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ワイン名称に出てくるフランス語の「Côte」と「Coteaux」の違いとは?

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テイスティング下手のJSAワインエキスパート(ソムリエ)2次試験対策



テイスティング下手の私がワインエキスパート2次試験を一発合格


JSAワインエキスパート資格は、世間一般にソムリエと言われている方々が所有しているJSAソムリエ資格と同等レベルの資格であり、テイスティング能力も同等のレベルが必要と言われています。

実際に、どちらの資格においても、理論試験対策、テイスティング対策において学習する内容はほぼ同じです。

あるサイトによればソムリエ・ワインエキスパートの合格率は、1次試験の合格率は30~40%、2次試験の合格率は70~80%程度と言われています。1次試験に比べると、2次試験の合格率は圧倒的に高いのですが、それでも油断はできません。なぜなら、1次を受かる人はしっかりワインを勉強をしてきた人たちなので、その人たちの2割も落ちてしまうというのは決して少ない割合ではないからです。

また2次試験には、昨年1次試験を受かって2次試験に落ちた、いわゆる「1次試験免除組」が加わってきます。1年をかけてテイスティングの練習をみっちりしてきたこの人たちは2次試験のレベルを少し上げているかもしれません。

私はワインを仕事にしているわけではないし、ワインを頻繁に飲んでいるわけでもないし、お酒の中で特別ワインが好きだというわけでもないし...とにかく2次試験のテイスティングにおいては不安要素ばかりでした。

そんなテイスティング下手の私が、JSAワインエキスパート試験の2次試験(テイスティング試験)を一発で突破した方法を紹介します。





テイスティングを学べばワインの世界が一気に広がる!


ワインエキスパートの資格を取得するまで、私は自分でワインが選べないタイプの普通のワイン素人でした。

ワインリストのワインの名前もわからなければ、どんな味がするかもわからない...。お店に行けばソムリエや店員さんのおすすめに従うだけ...。

そんな私が、ワインエキスパートのテイスティング対策をしていく中で徐々に自分でワインを選べるようになりました!

ワインリストやラベルからワインの味を知る手掛かりは、「ワイン産地」、「ブドウ品種」、「ワインの等級(ある場合)」、「生産者」、「ヴィンテージ(収穫年)」などです。

ワインエキスパート用のテイスティング対策を経験することで「生産者」以外の、「ワイン産地」x「ブドウ品種」x「ヴィンテージ(新しいか古いか)」による味わいの特徴がわかるようになりました。

これを知って、ワインにも様々な違いがあることが分かり、一気にワインの世界が広がりました!

また、受験を通してできたワイン仲間とワインの持ち寄りパーティーを開くことで、ワインに関する知識もどんどん広がりました。





2次試験は正しい練習をすれば誰でも突破できる!


ワインのテイスティングと言うと、とてもアーティスティックな雰囲気が漂って、センスや長年の経験がものをいうような分野のような気がします。

たしかに、世界のトップクラスのソムリエコンテストなどに出る方々の場合はそうなのかもしれません。

しかし、ソムリエ・ワインエキスパートの2次試験はそんなものが無くても、誰でも正しい練習を一定期間行えば突破ができるものだと思いました。

その理由は、先ほども書いたように2次試験の合格率が70%~80%もあるからです。テイスティングに関するコメントをマーク式で記入して、その得点が下位20%~30%に入らなければ良いだけなのです!決して、テイスティングコンテストのように上位数名を目指して回答をするような必要はないのです!





2次試験突破のポイントは回答ルールをしっかり把握して着実に得点を重ねること!


私は2次試験(テイスティング試験)対策をワインスクールで行いました。

初めて本番形式のテイスティングシートに回答を記入した時に思ったことは、「記入項目が多すぎる!」「聞きなれない言葉や言い回しが多い!」「知らないと正答できない回答ルールが多い!」ということでした。

ここから言えることは、「回答用紙に書かれている用語を正しく理解し、正しい記入方法を理解しなければ合格点は狙えない」ということです。

例えば、ピノノワールのような色調が薄めのワインに対しては「紫がかった」「ルビー」を選ぶことや、ソーヴィニヨン・ブランのような若草の香りを持つワインには「ミント」や「ヴェルヴェーヌ」を香りの特徴として選択することなど、ワインのタイプによって暗黙のルールが本当にたくさんあるのです!

