マセラシオン・カルボニックは、密閉槽の中に破砕していないブドウの房のみを入れて、それを二酸化炭素で満たして、数日間置いておく醸造手法です。
この手法を用いると、ブドウから色素は抽出されるが、タンニンはほとんど抽出されず、その結果できるワインは果実味が豊かで口当たりの柔らかいものになると言われています。ボージョレ・ヌーヴォーの製造で使われていることでも有名な手法です。
このマセラシオン・カルボニックで特徴的なのは、「酸素」や「酵母」を利用せずに、「酵素」の働きによりアルコールを作り出すブドウの細胞内の発酵が起こることです。
(細胞内の発酵に関する詳細はこちら→ 関連記事:赤ワインで重要な「房ごと発酵する醸造方法」と「細胞内の発酵」)
私は長らく、マセラシオン・カルボニックに対して疑問をもっていました。
それは、この手法が「マセラシオン(醸し)」に該当するのか、それとも、「発酵」に該当するのかという疑問です。
マセラシオン・カルボニックは名前から判断をすると「マセラシオン」に該当すると思うのですが、この工程の中身を見てみるとアルコールを発生させる発酵反応を伴うために、「発酵」に該当するようにも感じます。
そこで、マセラシオン・カルボニックの一連の工程を調べてみました。おおむね下の図のような流れになるようです。
そこで気が付いたことは、ブドウの細胞内の発酵が終わった後に、ブドウ果汁に対しては通常のアルコール発酵が行われているということです。
通常の赤ワインの醸造工程は、「収穫→受入→除梗・破砕→マセラシオン→アルコール発酵→熟成→瓶詰め」という流れです。
マセラシオン・カルボニックのあとに個別にアルコール発酵が行われていることを考えると、やはりマセラシオン・カルボニックは「マセラシオン」に該当する可能性が高いような気がします。
未だに正解はわからないのですが、この疑問を持ったことで、マセラシオン・カルボニックを深く理解することができたような気がします。
<了>