今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
赤ワイン、白ワインにはブドウの果皮からの成分抽出を促すためのさまざまな醸造の選択肢(オプション)があります。
しかし、どれも名称や手法が似ていて、覚えるのにとても苦労をした経験があります。
例えば昔、JSAソムリエ・ワインエキスパートの模擬試験で、次のような問題が出題されました。
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Q. 次の中から、果醪中の種子からタンニンの抽出を強めることができる醸造法を1つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Cold maceration
2. Maceration finale a chaud
3. Cryo-extraction
4. Micro-bullage
(答え: 2)
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この問題を見て、当時は面食らってしまって、当てずっぽで回答をしたのを覚えています。。
面食らってしまった理由は、何よりも、醸造理論をしっかりと理解していなかったからです。
そんな経験を踏まえて、今改めて、果皮からの抽出における醸造オプションを整理しなおしてみました。
適用のタイミングと、適用温度で整理をしていくと、それぞれのオプションが異なる目的で行われている理由が見えてきて、それぞれの違いが明確になりました。
マセラシオン・プレフェルメンテール・アショー(Macération préfermentaire à chaud)=MPC
【特徴】
・破砕後、果醪を70℃前後まで加熱し、一定時間保持。色素・タンニン抽出を行い圧搾、その後は果汁を常温まで下げてから発酵させる方法。(加熱、冷却後、圧搾せずに果皮・種子ともに発酵させる場合もある)
・色素がよく抽出される。タンニンが少ないので早く飲める。
【ポイント】
・高温(70℃)により細胞壁から色素成分であるアントシアニンが抽出されやすくなる。
・アルコールに抽出されやすいタンニンはあまり抽出されない。
・温度を適切に管理しないと、ワインの香りが熱処理をされたような香りになってしまう。
マセラシオン・フィナル・アショー(Macération finale à chaud)=MFC
【特徴】
・アルコール発酵が終了してからマロラクティック発酵が始まるまでの間、果醪中に果皮と種子が残っている状態で、30~40℃に揚げ、一定期間保持する方法。その後、果醪の温度は下がり、20℃以下になることもある。
・果醪中にアルコール分があるため、果皮や種子からのタンニン抽出を強めることができる。
【ポイント】
・アルコール発酵後なので、アルコールに溶けやすいタンニンが抽出されやすい。
・アルコール発酵後そのまま放置なので、温度は自然にやや高温(30~40℃)になる。
マセラシオン・プレフェルメンテール・ア・フロワ(Macération préfermentaire à froid)= MPF /コールド・マセレーション(Cold maceration)
【特徴】
・発酵前低温(5~15℃程度)浸漬(しんし)。発酵前に果醪を数日~10日間程度低温で保持させ、果皮成分を抽出させること。
・ブドウの酵素により、果実味のある赤ワインとなる。
【ポイント】
・アルコール発酵が開始されないように、温度は低温に保たれる。
・アルコールがないためにタンニンは抽出されにくく、主に色素、風味成分が抽出される。
スキン・コンタクト(Skin contact)= マセラシオン・ペリキュレール(Macération pelliculaire)
【特徴】
・白ワインのアルコール発酵に先立ち、短期間(数時間から一日程度)、果汁と果皮を接触させておく技術。
・果皮からの香り成分の抽出が目的。
【ポイント】
・白ワインの場合は、果皮から苦いポリフェノールが抽出されるのを防ぐ必要があるために、果皮との接触はごくわずかな期間(数時間~1日)である。
・白ワインに不適切な香りは低温では抽出されにくいために、温度はごく低温に保たれる。
・不適切な香りが発生する危険があるために、この手法による効果の大きいソーヴィニヨン・ブランなどの一部の香りの強いブドウのみで行われる手法である。