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最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

WSETレベル3のテイスティング試験でやりがちな失敗トップ10

WSETレベル3のテイスティング試験では、系統的テースティング・アプローチ(通称、SAT)を用いた決まったルールに従ってテースティングコメントを書かなければなりません。 テースティングコメントは全て文章で書いていくことになっており、別紙で選択肢が用意されているわけでもないので、しっかり書き方や、用いることのできる用語を頭に入れてから試験に臨まなければなりません。 次の記事はある海外のワインスクールがまとめた生徒のやりがちなテースティング試験における失敗をまとめたものなのですがとても参考になりました。 https://thewinestudio.es/en/blog/what-are-the-most-frequent-mistakes-made-on-the-wset-level-3-tasting-exam 概要を翻訳して下にまとめてみました: ----------------------------------------------------- <テースティング試験でやりがちな失敗10> ① WSET系統的テースティング・アプローチ(SAT)の全ての評価項目を含めることを忘れる これが最も多い減点のケース。試験が始まったら、Appearance(外観), Nose(香り), Palate(味覚), Conclusions(結論)で評価すべき項目を全て回答用紙に書き出すのがおすすめ。 ② SATの正確な用語を用いない 次のような誤り: ・"high alcohol"ではなく、"deep/pronounced alcohol"と書く ・"pronounced intensity"ではなく、"deep intensity"と書く ・"full body"ではなく、"high body"と書く ・"has potential for ageing"ではなく、"a wine for saving/storing"と書く ・熟成の可能性の有無を明確にせずに、"can drink now"とだけ書く ③ SATに存在しない、香りを表現する

WSET英語受講の講師の英語やその難易度について

これまでWSETレベル3の英語受講や英語受験に必要な英語力について、次のようないくつか記事を書いてきましたが、今回は講師の使う英語や、英語のレベルについて書きたいと思います。 ・ WSETレベル3の英語受講対策のポイント ・ WSET Level3に必要な英語力:テスト編 ・ WSETの英語対策:テキスト編 まず、WSETで英語クラスを受け持っている講師は全員が英語ネイティブというわけではありません。そのため、講師によっては独特な訛りのある方がいると思います。授業を重ねるうちにその訛りにも慣れては来ると思うのですが、可能であれば事前に英語が聞きやすい講師を選ぶに越したことはないと思います。 例えば、「英語がイタリア語訛りで、最後まで講師の英語に慣れなかった」なんて話も聞いたことがあります。 英語の訛りに関して言うと、私は「フランス語訛り」「インド訛り」「シンガポール訛り」「イギリスの北部訛り」あたりが苦手です。また、英語に自信のない方の話す抑揚のない英語も聞き取るのが非常に苦手です。(これらはワイン講師で経験をしたわけではありません) 私も講師を選ぶ際に英語の訛りには不安があったのですが、出席できる時間帯が1つしかなかったので、講師の英語でクラスを選ぶことはできませんでした。 次に用いる英語のレベルですが、講師にもよるとは思いますが、私の経験上、それほど難しいレベルの英単語は使われていなかった印象です。用いる言葉のレベルは日常会話+WSETのテキストに出てくるレベルの英単語ですので、しっかりテキストの予習さえしていれば、それほど面食らうほどのことはないと思います。ただし、日常会話やビジネス英語で知らない単語にたくさん出くわすことが多く、辞書がなければ会話に苦労をするような英語レベルの場合は、授業についていくのに苦労をするかもしれません。なぜなら、授業はどんどん進んでいくので、辞書を使って単語を調べている暇などないからです。 時々、意味の分からない英単語に出くわすこともありましたが、その多くが文脈から何となく意味がわかるものであったり、そうでない場合は、メモをノートにとっておいて、自宅に帰ってからその単語の意味を調べていました。多くとも1クラス中、数個程度だったので十分追いつける範囲でした。 もしWSETの英語授業に不安

ワインのスタイルや品質に影響を与える5つの要素 (WSET L3記述対策)

今回も英語サイトで参考になったWSETレベル3の学習方法とノートのまとめ方です。 WSETレベル3のテキストは、必ずしも情報がきれいに整理をされているわけではないため、何度も復習をすることを考えて見やすいようにノートにまとめておくことがおすすめです。 次のサイトにあるような、「ワインのスタイルや品質に影響を与える5つの要素」と「スタイル・品質」という項目を使って情報をまとめていく方法はとても参考になりました。 https://www.tippletips.co.uk/single-post/2016/08/12/WSET-Level-3---Top-Tips-Part-2 このサイトのページの"TIP#3"を要約してみました。 ---------------------------------------------------------- ・WSETレベル3で重要なことは、ワインのスタイルや品質に影響を与える主要な要素を理解することである ・主要な要素とは次の5つ: 「気候」、「土壌/地形」、「ブドウ品種」、「ブドウ栽培」、「ワイン醸造」 ・各ワインについて、なぜそれが他のワインと質的に、スタイル的に異なるのかを説明できなければならない (例:シャブリグランクリュ vs シャブリ) この2種類のワインの違いには、「気候」、「土壌/地形」、「ブドウ品種」、「ブドウ栽培」、「ワイン醸造」の5つの要素が影響するが、主に影響する要素は次の2点である。 1.「気候」と「土壌」:グランクリュ畑は南向きの坂に位置し、そこはより多くの日光とより水はけのよい地域であり、そのため、よりアルコール(豊富なボディなど)とフェノール(より熟した果実の風味など)の期待できるより熟した果実が収穫できる。グランクリュのいくつかでは、より高いミネラルの凝縮性が得られる。 2.「ワイン醸造」:グランクリュでは、部分的もしくワイン全体をオーク樽を使って発酵したり熟成する醸造工程が含まれる。一方、シャブリではオーク樽は利用しない。 WSETレベル3の学習、特に記述式問題において、主要な各ワインにおいて上のような点を理解する必要がある。また、それを次のような表にまとめておくと、復習の際にとても役立つ。 --------------

