オーストリアで最も有名なワイン製造地域の1つである「ヴァッハウ(Wachau)」には国で定めたワイン法以外に、生産者団体によるワインの分類があります。
その生産者団体は「ヴィネア・バッハウ(Vinea Wachau)」と呼ばれており、辛口白ワインをそのスタイルや品質によって3つの分類に分けています。
辛口ワインを独自に分類しているところは、少しドイツのVDPに似ています。
(関連記事:ドイツワインのVDPとは?VDPの格付けに関する考察)
ヴィネア・バッハウの3つの分類は、品質の高いものからそれぞれ「スマラクト(Smaragd)」、「フェーダーシュピール(Federspiel)」、「シュタインフェーダー(Steinfeder)」に分かれています。
この分類の面白いところは、それぞれの分類の名称が一見全くワインとは関係ないものに由来していることです。それぞれ次のような由来を持っています:
・スマラクト → エメラルド色のトカゲ
・フェーダーシュピール → 鷹狩りの道具
・シュタインフェーダー → きゃしゃな野草 スティパ・ペンナータ
しかし、こんな由来を知っても、「スマラクト」、「フェーダーシュピール」、「シュタインフェーダー」という言葉を覚えるはなかなか大変です。そこで、何かうまく覚える方法がないかと色々調べてみました。
スマラクト(Smaragd)
「Smaragd」とはドイツ語ですが、これは英語にすると「emerald」です。
エメラルド色のトカゲのまさに「エメラルド」の部分です。
「emerald」という言葉はもともとは、ギリシャ語の「smáragdos(スマクラグドス)」やラテン語の「smaragdus(スマラグダス)」に由来する言葉のようです。そこから、俗ラテン語の「esmaralda/esmaraldus」→古フランス語の「esmeraude(エスメラルド)」→中世英語「emeraude(エメラルド)」と変化をしたようです。
ドイツ語の「smaragd」は、俗ラテン語の「esmaralda/esmaraldus」になる前の、ギリシャ語やラテン語の「smáragdos/smaragdus」により形が似ています。
このような言語の変化を覚えておくと、
emerald → esmeraude → smaragd
のように、何とか「スマラクト」を思い出せるかもしれません。
フェーダーシュピール(Federspiel)
フェーダーシュピール(Federspiel)という名の道具がどのようなものかを調べてみると、どうやら鳥の羽によって鳥を似せて作った道具で鷹を引き付けるための道具のようです。釣りで言うロッドとルアーに近いものだと思われます。
「Federspiel」はドイツ語ですが、英語にすると「feather play」です。
「feather(羽)」+「game/play(遊び)」がなんとなく連想されるかもしれません。
シュタインフェーダー(Steinfeder)
「Steinfeder」とは、ヴァッハウのブドウ園のブドウ木の周りでよく育つ別名「Stipa pennata」という名の野草のことです。
「Steinfeder」英語に直訳すると「stone fether」になりますが、その名の通りフェザーグラスという仲間に分類されるイネ科の野草だそうです。
ラインとボディのワインのスタイルを、羽のように軽い野草で例えているのかもしれません。
また、この植物は銀色がかった灰色の花をつけるようなのですが、「Stein(stone)」という名はそのような花の色から来ているのかもしれません。
「Steinfeder(石+羽)」で、何とかシュタインフェーダーを覚えられそうです。