スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

3月, 2022の投稿を表示しています

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

ドイツワインの品質レベルとブドウ産地の関係と、ラベル表示の話

「ドイツワインの品質レベル」と「産地の区画(栽培地域)」の関係がわかりにくいのでまとめてみました。 重要なのは、PDOレベルのワインである「 プレティカーツヴァイン 」と「 クヴァリテーツヴァイン 」の産地です。 クヴァリテーツヴァインに使用されるブドウは「 アンバウゲビート(Anbaugebiete) 」と呼ばれる13地域(モーゼル、ラインガウなど)のうちいずれかの1つの地域で栽培されます。そしてその地域名は、出来上がったワインのラベルに表示されなければなりません。 プレティカーツヴァインに使用されるブドウは「 ベライヒ(Bereich) 」と呼ばれる地区のいずれか1か所で栽培されます。ベライヒとは、13のアンバウゲビートがさらに細分化された栽培エリアのことです。 ベライヒはさらに細分化され、統合畑である「 Grosslage(グロースラーゲ) 」と単一畑の「 Einzellage(アインツェルラーゲ) 」が含まれます。 これらの畑の名称は、PDOレベルのワインである「 プレディカーツヴァイン(Prädicatswein) 」や「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitatswein) 」のラベルに表示することが許されています。しかし、ある程度の知識が無い限りこれらの畑の名前からワインの品質を判断することが難しいため、より分かりやすいラベル表示の導入が求められているようです。 ドイツ語のワイン用語を覚えるのは大変ですが、ここでは「gebiete (独) ≒ area (英)」、「lage (独) ≒ location (英)」辺りをおさえておくと、少し覚えやすくなるような気がします。 ちなみに、個人的に「 アンバウゲビート 」がどうしても覚えられなかったので、次のようなイメージで覚えました。 ドイツの畑名によるラベル表示がなぜわかりにくいのか? ドイツの畑名によるラベル表示がわかりにくい理由は、畑名の表示からはワインの品質レベルがわかりにくいことがあげられると思います。 例えば、ピースポート村にある「Goldtropfchen」という名前の単一畑(Einzellage)と、統合畑「Michelsberg」で造られるワインは、それぞれ「Piesporter Goldtropfchen」と「Piesporter Michelsberg」とラベル上に表示されます。 しかし

アイスヴァイン(Eiswein)の製造方法とクリオ・エクストラクション

 ドイツのアイスヴァイン(Eiswein) の製造方法をまとめてみました。 アイスヴァインは、非常に糖度の高いブドウから製造されます。 糖度の高さは、ドイツワインで最も糖度が高いブドウ果汁から造られる「トロッケンベーレンアウスレーゼ」に次ぐ高さです。 (関連記事: プレディカーツヴァインの6区分の直訳による覚え方 ) なぜ、こんなにもブドウ中の糖度が高くなるかというと、冬の寒さによりブドウ中の水分だけが凍結し水分を失うため、次第に糖分濃度が高まっていくためです。 凍ったままのブドウは圧搾され、凍った水分をそのまま圧搾機の中に残し、非常に糖分濃度が高いブドウ果汁が得られます。と同時に、酸味などの糖分以外の成分も凝縮されます。 「アイスヴァイン」と名乗るには、ブドウは自然環境で凍結されなければなりません。 クリオ・エクストラクション(Cryoextraction)とは? クリオ・エクストラクション(Cryoextraction) とは、ブドウ果実の凍結を人工的に行うワインの製造手法です。 この手法を用いることで、ドイツのような厳しい冬がない暖かい地域でも、アイスヴァインのようなワインを製造することが可能となります。 アイスヴァイン用のブドウ栽培では、寒い季節が到来するまで長らく樹上にブドウ果実を残しておく必要があるため、ブドウは病気や害虫、獣害の高いリスクにさらされます。 クリオ・エクストラクションではブドウを凍結させるコストがかかりますが、それでも、アイスヴァインほどのコストはかからないというメリットがあります。 しかし、人工的な凍結手法を用いているために、当然、「Eiswein」や「Icewine(カナダの自然凍結ブドウから造られる甘口ワイン)」という名前を名乗ることはできません。

