今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
オーストリアの赤ワインと言えば、その多くが「ツヴァイゲルト(Zweigelt)」と「ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch)」の2品種から造られています。
オーストリアは隣国のドイツと比べると、何かとマイナーな産地のイメージがあるために、個人的にはずっとこの2品種を混同しがちでした。
そこで、今回その違いをまとめてみたいと思います。
産地(オーストリア国内の産地)
ツヴァイゲルトは、オーストリア国内のさまざまな産地で広く栽培されています。そのため、国内の栽培面積は第1位です。
一方で、ブラウフレンキッシュの産地は、主にブルゲンランド州に限られます。ブルゲンランドはパンノニア平原の暖かい風の影響を受ける国内でも特に暖かい地域ですが、この品種は一定の暖かさが無いと十分に十分に成熟しないことが、生産地が限られている理由のようです。
歴史
栽培面積の多いツヴァイゲルトの方が意外にも、ブラウフレンキッシュよりも新しい品種です。
ツヴァイゲルトは、ブラウフレンキッシュとサン・ローラン(ザンクト・ラウレント)の交配品種として1992年に登場しました。
そして、その名前はこの交配品種を開発したフリッツ・ツヴァイゲルトの名前に由来します。
一方で、ブラウフレンキッシュは少なくとも1800年代からありました。その名の「Blau」とはドイツ語で「青い」と言う意味なので、「青いフレンキッシュ」という意味です。フレンキッシュと言う名前は、ドイツのワイン産地であるフランケンに由来しているそうです。
つまり、ブラウフレンキッシュから生まれたツヴァイゲルトが広くオーストリアに広まって、より多く栽培される品種となりました。これは、ツヴァイゲルトがブラウフレンキッシュよりも成熟しやすく、ブルゲンラントほどの暖かさが求められないことが大きく関連しているのではないかと思います。
栽培における特徴
ブラウフレンキッシュは、成熟が遅いという特徴があります。そのため、十分に成熟させるためには、ブルゲンランドのような暖かい気候が必要です。また萌芽が早く、春霜にさらされる可能性があります。
一方で、ツヴァイゲルトはブラウフレンキッシュに比べて早く成熟すると言われています。また、霜によるリスクは低いようです。
収量に関しては、両者ともに多くの収量を見込むことができます。しかしその場合、ブラウフレンキッシュは青い香りを持つワインを造ると言われています。
ワインスタイル
ツヴァイゲルトは、赤系果実(さくらんぼなど)の香り・風味を持ち、中程度の酸味・タンニンのワインを造ります。
一方で、ブラウフレンキッシュは、黒系果実の香りを持ち、高レベルの酸味とタンニンを持ったワインを造ります。
ブラウフレンキッシュの方が、骨格のしっかりしたよりフルボディのワインを造る印象です。ツヴァイゲルトは、交配品種であるサンローランの影響をうけてか、ブラウフレンキッシュよりも少し軽めのワインが造られます。ちなみに、サンローランは、赤系果実の香りと風味を持った中程度の酸味の軽めの赤ワインを造る品種です。
ツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュともに、早飲みのフルーティーで樽香の無い軽めのワインから、樽香を利かせたフルボディで熟成能力のあるワインを造ります。しかし、収量を制限した場合、ブラウフレンキッシュはオーストリアで最も熟成能力の高い赤ワインを造ると言われています。
まとめ
ツヴァイゲルトはブラウフレンキッシュから生まれた品種だけあって、両者は比較的似通った品種です。
しかし、ツヴァイゲルトは、もう1つの交配品種のサンローランの影響を受けてか、ブラウフレンキッシュよりも様々な地域で熟しやすい特徴を持っています。
そのため、ツヴァイゲルトは国内で最も栽培面積の多い黒ブドウ品種となりました。
一方、ブラウフレンキッシュは、成熟するためにより暖かい気候が必要なために、主な栽培地域はブルゲンランド州に限られます。
しかし、成熟に時間がかかる分、十分に成熟したワインは、ツヴァイゲルト以上の熟成能力が備わります。
<了>