英語サイトで見つかるWSETレベル3勉強法

WSETレベル3の勉強方法に関する説明は、日本語のものはまだあまりウェブ上に公開されていませんが、英語のものであればいくつか参考になるものがありました。 下のサイトもそのうちの1つです。長すぎず、かといって内容が薄いわけではないので、ぱっと読むことができて、ある程度参考になりました。 https://napavalleywineacademy.com/wset-level-3-study-tips/ (加えて、ページの最後にフラッシュカードへのリンク[Quizlet]が貼られています) WSETは醸造プロセスに重きが置かれているため、このサイトでは ①ワインタイプごとの醸造プロセスをまとめる 、 ②ワイン産地ごとのまとめシートを作る という2つのやり方が説明されています。 ざっくりとですが、簡単に内容を要約してみました。 ----------------------------------------------------------------- <①ワインタイプごとの醸造プロセスをまとめる> ワインタイプごとに醸造工程リストを作る。各ワイン産地の章では詳細な醸造工程の説明がないために逐一この工程リストで見直す。 醸造工程リストのタイプ ・Aromatic Grape White Winemaking ・Non-aromatic Grape White Winemaking ・High Production v Premium Production White Wine ・High Production v Premium Production Red Wine ・Sweet Winemaking options ・Sparkling wine production methods (Traditional, Transfer, Tank, Asti methods) ・Specialty wines (Tokaji Aszu, Amarone, Fortified wines) [リストの作成例] 目的: 果実の特徴、アロマを保持する、高める。果実や花のアロマを保持するために慎重に取り行う 醸造の選択肢: ・SO2レベルを頻繁にモニターする(ブドウとワインを酸化から守る) ・醸造オプション:ブドウを

とても紛らわしいと思ったカリニャンというブドウ品種

ブドウ品種の カリニャン(Carignan) はWSETの学習においてとても紛らわしいと感じた品種でした。 その理由の1つは、まずシノニム(別名)が沢山あること。 カリニャン が最初に登場するのは、フランス南部。この地域で広く栽培されるこのブドウは、「タンニンと酸味が強く、色の濃い品種で、果実風味や優雅さに欠けることがあるが、痩せた土地に生えた古木から品質の高いワインができることがある」と説明されています。 次にこのブドウが登場するのはスペイン。ここで カリニャン は、 カリニェナ(Cariñena) と呼ばれます。さらにスペインの特にリオハでは マスエロ(Mazuelo) とも呼ばれています。 さらに紛らわしいのは、この品種はスペインのカタルーニャでは サムソ(Samsó) と呼ばれるらしいことです(WSETのテキストには載っていません)。この名前もまた紛らわしいのですが、シャトー・ヌフ・デュ・パプの赤ワインのブレンドで補助的な役割を果たしたり、ロゼワインにも用いられる サンソー(Cinsault) に名前がとても似ています。しかし実際は全くの別品種です。英語ではスペルの違いが一目瞭然ですが、日本語だと混同しがちです。 シノニムや似た名前のブドウだけでも十分こんがらがりますが、もう1つ混乱をまねく理由をもっています。 それは、スペインの地名(DO)で カリニェナ(Cariñena) という地名があること。この地域の主要品種は ガルナッチャ(Garnacha) であり、同名の品種の カリニェナ(Cariñena) ではないこと。これは、ひっかけ問題としてよくWSETの選択式問題にでるようです。 カリニャン/カリニェナは整理して覚えないといろいろなところで混乱を引き起こすブドウ品種だと思いました。

ドイツのワインラベル問題(ピースポーター問題)

ワインエキスパートの学習において私はどの分野も手を抜かずに暗記作業に取り組んだ方ですが、唯一暗記が追い付かなかったのがドイツワインでした。その理由はあくまでも個人的な感想ですが、この範囲の重要度に対して覚えることが非常に多く、また、この地域独自の法や規制が多かったためです。 主要なワイン生産地域に加えて、その中のワイン生産地区(ベライヒ)まで覚えたのですが、畑の名前までは正直手が回りませんでした。 そしてWSETで再び出会ったドイツの畑の名称にまつわる記述。ワインエキスパートの時の苦手意識があったので少し読み飛ばしてしまっていました。 ----------------------------------------------- "For example, a wine labelled Piesporter Goldtröpfchen is from the vineyard of Goldtröpfchen located in the village of Piesport. The vast majority of the wines labelled this way will be from small single vineyards. However, lower quality wines that are made from grapes that come from a large number of neighbouring vineyards can be labelled in the same way (for example, Piesporter Michelsberg)." ----------------------------------------------- このままでは良くないと、改めてここで言っていることを明らかにしてみました。 色々な文献で出てくる通称" Piesporter Goldtröpfchen(ピースポーター・ゴルトトレップヒェン)、Piesporter Michelsberg(ピースポーター・ミヒェルスベルク)混同問題 "。(勝手に名付けました) 一言で言ってしまうと、ドイツ産ワインにおいては、知識がない人がラベルを見ただけでは

