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ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

場所が近いのにこんなに特徴の違う「アデレード・ヒルズ」と「マクラーレン・ヴェイル」

 アデレード・ヒルズ(Adelaide Hills)とマクラーレン・ヴェイル(McLaren Vale)はともに、南オーストラリア州の州都であるアデレード近郊に位置するワイン産地です。 地理的な場所が近いので、何となく似通ったイメージも持ってしまいやすい2つの産地ですが、調べてみるとかなり特徴が異なります。 今回は、その違いについて調べてみました。 まずは、 アデレード・ヒルズ の特徴から。 この地域の特徴は次の通りです: ・マウントロフティレンジ・ゾーン(Mount Lofty Ranges Zone)に属する ・丘陵や谷が多く、機械作業が困難 ・標高が高く、オーストラリアのワイン産地の中では涼しい(冷涼~温和) ・昼夜の寒暖差(日較差)が大きい ・海に近い海洋性気候で雨が多い(特に冬から春にかけて) ・オーストラリアの産地の中では湿気が高く、カビのリスクが高い ・緯度が低めのため、日光が強い ・白ワイン品種の方が多く栽培されている(ソーヴィニヨンブランやシャルドネなど) ・赤ワイン品種ではピノノワールの栽培が多く、スパークリングワインやスティルワインが製造されている ・オーストラリアの産地の中ではシラーズの栽培が少ない まとめると、アデレード・ヒルズはその名の通り、丘陵にある標高の高い地域であるために、気温が低く、白ブドウ栽培や早熟な黒ブドウ品種の栽培に適した地域であるようです。雨が多く、比較的湿気の多い地域でもあり、これも気温の低さに影響しているのかもしれません。 次に、 マクラーレン・ヴェイル の特徴です。 この地域の特徴は次の通りです: ・フルリオ・ゾーン(Fleurieu Zone)に属する ・気候は暖かい地中海性気候 ・海風や丘陵からの風が暖かい気候を緩和するとともに、カビのリスクを減らす ・春から秋にかけて雨が少ない ・圧倒的に、赤ワイン用品種の栽培が多い(シラーズ、カベルネソーヴィニヨン、グルナッシュなど) ・シラーズの栽培が最も多い ・機械収穫を取り入れている大規模なブドウ畑が多い まとめると、マクラーレン・ヴェイルは、アデレードヒルズに比べると低い地域であり、気温もかなり高めです。比較的、乾燥した気候で、日照量も多く、フルボディの赤ワインを造るような晩熟のブドウを栽培するのに非常に適した地域です。涼しさの必要な、白ブドウ品種やピノノワールのよう

「トロンテス」の特徴とは? ~アルゼンチンの代表的な白ブドウ品種を調べてみる~

 トロンテスは、アルゼンチンで生産される代表的な白ワイン品種です。 アルゼンチンワインと言えば、赤=マルベック、白=トロンテス、というイメージがあります。 実際、マルベックはアルゼンチンで最も栽培面積の広いワイン用ブドウ品種です。 栽培規模 トロンテスの栽培規模というと、必ずしも大きいわけではありません。 栽培面積は白ブドウで2番目ですが(1位はペドロ・ジメネス)、白黒合わせた全体では、6、7番目くらいの栽培規模です。 アルゼンチンは、黒ブドウ品種に加えて、ピンク系ブドウ品種の栽培も多いので、白ブドウ品種の生産はそこまで多くないためです。 主要産地 トロンテスの主要産地は、メンドーサ州、サンフアン州、ラ・リオハ州、そして、最も成功していると言われているのはサルタ州のカファジャテ(Cafayate)です。 これらの地域は、ワイン用の産地としてはかなり低い緯度に位置しているのが特徴です。サルタ州は南緯24度と、本来であればかなり暑い地域に位置しています。 ブドウ栽培における特徴 トロンテスは早熟なブドウ品種です。気温の高さによって成熟し過ぎると、アルコールが過度に高く、酸味に乏しく、苦みのあるワインになってしまうという特徴があります。 では、このような特徴を持つトロンテスが、なぜ南緯20~35度のような本来であれば暑い場所で栽培されるかというと、メンドーサ州、サンフアン州、ラ・リオハ州、サルタ州の標高の高さに理由があります。 トロンテスが栽培される畑は全て標高の高い場所に位置するため、栽培環境の気温は低くなり、早熟なブドウ品種のトロンテスに適した環境となるわけです。また、昼と夜の温度差が大きく、ブドウの酸味や、新鮮な果実の香りの保たれた高品質なブドウが造られます。高品質なトロンテスの栽培で有名なカファジャテの標高は、1,700mにもなります。 ブドウの起源 トロンテスは、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と「クリオージャ・チカ」の自然交配品種と言われています。クリオージャ・チカは、チリでは「パイス」と呼ばれるブドウです。 アルゼンチンでトロンテスと名の付くブドウ品種は、「Torrontes Riojano」、「Torrontes Sanjuanino」、「Torrontes Mendocino」の3つがあると言われています。このうち、トロンテス・リオハーノが最も品質

