高品質ワイン(≒ 高額ワイン)と、大量生産ワイン(≒ 低価格・低品質ワイン)では、ワイン醸造の方法が異なります。
WSET試験では、ワイン醸造の各工程における違いをよく問われます。
ローヌのクリュ・ワイン(高額・高品質ワイン)と、大量生産ワインの醸造方法を調べてみると、見事に各工程における醸造手法の違いが明確に現れていたので、それを表にまとめてみました。
クリュ・ワインの例としては「Cote Rotie(コート・ロティ)」や「Chateauneuf-du-Pape(シャトーヌフ・デュ・パプ)」があり、大量生産ワインの例は、「IGPワイン」や「広域AOC(AOC Cote du Rhoneなど)ワイン」があります。
まず、収穫について。収穫は厳密にはワイン醸造ではないかもしれませんが、収穫はワイン醸造に影響を与える大きな要素です。
クリュ・ワインでは基本的に手作業による収穫であるのに対し、大量生産ワインでは機械収穫がメインです。
興味深いのは大量生産ワインでも人件費のかかる手作業による収穫が行われている点です。これは機械収穫では不可能な房ごとのブドウを確保するためであり、これによってマセラシオン・カルボニックと呼ばれる低価格ワインと相性のよい醸造手法を用いることができます。
次に醸造前マセレーションについてです。発酵前マセレーションは、色素や香りの抽出のために行われます。
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クリュワインでは、コールドマセレーション(低温浸漬)という手法が取られることがあります。これは、タンクスペースや冷却のエネルギーが必要なために比較的コストがかかる方法です。
大量生産ワインでは、特に大手の製造者では、フラッシュ・デタントやサーモヴィニフィケーションと呼ばれる手法を用いて、素早い色素や香りの抽出が行われます。
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アルコール発酵に関する違いとしては、高品質ワインは天然酵母が利用されることがあることと、発酵温度が高めであることです。これにより香りの複雑さや、色素、香り、タンニンの抽出が高まります。大量生産ワインでは、培養酵母が用いられ、発酵温度は中程度です。これによりフルーティーでタンニンの抽出が低めのワインが造られます。
発酵後マセレーションも同様に、高品質ワインでは強めの抽出がされますが、大量生産ワインではタンニンを抑えるために抽出は軽めです。
熟成については、高品質ワインでは樽を用いた熟成が行われます。一部、新樽も用いられます。一方で、大量生産ワインではステンレスタンクで短期間の熟成が行われ、ワインは早めに出荷されます。
個人的には、品質の違いによる醸造工程の違いがシンプルにまとまっているのではないかと思います。
ワイン醸造の工程は細かく見ていくと複雑な部分もありますが、醸造の選択肢については「収穫」、「発酵前マセレーション」、「アルコール発酵」、「発酵後マセレーション」、「熟成」辺りをおさえておくとほとんどのものはカバーできるのではないかと思います。
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