そして、そのルールのもとでは「それとは違って私には〇〇のように感じる!」という意見は全く得点にはつながらないのです。

ワインスクールでは、講師がこのような暗黙のルールを様々なタイプのワインごとに教えてくれるのですが、これをしっかり復習して自分の身にしていく受講生もいれば、そうではない人もたくさんいました。

ワインのテイスティングを通して明らかに正しい正しい香りを感知しているのに、回答ルールを復習していないがために正しいテイスティングコメントに行きつくことのできていない受講生を数多く目にしてきました。

テイスティングの本試験で落ちてしまう人は、きっと「正確な感知能力を持っていない」わけではなく、「正しい回答ルールが身についていない」のだと思います。

ワインスクールの受講生でも一定数そのような方がいるので、独学で勉強している方の中にはもっとそのような方がいるのではないかと思います。




着実に得点を重ねるための戦略


上で説明をした暗黙の回答ルールは、回答用紙の項目ごと、ワインのタイプや品種ごとなどに数多く存在します。

私はワインのプロではないので、当然ながらそれらすべてを完全に理解し身につけることができたわけではありませんでした(これができれば満点も夢ではない!?)。

そのため、安定的に得点を取りやすい項目を選び出して、そこを重点的にトレーニングする戦略を取りました。具体的にトレーニングの方法は下の参考記事で紹介をしています。

(参考記事:JSAソムリエ・ワインエキスパート2次試験対策、セルフ小瓶練習法

その戦略が次の戦略①~⑦です。



【戦略①】「外観」「味わい」「その他の項目」で点を稼ぐ


2019年の テイスティングの項目別点数配分(下表参照)によれば、「外観」「味わい」「その他の項目(評価、適正温度、グラス)」が全得点に占める割合は45%です。これらの項目は産地や品種に左右されることが少なく、どんなワインであっても一定のルールに従って評価がなされるために、安定的に得点がとりやすく、かけた時間に対して最も効果が表れやすい部分でした。

私は品種の特徴をとらえるのが苦手だったので、とにかくこの部分をマスターすることに時間をかけてました。


<ソムリエ・ワインエキスパート テイスティングの項目別点数配分>
------------------------------------
・外観 19%
・香り 26%
・味わい 17%
・その他の項目 9%
・収穫年 5%
・生産地 7%
・主なブドウ品種 12%
・飲料の銘柄 各3%
------------------------------------




【戦略②】「香り」は”第一印象”と”果実”で得点を稼ぐ


「香り」は全体の26%を占める最も得点配分の高い項目です。と同時に、聞きなれない植物やスパイスの名前が表れたり、ブドウ品種によって独特な香りを選ばなければいけない難易度の高い項目です。

しかし、この中でも"第一印象”と”果実”は、どんなワインでも一定のルールに従って回答を選べば安定して得点を取りやすい項目でした。”第一印象”はワインの香りの強さと性質、”果実”は原料のブドウ果実の熟度を表しているので、品種特徴を感じ取れなくても十分に正しい回答を選ぶことができました。




【戦略③】「基本品種」で得点を稼ぐ


ワインエキスパートで例年出題されるワインは4種類で、そのうち3種類は基本品種と呼ばれる頻出品種と言われています。

私はとにかく基本品種3つで得点を稼ぐことに集中をしました。

基本品種3種類で「外観+味わい+その他」と「香り」を正解できれば54%、応用品種で品種特徴の出にくい「外観+味わい+その他」を正解できれば11%、そしてその合計は65%となります。「品種」も3つで正解をすれば6%確保で、約70%です。