さまざまな発泡性ワイン(スパークリングワイン)の製造方法

WSETレベル3では、5種類の発泡性ワイン(スパークリングワイン)の製造方法を学習します。 テキストにも製造方法のチャートは載っていたのですが、やや分かりにくかったために、私は独自のチャートを作成しました。 発泡性ワインの一般的な製造工程を、 「ベースワイン造り」→「炭酸化」→「澱抜き/濾過」→「糖分調整」→「瓶詰」 と定義して、各タイプの発泡性ワインの製造工程を当てはめてみると、何となく違いが見えてきます。 まず、大きく違うのが 「アスティ方式」 。これは「ベースワイン造り」と「炭酸化」が同一行程で行われているのがわかります。つまり、一度の発酵で、アルコール発酵と炭酸化を行っていることになります。さらに、この発酵は通常、糖分を使い切る前にワインを冷やすことで停止させられます。そのため残糖のある甘いワインが出来上がります。 次に、 「タンク方式」 と 「炭酸ガス注入方式」 。この2つの方式は、「炭酸化」の部分のみに大きな特徴をもっていることがわかります。前者はタンク内で「二次発酵」、後者はタンク内で「二酸化炭素の注入」が行われることで「炭酸化」が行われています。「タンク方式」では二次発酵が行われるため糖分調整が行われる一方で、「炭酸ガス注入方式」では、二次発酵による澱の生成がないために瓶詰め前の濾過は行われていません。 最後に、 「伝統的方式」 と 「トランスファー方式」 。この2つの方式は、「炭酸化」~「糖分調整」の部分に大きな特徴を持つ製造方法です。両者ともに「瓶内二次発酵」として「炭酸化」を行う部分が、他の3つの製造方法と異なることがわかります。この2つの違いは、唯一「澱抜き/濾過」部分にあり、前者は 「動瓶(riddling)」 と 「澱抜き(disgorgement)」 、後者は 「ワインをタンクに移し替え」 て 「濾過」 を行っています。 ちなみにトランスファー方式で造られたワインには瓶内発酵を意味する 「bottle-fermentation」 と記載されることが多いそうです。こう書かれていると、よりコストがかかる伝統的方式で造られていると勘違いしてしまいそうです。一種のマーケティングギミックかもしれません。伝統的方式で造られたワインは 「traditional method」 や 「méthode traditio

理論派のための論理的なワイン・テイスティング

ワインエキスパートの勉強を始めたとき、あまりテイスティングを好きになれませんでした。 なぜかというと、テイスティングの法則がとても感覚的や直感的なものに思えて、正しい答えというものを見つけ出すことが非常に難しいと思われたからです。言葉を変えると、正しい答えというものは、明確な基準というものがあるわけではなく、ワインのプロたちの間の合意で経験則的に出来上がっているもののように思われました。さらに言うと、それは主観的なものであり、客観的に評価をできる基準はないのではないかと思っていました。 この考えは多分、ある部分でその通りなのかもしれません。 しかしある時、ある講師のテイスティングの講義に出席をして、少しその考えが変わりました(よくキャリーバッグを転がして速足で歩いている講師でした)。その講師の説明は、私がいままで経験をしていたテイスティングよりも、より論理的で、より客観的なものでした。例えば、「このワインは傾けたときに縁がピンク色なので若いワインであることが考えられる」という説明など。その講師の論理的なアプローチはとても腑に落ちるもので、その講義を受けたおかげで私はよりテイスティングに対する理解を深めることができ、JSA試験におけるテイスティングの練習もかなり安定した結果を残せるようになりました。その講義に感銘を受けてその講師の経歴を調べると、どうやらWSETの資格を保持されているようでした。 それから時間がたって、いざ自分がWSETのテイスティング理論を経験をしてみて、なぜその時の講師の教え方が論理的だったのかが少しわかったような気がしました。それはWSETのテイスティングアプローチが、JSAのものよりも非常に論理的で、より客観的なものだったからです。実際にそうなのかはわかりませんが、少なくとも私にはそう感じられました。 例えば、WSETレベル3のテキストは、テイスティングアプローチの説明から始まるのですが、ワインの評価に用いる各項目はとても論理的・客観的に説明されています。主だったものを少し書き出してみました。 ------------------------------------------------- <色の濃さ> グラスと45度に傾けて持ち、上から液体を調べて、中心部から周縁部にかけて色がどこまで広がっ

要注意?!JSAとWSETにおけるタンニンの評価の違いと疑問

JSAワインエキスパートを通じてテイスティングの勉強をしている間、私は「タンニン=渋味・収斂性」だと思っていました。 なぜならば、JSA試験の用紙には次のように書かれていたからです。 これを見ると、 「タンニン分が多い=収斂性のある」 と読み取れます。 しかし一方で、WSETレベル3のテイスティングアプローチであるSATでは、タンニンは次のように書かれていました。 ”Tannins bind to your saliva and cause your mouth to dry up and feel rough; they contribute to the textural richness of a wine. ” (タンニンは唾液と結合し、口が乾いて、ざらつく感じになる。タンニンはワインの舌触りの豊かさに影響する。) "It should be noted that not all tannins have the same effect: unripe tannins tend to be more aggressively astringent, whereas ripe tannins contribute more to textural richness." (どのタンニンも同じ効果をもたらすわけではないことに注意する必要がある。未熟なタンニンは渋味が強くなる傾向があるのに対して、成熟したタンニンは舌触りの豊かさにつながる。) ちなみに、"astringent"が「渋味・収斂味」と翻訳されています。 つまり、WSATのSATでは、 「タンニン分が多い=舌触りのざらつき、豊かさの度合いが強い」 と受け取れます。ですので、JSAとは異なりタンニンの量は収斂性の強さと比例しないことになります。さらにいうとWSETにおいては、 収斂性の有無は、タンニンの量ではなく質に関係している と理解できます。 WSETのSATでは、タンニンは次のように量で評価することになっていまが、上で説明をしたようなJSAとWSETの違いは私を混乱させました。 なぜなら、「渋い(収斂性がある)!」と感じても、WSET(SAT)では必ずしもタンニンが高

比較するとわかりやすい!赤白ワインの醸造工程の違い

WSETの試験対策で、とにかく時間を割いたのがスティルワイン(非発泡ワイン)の醸造工程。 赤白で異なる部分はそれぞれのワインの特徴が出やすい部分なので、特に注意を払いました。 白ワインでは、「③スキンコンタクト(果皮浸漬)」「⑤清澄化」「⑨澱抜きの部分」「⑪マロラクティック発酵(オプショナル)」の部分。この辺りは特に品質の高いワインの醸造オプションとして試験に出そうな気がしました。 赤ワインでは、「⑥⑧発酵前後の抽出(タンニンと色素の抽出)」「⑦アルコール発酵の果帽管理」「⑬ブレンド(フリーランワイン+プレスワイン)」の部分。赤ワインでは、黒ブドウの可否から担任と色素をうまく抽出することが醸造の鍵となるからです。 テキストでは、赤白個別に説明がされており、詳細な醸造プロセスがチャート化されていたのですが、図のようにもう少し簡素化をして赤白両者のプロセスを並べてみると違いが明確にわかって便利でした。

