山地や川などは、ブドウ栽培において大きな影響を与える地形的特徴です。ネット上になかなかまとまった情報がなかったので、個人的にまとめてみました。
ちなみに主要なブドウ栽培産地は下図のように分布しています。
ちなみに主要なブドウ栽培産地は下図のように分布しています。
ライン川(Rhine river)とその支流
寒い気候のドイツのブドウ産地において、川はブドウ栽培に大きな影響を与えています。
川は昼夜や季節による急激な温度変化を和らげるため、その付近の寒さを和らげます。また、日光を反射することでブドウの成熟も助けます。このような影響により、川沿いではより長い期間、ブドウを生育することができると言われています。
ドイツの高品質ワインの産地(Anbaugebiete)のほとんどすべてが、「ライン川(Rhine river)」もしくはその支流沿いに位置しています。
ライン川は、ラインガウ(Rheingau)において川幅が広くなり、ここでは気候の緩和や、霜のリスクの軽減だけでなく、秋には貴腐ブドウを造るのに適した環境を提供します。
タウヌス(Taunus)山地
フンスリュック(Hunsrück)山地
「フンスリュック(Hunsrück)山地」はモーゼル(Mosel)とナーエ(Nahe)の間に位置する産地です。
この山地は、その西に位置するナーエ(Nahe)とラインヘッセン(Rheinhessen)のブドウ畑を雨風の影響から保護する役割を果たします。
ハールト(Haardt)山地
「ハールト(Haardt)山地」は、ファルツ(Pfalz)の西部にある山地です。
南部ではフランスとの国境を経て、アルザスの「ヴォージュ(Vosges)山脈」に続いています。
ハールト山地は、アルザスにおけるヴォージュ山脈と同様の効果をもたらし、ファルツ(Pfalz)を西部からの雨風から保護します。
そのため、ファルツ(Pfalz)はドイツで最も乾燥したワイン産地の1つとも言われています。
また、ハールト山地はこの地域に南向きもしくは南東向きの斜面を作り出し、そこに位置するブドウ畑に最大限の日照を与えています。
ヴォージュ(Vosges)山脈
フランスのアルザスに位置する「ヴォージュ(Vosges)山脈」は、アルザスだけではなく、国境を越えたドイツのバーデン(Baden)にも影響を与えます。
ドイツの南部に細長く位置するバーデンのブドウ畑は、ヴォージュ山脈の影響もあり、ドイツで最も暖かく、日照時間が長く、乾燥したワイン産地の1つと言われています。
ネッカー(Necker)川
「ネッカー(Necker)川」はヴュルテンベルク(Württemberg)を流れ、マンハイム付近でライン川と合流します。
ヴュルテンベルク(Württemberg)の気候を温和なものにするとともに、高品質なブドウの収穫が期待できる斜面のブドウ畑を作り出します。
モーゼル(Mosel)川
「モーゼル(Mosel)川」は、ヴォージュ山脈に源を発し、ブドウ産地の1つであるモーゼル(Mosel)を流れ、ライン川に合流します。
モーゼル川は、モーゼルでは多くの日照が期待できる南向きの急な斜面を作り出し、そこには高品質なブドウを作り出す多くの畑が存在します。
また、多くはありませんが川からの日光の反射があり、ブドウの成熟を助けます。
ザール(Saar)川とルーアー(Ruwer)川
モーゼル川の支流である「ザール(Saar)川」と「ルーアー(Ruwer)川」は、モーゼル(Mosel)の南西部において、南向き、南東向き、南西向きの斜面を作り出します。これらの斜面に位置する畑は、谷によって風などの影響から保護されます。
ザール川やルーアー川にある畑は、モーゼル川のより下流の地域に比べ標高が高く、気温はより低いと言われています。
マイン(Main)川
「マイン(Main)川」はワイン産地であるフランケン(Franken)を通りマインツ付近でライン川に合流します。
フランケンはドイツの主要産地のうち最も大陸性気候の影響を受ける地域であり、秋から冬にかけて気温が下がります。しかし、大陸性気候による厳しい気候は、マイン川のおかげで緩和されます。
また、マイン川はブドウ栽培に適した南向きの斜面も作り出します。
ナーエ(Nahe)川
「ナーエ(Nahe)川」はワイン産地であるナーエ(Nahe)を通りライン川に合流します。
この川も、川沿いの畑の気候を温和にするとともに、日当たりの良い南向きの斜面を作り出します。
アール(Ahr)川
「アール(Arh)川」はワイン産地であるアール(Ahr)を通りライン川に合流します。
アールは主要産地の中では北側に位置する山地ですが、ここでは多くの黒ブドウが栽培されています。
その理由の1つとして、アール川が狭い谷と南向きの斜面を作り出し、そのエリアのブドウ畑を保護するためだと言われています。
ボーデン湖(Bodensee)
「ボーデン湖(Bodensee)」はドイツ、オーストリア、スイスの国境に位置する湖で、別名「コンスタンツ湖(Lake Constance)」とも呼ばれます。
湖畔には、バーデン(Baden)やヴュルテンベルク(Württemberg)の飛び地の畑があり、湖の存在は付近の気候を穏やかにし、湖面の日照の反射はブドウの生育を助けます。