カルメネールとマルベックの類似点・相違点をまとめてみる

 南米のワイン産地で特徴的な黒ブドウと言えば「カルメネール」と「マルベック」があがると思います。 カルメネールと言えば「チリ」、マルベックと言えば「アルゼンチン」で多く栽培されているブドウですが、何かと似ている印象があって度々混同してしまいます。 そこで、この2種類のブドウの類似点と相違点についてまとめてみようと思います。 類似点 最初の類似点 は、 ワインスタイル です。 カルメネール、マルベックともに、骨格のしっかりしたフルボディのワインを造ります。両者ともに、特に高いレベルのタンニンを持った黒系果実の香り・風味を持ったワインです。 また、一定水準以上の品質のワインは樽熟成を経て造られるので、どちらも樽熟成に由来するコーヒーやヴァニラ、その他甘いスパイスの香り・風味を持つことも共通点です。 また、フルボディのワインを造るブドウ品種に共通する特徴ですが、その栽培環境として、一定の日照や暖かさを要することも共通しています。 2つ目の類似点 は、 由来 です。 両者ともにもともとはフランスで栽培されていたブドウ品種のようです。そしてそれぞれの品種は、チリおよびアルゼンチンに持ち込まれ、それぞれの国を代表する赤ワインを造るようになりました。 一方で、両者ともにフランスにおいてはメジャーな品種ではなくなってしまっている点も共通しています。 相違点 最初の相違点 は主な 栽培地域 です。 カルメネールは、フランス、イタリア、アルゼンチンでも栽培がされていますが、やはり主な栽培地と言えばチリです。 マルベックも、フランスやアメリカを含め世界各地で栽培がされていますが、主要な栽培地と言えばアルゼンチンがあがります。またこれに加えて、フランス南西地方のカオールも主要な産地としてその名があがります。カオールではマルベックは別名「コット」とも呼ばれています。 両方とも南米で有名な黒ブドウ品種ですが、主要栽培地域には明確な違いがあります。 2つ目の相違点 は、代表的な産地であるチリ、および、アルゼンチンにおける 栽培面積 です。 マルベックは、白黒合わせて最も栽培されているブドウ品種であり、その栽培面積は全体の約20%を占めると言われています。まさに、アルゼンチンを代表するブドウ品種です。 一方で、カルメネールはチリにおいてそれほど大きな栽培面積を占めていません。チリで最も栽培されてい

ギリシャの赤ワインブドウ品種「アギオルギティコ」と「クシノマヴロ」を比較してみる

 ギリシャはワイン産地としては非常に伝統のある産地です。ワイン醸造の歴史は少なくとも5000年以上あると言われています。 ギリシャは土着品種の多さが特徴的なワイン産地であり、その数は300品種にものぼると言われています。 有名な土着品種と言えば、「サヴァティアノ」や「ロディティス」、「アギオルギティコ」、「クシノマヴロ」に「アシルティコ」などがあがります。 そしてそのうち、黒ブドウ品種は 「アギオルギティコ」 と 「クシノマヴロ」 の2種類です。 個人的にこの黒ブドウ2品種を何かと混同してしまうことが多いため、その特徴の違いを調べてみようと思います。 まず、 概要 から。 アギオルギティコ は、 ・ギリシャで 最も栽培されている黒ブドウ 品種 ・ さまざまなスタイルのワイン(辛口、ロゼ、甘口など) を造ることのできる品種 です。 一方で、 クシノマヴロ は、 ・ギリシャで 最も高く評価されている黒ブドウ 品種 です。 クシノマヴロのスタイルは、基本的に辛口赤ワインとして造られるようです。 次に 栽培地域 です。 アギオルギティコ は、 ・主に ペロポネソス で栽培され ・ PDOネメア のワインが評価されて います。 一方で、 クシノマヴロ は、 ・主に 北部ギリシャ (マケドニアなど)で栽培され、 ・ PDOナウサ のワインが最も有名 です。 ネメアとナウサのうち関係は、下の地図の通りです。 最後に ワインスタイル です。 アギオルギティコ は、 ・早飲みでフルーティーなスタイルの赤ワイン ・熟成能力を持つ複雑でフルボディの赤ワイン ・ロゼワイン ・甘口の赤ワイン など様々なスタイルのワインを造ります。 多くの アギオルギティコ のワインは、 ・濃い外観 ・熟した赤系果実、・甘いスパイス(オークに由来)の香り/風味 ・中程度の酸味 ・中~高程度の柔らかいタンニン ・中程度のアルコール を持つと言われています。 一方で、 クシノマヴロ のワインは、若いうちは、 ・不快に感じられるほどの高いレベルの酸味やタンニン ・果実というよりも野菜に近い風味 ・淡い外観 を持つために、よくネッビオーロに例えられるそうです。 多くのワインは瓶内熟成により発展し、 ・花、ハーブ、スパイス、皮革、土のような香り/風味(瓶内熟成後) を持つと言われています。 同じ赤ワインでもアギオルギテ

ギリシャワインの地理的地方区分に関する疑問と考察

 各国のワインを学習していると、ワイン産地の地理的な区分が、国が行政を行う上での行政区画と一致しない場合があります。 ギリシャもそのうちの1つです。 ギリシャの行政区画は、最も大きな区画で、13の「ペリフェリア(=地方)」に分かれています。 そして、このペリフェリアの下に、県にあたるペリフェリアキ・エノティタ(74)と、市にあたるディモス(325)が区画されています。 しかし、ワイン産地における地理的区分は若干異なり、9つの地方に分かれています。 ここで使われる「地方」は「ディアメリスマタ」と呼ばれていますが、日本語では「ペリフェリア」と「ディアメリスマタ」のどちらも「地方」と翻訳されているようです。 なぜ、行政とワイン産地で地理的な区画が異なるのかが疑問でしたが、調べてみた結果、なんとなく理由が分かりました。 それは、ギリシャでは比較的最近(2010年)に「カリクラティス改革」と呼ばれる大規模な地方制度改革が行われ、新たな行政区画が2011年1月1日付で導入されたからです。 この新たな行政区画が、「ペリフェリア」を用いた13の地方の行政区画です。 最近導入された区画であるため、ワイン産地としては、昔から用いられていた9の地方の地理的区分も用いているようです。 細かい話ですが、このようなことを学んでいくのもワイン学習の楽しみの1つだと思います。 <了>

アントル・ドゥー・メール(Entre-Deux-Mers)のワインとは?