ワインの醸造工程で用いる「容器」に関する英単語

ワインの醸造工程では様々な容器が登場します。用途別に主に次の3つです: ・発酵用 (発酵槽) ・熟成用 (熟成容器) ・最終製品用(ワインボトルなど) WSETレベル3のテキストを読むにあたって、さまざまな英単語が使われていたので、スムーズに読み進められるように、関連する用語で主だったものを一通りまとめてみました。同じものを表す場合でも、異なる英単語が用いられていたのが厄介でした。 WSETでは、目的のワインのタイプによって、どのようなサイズ・材質の発酵槽や熟成容器を用いるのかを理解することが求められていたので、これらの用語は結構重要でした。 ------------------------------------------------------ <容器を表す一般用語> tank タンク vat 大桶、タンク、槽 vessel 容器 container 容器 winery vessel 醸造用容器 inert vessel 不活性の容器 <発酵槽に関する用語> fermenting vat 発酵槽 fermenting vessel 発酵容器 sealed tank 密閉タンク pressurised tank 加圧されたタンク open top fermenter 上に覆いがない発酵槽 open-topped vessel 上に覆いの無い容器 <タンクに関する用語> concrete vessel コンクリートタンク concrete vat コンクリートタンク stainless steel tanks ステンレスタンク stainless steel vessel ステンレスタンク stainless steel vat ステンレスタンク <樽に関する用語> barrel 樽 cas

ソムリエ・ワインエキスパート試験の意外なメリット

これは中央ヨーロッパの地図です。国名が入っていない部分は、どこの国かわかるでしょうか? 正解は... ↓ ↓ ↓ この通り。これらの国々は実はJSAワイン・エキスパートの試験範囲となるワイン産地です。 西はスペインから東はモルドバまで。さらにここには載っていませんが、さらに南のギリシャや、さらに東のジョージアも重要なヨーロッパのワイン産地です。 私がワイン・エキスパートの試験をやって最もためになったと思うのが、ワインを通じて世界の地理を学べたことです。 私にとってワインの勉強は完全に趣味なので、仕事で資格をとらなければならないなどのモチベーションとなるものは何もありませんでした。覚えることがたくさんあって、正直しんどい時期もありましたが、大きなモチベーションとなってくれたのがこの、「世界の地理を学ぶ」ということです。ワインスクールに通うと毎週新たなワイン産地を勉強して、次の週までにその復習を終えなければならなかったのですが、地図を眺めながらその土地のワインを勉強していると、何となくワイナリーツアーをしている気分で、楽しみながら学習を続けることができました。 例えば、スイスではこんな風に詳細な地図を見ながら産地を覚えていきました。旅行にでも行かない限り、こんなにじっくり各国の地図を見て行くことはないと思います。他の国々でも同様です。 JSAワイン・エキスパートの試験範囲は本当に広く、ヨーロッパから始まり、北米、南米、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本と、あらゆる地域をカバーしています。 おかげさまで、ニュースなどでワイン産地として勉強をした国や地域が出てくると、すぐにその地域や位置関係をイメージできるようになりました。 ワインだけのために勉強をしていたわけではない私にとって、世界の地理を勉強できたことは意外なメリットとなりました。

WSET レベル3では醸造オプションが重要!醸造の選択肢のまとめと対策

以前の記事「 WSET記述式試験の例題と苦手な問題 」で、WSETレベル3(ワイン)では、醸造プロセス、特に醸造オプション(選択肢)の選択に関する問題が最も苦手であると紹介をしました。 具体的には、次のようなことが問われる問題です。 ----------------------------------------------------------------- ④あるワインに用いられているであろう 醸造オプション をあげる ⑤ある醸造オプションが ワインスタイルに与える影響 を述べる ----------------------------------------------------------------- 苦手な理由は、まず、醸造プロセス自体を覚えるのが大変であること、次に、各工程に用意されている醸造オプションが様々あること、最後に、どのようなタイプのワインで、どのオプションを用いるべきかを覚えなければならないこと。 そこで、次のような表を作って対策を行いました。 縦軸が醸造プロセス、横軸がワインのタイプです。白ワインの場合、ワインのタイプは次の3種類です: ・High Volume Inexpensive Wines (大量に生産される低価格のワイン) ・Premium Wines - Aromatic Grape Varieties (上質ワイン - 香りの強いブドウ品種) ・Premium Wines - Less Aromatic Grape Varieties (上質ワイン - 香りの弱いブドウ品種) これを見ると、ワインタイプごとの醸造オプションが一目瞭然でした。 WSETではどの地域のワインを学習しても、どのような醸造オプションが採用されているかが重要なポイントとなるので、1枚の表にしてまとめておくと便利でした。 ちなみに、赤ワインはテキストにならって、大量生産ワインと、主要品種ごとにまとめました。

スパイスの香りを知るためのおすすめ商品(ワイン・テイスティング対策)

以前の記事「 ワインのテイスティング試験対策:香り用語を知る方法 」で、ワインの香りを知るためにやったことをさまざま紹介しましたが、最近、スパイス系で新たに面白い商品を発見しました。 それがこれ。 カレー粉を作るための20種類ものスパイスが入っています。 中身はこんな感じ。 おなじみの、「 シナモン 」、「 ジンジャー 」、「 クローブ(丁子) 」、「 スターアニス 」、「 ナツメグ 」、「 ブラックペッパー 」に加えて、JSA試験に出てくる「 コリアンダー 」や、WSETのSATに出てくる「 フェンネル 」「 ディル 」も含まれています。 これで700円程度(小売店価格)。様々なスパイスの香りを知るためには悪い投資ではないかもしれません。 香りを十分に堪能したら、最後にカレーを味わえます。

