南米のワイン産地で特徴的な黒ブドウと言えば「カルメネール」と「マルベック」があがると思います。
カルメネールと言えば「チリ」、マルベックと言えば「アルゼンチン」で多く栽培されているブドウですが、何かと似ている印象があって度々混同してしまいます。
そこで、この2種類のブドウの類似点と相違点についてまとめてみようと思います。
類似点
最初の類似点は、ワインスタイルです。
カルメネール、マルベックともに、骨格のしっかりしたフルボディのワインを造ります。両者ともに、特に高いレベルのタンニンを持った黒系果実の香り・風味を持ったワインです。
また、一定水準以上の品質のワインは樽熟成を経て造られるので、どちらも樽熟成に由来するコーヒーやヴァニラ、その他甘いスパイスの香り・風味を持つことも共通点です。
また、フルボディのワインを造るブドウ品種に共通する特徴ですが、その栽培環境として、一定の日照や暖かさを要することも共通しています。
2つ目の類似点は、由来です。
両者ともにもともとはフランスで栽培されていたブドウ品種のようです。そしてそれぞれの品種は、チリおよびアルゼンチンに持ち込まれ、それぞれの国を代表する赤ワインを造るようになりました。
一方で、両者ともにフランスにおいてはメジャーな品種ではなくなってしまっている点も共通しています。
相違点
最初の相違点は主な栽培地域です。
カルメネールは、フランス、イタリア、アルゼンチンでも栽培がされていますが、やはり主な栽培地と言えばチリです。
マルベックも、フランスやアメリカを含め世界各地で栽培がされていますが、主要な栽培地と言えばアルゼンチンがあがります。またこれに加えて、フランス南西地方のカオールも主要な産地としてその名があがります。カオールではマルベックは別名「コット」とも呼ばれています。
両方とも南米で有名な黒ブドウ品種ですが、主要栽培地域には明確な違いがあります。
2つ目の相違点は、代表的な産地であるチリ、および、アルゼンチンにおける栽培面積です。
マルベックは、白黒合わせて最も栽培されているブドウ品種であり、その栽培面積は全体の約20%を占めると言われています。まさに、アルゼンチンを代表するブドウ品種です。
一方で、カルメネールはチリにおいてそれほど大きな栽培面積を占めていません。チリで最も栽培されているブドウ品種はでカベルネソーヴィニヨンであり、カルメネールの栽培面積はその4分の1程度です。
カルメネールはチリで栽培されるユニークなワインですが、必ずしもチリを代表するワインとは言えないかもしれません。
個人的にはこれが最も意外な相違点でした。チリと言えばカルメネールのイメージが強いですが、その栽培量はカベルネソーヴィニヨンだけでなく、ソーヴィニヨンブランやメルロ、シャルドネなどにも及びません。
3つ目の相違点は、ブドウの特徴です。
カルメネール、マルベックともに比較的、似た特徴を持つ黒ブドウだと思いますが、カルメネールにはピーマンやユーカリのような青い香りを持つという独特な特徴があります。
一方で、マルベックには色の濃いワインを造るという特徴があります。その色の濃さのために、カオールのワインは「ブラック・ワイン」とも呼ばれています。
<了>