 アントル・ドゥー・メール(Entre-Deux-Mers)AOCは、ボルドーのドルドーニュ川とガロンに川に挟まれた広大な面積のAOCです。 フランス語で「Entre Deux Mers」とは、「Between Two Seas」という意味なので、直訳では「2つの海の間」という意味です。 しかし、一説によると、この地域の名前は、フランス語の「mer」(海)ではなく、「marée」(潮)に由来してしており、潮の満ち引きが激しい2つの川に挟まれていることにちなんでいるとも言われています。 この広大な地域では、赤白どちらのワインも製造させていますが、「アントル・ドゥー・メール AOC」の名称で販売できるワインは白ワインのみです。 生産地域が広いので、赤白両方のワインが含まれている印象があるので、ちょっと見落としがちなポイントかもしれません。 ちなみに、ここで造られた赤ワインは、ボルドーAOC、もしくは、ボルドー・シュペリュールAOCとして販売されます。 アントル・ドゥー・メール AOCのワインの特徴は、辛口の白ワインです。許可されている残糖量は4g/ℓです。 品種は、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「セミヨン」、「ミュスカデル」の3種の品種のブレンドです。 ワインのスタイルは基本的には早飲みで、フルーティーなスタイルで作られます。 価格も手ごろで、低価格から中程度の価格と言われています。 ガロンヌ川を挟んで対岸のペサックレオニャンで造られる高品質で、長期熟成スタイルの白ワインとは対照的です。 今回は、有名なAOCの中に埋もれて少し忘れがちになってしまう、ボルドーのAOCについてまとめてみました。 <了>

アロマティックな白ブドウ品種の特徴の違いは?(リースリング、ピノグリ、ゲヴュルツトラミネール、トロンテスの比較テイスティング)

 今回のテーマは、独特な香りを持つアロマティック品種から造られた白ワインとして、次の4つの品種のワインを集めてみました。 ワイン①:リースリング(AOCアルザス) ワイン②:ピノグリ(AOCアルザス・グランクリュ) ワイン③:ゲヴュルツトラミネール(AOCアルザス・グランクリュ) ワイン④:トロンテス(アルゼンチン) 具体的なワイン名は次の通りです: ワイン①:Riesling Tradition Charles Sparr 2017 → https://amzn.to/40WFuGO (Amazonのサイトへ) ワイン②:Alsace Grand Cru Pinot Gris Rangen 2003 Chateau d'Orschwihr 2003 →  https://amzn.to/3YYvHxb (Amazonのサイトへ) ワイン③:Paul Ginglinger Alsace Grand Cru Gewurtztraminer Pfersigberg 2018 →  https://amzn.to/3OhcZMl (Amazonのサイトへ) ワイン④:Cuma Organic Torrontes Bodega El Esteco 2020 →  https://amzn.to/4hUluul (Amazonのサイトへ) 外観の比較 まずは外観の比較から。 アルザスのワインは比較的、色が濃く表れていますが、これは品種による違いというよりは、ヴィンテージによる影響が大きいと思います。 香りの比較 次は香りの比較です。 リースリングとピノグリに比べると、ゲウェルツトラミネールと、トロンテスの香りは非常に強く感じられます。 また、それぞれのワインから感じられる特徴的な香りをまとめると、 ・リースリング → 甘やかな花の香り ・ピノグリ → モモのコンポートやハチミツ ・ゲヴ ュ ルツトラミネール → バラ、ライチ、非常に華やかな花の香り(芳香剤のよう) ・トロンテス → ブドウ(マスカット)の香り、火打石のようなスモーキーな香り このようになりました。 トロンテスの火打石のようなスーッとした香りは、どこから来るものなのかは分かりませんでしたが、樽熟成をほとんど行っていないことを考えると、ブドウ由来の香りであると思われました。 【補足】Decanter

ワインから感じられるバナナの香りとは?

特定のワインはバナナの香りを持っていると言われます。 例えば、マセラシオン・カルボニック製法で造られたボージョレワイン、南アフリカのピノタージュ、スペインのガリシア地方で造られるアルバリーニョなどが該当します。 バナナの香りの元となる化学物質は酢酸イソアミル(isoamyl acetate)と呼ばれるエステルです。この物質は、マセラシオン・カルボニックの副産物として、または、通常のアルコール発酵において酵母から発生すると言われています。酢酸イソアミルの香りは、洋ナシや風船ガムの香りとも形容されます。 (関連記事: 【ワインの表現用語】Pear(洋ナシ)、Pear drop(洋ナシ香味のキャンディー)の香りとは? ) 酢酸イソアミルに代表されるワイン中のエステルは、特に低温(例えば15°C前後)で発酵された場合に多く発生すると言われています。 エステルは、ワインにフレッシュでフルーティなアロをもたらすために、若いスタイルのワイン、特に白ワインには欠かせないと言われています。 そのため、多くの白ワインでは赤ワインよりも低い発酵温度が好まれるとも言われます。 反対に、白ワインの中でもフレッシュでフルーティーな香りが好まれないワインでは、やや高めの発酵温度(例えば、17~25°Cなど)で発酵を行い、エステルの生成が抑制されます。

MOGの意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語

 MOGとは、"Material Other than Grapes"の略、つまり、「ブドウ以外のもの」です。 収穫時にブドウと一緒に意図せず収穫されてしまう葉や土、茎、枝、石、棒、ワイヤー、虫などを指します。 収穫作業が機械収穫であろうと、手摘みであろうと、一定量のMOGが含まれてしまうと言われています。 MOGはワイン醸造においてはネガティブなものと捉えられており、圧搾・発酵前に果実の選別作業をあまり行わないような大量生産ワインにおいても、通常MOGの除去は行われます。 MOGの悪影響としては、例えば茎が多く含まれると、ワイン中のメトキシピラジンの濃度が増加してワインは青い野菜のような風味を持つと言われています。また、渋み、色の濃さ、酸味も強調されてしまうようです。 また、あまり考えたくはありませんが、虫による影響として不快なアロマがもたらされるという調査結果もあるようです。 テクノロジーの活用などにより、収穫時に含まれるMOGの割合を減らす取り組みもなされています。