赤ワインで重要な「房ごと発酵する醸造方法」と「細胞内の発酵」

WSETレベル3の試験勉強で何かと出くわしたのが、「 房ごと発酵する醸造方法 (whole bunch fermentation) 」です。 (関連記事: bunchの意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、「マセラシオン・カルボニック」でおなじみです。JSA試験では、ボージョレヌーヴォーで使われて、色が出る割にタンニンが少なくバナナの香りのするワインができるくらいのことを覚えていれば十分でしたが、WSETレベル3では、その醸造プロセスについても結構しっかり学びます。 3種類のやり方が紹介されているのですが、じっくり読みこまないとそれぞれの違いがわかりにくいので苦労しました。結局、表を作って3つ( carbonic maceration [炭酸ガス浸漬法] , semi-carbonic maceration [半炭酸ガス浸漬法] , whole bunches with crushed fruits [房ごとのブドウと破砕したブドウを使う方法])の違いを明確にして覚えました。 マセラシオン・カルボニック は英語では、"Carbonic maceration"で、房ごとのブドウは"Whole bunch (grapes)"です。 うわさによると、試験ではそのプロセスを細かく書かせる場合もあるようです。 さらに、この方法を実現させているのが「細胞内の発酵」(intracelluar fermentation)。こちらの図のような活動が果実内で行われることを意識しながら覚えました。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では主にボージョレヌーヴォーに関連して出てくるのみでしたが、WSETレベル3ではピノノワールや、その他フルーティーなワインでも関連して出てくる重要な醸造オプションでした。亜流の醸造方法をしっかり学ばせるところがとてもWSETっぽいと思いました。 (関連記事: WSETテキストでは足りない醸造工程に関する情報の調べ方 )

ソムリエ・ワインエキスパート試験で苦労をした年号の覚え方

WSETと比較をしてみると、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験で特徴的な部分は、ワインに関する歴史が問われることでした。 (関連記事: WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ? ) ワインやワイン産地には興味があるんですが、正直、ワインの歴史にはそこまで興味を持てませんでした。ワイン愛好家にとって重要なことは、おいしいワインを見つけることや、おいしいワインを飲むことであり、ワインがどんな歴史をたどってきたかなんて近代を除いてそんなに重要なことではないと思えるからです。 「歴史なんか覚えて、何の役に立つの?」正直こんな気持ちでした。 だから、いざ覚えようと思っても、興味のないことはなかなか覚えられません。ワインの色などは語呂合わせを駆使して覚えてきたのですが、年号関連は語呂を作っても同じような語呂ばかりになってしまい、この方法もあまり役に立ちませんでした。 そこで始めたのが、正確な年号を覚えるのはとりあえず置いておいて、年号の順番を覚えるというやり方。特定のトピックにおいて、関連した年号を1つの図にまとめていくと、何となく時代背景が見えてきて、少しずつ頭に入ってくるような気がします。さらに、キーとなる年号だけ覚えておけばその前後関係を覚えておくだけで、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験は4択なので十分対応可能だと思いました。 例えば原産地管理法の年号は、ヨーロッパ→北米・南ア→南米・豪州→NZ・日本のように広まっていくのがわかります。 また、ブドウの伝来もヨーロッパ→南米→アメリカ・南ア→豪州→NZ→日本のように広がっています。 そして、日本も長野・山梨から始まり、北海道や山形に広がっていくのがわかります。 正確な年号を語呂合わせで覚えるよりも、こちらの方が時代背景がわかるので後々役に立つ知識になるとおもいました。 このような類似のトピックで情報を1つの図にまとめていくやり方は、その他覚えにくい生産量のデータや、気候区分を覚えるのにも役に立ちました。単なる数字を覚えるよりもずっと楽に暗記ができました。 例えば、フランス各地の栽培面積とワイン生産量。 そして、各地の気候区分。 試験中に具体的な数字が浮かばなくても、なんどなくこれらの図が頭に浮か

ソムリエ・ワインエキスパート試験の強みは日本ワイン

JSAソムリエ・ワインエキスパート試験とWSETレベル3は同程度のレベルの試験として比較をされることが多いですが、前者の強みは何といっても範囲の広さ!その分、覚えることも多いのですが... 例えば、JSAソムリエ・ワインエキスパートでカバーされている次のような範囲は、WSETレベル3ではカバーされていません: ----------------------------------------------- <ワイン産地> フランス(ジュラ・サヴォワ) ハンガリー スイス スロヴェニア クロアチア ルーマニア ブルガリア イギリス ルクセンブルク ジョージア モルドバ ウルグアイ 日本 <ワイン産地以外> ワイン以外の酒類、ミネラルウォーター 日本酒 チーズ ----------------------------------------------- この中でも特に大きいと思うのが、「日本ワイン」。WSETレベル3で唯一残念な点は、日本ワインが学べないことでした。 WSETレベル3で取り扱われていないところを見ると、日本ワインは世界ではまだそれほど重視されていないということなのでしょうか... 一方で、JSA試験では日本ワインをしっかりと扱ってくれており、その内容も年々充実しているようです。さすが日本を拠点とする運営団体です。2次試験のテイスティングにおいても、2016年以降は「マスカット・ベーリーA」「甲州」「メルロ」などさまざまな品種の日本ワインが出題されています。そのため、テイスティングの練習では日本ワインは外せない項目になっており、私もさまざまな日本ワインを試飲して本番試験に臨みました(実際に日本のメルロが出題されました)。 日本にいると何かと日本ワインに触れる機会は多いですし、ワインショップに行っても多くの日本ワインが販売されています。この日本ワインを学べたことは、JSAソムリエ・ワインエキスパートを受験した大きなメリットでした。

