今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
ワイン樽に使われる最もメジャーな木材と言えばオークです。
オークについてwikipediaで調べると、「オーク(英: oak、仏: chêne、独: Eiche)はブナ科 コナラ属(学名:Quercus)の植物の総称。落葉樹であるナラ(楢)の総称。」と書かれています。
ここで疑問が。昔、英語の授業で「oak = カシ」と習ったような...。
この疑問について調べてみました。
オークは「ナラ」?それとも「カシ」?
まず、ワインで使われるオークは大きく分けて、「ヨーロッパオーク」と「アメリカンオーク」の2種類があるそうです。
ヨーロッパオークに使われる種(species/ genus)は2種類あり、ヨーロッパナラと呼ばれる Quercus robur(ケルカス・ロブール)と、フユナラと呼ばれる Quercus petraea(ケルカス・ぺトラエア)です。
アメリカンオークに使われる種は、ホワイトオークに属する Quercus alba(ケルカス・アルバ)です。
やはりここでも、「カシ」ではなく「ナラ」という名称が使われています。
そこで、「ナラ」「カシ」の両者についてwikipediaで調べてみました。
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「ナラ(楢、柞、枹)は、ブナ科 (Quercoideae) コナラ亜科 (Quercoideae) コナラ属 (Quercus) コナラ亜属 (subgenesis Quercus) のうち、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク (oak)。秋には葉が茶色くなることで知られている。英語のoak(オーク)という単語(他のヨーロッパ言語も同様)はヨーロッパナラを指す場合が多く、常緑性のカシのみを指す言葉はライヴオーク(live oak)であり、誤訳となることがたびたびある。英国に分布するoakはナラに相当する。」
「カシ(樫、橿、櫧)とは、ブナ科の常緑高木の一群の総称である。狭義にはコナラ属Quercus中の常緑性の種をカシと呼ぶ。英語で常緑性のカシのみを指す場合はライブオーク (live oak) と呼ぶ。ヨーロッパにおける常緑性のカシ類の分布は南ヨーロッパに限られており、イギリスをはじめとする中欧・北欧に分布するoakは、日本語では植物学上ナラ(楢)と呼ばれているものばかりであるが、文学作品などではカシとして翻訳されている例が多く、誤訳を元にした表記である。」
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どうやら、「ナラ」も「カシ」も同じコナラ属 (Quercus) に属する植物ですが、落葉性のあるものを特に「ナラ」、常緑性のあるものを「カシ」と呼んでいるようです。
(※落葉性=ある季節に定期的に葉を落とす植物の性質のこと、常緑性=幹や枝に一年を通じて葉がついていて、年中、緑の葉を見ることができる植物の性質)
そして、ヨーロッパオークに使われるヨーロッパナラ、フユナラ、およびアメリカンオークに使われるホワイトオークは全て落葉樹なので、これらは日本語で言えば「ナラ」ということになるようです。つまり、ワインのオーク樽の材料は基本的には「ナラ」ということになります。
コルクガシは「ナラ」?それとも「カシ」?
それは、Quercus suber(ケルカス・スベール)という学名を持つ、コルクの材料となる「コルクガシ」です。コルクガシは、スペインを中心とする地中海沿岸地域を原産地とする常緑高木です。英語では一般的に「cork oak」と呼ばれているそうです。
コルクガシは、オークの仲間ではあるものの名前には「ナラ」ではなく「カシ」が含まれており、一見、誤訳のように感じられます。しかし、コルクガシは、落葉樹ではなく常緑高木であるので、「カシ」という翻訳で問題はなさそうです。
コルクガシは「ナラ」?それとも「カシ」?
ここまで様々なコナラ属(Quercus)の樹木が登場しましたが、JSAソムリエ・ワインエキスパートの1次試験では、度々この「Quercus」という名称が登場します。
例えば次のような問題です:
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次のうち、コルクの材料となるものは?
Quercus robur
Quercus petraea
Quercus alba
Quercus suber
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多孔質で滑りにくいコルクですが、反対に「suber(スベール)」という名前がついているので覚えやすいかもしれません。