WSET試験で重要な白ワイン製造における醸造オプションのまとめ

 WSET試験では、ワイン製造における醸造オプション(醸造手法の選択肢)がよく出題されます。 醸造オプション問題への対策としては、スタンダードな醸造工程を把握して、各工程における検討要素(醸造オプション)を一覧にまとめておくのが良いのではないかと考えています。 白ワイン製造のプロセスは、大まかには次のような流れだと思います。 そして、これをベースに細かい工程と、それぞれの工程における検討要素をまとめてみると次のような表になります。 こんな形でまとめておくと、特定のワインの醸造オプションを考える時に、抜け漏れなく各工程における醸造オプションを検討することができるのではないかと思います。 これとは別に、その醸造オプションを用いる理由や、そのオプションがワインのスタイル・品質・価格に与える影響を把握しておく必要がありますが、このような一覧にはまとまりきらないので、別途まとめておく必要がありそうです。 <了>

「ジンファンデル」と「テンプラニーリョ」の違いをしらべる!比較テイスティング

 今回は、ジンファンデルとテンプラニーリョの品種比較テイスティングをしてみたいと思います。 なぜこの2つを選んだかというと、どちらも赤系~黒系果実の香りを持ち、ミドル~フルボディのワインを造り、オーク樽との相性が良いという共通点を持っているからです。 今まであまり比較をする機会が無かったので、どのような違いがあるのかを調べてみたいと思います。 今回用意をしたワインは次の通り: ----------------- ①ジンファンデル / ドライ・クリーク・ヴァレー(ソノマ、カリフォルニア) ・ワイン名:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017 ②テンプラニーリョ / リオハ(スペイン)ー 伝統的スタイル(アメリカンオーク+フレンチオーク利用で、新樽比率高め) ・ワイン名:Dominio de Ugarte Reserva 2013 ③テンプラニーリョ/ リオハ(スペイン)ー モダンスタイル(フレンチオーク利用で、新樽比率は低め) ・ワイン名:Remelluri Lindes de Remelluri Viñedos de Labastida 2014 ----------------- リオハのテンプラニーリョは、念のために異なる2つのスタイルのものを用意しました。結果としては、ワイン②(伝統的スタイル)の樽香が強すぎて、ワイン①(ジンファンデル)との比較にならなかったので、ワイン③(モダンスタイル)も用意をしておいて正解でした。 外観の比較 まずは外観ですが、どれも濃いルビー色で、それほど大きな違いは見られません。 外観での判別は難しいと思います。 香りの比較 次に香りの比較ですが、用意したジンファンデル(ワイン①)は、よりモダンスタイルのリオハ(ワイン③)に近い香りを持っていました。 反対に、ワイン②はヴァニラの甘い香りが特徴的で、ワイン①とワイン③とは少し香りの質が異なります。 これは、ワイン①、ワイン③ともに、それほど新樽比率の高くないフレンチオークで熟成をしているためだと思います。 香りの近いワイン①(ジンファンデル)とワイン③(テンプラニーリョ)を比べると、ワイン①はより成熟度の高いジャムのようなレーズンのような果実の香りを持っていることが特徴的でした。 また、ワイン①(ジンファンデル)は成熟度の高いジャムのような香りを持つ

どれもパワフル!似ている3種の赤ワインの比較 ~ドウロ品種、シラーズ、マルベック~

 今回は、個人的に特徴が似ていると思う3種類のワインの比較をしてみたいと思います。 ワイン①: ドウロ・ルージュ ・ブドウ品種:ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、トウリガ・フランカ、トウリガ・ナシオナル ・ワイン名: Quinta dos Avidagos Douro Tinto Reserva 2016 ワイン②:バロッサ・ヴァレー・シラーズ ・ブドウ品種:シラーズ ・ワイン名: Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 ワイン③:メンドーサ (ルハン・デ・クージョGI)・マルベック ・ブドウ品種:マルベック ・ワイン名: Alpamanta Estate Malbec Alpamanta Estate Wines 2011 3ついずれもパワフル&スパイシーで、果実味としっかりとした骨格を持つワインです。 外観の比較 まず外観は、次の写真の通りです。 どれも最も濃い部類のルビー色で、見た目にそれほど違いはありません。 ドウロとバロッサシラーズがやや紫がかっているように感じられますが、これは2つがマルベックに比べて若いワインであるためで、品種による違いではないと思います。 香りの比較 香りの比較については、どれも熟した黒系果実とスパイシーな香りという、かなり似通った特徴を持っていました。 しかし、若干ながら、それぞれのワインに香りの違いもありました。 まず、ドウロは3つの中で最も控えめなタイプの香りを持ち、香りが最も閉じこもっている印象を持ちました。華やかさの少ないスパイスであるクローヴで形容されるような香りが近いのではないかと思いました。 バロッサヴァレーの香りの特徴は、少し鼻にスーッと感じられるような、コショウを思わせる香りを持つことでした。また、3つの中ではヴァニラやコーヒーで形容される樽香が最も顕著に感じられるワインでもありました。 メンドーサのマルベックは、3つの中では最も果実感が感じられるワインであり、黒系果実に加えて、乾燥プルーンで形容されるような香りを持っていることが特徴だと思いました。また、リコリスのような甘さが感じられることも特徴的でした。 味わいの比較 最後に味わいについての比較です。 どのワインもフルボディでしっかりした骨格を持っているという点は共通する特徴であり、品種による特徴を見つけるのは

