チリのワイン産地は南北に長く広がりますが、地形的な特徴の影響を受けるために、実は南北よりも東西にかけて、気候や土壌の多様性が非常に高いと言われています。 従来の原産地呼称では、この東西にかけてのワインスタイルの特徴の違いが十分に表現されていませんでしたが、2011年から、この問題を解決するための新たな付加的な原産地呼称が加えられました。 それが、「コスタ(Costa)」、「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」、「アンデス(Andes)」の3つです。 これは従来の原産地呼称に付加的に加えられるもので、例えば「Aconcagua」で造られたワインに対して、「Aconcagua Costa」、「Aconcagua Entre Cordilleras」、「Aconcagua Andes」のようにラベルに表記されるようです。 上図のように、「コスタ」は海の影響を受ける地域、「アンデス」はアンデス山脈の影響を受ける地域、そして「エントレ・コルディリェラス」はその間の地域を表します。 この新たな原産地呼称の仕組み自体はシンプルなのですが、それぞれの名前、特に「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」を覚えるのが厄介です。 そこで、これを覚えるための語呂合わせを考えてみました。 エントレ・コルディリェラスは少し苦しいですが、英語のスペルも覚えられるように、それに合わせた語呂合わせにしてみました。 <了>
赤ワイン、白ワインにはブドウの果皮からの成分抽出を促すためのさまざまな醸造の選択肢(オプション)があります。
しかし、どれも名称や手法が似ていて、覚えるのにとても苦労をした経験があります。
例えば昔、JSAソムリエ・ワインエキスパートの模擬試験で、次のような問題が出題されました。
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Q. 次の中から、果醪中の種子からタンニンの抽出を強めることができる醸造法を1つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Cold maceration
2. Maceration finale a chaud
3. Cryo-extraction
4. Micro-bullage
(答え: 2)
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この問題を見て、当時は面食らってしまって、当てずっぽで回答をしたのを覚えています。。
面食らってしまった理由は、何よりも、醸造理論をしっかりと理解していなかったからです。
そんな経験を踏まえて、今改めて、果皮からの抽出における醸造オプションを整理しなおしてみました。
適用のタイミングと、適用温度で整理をしていくと、それぞれのオプションが異なる目的で行われている理由が見えてきて、それぞれの違いが明確になりました。
マセラシオン・プレフェルメンテール・アショー(Macération préfermentaire à chaud)=MPC
【特徴】
・破砕後、果醪を70℃前後まで加熱し、一定時間保持。色素・タンニン抽出を行い圧搾、その後は果汁を常温まで下げてから発酵させる方法。(加熱、冷却後、圧搾せずに果皮・種子ともに発酵させる場合もある)
・色素がよく抽出される。タンニンが少ないので早く飲める。
【ポイント】
・高温(70℃)により細胞壁から色素成分であるアントシアニンが抽出されやすくなる。
・アルコールに抽出されやすいタンニンはあまり抽出されない。
・温度を適切に管理しないと、ワインの香りが熱処理をされたような香りになってしまう。
マセラシオン・フィナル・アショー(Macération finale à chaud)=MFC
【特徴】
・アルコール発酵が終了してからマロラクティック発酵が始まるまでの間、果醪中に果皮と種子が残っている状態で、30~40℃に揚げ、一定期間保持する方法。その後、果醪の温度は下がり、20℃以下になることもある。
・果醪中にアルコール分があるため、果皮や種子からのタンニン抽出を強めることができる。
【ポイント】
・アルコール発酵後なので、アルコールに溶けやすいタンニンが抽出されやすい。
・アルコール発酵後そのまま放置なので、温度は自然にやや高温(30~40℃)になる。
マセラシオン・プレフェルメンテール・ア・フロワ(Macération préfermentaire à froid)= MPF /コールド・マセレーション(Cold maceration)
【特徴】
・発酵前低温(5~15℃程度)浸漬(しんし)。発酵前に果醪を数日~10日間程度低温で保持させ、果皮成分を抽出させること。
・ブドウの酵素により、果実味のある赤ワインとなる。
【ポイント】
・アルコール発酵が開始されないように、温度は低温に保たれる。
・アルコールがないためにタンニンは抽出されにくく、主に色素、風味成分が抽出される。
スキン・コンタクト(Skin contact)= マセラシオン・ペリキュレール(Macération pelliculaire)
【特徴】
・白ワインのアルコール発酵に先立ち、短期間(数時間から一日程度)、果汁と果皮を接触させておく技術。
・果皮からの香り成分の抽出が目的。
【ポイント】
・白ワインの場合は、果皮から苦いポリフェノールが抽出されるのを防ぐ必要があるために、果皮との接触はごくわずかな期間(数時間~1日)である。
・白ワインに不適切な香りは低温では抽出されにくいために、温度はごく低温に保たれる。
・不適切な香りが発生する危険があるために、この手法による効果の大きいソーヴィニヨン・ブランなどの一部の香りの強いブドウのみで行われる手法である。