基本品種といえども「品種」3つを当てるのは難しいので、2つくらいを目標にして臨みましたが、実際に本試験でも2つ当てることができました。


<ワインエキスパートで例年出題されるワイン>
------------------------------------
ワイン1(基本品種): 外観+味わい+その他(11%)、香り(7%)、収穫年・生産地・品種(6%)
ワイン2(基本品種): 外観+味わい+その他(11%)、香り(7%)、収穫年・生産地・品種(6%)
ワイン3(基本品種): 外観+味わい+その他(11%)、香り(7%)、収穫年・生産地・品種(6%)
ワイン4(応用品種): 外観+味わい+その他(11%)、香り(7%)、収穫年・生産地・品種(6%)
その他のお酒: 3%

※赤白2種類ずつが含まれる

※赤ワイン、白ワインそれぞれ、旧世界と新世界が1つずつ含まれることが多い

※基本品種…ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ミュスカデ、リースリング、(甲州)、ピノノワール、カベルネソーヴィニヨン、ガメイ、メルロー、シラー(ズ)、(マスカットベーリーA)
------------------------------------

(参考記事:私的なリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、シャブリの見分け方





【戦略④】ワインの醸造工程に注目して「香りの印象」で得点する


ここからは少し応用編なのですが、醸造工程に注目をすることで「香り」の中にある"香りの印象"で得点を取ることができました。

例えば、そのワインが第1アロマだけのワインなのか?MLFやシュールリーを経ているのか?木樽発酵や木樽熟成がされているのか?長期間熟成されているのか?などです。

この中でも特に、「第1アロマだけのワイン」と「木樽熟成」のワインは出題頻度が多く、特徴もとらえやすかったので、安定的に得点をすることができました。

「MLF(マロラクティック発酵)」は得意だったのですが、「シュールリー」は苦手だったので、これがでたら半分あきらめようと思って試験に臨みました。




【戦略⑤】「香り」の傾向分析で加点を狙う


ワインスクールで毎回出題されるワインの模範解答や、過去の2次試験の模範解答を分析すると、選ばれる香りに対してある一定の法則が見えてきました。

それは、「品種ごとに選ばれる香り」と、「特定のタイプのワインに対して選ばれる香り」の2種類があることです。前者はその品種特徴を感じ取ることができなければ選ぶのが難しいのですが、後者はワインのタイプ(例:ブドウの熟度の低い軽い白ワイン)さえわかれば容易に加点が狙えます。

このような香りを選ぶことで、たとえ品種を外したとしても、香りの項目で全てを外してしまうような大外しをするようなことはなくなりました。

テイスティング下手であることをわきまえて、「自分が直感で感じ取った香り」よりも「統計的に確からしい」香りを選ぶことで、安定的に得点を確保できるようになったような気がします。




【戦略⑥】「その他のお酒」の得点を確保する


その他のお酒は、ワインとは異なり、選択肢の中から正しい名称を選べば良いだけの単純な問題です。そのため、一度味わって、特徴をとらえたお酒であれば正答を選ぶことはそんなに難しいことではありません。

得点配分はたったの3%ですが、他の受験生が当てられるような問題であれば、落としてしまうのは非常にもったいない得点です。

出題の可能性のありそうなお酒は一度は味わい、瓶に詰めてなんども香りを感じ取る反復練習を繰り返しました。


(参考記事:ワインエキスパート2次試験対策で飲んだ「ワイン以外のお酒」 ~リキュール編~

(参考記事:ワインエキスパート2次試験対策で飲んだ「ワイン以外のお酒」 ~酒精強化ワイン編~





【戦略⑦】「収穫年」「生産地」は過去の模範解答から予測


過去の模範解答を分析して、「収穫年」は”品種”や”ワインの熟成期間”、「生産地」は”品種”や”ブドウの熟度”、”樽香”などから予測を立てました。

しかし、私の実力では"品種"が当たるとは限らず、「収穫年」「生産地」ともに複数の選択肢のなかからのあてずっぽに近かったので、ここではそれほど大きな加点は期待しませんでした。