プレディカーツヴァインの6区分の直訳による覚え方

 ドイツワインの最上位の品質区分である「 プレディカーツヴァイン(Prädicatswein) 」は、ブドウ果汁の糖度によって6つの区分に分かれています。 糖度の高い順に、 ・Trockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ) ・Eiswein(アイスヴァイン) ・Beerenauslese(ベーレンアウスレーゼ) ・Auslese(アウスレーゼ) ・Spätelese(シュペートレーゼ) ・Kabinett(カビネット) と並びますが、これらのドイツ語覚えるのは結構大変です。 しかしgoogle翻訳などを利用して、それらを英語や日本語に直訳をしてみると、一気にその難易度は下がります。 なぜならば、その直訳がほとんどの場合、そのワインに使用するブドウの特徴を表しているからです。 直訳と、ワイン(に使用するブドウ)の特徴を下図にまとめてみました。 「Trockenbeerenauslese」、「Beerenauslese」ではその名の通り、糖度の高いブドウの粒を選抜してワインを造っていることがわかります。 粒レベルで、糖度の高いブドウを選定しているため、そこから得られるブドウ果汁の糖度もかなり高いものとなります。 特に、全てが貴腐ブドウから造られる「Trockenbeerenauslese」は非常に高い糖度です。 「Eiswein」も基本的には全てのブドウの粒が凍っているために、圧搾された果汁は非常に糖度の高いものとなります。 「Auslese」もブドウの選抜はしていますが、この選抜は「粒」レベルではなく、「房」レベルです。房中のブドウ粒の糖度はまちまちなので、上位の3区分に比べると糖度は下がります。 「Spätelese」には遅摘みの完熟ブドウが使われますが、基本的には「Auslese」のような房の選抜は行われていません。その代わり、通常収穫よりも長めに(約2週間)ブドウを成熟させるために、ブドウ中の糖度があがります。 最後に「Kabinett」ですが、これは他とは異なりブドウの特徴を表しているわけではないようです。もともとは「Kabinett = キャビネット、戸棚」は、直ぐに販売するワインとは別に特別に保管をしておくリザーブワインのような意味で使われていた言葉のようです。 現在の「Kabinett」はプレディカーツヴァインの中で最も下位に

must, must weight の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語

  「Must」とは? 「must = マスト、果醪(かもろみ)」 です。 赤ワインの製造の場合は、ブドウを破砕した後の果汁(juice)と、果皮(skins)、種子(seeds)、果肉(pulps)、果梗(stems)の混合物、白ワインの場合は破砕および圧搾後のブドウ果汁を指します。 (※赤ワインの果梗(stems)は製造方法によっては事前に取り除かれます。) この「must」がアルコール発酵を経て「wine」となるので、「must」とは通常、アルコール発酵前~発酵中のものを指します。 赤ワインと白ワインで「must」の指すものが異なる理由は、醸造工程の違いにあります。一般的に、赤ワインでは「破砕→アルコール発酵→圧搾」の順番ですが、白ワインでは「破砕→圧搾→アルコール発酵」の順番です。そのため、赤ワインでは圧搾前の果皮や種子を含んだブドウ果汁を「must」としてアルコール発酵を行いますが、白ワインでは圧搾後の固形物が取り除かれた果汁のみを「must」としてアルコール発酵を行います。 「Must weight」とは? では、「Must weight」とはどのような意味でしょうか? 単純に考えると、「マスト(果醪) + 重さ」なので、マストの重さだと思ってしまいます。 しかし実際は、 「 Must weight = ブドウ果汁(マスト)に含まれる糖分量 」 です。 紛らわしいですが、マスト(果醪)の量ではなく、糖分量(糖度)なのです。 ドイツのワイン法は、このブドウ果汁(マスト)の糖度を主な基準としてブドウと、そのブドウからできるワインの品質分類をしていることで有名です。 ドイツワイン法では、ブドウの糖度は エスクレ度(Oechsle scale) という基準で評価されています。

