オーストリアのワイン法は個人的に苦手です。
他国のワイン法と違って、個人的にはとても分かりにくいと思います。
以前も記事として載せましたが、改めてその原因を調べてみました。
(関連記事:オーストリアのワイン生産地域、DACとは?それ以外の産地との違い)
結果として、オーストリアのワイン法が分かりにくい理由は次の2点にあるのではないかと考察をしました:
・オーストリアのワイン法が、従来のドイツ式のワイン法に新たなDACの概念を取り入れたものであること
・オーストリアのワイン法がDAC導入の過渡期にあること
その考察を下に説明したいと思います。
まず、オーストリアのワイン法は「ドイツ式」のワイン法の概念が基本にあると思います。
上図のように5層に分かれるワインの分類は、ドイツのものに非常に似通っています。
PDOレベル(原産地呼称保護)のワインは上の3層であり、ここでは主にブドウの糖度によって分類が決められています。
PDOワインの産地としては、州レベルの産地名に加えて、州によってはその中にある小地区の産地名も表記が許可されています。
そして2002年、オーストリアのワイン法には新たなDACというシステムが取り入れられました。
DACの導入は、その地域で造られる特徴的なワインをプロモーションしていくためだと言われています。
DACはPDOレベルのワインに適用され、それぞれの小地区ごと(ヴァッハウや、ヴァインフィアテルなど)に導入がされているようです。
DACの中は、「単一畑ワイン」、「村名称ワイン」、「地域名称ワイン」の3つの分類があり、上位に行くほどワインに使われるブドウの範囲は狭まっていきます。これは、フランスのワイン法に近い品質分類だと思います。
このように、オーストリアのワイン法は、従来から利用されてきたドイツ的なワイン法に、DACという新たなフランス的なワイン法が取り入れられる形式となっています。
新たに加わったDACが、従来のワイン法のどの部分に適用されているかなどは、かなり複雑だと思います。
まずこれが、オーストリアのワイン法を分かりにくくしている原因なのではないかと思います。
さらに複雑なことに、DACは対象地域で造られる全てのワインに適用されるわけではありません。
例えば、DAC産地のクレムスタール(Kremstal)では、リースリングとグリューナー・ヴェルトリーナーの白ワインは「Kremstal DAC」のラベル表記が可能ですが、赤ワインに対してはDACの呼称を使うことはできず、「Niederrosterreich」という一般のクヴァリテーツヴァインのラベル表記しか使うことができません。
その理由は、DACはその産地の典型的なワイン(ここでは、リースリングとグリューナー・ヴェルトリーナー)として登録をしたワインにしか適用できない仕組みであるためです。
この部分も、オーストリアのワイン法を分かりにくくしている部分だと思います。
新たに加えられたDACという呼称ですが、これはまだ全ての地域に適用されているわけではないようです。
例えば、ニーダーエスタライヒ州のテルメンレギオン(Thermenregion)ではまだ導入がされていないようです。
そのため、近隣の産地には「Traisental DAC」や「Carnuntum DAC」という表記がありますが、「Thermenregion DAC」という表記はまだないようです。
このようにDACの導入が過渡期であることもオーストリアのワイン法を難解にしている理由なのではないかと思っています。
そう言えば私が初めてオーストリアのワイン法を学んだ時には、「Carnuntum DAC」も「Wachau DAC」も無かったような気がします。
また、現在は、州レベルの表記(Niederösterreichや、Burgenlandなど)に対してもDACの表記は無いようです。
この辺りも適用範囲をおさえておかないと混乱してしまいそうな部分です。