南欧(イタリア、スペイン、ポルトガル)の赤ワインの違いを知る!南欧の代表品種の比較テイスティング

いままで個人的に比較テイスティングをすることの少なかった、イタリア、スペイン、ポルトガルの土着品種から造られた赤ワインのテイスティングをしてみようと思います。 目的は、それぞれの品種やワインの特徴を捉えることです。 1種類のワインだけを味わってその特徴を捉えるだけのテイスティング能力を持ち合わせていないので、とりあえず産地の近いワインを並べてみようと思います。 今回選んだワイン(品種)は次の通りです: ワイン①: ヴァルポリチェッラ・クラッシコ(品種:コルヴィーナ・ヴェロネーゼ) ワイン②: バローロ(品種:ネッビオーロ) ワイン③: キアンティ・クラッシコ(品種:サンジョヴェーゼ) ワイン④: リオハ・リゼルヴァ [伝統的な樽香強めのスタイル](品種:テンプラニーリョ) ワイン⑤: リオハ [モダンな樽香弱めのスタイル] (品種:テンプラニーリョ) ワイン⑥: ドウロ(品種:ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、トウリガ・フランカ、トウリガ・ナショナルのブレンド) 具体的なワイン名は次の通り: ① Bonacosta Valpolicella Classico Masi 2018 ② Terre del Barolo Barolo 2015 ③ Rocca Guicciarda Chianti Classico Riserva Barone Ricasoli 2012 ④ Dominio de Ugarte Reserva 2013 ⑤ Remelluri Lindes de Remelluri Viñedos de Labastida 2014 ⑥ Quinta dos Avidagos Douro Tinto Reserva 2016 外観 まずは外観の特徴の比較です。 特徴的なのは、バローロの色の淡さです。ネッビオーロ種は、かなり色が薄くなる品種のようです。 一方で、リオハとドウロは色の濃さが特徴です。特にドウロは漆黒のような濃い色です。 香り 次は香りの特徴の比較です。 それぞれのワインについての主だった香りの感想は次の通りです。あくまで個人的な感想です。 ヴァルポリチェッラは、比較的シンプルな赤系果実の香りの中に、甘いリコリスの香りが感じられます。 ネッビオーロとサンジョヴェーゼはどちらも赤系果実の香りの中に、枯れたようなドライハーブの香りが感じられ、と

ブドウ栽培で涼しさはなぜ必要? ~温暖地域で冷涼効果が好まれる理由を考察

比較的暖かい地域でブドウ栽培をする場合、高品質なブドウを作るためには海風や標高による冷涼効果が必要だと言われます。 アメリカ(カリフォルニア)、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンなどのヨーロッパよりも暖かい国々において高品質なブドウを造る産地には、例外なく冷涼効果が存在すると言われます。 例えば、カリフォルニアのソノマやナパヴァレーは、寒流であるカリフォルニア海流によってブドウ畑が冷やされます。 アルゼンチンのメンドーサでは、アンデス山脈の標高によるブドウ畑の冷涼効果が得られます。 このような比較的暖かい地域の高品質なブドウ栽培において、なぜ冷涼効果が好まれるのかを考察してみました。 結論から言うと、冷涼効果が必要な理由は次の2点ではないかと思います。 ・果実の成熟が遅くなり、香り/風味やタンニン(+色素)が十分に成熟する ・ブドウの酸味が保持される 果実の成熟が遅くなるとなぜ良いのか? 温暖で、比較的乾燥した気候はブドウ栽培にとって理想的な環境です。しかしこのような環境では、ブドウに糖分が最も早く蓄積する傾向があると言われます。ブドウの糖の蓄積は、ブドウの蒸散速度と相関関係があり、涼しく湿気の多い条件よりも暖かく乾燥した条件の方が、蒸散速度が速くなるためです。 暖かく乾燥した気候では、この糖の蓄積が速すぎて、香り・風味やタンニン、色素などが十分に熟成する前に、ブドウの糖度が高くなりすぎてしまいます。 この場合、ブドウの糖度が高くなりすぎる前にブドウの収穫を行うと、香り・風味やタンニン、色素などは未熟なままとなってしまいます。 一方で、(天候が許す場合)香り・風味やタンニン、色素などの成熟を待ってから収穫を行うと、ブドウの糖度は高くなりすぎてしまい、結果として製造されるワインのアルコール度が高くなりすぎてしまうかもしれません。 どちらの場合でも、糖度の蓄積が早すぎて、ブドウは品質面において何らかの問題を抱えていることになります。 この概念をチャートで表すと次のようになります。 今度は冷涼効果がある場合を考えます。 冷涼効果がある場合、ブドウ畑の平均的な温度は低くなるために、温度と相関性のある糖度の蓄積は遅くなります。 先程の場合と比べると、糖度の蓄積のみが、香り・風味やタンニン、色素の成熟よりも大きく先走ることはありません。 そのため、理想的な場合、糖とその他

南アフリカのワイン産地の自然環境のざっくりまとめ

南アフリカのワイン産地の自然環境をざっくりとまとめてみたいと思います。 まず、南アフリカは、南緯22°~34°に位置する暑い~暖かい地域です。 一般に、ワイン用のブドウ栽培ができる地域は北緯/南緯30°~50°と言われているので、南アフリカの南端でも、ブドウ栽培にはかなりギリギリの地域です。 南アフリカの南端には、 「西ケープ州」 があります。実際、南アフリカのワインのほとんどはこの州で生産されています。 しかし、それでも西ケープ州の緯度は南緯30°~34°くらいです。 このような暖かい地域でも高品質なワインが造ることができる原因は、寒流である 「Benguela(ベンゲラ)海流」 と、その冷涼効果を高めてくれる 「Cape Doctor(ケープドクター)」 と呼ばれる南東の風にあると言われています。 ベンゲラ海流の冷涼効果は、西ケープ州の西岸から、アフリカ大陸先端のアガラス岬の辺りまで広がるようです。 一方で、大陸の東側にはアガラス海流と呼ばれる暖流が流れており、海流による冷涼効果は得られません。 ところで、南アフリカの原産地呼称制度は、生産地を大きさにより4種類に分類してます。 大きい順に、「 Geographical Unit(地理的区域)>Region(地域)>District(地区)>Ward(小地区) 」の順です。 西ケープ州 は、 Geographical Unit(地理的区域) にあたり、この中には5つの Region(地域) が含まれています。 それらは、 「Coastal Region(コースタル・リージョン)」 、 「Breede River Valley(ブレード・リヴァー・ヴァレー)」 、 「Cape South Coast(ケープ・サウス・コースト)」 、 「Olifants River(オリファンツ・リヴァー)」 、 「Klein Karoo(クレイン・カルー)」 です。 これらの地域は、自然環境から受ける影響の違いにより、異なるワインを製造します。 コースタル・リージョン は、5つの地域のうち、ブドウの栽培面積が最大の地域です。しかし、比較的低収穫の中~高価格のワインが多く製造されているために、ワインの生産量は必ずしも最大というわけではありません。 この地域は、海沿いは寒流やケープドクターによる冷涼効果、また、内陸の山岳地域は標高によ

ワインの揮発性の酸(VA)とは?