英語学習でお世話になったウェブサイト(WSET英語受講対策)

WSETの英語クラスを受講において最も不安な部分は リスニング でした。 リーディングやライティングは予習と復習をすればどうにかなるし、スピーキングはあえて講師に質問をすることをしなければそれほど必要がないと思っていました。(でも実際はスピーキングも重要でした...) なんとか少しでもリスニング力を伸ばしてから英語クラスの受講を始めていたいと思っていました。 でも極力お金はかけたくない...。WSETのクラスに通うだけでもお金がかかるので、英語にはあまりお金はかけたくありませんでした。 そこで、定期的に英語音声を聞くことのできるウェブサイトを探して、英語リスニングのための耳を慣らしておくことにしました。 リスニング学習のためのウェブサイトの条件 として次の5点を設定しました。 ------------------------------------------------------ ①無料であること ②トランスクリプト(英文)が公開されていること ③定期的に新たな英語音源が公開されていること ④ネイティブレベルのスピードであること ⑤学術分野の英語が学べる事 ------------------------------------------------------ ②のトランスクリプトが公開されている事は、ヒアリング力向上のために必須だと思いました。なぜなら、正確な単語や文章を把握しながら聞く事をしなければ決してヒアリング力は向上しないと思ったためです。 最終的に最も要望に近かったのが次の2サイトでした。 60-Second Science (→ サイトへのリンク ) 1つのトピックが2~3分程度で頻繁に更新がされるので飽きずに続けられる無料音源です。内容は題名の通りサイエンスに関わる話題ばかりなので、WSETのブドウ栽培やワイン醸造で使う英語の参考になるような話題も含まれます。使われている単語も難しく、スピードも速めなので、英語中級から上級者向けの内容だと思います。 無料で参照のできるトランスクリプトの数は限られているのですが、定期購読かもしくはブラウザの設定を工夫することでその制限を回避をすることも可能です。 音源自体には回数制限はありませんので、いくつでも聞くことができます。また音源はPodcas

ブドウ栽培には気候区分が重要!気候区分のタイプを整理

以前の「 WSET記述式試験の例題と苦手な問題 」の記事で、レベル3のサンプル問題のタイプをいくつかあげました。 その中で、やや厄介だったのが、ブドウ栽培地域の気候に関する問題。 例えば、次のようなことが問われる問題です: --------------------------------------- ①ある気候に該当する地域名をあげる ②ある気候がブドウの育成に与える影響を述べる ③ある気候において特定の栽培方法が選ばれる理由を述べる --------------------------------------- レベル3で取り扱う気候は、「育成期間の平均温度」と「3つの気候区分」の組み合わせです。育成期間の平均温度は低い温度から、"cool", "moderate", "warm", "hot"の4つに分かれています。 cool climate: < 16.5 C° moderate climate: 16.5 ~ 18.5 C° warm: 18.5 ~ 21 C° hot: > 21 C° また、気候タイプは"Continental (大陸性)", "Maritime (海洋性)", "Mediterranean (地中海性)" の3つに分かれています。 単純に言うと3x4=12のタイプの気候があることになります。 記述式問題で問われる可能性が非常に大きく、また、その気候の特性を知らないと応用問題も解けなくなってしまうので、気候に関しては特に念入りに情報を整理しました。 気候についてはテキストのさまざまな部分に書かれていたので、1つのマップにしてしまうと非常に復習が便利でした。(一部不確かな部分が含まれます) またさらに、応用問題を解くうえで重要なのが、気候のタイプによるブドウ栽培への影響です。これについても一覧できるような表を作って対応しました。 どちらも作るのは面倒ですが、一度作ってしまうとテスト前の見直しに便利でした。

リースリングのペトロール香を感じる方法:テイスティング試験対策(ソムリエ・ワインエキスパート)

ワインエキスパート対策で、ワインスクールに通い始めたころに最も苦戦した品種が リースリング でした。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験における白ワインの主要品種と言えば、シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨンブラン。 シャルドネ は酸味が低く、乳製品のような香りがするのでなんとなく特徴を捉えることができました(シャブリはちょっと難しいですが)。 ソーヴィニヨンブラン は、アスパラガスのような青い香りがするのでこれも何とか分かりました。 しかし、 リースリング はずっとその特徴を捉えることができずにいました。特に苦労をさせたのが、よく言われる 『ペトロール (ガソリン) 香』 。長らくその ペトロール香 を全く感じることができずにいました。 ちょっと 石油 っぽい、 ビニール っぽい、 セルロイド人形 のような香りと言われるんですが、何度嗅いでもわかりません。 (実際にセルロイド人形のにおいを嗅いで、分かる人はわかるようです。いわゆる下のようなキューピー人形です。) しかしある時、そのペトロール香を感じられるきっかけが! クレア・ヴァレー (南オーストラリア)だったと思うのですが、そこのワインを飲む機会があって、「あれっ、ビニールっぽい香りがする」と感じました。「なるほど、これが ペトロール香 か!」 それからオーストラリアのリースリングをいくつか試してみましたが、確かにしっかりとペトロール香を感じられることが多くありました。 それから時間がたって、WSETを勉強してみると、リースリングに対してテキストにこのような記述がありました。 ---------------------------------------------------- ”When mature, Rieslings develop flavours of honey and toast, but still retain high levels of acidity. Some Rieslings develop aromas that are often described as petrol like. ” (熟成させると、リースリングはハチミツやトーストの風味を発達させるが、そ