キュヴェ(Cuvée)とは何か?分かりにくいワイン用語、キュヴェについて考える

ワインにおける 「キュヴェ(Cuvée)」 とは、なんとなく意味がわかりそうで、でも、意味を聞かれるとしっかりと答えるのが難しい言葉のような気がします。 そういえば、私がワインを学ぼうと思ったきっかけも、この 「キュヴェ」 という言葉でした。 あるとき、仕事の資料の中に 「Cuvée」 という言葉がでてきて、意味を調べようとさまざまサイトやブログを検索をしてみました。 しかし、どのサイトやブログの説明を見ても、いまひとつ何のことを言っているのかよくわかりませんでした。結局、ワインをある程度体系的に学ばなければ、 「キュヴェ 」の意味を理解できないという結論に至って、そこからワイン学習に興味を持ち始めました。 あれから数年ワインの勉強を続けて、 「キュヴェ」 とはこんなことを意味するのではないかと思うところをまとめてみました。あくまでも私自身の理解なので、正解かどうかはわかりません。 まず、「cuvée」という言葉は、「cuve(醸造おけ)」から由来したワイン用語で、基本的には 樽やタンクに入ったひとまとまりのワイン を表すようです。しかし、場合によって様々な意味に使われている言葉のようです。 ワインは上の図のように、多くの場合、異なるソース(畑、畑の区画、品種など)のワインや、異なる醸造工程を経たワインをブレンドして製造されます。そして、最終的なブレンドは、ここのボトルに瓶詰めされます。 多くの場合、キュヴェという言葉は、ワインラベルなどに 「スペシャル・キュヴェ」 などの形で現れます。このようなに使われる 「キュヴェ」 の意味するところは、瓶詰め直前のタンクや樽の中のワインのことだと思います。スペシャル・キュヴェを言い換えると、特別なワインだけでブレンドした 「スペシャル・ブレンド」 のような言葉になると思います。 しかし、醸造工程中にキュヴェという言葉を使う場合は、必ずしも最終的なブレンドだけを表すだけでなく、その前段階の樽やタンクにはいったワインも表すことがあると思います。 基本的には、キュヴェとはこのような意味なのではないかと思います。 シャンパーニュ醸造工程で使われる専門用語の「キュヴェ(Cuvée)」 キュヴェ にはもう1つ意味があります。 こちらは意味が明確な言葉で、 シャンパーニュの製造工程 で使われる専門用語です。 図のようなブドウのシャンパーニュ

絵で覚えるミュラー・トゥルガウ(ドイツの交配品種)

