イタリアのワインはさまざまな土着品種のブドウからワインが造られます。
今回、焦点を当てるのは主にマルケ州で造られる「ヴェルデッキオ」という白ワイン品種です。
このヴェルデッキオというブドウ品種は、晩熟で、成熟しても酸味が保持されるという特徴を持っています。また、カビに弱いという特徴もあるようです。
イタリアの気候をざっくりとまとめてみると、次のように図示することができると思います。
そして、この図で見るとマルケ州は、「暖かい地中海性気候+春から秋に降水が少ない」地域に位置します。
マルケ州は、暖かく雨が少ない気候であるために、晩熟品種を栽培するには、十分な生育期間が確保できると考えられます。
また、雨が少ないことは、カビに弱い特徴を持つこの品種にとって、大きなメリットでもあります。
その反面、雨が少ないと干ばつの可能性も高まりますが、マルケ州の土壌は石灰質と泥の混ざった土壌であり、適度な保水力を保持します。そのため、ブドウに必要な水分は年間を通して供給されます。
さらに、ヴェルデッキオの主要な産地を見てみると、イエージとマテリカという町の近くのアペニン山脈の麓です。マルケ州は海岸のイメージがありますが、内陸に近づくとこのような比較的標高の高い地域が現れます。
このような内陸の標高の高い地域は、大陸性気候の影響を受けて、昼夜の温度差が発生し、ブドウには十分な酸が保持されると考えられます。そのため、このような地形も、強い酸味が特徴的なヴェルディッキオ種に向いた環境なのではないかと思います。(追記:ヴェルディッキオ種はもともと酸が非常に高い品種であるために、これはあまり関係が無いようです。寒暖差のメリットは、ゆっくりとした熟成により果実味が十分に成熟することにあるようです。) (関連記事:なぜ温暖な地域でのブドウ栽培には冷涼効果が好まれるのか?を考察)
ちなみに、イエージでは「ヴェルディッキオ・ディ・カステッリ・イエージ」、マテリカでは「ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ」というDOCワインが造られています。両ワインともに、一定の熟成規定を満たしたワインは「Riserva」を名乗ることができ、これらのRiservaワインはDOCGワインとなります。
(関連記事:地図と地名で覚えるマルケ州のDOCG)
ヴェルディッキオワインは、通常、リンゴ、レモン、果樹の花、ハーブ、アーモンドの香りを持った、酸味の高い、ミディアムボディのワインを造ると言われます。香りの強さは中程度かそれよりもやや弱めのようです。
フルーティーで早飲みのワインも造りますが、マテリカなどの標高の高い地域ではブドウの成熟がゆっくりと進むため、高い酸味と凝縮した果実味を持ったブドウから長期熟成能力のあるワインが造られます。これらのワインは、瓶熟成により熟成香を生み出します。
まとめてみると、晩熟品種に適した長い生育期間、酸味を保持できる山間の環境、長期熟成のワインを造ることのできる標高による冷涼効果、これらがマルケ州でヴェルデッキオ種のワインが造られてきた理由なのではないかと個人的に考察します。
<了>