WSETの学習によって明確になったリオハのテンプラニーリョワイン

ワインエキスパート試験をやっていた頃に、今一つ、その特徴つかめなかったのが スペイン の テンプラニーリョ  ワインです。 ワインスクールのワインエキスパート試験対策のテイスティングでは、「 酸とタンニンが中程度 」で、「 干した黒系果実の香り 」を持つと習っていました。 しかし、自宅練習用にテンプラニーリョワインをワインショップなどで探してみると、ワインの評価として書かれている表現が「 赤系果実の香り 」であることが多く、黒系果実なのか、赤系果実なのかずっとわからずじまいでした。 結局そのままワインエキスパートの二次試験を迎えてしまったのですが、実際の試験でテンプラニーリョが出題されなかったのはラッキーでした。 WSET L3のテキストでは、「 テンプラニーリョ種は多くのブレンドで主体として使われ、赤系果実の風味と中程度のタンニンを加えることができる 」と書いてあるので、どうやら 赤系果実 の方が信ぴょう性が高そうです。 ワインスクールで出題されたワインはテンプラニーリョ100%のグランレゼルヴァ(熟成5年以上)だったのですが、黒系果実と評価されていたのは、もしかしたら長期の熟成が関係していたのかもしれません。(熟成によって赤系→黒系への変化が出るのかはいまだによくわかっていません) また、リオハのテンプラニーリョの場合は、他の品種とブレンドされることが多く、どの品種とブレンドされているかや、各品種のブレンドの割合、醸造方法によってワインの特徴は変わります。赤系果実なのか?黒系果実なのか?の混同が起きていたのは、どうやらそれも原因の1つだったようです。 ワインエキスパート試験対策ではテースティングにおいてスペインワインはそれほど重視されていなかったので、ここまで深くは掘り下げて学ぶことはありませんでした。 しかし、WSETレベル3ではスペイン、特にリオハは重要なワイン産地として、製法やブレンドの方法までしっかりと学習を行います。そのおかげて、リオハのテンプラニーリョワインについての理解がとても深まりました。 まず、リオハでまず学ぶのはそのサブリージョン。それぞれのサブリージョンで、その地域特徴に合わせてリオハブレンドに使う様々な黒ブドウ品種が栽培されています。 ◆リオハのサブリージョンとその特徴】 ---------

講義で出題されたワインリストの作成と分析のすすめ

折角ワインスクールに通うのであれば、講義で提供されたワインをリスト化するのはおすすめです。 ワインの色、品種、生産地域をリストの項目に入れておくと、それぞれがどのような香りや味の特徴を持つワインだったのかを後から簡単に調べられるので非常に便利です。 以前に飲んだワインと同じ香りを感じたら、その香りにどんな香りの用語が使われていたのかを簡単に探すことができます。この作業を繰り返すことで、頭の中で「香り→香り用語」が自然と結びつくようになってきます。 さらに、生産者や価格、試飲コメントなどを入れておくと、テストが終わった後でも自分用のワインリストとしても役立ちます。もう一度飲みたいワインも一目瞭然です。 さらにWSETのSATに限って言えば、各評価項目の相関をとってみるのも面白いかもしれません。 模範解答をもとに独自に各項目の分析をしてみたのですが、次のような関係性がありそうです。(独自分析なので、どこまで信用できるかはわかりません...) 例えば、 Finish (後味) ⇔ Quality (品質) の間には非常に強い相関関係が見られます。 また、 Aroma intensity (香りの強さ) ⇔ Flavour intensity (風味の強さ) Flavour intensity (風味の強さ) ⇔ Finish (後味) Body (ボディ) ⇔  Finish (後味) にも強い相関関係が見られるので、品質の高いワインはこれらの評価が全て高くなるはずです。 さらに、 Body (ボディ) ⇔  Alcohol (アルコール) Quality (品質) ⇔ Readiness for drinking (飲み頃のレベル) にもやや強い関係が見られます。 数字を用いて定量化をしてみた結果は、SATを使って感覚的にワインを評価している内容と概ね一致をしていました。

ワインのテイスティング試験対策:香り用語を知る方法

テイスティング試験における難関の1つは正しい香り用語(descriptor)を選ぶことです。 JSA試験では赤ワイン、白ワインそれぞれ40種類程度が選択肢として用意されており、WSETでは用語リストの中に100種類程度が用意されています。 その香りは、イチゴ、ブルーベリー、パイナップルなどの身近なものから、菩提樹、火打石、麝香のように日常生活ではあまり触れることのないようなものまで様々です。 例えば、ワインスクールのテイスティングの講義では「このワインには、『キイチゴ』の香りがあります」と教えてくれるのですが、『キイチゴ』の香りを嗅いだことがなければそれを感じ取ることは非常に困難です。ワインにはいろいろな香りが含まれているので、どれがその香りにあたるのかがわからないからです。 私は香り用語の香りは、実際のワインのそれとは異なり、最終的にはワインの香りはワインで覚えるしかないと思っています。しかし、その香りを知る手掛かりとして、香り用語の実際の香りを知ることは非常に効率的な方法だと思っています。 そのため何とか、香り用語に含まれている香りを嗅ぐ方法をさまざま探しました。 まず最初に見つけたのが、次のような「 ワインアロマキット 」。 とても魅力的だったのですが、どれも高額だったために購入するのはあきらめました。プロの方なら買う価値があるのかもしれませんが、趣味の資格試験の勉強にこれだけのお金をかけるのは少しやりすぎたと考えました。 次に見つけたのが、この書籍「 ワインの香り: 日本のワインアロマホイール&アロマカードで分かる! 」。この書籍には香り付けのされた12種類のアロマカードが付属されており、それらのカードを組み合わせることで最大27種類の香りを嗅ぐことができます。 これはAmazonレビューの評価が高かったために購入をして試してみました。確かに香りのいくつかは実際のワインから感じられるものに近いものであり納得のいくものでした。しかし中には「あれ?本当?」と思うものがあったり、「これは知ってるのでカードで書く必要はない」というものもあったりで、結局それほど活用はしませんでした。 で、結局最後に行きついたのは、「 スーパ

