VDPとは、「ドイツ高品質ワイン醸造家協会(Verband Deutscher Prädikatsweingüter)」という名のドイツのワイン生産者団体のことです。
VDPはドイツのワイン法とは別の、独自のブドウ畑の格付けを推進していることで有名です。
ドイツには、独自のブドウ畑の格付けに取り組む生産者団体があるようですが、その中でも最も有名で影響力があるのがVDPであるそうです。
このような生産者団体による独自格付けが行われる背景には、ドイツワイン法が抱える問題点と関係があるようです。
その問題点は、私が理解する範囲では、PDOレベルのワインにおいて(つまり、PrädicatsweinとQualitatswein)においてワインの品質レベルがわかりにくいことだと思います。
ドイツワインの階級(階層)は上図のようなピラミッドで表されますが、PDOワイン(Qualitatswein以上のワイン)において階級を決める主な要素は、ブドウマストの糖度です。そして、ブドウマストの糖度は大きくワインのスタイルに影響を与えます(甘口、辛口、中甘口など)。そのため、ワインの品質レベルはこの階層からはわかりにくい仕組みとなっています。
(関連記事:must, must weight の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語)
一方でフランス、特にブルゴーニュワインの階級は、ワインの品質に直結していると言われています。
階層構造は、ブドウ畑の環境の良さを基準に、より広い範囲を下層に、より狭い範囲を上層にピラミッドが構成されています。
品質の高いワインは、品質の高いブドウから造られ、品質の高いブドウは環境のよい限定された場所(畑)から造られるという概念のもとに構成されているのだと思います。
ドイツのワイン法においても、統合畑の「Grosslage(グロースラーゲ)」、単一畑の「Einzellage(アインツェルラーゲ)」という概念がありますが、これまでのドイツのワイン法では畑の格付けは行われていませんでした。
そのため、ワインラベルに畑名の表示は許可されていても、それを見てワインの品質を知ることは難しかったようです。
(関連記事:ドイツワインの品質レベルとブドウ産地の関係と、ラベル表示の話)
VDPによる4層構成の畑の格付け
さて、VDPの独自のブドウ畑の格付けの仕組みですが、先程のブルゴーニュの階層に非常に似た階層で構成されています。
地域レベルワインに相当する「Gutswein(グーツヴァイン)」から、村名レベルワインに相当する「Ortswein(オルツヴァイン)」、一級畑に相当する「Erste Lage(エアステ・ラーゲ)」、そして最上位には特級畑に該当する「Grosse Lage(グローセ・ラーゲ)」と並びます。
「Grosse Lage(グローセ・ラーゲ)」は、ワイン法の統合畑を表す「Grosslage(グロースラーゲ)」に似ていますが別物です。
ちなみに、特級畑に該当する「Grosse Lage(グローセ・ラーゲ)」のブドウから造られる辛口ワインは「Grosses Gewächs (グローセス・ゲヴェックス)」と呼ばれます。ラベル表示は、「Grosses Gewächs 」ではなく「GG」と表示されるようです。
対象となる畑はあくまでもVDPメンバーの畑のみに限られますが、このような格付けを提供することで、VDPはドイツワイン法が抱えている問題点を補完しているのだと思います。
ちなみに現在の問題を解消するために、ドイツのワイン法も2021年に改訂され、新たにVDPのようなブドウ畑に基づくワイン品質の階層構造が導入されるようです。