全体を通しての話ですが、自分がテイスティング下手であることがわかっていたので、自分の主観にあまり頼ることなく、回答法則や過去の模範解答という客観的なデータを基にして終始安定した得点を取ることを目的にこれらの戦略を立てました。結果、決してとても優秀な成績ではなかったと思いますが、2次試験に受かるには十分な得点を取ることができたと思っています。


最後にテイスティングで参考にした書籍の紹介です。

「ワインテイスティングバイブル」 → https://amzn.to/3YPMfrh (Amazonへのリンク)

この書籍は産地ごとの品種の特徴が説明されていて、ワインスクールの授業で分からなかった部分を調べるときに利用しました。








「ワインの香り: 日本のワインアロマホイール&アロマカードで分かる!」 
→ https://amzn.to/4fEsg5A (Amazonへのリンク)

これは香りのついたカード付きで、実際にワインに含まれる香りを感じ取りながら読み進められる一風変わった書籍です。
2次試験前にどうしても感じ取ることが苦手な香りがあったために購入をしました。



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WSETと比較をしてみると、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験で特徴的な部分は、ワインに関する歴史が問われることでした。 (関連記事: WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ? ) ワインやワイン産地には興味があるんですが、正直、ワインの歴史にはそこまで興味を持てませんでした。ワイン愛好家にとって重要なことは、おいしいワインを見つけることや、おいしいワインを飲むことであり、ワインがどんな歴史をたどってきたかなんて近代を除いてそんなに重要なことではないと思えるからです。 「歴史なんか覚えて、何の役に立つの?」正直こんな気持ちでした。 だから、いざ覚えようと思っても、興味のないことはなかなか覚えられません。ワインの色などは語呂合わせを駆使して覚えてきたのですが、年号関連は語呂を作っても同じような語呂ばかりになってしまい、この方法もあまり役に立ちませんでした。 そこで始めたのが、正確な年号を覚えるのはとりあえず置いておいて、年号の順番を覚えるというやり方。特定のトピックにおいて、関連した年号を1つの図にまとめていくと、何となく時代背景が見えてきて、少しずつ頭に入ってくるような気がします。さらに、キーとなる年号だけ覚えておけばその前後関係を覚えておくだけで、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験は4択なので十分対応可能だと思いました。 例えば原産地管理法の年号は、ヨーロッパ→北米・南ア→南米・豪州→NZ・日本のように広まっていくのがわかります。 また、ブドウの伝来もヨーロッパ→南米→アメリカ・南ア→豪州→NZ→日本のように広がっています。 そして、日本も長野・山梨から始まり、北海道や山形に広がっていくのがわかります。 正確な年号を語呂合わせで覚えるよりも、こちらの方が時代背景がわかるので後々役に立つ知識になるとおもいました。 このような類似のトピックで情報を1つの図にまとめていくやり方は、その他覚えにくい生産量のデータや、気候区分を覚えるのにも役に立ちました。単なる数字を覚えるよりもずっと楽に暗記ができました。 例えば、フランス各地の栽培面積とワイン生産量。 そして、各地の気候区分。 試験中に具体的な数字が浮かばなくても、なんどなくこれらの図が頭に浮か...