合格が近づく!Amazonで見つかるWSET参考書籍

以前の記事でも紹介をしましたが、WSET英語受験にあたって試してみた書籍を紹介します。 ① WSET Level 2 テキスト Level3に比べるとずいぶんページ数が少なく、品種を主に学んでいくような内容でした。 品種の復習に使えます。また、Level3を受ける前に英語の読解力の力試しになるかもしれません。 ②WSET Level 3 テキスト (旧バージョン) 旧バージョンですが、ワイン英語を学ぶために購入しました。 ボリュームは現行バージョンとそれほど変わらないので、どの程度の英語力が必要かの指標になるかもしれません。 ③ 市販の参考書(テキスト補助用) 実際には試験終了後に読み始めましたが、テキストでは十分に説明しきれていない部分を補ってくれる参考書です。本試験に向けて必須ではないと思いますが、持っているとふと疑問に思った部分を深く調べることができます。 (参考記事: WSETテキストでは足りない醸造工程に関する情報の調べ方 ) 【ワイン醸造に関する参考書:英語版】   【ワイン醸造に関する参考書:日本語版】   【ブドウ栽培に関する参考書:英語版】 ④ 市販の参考書(テスト対策用) 私は実際には購入をしませんでしたが、海外で出版されている参考書です。「コース料金を無駄にしないために保険として」とのふれこみで販売されています。 現行のLevel 3書籍(テキストとワークブック)はワインスクールや、WSET公式オンラインサイトで正規価格で購入することができます。 https://shop.wsetglobal.com/collections/books

プリオラートのワインはなぜ美味しいのか?~ブドウ栽培環境と、ワイン醸造に関する考察

プリオラート(Priorat)地域は、スペインの中でも特に高品質なワインの産地としてD.O.Ca(Denominación de Origen Calificada; デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ)に指定されている地域です。(プリオラートのワインは、D.O.Caの代わりにカタルーニャ語のDenominacion Denominación d'Origen Qualificada(DOQ)を用いているようです) プリオラートは12世紀にスカラ・デイ修道院の修道士によってブドウ栽培とワイン造りが伝えられた場所で、一時はフィロキセラの蔓延したフランスワインの代替産地として活気づいていました。 しかしその後は1980年代に入るまで、プリオラートのワイン産業は衰退を続けていました。 転機が訪れたのは1980年代初頭、「4人組」と呼ばれる外部の醸造家がプリオラートのテロワールが持つ潜在性に着目し、ガルナッチャ種やマスエロ種などなどの土着品種を用い、この地で行われていたブドウ栽培方法・ワイン醸造方法に改良を加えました。彼らのワインが1991年に初めて市場に紹介されると、著名なワイン評論家に絶賛され、一躍世界のワイン業界で注目を集めました。 1990年代初頭には約15の生産者しか存在しなかったプリオラートですが、1990年代以降には生産者数が急激に増加し、2006年には生産者数は約80にものぼりました。 JSAの教本で学ぶのはこれくらいだと思います。 (関連記事: JSAワインエキスパート試験6ヵ月(半年)集中勉強法 ) しかし、WSETレベル3ではもう少し突っ込んで、プリオラートの特徴的なブドウ栽培やワイン醸造に関して学んでいきます。 プリオラートは、高品質なワインを造るためのさまざまな条件が整っており、とても興味深い地域でした。これだけ多くの特徴を持った地域は、WSETで学習をする中でもなかなか無くて、まさに、WSET学習の醍醐味ともいえる地域でした。 (関連記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) このプリオラートのブドウ栽培やワイン醸造の特徴を紹介したいと思います。 <プリオラートのブドウ栽培・ワイン醸造の特徴> まず、プリオラートはのブドウ栽培地は、タラゴナ(Tarragona)市から内陸に入った丘陵地にあります。

記述式問題でよく使った英単語「aspect」

WSETレベル3を英語受験するにあたってよく使った英語を紹介します。 まずは「方角」を表す、「 aspect 」。 "The best vineyards are located on the steepest slopes with east and south-east aspects." 「優良なブドウ畑は東あるいは東南向きの急斜面に位置する」 テキストにもこんな感じで良く出てきます。 ブドウ畑の方角は、ブドウの生育環境にとってとても重要な要素であるために、この単語は頻出です。 寒い地域ではより多くの熱や日照を得るために南向き、暑い地域では反対に冷涼な環境を得るために北向きの畑が好まれるようです。 方角は必ず坂(slope)セットで使う言葉なので、「 slope with ~ aspect 」などで覚えておくと便利でした。

WSETの記述式問題:「どの程度書けばいいのか?」の失敗例

記述式問題対策で最も苦労をしたのが 「必要十分な回答を書くこと」 でした。 時には必要な情報を全て書き込むことができずに減点をされてしまったり、時には余分な情報を書きすぎて時間を超過してしまったり... 例えば、 ワークブックのサンプル問題(②ある気候がブドウの育成に与える影響を述べる) から考えて、出題の可能性のある次のような問題。 「地域Aを品種Bにとって最適な育成地域とさせている気候条件を1つのべよ」 このような問題で私がよくやってしまう回答はこんな感じ。 「地域Aには、海からの冷たい風の冷却効果で、その地域の気温が下がるから」 そして、多分これだと満点回答はもらえません。なぜなら、この回答は「気温が下がることが、なぜ品種Bにとって良いことなのか?」が説明されていないから。 満点をもらうためには、 「地域Aには、海からの冷たい風が吹いて、その地域の気温が下がるから。そして、それによって品種Bにとって重要な特徴であるxxxの香りが造られるから。」 ここまで書かなければなりませんでした。 これだから記述式問題は難しい!このことを知っていたとしても、それを文章として表すことができなければ得点をもらうことができません。 「問題をしっかり読むこと!」そして「自分の回答を何度も疑うこと!」。英語で限られた時間内でこれを行うためにはひたすら訓練あるのみでした。 関連記事:「 WSET記述式試験の例題と苦手な問題 」