ワインの書籍を読んでいると、ワインの欠陥を表す用語として 「揮発性の酸(VA = volatile acidity)」 という言葉が出てきます。 揮発性という観点から見ると、酸には大きく分けて2種類あり、揮発性の高い(蒸発しやすい)酸と、揮発性の低い(蒸発しにくい)酸があるそうです。 不揮発性の酸は主に味覚で感じられますが、揮発性の酸の特徴は、その名の通り気体になりやすいために、主に香りとして感じられると言われます。 ワインに含まれる主要な酸である、酒石酸(tartaric acid)やリンゴ酸(malic acid)、乳酸(lactic acid)は全て揮発性の低い 「不揮発性の酸」 です。 一方で、ワインに含まれる 「揮発性の酸」 はそのほどんどが酢酸(acetic acid)です。 酢酸は、ワインの発酵過程で酢酸菌(acetic acid bacteria)の媒介によりアルコールから生成され、全てのワインに含まれていると言われます。 酢酸はまた、ワイン中のアルコールと反応をして酢酸エチル(ethyl acetate)を作り出すと言われています。酢酸エチルの特徴は、マニキュアの除光液の香りやシンナーの香りと言われています。 酢酸および酢酸エチルは、少量が含まれる場合には、芳香性や複雑性などワインにポジティブな影響を与えると言われます。しかし、大量に含まれる場合には、不快な香りとして感じられます。これが、 「揮発性の酸(VA)」 がワインの欠陥を表す用語として使われる理由のようです。 揮発性の酸(酢酸)は一般的に、古い樽や酸化的な環境で造られたワインに多く含まれると言われています。酢酸菌は酸素の存在下で活発に働き、アルコールを酢酸に変えるためです。 揮発性の酸(酢酸)は、天然酵母を用いたアルコール発酵の際にも発生しやすいと言われます。 また、ボトリティス・シネレア(貴腐菌)を使って作られた甘口ワイン(ソーテルヌなど)は、ブドウに酢酸菌が自然に多く存在する傾向があるので、揮発性酸度が高くなることが多いと言われます。干しブドウから作られたワイン(アマローネ・デラ・ヴァルポリチェッラなど)も同様です。 しかし、当然、これらのワインには通常、欠陥と言われるレベルの揮発性の酸(酢酸)は含まれていません。

カベルネソーヴィニヨンとシラーズの品種比較テイスティング ~ニューワールド編~

 よく特徴が似ていると言われる、カベルネソーヴィニヨン(以下、CS)とシラーズの特徴の違いを知るための品種比較テイスティングをしてみたいと思います。 今回用意をしたワインは次の4種類です: ワイン①:Village Shiraz Yering Station 2017 (ヤラヴァレー[豪]/シラーズ) ワイン②: Favourite Son Cabernet Sauvignon Parker Coonawarra Estate 2018(クナワラ[豪]/CS) ワイン③:Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 (バロッサヴァレー[豪]/シラーズ) ワイン④: Decoy Limited Cabernet Sauvignon Napa Valley Duckhorn Vinyards 2018(ナパヴァレー[米]/CS) CSとシラーズを1種類ずつでは、品種の比較としては心もとなかったために、それぞれニューワールドから2種類ずつのワインを用意しました。 外観 まずは外観の特徴の比較です。 CS、シラーズともに、濃い色のワインを造ることで有名な品種であるために、外観には品種による違いは現れませんでした。 ヤラヴァレーは色がやや薄めで、バロッサヴァレーとナパヴァレーは非常に濃い色合いという違いがありましたが、これは産地の特徴による違いだと思います。 香り 次に香りの比較です。 個人的に感じた香りの印象をイラストで表してみました。 香りについては、次のようにシラーズとCSに異なる傾向がありました。 シラーズ → 黒系果実 + スパイスの香り CS → 黒系果実 + 植物(野菜)の香り この傾向は、品種特徴の違いと言っても良いのかもしれません。 味わい 最後に味わいの比較です。 特に、タンニン、酸味、味わいの印象について違いを調べてみました。 結果としては、シラーズとCSの品種による顕著な違いは見つかりませんでした。 それぞれのワインでいくつか違いは現れましたが、これは産地の特徴による違いが大きいのではないかと思います。 まとめ カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズの品種による違いが大きく表れたと感じられたのは、「香り」についてのみでした。 黒系果実 + スパイス中心 → シラーズ 黒系果実 + 青い香り → CS このような傾向

ブドウの収穫量と果実の品質の関係を考察

 ブドウの収穫量と、その果実の品質には関係があると言われています。その関係を考察してみました。 まず、収穫量が低くないと高品質のブドウはできないという考えがあります。部分的にはそうなのかもしれませんが、実際は必ずしもそうではないようです。 重要なのは、ブドウの樹の樹勢と、果実の収穫量の最適化を図ることにあるのだとか。 樹勢と果実の収穫量が最適化されたブドウの樹は、毎年、次のようなバランスの取れたサイクルが継続します。このサイクルでは、十分なに日照が得られることで、高品質の果実が収穫されます。 葉や果実に十分な日照量を得られると、ブドウは十分に成熟し、ブドウには次のようなポジティブな影響が現れると言われています。これがブドウの品質の高さにつながります。 ・光合成が十分に行われることで、ブドウの 糖分 が増加する ・タンニンが蓄積し タンニンレベルが上がり 、タンニンの重合により タンニンの苦みが減る ・黒ブドウでは アントシアニン(色素)が増加 する ・過剰な酸味をもたらす リンゴ酸 が、果実の温度の上昇により 減少 する ・好ましい香りをもたらす 香り物質(テルペンなど)が増加 する ・青い香りをもたらす 香り物質(メトキシピラジン)が減少 する 一方で、樹勢に対して収穫量の少なすぎるブドウ樹は、次のようなバランスの悪いサイクルが継続します。このサイクルでは、樹勢が強くなりすぎて、葉や果実の日当たりが悪くなり、品質の良い果実は収穫されません。 収穫量が低いことは、高品質のブドウの収穫には必ずしもつながらないようです。 ちなみに、樹勢に比べてブドウの収穫量が多すぎる場合にも、高品質のブドウ収穫にはつながらないようです。ブドウの樹は健康を失うとともに、果実にも十分な栄養は行きわたりません。 ブドウの品質とブドウ樹の樹勢の最適なバランスを保つには、適切なキャノピー・マネジメントが必要と言われています。 (関連記事: canopy management(=キャノピー・マネジメント)の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) ここまでは樹勢と収穫量のバランスの話でしたが、そのバランスはいくつかの要素で決まると言われています。 それには、 ・ブドウ樹の 栽培環境 ・ ブドウ樹のタイプ (品種や、クローン、台木のタイプ、樹齢など) ・目的とする ワインスタイル などがあげられます