クリアンサ、レゼルバ、グランレゼルバとは?スペインワインの熟成規定(最低熟成期間)の私的暗記法

スペインの赤ワインのうち、最良のワインにはほぼ確実にオークを使用した熟成がされていると言われています。白ワインの大半はフレッシュで果実味が豊かなワインと言われていますが、一部のワインではオークを使った熟成が行われ、異なる風味が加えられています。 スペインのワイン法でもワインの熟成表記に関する規定が定められており、最低熟成期間の長さによって、「 クリアンサ(Crianza) 」、「 レゼルバ(Reserva) 」、「 グラン・レゼルバ(Gran Reserva) 」などのカテゴリーが規定されています。 最低熟成期間には、総熟成期間と樽熟成期間があり、総熟成期間は樽熟成期間を含めたトータルの熟成期間を示しています。 いくつかのワイン試験では、この最低熟成期間をワインの種類(赤、白・ロゼ)ごと、カテゴリーごとに覚えなければならないのですが、この数字の羅列を覚えるのはなかなか至難の業です。 そこで、個人的に考えた、このスペインワインの熟成規定の覚え方を紹介したいと思います。 1. 表を年表示にする まずは、数字を覚えやすくするために、表の単位を「月」から「年」に変換します。 まるで囲んだ部分だけ、語呂合わせなどを使って覚えます。 2. 赤ワインの「グラン・レゼルバ」の熟成期間を覚える 赤ワインのグラン・レゼルバの最低熟成期間は、偶然にもクリアンサとレゼルバの最低熟成期間を足し合わせた期間なので、簡単に覚えられます。 3. 白・ロゼワインの「クリアンサ」、「レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 白・ロゼワインにおいて、クリアンサ、レゼルバの最低の総熟成期間は、偶然にも赤ワインの「最低総熟成期間ー最低樽熟成期間」に一致します。これを覚えます。 4. 白・ロゼワインの「グラン・ レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 今までの法則で行くと、「グラン・レゼルバ」の最低の総熟成期間は3.5年が望ましいですが、 実際は4年 です。ここだけ、例外的に 0.5年だけずれる と覚えます。 5. 白・ロゼワインの 最低樽熟成期間を覚える 白・ロゼワインの最低の樽熟成期間は、全て同一の0.5年です。 赤ワインの「クリアンサ」のものと同じと覚えておくと、覚えやすいかもしれません。 最後に、この表を法則とともに覚えておくことで、暗記作業は完了です。 関連記事: スペインの「グラン・レセルバ(Gran Re...

ワインの原産地統制名称 - AOC、AOP、PDOのざっくり整理

私がワインの勉強を始めた時に最初に行き詰ってしまったのが、AOC, AOP, PDO, PGI, IGTなどの3文字アルファベットです。 フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ドイツ... と勉強を進めるにつれて、次々とあらたなアルファベットと、ピラミッドが登場します。 必死でそれらを丸暗記してワインエキスパートの試験に臨んだのですが、結局はあまり深い理解が得られないままに、試験の合格と共にワインの勉強を終えてしまいました。 当時は完全に、覚えるべき3文字アルファベットの多さに圧倒されて、その森の中に迷い込んでしまっていました。 今、改めて振り返ってみて、3文字アルファベット(つまり、ワイン法の品質分類)は、すごく平たく言うとこういうことだったのではないかと思っています。その理解を、下に簡単にまとめてみました。個人的な理解なので、完全に正しいかどうかはわかりません。 以下、スライドの説明です。 【ワインの分類】について すごく大雑把に言うと、ワインには「産地名が保護されているワイン」と、そうでないワインがあります。 「産地名が保護されているワイン」とは、例えば、「ブルゴーニュ」ワイン。ブルゴーニュのブドウを使ってなかったり、ブルゴーニュで造られてないワインには、ボトルのラベルに「ブルゴーニュ」という名前を使ってはいけないということです。 さらに、EU圏内の場合、「産地名が保護されているワイン」の中には「産地名が厳しく保護されているワイン」があります。 「厳しく」というのは、ブドウ品種や、ブドウの収穫量、醸造方法、熟成期間などに関する基準を指します。つまり、決められた作り方をしたワインでなければ、その産地名をラベルに表記してはいけないということです。 例えば、シャンパーニュ地方のブドウを使い、そこで醸造をしたワインであっても、シャンパーニュ製法で作られていなければ、「シャンパーニュ」とラベルに表記ができないということです。 【ワイン分類の名称】について 上で説明をしたワインのうち、産地名が保護されているワインは、それぞれの分類(品質分類)の名前がついています。 厳しく産地名が保護されたワイン=PDO 産地名が保護されたワイン=PGI EU圏外で産地が保護されたワイン=GI 【EU各国での名称の違い】について PDOやPGIという名称は、EUが近年(2008年)新た...