ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...
ワイン樽に使われる最もメジャーな木材と言えばオークです。
オークについてwikipediaで調べると、「オーク(英: oak、仏: chêne、独: Eiche)はブナ科 コナラ属(学名:Quercus)の植物の総称。落葉樹であるナラ(楢)の総称。」と書かれています。
ここで疑問が。昔、英語の授業で「oak = カシ」と習ったような...。
この疑問について調べてみました。
オークは「ナラ」?それとも「カシ」?
まず、ワインで使われるオークは大きく分けて、「ヨーロッパオーク」と「アメリカンオーク」の2種類があるそうです。
ヨーロッパオークに使われる種(species/ genus)は2種類あり、ヨーロッパナラと呼ばれる Quercus robur(ケルカス・ロブール)と、フユナラと呼ばれる Quercus petraea(ケルカス・ぺトラエア)です。
アメリカンオークに使われる種は、ホワイトオークに属する Quercus alba(ケルカス・アルバ)です。
やはりここでも、「カシ」ではなく「ナラ」という名称が使われています。
そこで、「ナラ」「カシ」の両者についてwikipediaで調べてみました。
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「ナラ(楢、柞、枹)は、ブナ科 (Quercoideae) コナラ亜科 (Quercoideae) コナラ属 (Quercus) コナラ亜属 (subgenesis Quercus) のうち、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク (oak)。秋には葉が茶色くなることで知られている。英語のoak(オーク)という単語(他のヨーロッパ言語も同様)はヨーロッパナラを指す場合が多く、常緑性のカシのみを指す言葉はライヴオーク(live oak)であり、誤訳となることがたびたびある。英国に分布するoakはナラに相当する。」
「カシ(樫、橿、櫧)とは、ブナ科の常緑高木の一群の総称である。狭義にはコナラ属Quercus中の常緑性の種をカシと呼ぶ。英語で常緑性のカシのみを指す場合はライブオーク (live oak) と呼ぶ。ヨーロッパにおける常緑性のカシ類の分布は南ヨーロッパに限られており、イギリスをはじめとする中欧・北欧に分布するoakは、日本語では植物学上ナラ(楢)と呼ばれているものばかりであるが、文学作品などではカシとして翻訳されている例が多く、誤訳を元にした表記である。」
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どうやら、「ナラ」も「カシ」も同じコナラ属 (Quercus) に属する植物ですが、落葉性のあるものを特に「ナラ」、常緑性のあるものを「カシ」と呼んでいるようです。
(※落葉性=ある季節に定期的に葉を落とす植物の性質のこと、常緑性=幹や枝に一年を通じて葉がついていて、年中、緑の葉を見ることができる植物の性質)
そして、ヨーロッパオークに使われるヨーロッパナラ、フユナラ、およびアメリカンオークに使われるホワイトオークは全て落葉樹なので、これらは日本語で言えば「ナラ」ということになるようです。つまり、ワインのオーク樽の材料は基本的には「ナラ」ということになります。
コルクガシは「ナラ」?それとも「カシ」?
それは、Quercus suber(ケルカス・スベール)という学名を持つ、コルクの材料となる「コルクガシ」です。コルクガシは、スペインを中心とする地中海沿岸地域を原産地とする常緑高木です。英語では一般的に「cork oak」と呼ばれているそうです。
コルクガシは、オークの仲間ではあるものの名前には「ナラ」ではなく「カシ」が含まれており、一見、誤訳のように感じられます。しかし、コルクガシは、落葉樹ではなく常緑高木であるので、「カシ」という翻訳で問題はなさそうです。
コルクガシは「ナラ」?それとも「カシ」?
ここまで様々なコナラ属(Quercus)の樹木が登場しましたが、JSAソムリエ・ワインエキスパートの1次試験では、度々この「Quercus」という名称が登場します。
例えば次のような問題です:
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次のうち、コルクの材料となるものは?
Quercus robur
Quercus petraea
Quercus alba
Quercus suber
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多孔質で滑りにくいコルクですが、反対に「suber(スベール)」という名前がついているので覚えやすいかもしれません。