ピノタージュの特徴を調べる! ~ピノノワール、ジンファンデルとの品種比較テイスティング~

 ピノタージュは、主に南アフリカで栽培される黒ブドウ品種です。 1925年に、ピノノワールとサンソーの交配により、同国で開発されました。サンソーは南アフリカでは、エルミタージュとも呼べばれているそうです。 赤系果実の香りを持つ品種と言われているために、同様に赤系果実の香りを持つ、「ピノノワール」と「ジンファンデル」と比べて、その特徴を調べてみました。それぞれの産地は、南アフリカのような比較的暖かい地域である、カリフォルニアのものを選びました。 ちなみに今回は下の3種類のワインを選びました: ①ソノマPN:Migration Pinot Noir Sonoma Coast Duckhorn Vinyards 2016 ②ローダイ・ジンファンデル:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017 ③ウエスタンケープ・ピノタージュ:Mount Rozier Myrtle Manor Pinotage 2020 外観の特徴 色の濃さは、 「ピノノワール < ピノタージュ < ジンファンデル」 の順番でした。 ピノノワールよりはやや濃い程度の色でしたが、ジンファンデルよりは圧倒的に薄い色でした。いわゆるミディアムルビーに該当する色ですが、若いワインであることもあり、紫色のトーンが強く表れています。下の写真のように、グラスの底がしっかりと透けて見えます。 ピノタージュは、粒が小さく高い糖度に達するブドウで、濃い色で高アルコールを造ることができると言われるため、少し意外な結果でした。 南アのピノタージュは、フルボディのスタイルと、それよりもエレガントなスタイルの両方が造られているために、このワインはおそらくエレガントなスタイルなのだと思いました。 香りの特徴 ピノタージュの香りの特徴は、まずはしっかりとした樽香が感じられました。焦げた木のようなタークチョコレートのような、華やかさとは対極にあるような香りです。この香りに圧倒されて、果実の香りが鳴りを潜めている印象です。 そういえばWSETレベル3に次のような記述がありました。 「ピノタージュは、強くトーストしたオーク樽で発酵・貯蔵すると、コーヒーやチョコレートの強いアロマを帯びることがある。このようなワインは、しばしばそのユニークなスタイルを強調するために販売され、一部の消費者に非常に人気がある。」 もし

ワインからクローブ(丁子/丁字)の香りが感じられる理由とは?

樽熟成を経たある種のワインは 「クローブ(丁子/丁字)」 の香りを持つと言われます。 クローブは、インドネシア原産の常緑樹の花蕾(花とつぼみ)を乾燥させたもので、香辛料として使われています。 クローブは、 「オイゲノール(eugenol)」 という香り物質を持っており、これは刺激のある快い芳香を持っています。 一方で、ワイン樽に一般的に使われるオーク材にもオイゲノールが含まれています。そして、オイゲノールは樽熟成の際にオーク材からワインに入ると言われています。 つまり、このオイゲノールという化学物質が、樽熟成をしたワインにクローブの香りを与えているわけです。 オイゲノールは、ナツメグやシナモンにも含まれていると言われており、両者とも樽由来のワインの香りを表す用語として頻繁に使われます。 クローブの香りは、ボルドーの古典的なオーク樽熟成の赤ワインで見つかると言われています。ニューワールドのワインでも、ボルドースタイルのフレンチオークで熟成したワインにはクローブの香りが感じられると言われます。 (関連記事: 樽香とは?ワインの樽の香り(バニラ、クローブ、コーヒーなど)を整理してみました )

foudre(=フードル)の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語

「 Foudre(フードル)」 は、大きな木製の大桶(大樽)のことで、一般的なオーク樽よりもかなり大きく、多くの場合、1,000 リットル以上のワインを入れることができます。 フードル(Foudre) を含めたオーク樽は、ワインの発酵や熟成に用いられます。オーク樽でワインを発酵・熟成するメリットは、緩やかな酸素との接触によりワインをまろやかにできることや、ワインにオークの香りづけができることだと言われています。 例えば、多くの製造者がステンレスタンクを使って1次発酵をしているシャンパーニュにおいても、質感や口当たりの良さを増すために、 フードル(Foudre) を利用する製造が増えているようです。 このよう樽による発酵・熟成の効果の程度はオーク樽のサイズによって変わるのですが、小さい樽ではその影響が大きく、大きな樽ではその影響が小さいと言われます。なぜなら、小さい樽ではワインが樽の表面と接触する面積が大きい反面、大きな樽では接触面が小さいからです。 よく小樽の例として、ボルドーで用いられる225リットルの 「Barrique(バリック)」 があげられますが、この樽で発酵・熟成をしたワインには樽による大きな影響が現れると言われます。 (関連記事: 「樽」を表す英単語は?WSETのための「樽」を表す言葉の整理 ) しかし、近年は、強すぎる樽の香りのワインはあまり好まれない傾向があるため、従来は 「Barrique(バリック)」 のような小樽で発酵や熟成をしていた製造者の中にも、 「 Foudre(フードル)」 のような大樽での発酵・熟成に切り替えるところも増えているようです。

ワインから感じられる「醤油」の香り!?

