでずっと違和感のあることがありました。
それは、ワインをブドウ以外の果物で例えるということです。
ブドウから造られたお酒なのに、なぜブドウ以外の香りで例えられるんだろう?
ずっと不思議に思っていましたが、これもワイン業界のしきたりのようなものだと思い、あまり深くは考えていませんでした。
しかし、調べてみるとワインからは実際に他の果物の香りがするようなのです。
その主な原因物質は、「エステル(Ester)」です。
エステルとは、酸とアルコールの反応の結果生まれる化学物質であり、その多くはパイナップル、バナナ、ストロベリー、ラズベリーなどの顕著な果物の香りを持ちます。
例えば、ワインにおける主要なエステルは「酢酸エチル(ethyl acetate)」で次のような化学反応で生成されます:
CH3CO OH + H OCH2CH3 → CH3COOCH2CH3 + H2O
(acetic acid) (ethanol) (ethyl acetate) (water)
エステルは、新鮮なブドウ果汁の中にも含まれていますが、そのほとんどはワインの発酵と熟成の工程を経て造り出されるそうです。
ブドウ果汁にはもともと酒石酸とリンゴ酸という天然の酸が存在しますが、アルコール発酵やマロラクティック発酵を経ることで、乳酸とコハク酸という2つの主要な酸が造られます。さらに、プロピオン酸、ピルビン酸、グリコール酸、フマル酸、ガラクチュロン酸(ガラクツロン酸)、粘液酸、シュウ酸などもこの工程中に生成されます。これらのさまざまな酸はアルコールと反応し、エステルを形成します。
アルコール発酵の温度が低すぎると、過剰な揮発性のエステルが取り込まれ、エステルのパイナップルの香り(エステル香)が顕著になります。
エステルの多くは瓶熟成などの嫌気的熟成中に形成されるようです。そして、これらのエステルは、加水分解による酸とアルコールへの分解と、再結合を繰り返し、複雑で、フルーティーな、魅力的な香りを造り出します。
このように、ワイン中にはエステルという香り物質が形成され、中には形容される実際の果物と同じ香り物質を持つものもあるようです。