ワインから醤油の香りを感じたことはないでしょうか? 私は時々、フルボディの赤ワインから醤油を連想させる香りを感じることがありました。 特にある種のシラーワインの香りをとると、どうしても醤油にしか感じられないことが何度かありました。 しかし、日本由来の調味料である「醤油」など、ワインの表現として役に立つことはないだろうと、ずっと自分の心にだけとどめておきました…。 それから暫くたって、先日あるウェブサイトで「醤油(Soy sauce)」がテイスティング用語として説明されているのを見つけて驚きました! それが時々参考にしている「Decanter」のこのページ( https://www.decanter.com/learn/advice/understand-tasting-notes-decoded-344920/ )。「Fermentation / Winemaking(発酵/ワイン醸造)」のカテゴリのテイスティング用語として、なんと!「Soy sauce」が説明されていました。 このページによれば、醤油は肉のような旨味を表す表現用語であり、一般的に辛口でフルボディの赤ワインで、酸味が強く、樽熟成が進んでいるものを表すようです。例えば、リオハのテンプラニーリョや、ピエモンテのバルベーラ、サンジョヴェーゼを用いたキアンティなどです。 醤油の旨味は発酵中にタンパク質が分解されることで生まれます。ワイン醸造においても、同様に、ブドウのタンパク質が酵母の働きで分解され、この旨味の風味が生まれると考えられているようです。 このページではシラーのワインは例としてあげられていませんでしたが、辛口、フルボディ、赤ワイン、酸味が強い、という条件を満たしていたために、醤油の風味が感じられたのかもしれません。

ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリットの整理

 ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。 棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。 ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。 そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が 「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」 です。 垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。 そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。 棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット 棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。 そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。 日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。 通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。 また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。 一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。 ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。 (関連記事: 棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り ) 垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット 垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。 したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の機械化」

混同しがちな「オーガニック(有機)ワイン」と「ナチュラル(自然派)ワイン」の違いについての考察

 ワインショップに行くと、POPに「オーガニック」や「ナチュラル(自然派)」と書かれたワインを目にします。 このようなPOPを見ると、どちらも「環境にやさしい」、「体にいい」というイメージを受けますが、あまり詳しい違いについては考えないかもしれません。 今回は、「オーガニック(有機)ワイン」と「ナチュラル(自然派)ワイン」の違いについて考察をしてみました。 まずは結論から言うと、それぞれには次のような違いがあるようです: オーガニック(有機)ワイン オーガニックワインとは、主に有機農法で造られたブドウから造られたワインのことを言います。 各地域ごとに異なる認証機関があり、オーガニックワインを名乗るためにはそれぞれの機関の認証を受ける必要があります。 醸造工程にも認証機関による規制があり、その大きな規制の1つは酸化防止剤であるSO2の使用制限です。使用できるSO2の量は国によって違いがあり、米国では一切のSO2の添加が認められていない一方で、EUでは一定量の使用が認められています。 有機栽培は、ブドウ畑の土壌とその中の微生物やミミズなどの生物の生態系を改善し、ブドウの木の健康や病気への抵抗力を高めることを目的としていると言われます。そして、人工的な合成肥料、殺菌剤、除草剤、殺虫剤の使用は禁止されています。 消費者の視点から見た場合、有機栽培のブドウが特に美味しいワインを造るわけではないようです。むしろ有機栽培のメリットは、ブドウの木の健康や耐病性、土壌の健康、環境の保全など生産者側にあるようです。 オーガニックワインから得られる消費者側の最大のメリットは、飲むワインにもよりますが、農薬の大量暴露の回避なのではないかと思います。 その反面、酸化防止剤であるSO2の使用が制限されているために、一般のワインに比べ保存が効かず、ある種の香りが失われてしまうとも言われています。 ナチュラル(自然派)ワイン ナチュラルワインは、通常、できる限り人の手を加えず、天然酵母で発酵させ、SO2の添加を最小限に抑える、もしくは全く添加しないワインを指すと言われます。ナチュラルワインは、「何も加えず、何も差し引かない」ことを目的に造られます。 しかし、オーガニックワインとは異なり認証機関が無いために、その定義は通常曖昧であることが多いようです。 ブドウの栽培方法についても特に明確な規定は無い

ワイン発酵に使われるタマゴ型コンクリートタンク(コンクリート・エッグ)の特徴を考察

近年人気があると言われるタマゴ型コンクリートタンク(コンクリート・エッグ)の特徴を調べてみました。 もともとはヨーロッパで開発されたタイプのタンクですが、今やカリフォルニアなどのニューワールドでも人気があるようです。 ワインのアルコール発酵にはさまざまな容器(発酵槽)が使われ、コンクリート素材の発酵槽は、従来は安価な選択肢として大規模タイプのものが建設されてきたようです。 コンクリートタンクを用いるメリットは低価格と、その高い熱慣性にあると言われてきました。しかしそれ以外の主だったメリットは特に見つけられてはいなかったようです。 しかし、タマゴ型のコンクリートタンク(コンクリート・エッグ)が登場し、その新たなメリットが注目を浴びています。 それは発酵中に自然に発生する対流です。この対流によりワインのアルコール発酵が活発に行われると言われています。また、この対流は、発酵中に発生する澱とワインを撹拌するような働きをして、ワインに澱の風味を加えたり、ワインの質感を増す効果もあると言われています。 また、コンクリートは多孔質であり、発酵中にはワインは少量の酸素と接触します。少量の酸素は、ワインにとってポジティブな効果をもたらす緩やかな酸化を促し、ワインの口当たりをまろやかにするようです。 さらにはコンクリートが従来持つ高い熱慣性により、ワインは大きな温度の上下動にさらされることなく、また、外部からの自動的な温度調整の必要性も減ると言われています。 一方でこのようなメリットとは引き換えに、このタマゴ型のコンクリートタンクは非常に高価なものであり、低価格というコンクリートのメリットは失われてしまうようです。 しかし、近年のブームを見ると、価格のデメリットを考慮しても大きなメリットが得られるということなのかもしれません。