  ドイツワインのブドウ品種は、シノニム(別呼称)や交配種が多くて何かと覚えるのが大変です。 そこで、品種の歴史を追って、1枚の絵にまとめて覚えるのはどうでしょうか? 今回は、 ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau) についてまとめてみました。 この品種は、スイスのトゥルガウ州出身の、 ヘルマン・ミュラー( Hermann Müller ) という植物学者によって作られました。一説によれば、彼は自身を ミュラー・トゥルガウ と名乗っていたので、その名をそのままつけたのかもしれません。 彼はドイツのガイゼンハイムブドウ育種研究所でブドウの交配品種の研究をしていました。 リースリング種(Riesling) の優れた香りや複雑性を保ちつつ、シルヴァーナー種(Sylvaner)の早熟という特徴を持つ新たな品種の開発を目指していたようです。 ドイツの寒い気候では、リースリング種が安定的に成熟しないために、新たな品種の開発が求められていたのではないかと思います。 そして開発されたのが、「 ミュラー・トゥルガウ 」です。最初は、リースリングとシルヴァーナーの交配品種だと思われていたようですが、DNA鑑定の結果、 リースリング と マドレーヌ・ロイヤル(Madeleine Royale) の交配種であると判定されました。 マドレーヌ・ロイヤル は、食用や観賞用として栽培される白ブドウであり、超早熟という特徴を持っているようです。 マドレーヌ・ロイヤルの特徴を引き継いだおかげか、ミュラー・トゥルガウはリースリングよりも早熟という特徴を持ちました。 結局、リースリングの風味や複雑性を保持することはできませんでしたが、ミュラー・トゥルガウは早熟でどんな環境であっても多くの収穫をもたらすことができたので、瞬く間にドイツ全土に広がり、多くは低価格ワインの製造に利用されました。 低価格ワイン離れが進んだ近年は大きく栽培面積を減らしましたが、それでもその生産量は、リースリング種に次ぐ第2位を維持しています。 ミュラー・トゥルガウにはシノニムがあり、「 リヴァーナー(Rivaner) 」とも呼ばれています。この呼称の起源を調べてみようとおもったのですが、結局はよくわかりませんでした。

「遅いブルゴーニュ」、「早いブルゴーニュ」とは?ドイツのブドウ品種の名前

ドイツのブドウ品種には、「 burgunder(ブルグンダー) 」という言葉の入ったブドウ品種がいくつかあります。 その中でも最も有名なブドウ品種は、「 Spätburgunder(シュペートブルグンダー) 」だと思います。 これはご存じ、フランスでは「 Pinot Noir(ピノ・ノワール) 」と呼ばれている超有名品種です。 「 Spätburugnder 」を英語に直訳してみると、「 late Burgundy 」。「 Burgundy(バーガンディ) 」はブルゴーニュの英語名なので、「 遅いブルゴーニュ 」という意味になります。 きっと、成熟するのが遅いブルゴーニュから来たブドウ品種ということでこのような名前が付いたのだと思います。ピノ・ノワールは黒ブドウの中では比較的早熟な方だと思うのですが、冷涼な気候のドイツではなかなか成熟をしなかったのかもしれません。 ちなみに、「 Pinot Blanc(ピノ・ブラン) 」と「 Pinot Gris(ピノ・グリ) 」はそれぞれドイツでは「 Weißburgunder(ヴァイスブルグンダー) 」、「 Grauburgunder(グラウブルグンダー) 」と呼ばれており、ピノ(Pinot)ファミリーのブドウ品種に対して主に「 burgundy 」という言葉が使われているように思われます。 こちらも英語に直訳してみると、「 Weißburgunder = white Burgundy ( 白いブルゴーニュ )」、「 Grauburgunder = gray Burgundy ( グリのブルゴーニュ )」で、まさに名前の通りです。 最後に、ドイツで「 Frühburgunder(フリューブルグンダー) 」と呼ばれるブドウ品種があります。直訳をしてみると、「 early Burgundy 」で、「 早いブルゴーニュ 」という意味です。 これは、「 Pinot Noir Précoce(ピノ・ノワール・プレコース) 」とも呼ばれる品種で、ピノ・ノワールの突然変異と言われています。 ピノ・ノワールよりも早く成熟することが特徴で、まさにその名が表す通りです。ちなみに、「 précoce 」を英語に直すと「 early 」でなので、フランス語でも「 早いピノ・ノワール 」という意味になります。 ピノ・ノワール・プレコースのワインは、ピノ・

ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)の製法とフィノとの違いに関する考察

  ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)はフランスのジュラ地方で造られる特殊白ワインです。 製造方法が独特なので、簡単にまとめてみました。 基本的には、サヴァニャン種のブドウから、辛口白ワインを製造し、それをオーク樽で少なくとも60ヵ月をかけて長期熟成します。 特徴的なのは、ワインはヴォワール(le voile)と呼ばれる産膜酵母のもとで熟成されることです。 産膜酵母のもとで熟成されることで、ワインにはパン生地、クルミなどの香りが付加されます。 また、長期熟成を経ることでワインはその名の通り、「黄色」に近い色に色濃く変色します。(ヴァン・ジョーヌ=黄ワイン) 7年もの製造期間を経た後、ワインはクラヴランと呼ばれる62 cl(= 620 ml)の独特なボトルに入れられ販売されます。下の図のように、一般のワインボトルに比べると、少しずんぐりむっくりのボトルです。 このようなヴァン・ジョーヌの製造方法ですが、非常にシェリーのフィノの製造方法に似ています。 フィノもフロール(flor)と呼ばれる産膜酵母のもとで一定期間熟成されます。 そのため、実際に出来上がるワインも、パン生地やクルミの強い香りという共通の特徴を持っています。 しかし、フィノとヴァン・ジョーヌの異なる部分もいくつかあるので、こちらに関してもまとめてみました。 大きな違いは次のような点です: ・酸味 ・酒精強化 ・ワインのつぎ足し ・瓶内熟成能力 酸味の強いサヴァニャン種から造られるヴァン・ジョーヌの強い酸味は、酸味の低いパロミノ種から造られるフィノとの大きな違いとなっています。そしてこの酸味の存在は、ヴァン・ジョーヌの瓶内熟成能力に大きく貢献していると思われます。一般的に、強い酸味と果実の凝縮度を持つ白ワインは、瓶内熟成能力があると言われているためです。 また、ヴァンジョーヌでは酒精強化をしないことは、酒精強化を行うフィノと大きくことなります。このため、ヴァンジョーヌのアルコール度(13.5~15%)はフィノのアルコール度(15~15.5%)よりも低めです。 最後の違いは、ヴァン・ジョーヌにおいてワインのつぎ足しが行われませんが、フィノではソレラシステムによって定期的にワインのつぎ足しが行われることです。ワインのつぎ足しは産膜酵母の維持や、ワインの新鮮さを保つことに大きく関わると言われています

trellis の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語

  「 trellis = ブドウ棚 」です。また、「(ブドウ樹を) 棚付けする 」という動詞としても使われます。 ブドウ棚は、ブドウ樹や毎年成長する新梢を支持するためのもので、基本的には「 支柱(stake) 」と「 針金(wire) 」から構成されます。 ブドウ棚は、「棚」という言葉が含まれますが、日本でよく見るようなブドウが頭上に位置するような 棚仕立て(pergola) だけではなく、ヨーロッパでよくみられるようなブドウがそれほど高い位置にはならない 垣根仕立て(vertical shoot positioning = VSP) も含まれます(ワイン用ブドウの場合はむしろこちらが主流です)。 ブドウ棚を用いるメリットは、 キャノピー・マネジメント(樹冠管理) が容易になることです。 キャノピー・マネジメントとは、平たく言うと、ブドウ樹の枝葉の管理や整形です。ブドウ果実が理想的に成熟するように、枝葉の量やサイズ、形を整えることです。 (関連記事: canopy managementの意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) キャノピー・マネジメントには次の3つの目的があると言われています。 ・ 日照量の管理 ・ 葉とブドウの通気管理 ・ 機械収穫(+その他スプレーなどの作業補助) 日照量の管理は主に、ブドウに届く日照の管理です。日照が多いほどブドウの成熟は早まりますが、反対に、日照が強すぎるとブドウが日焼けを起こしてしまいます。 通気管理を良くすると、湿った空気を循環させてカビなどの菌類病のリスクを削減してくれます。また、ブドウのまわりの枝葉を取り除いておくことは、果実のカビの感染の原因となるブドウが傷つくリスクも減らしてくれます。 また、ブドウの成長を支柱やワイヤーに沿わせて整えておくことは、機械による収穫を可能にしてくれます。また、殺虫剤や防カビ剤などのスプレーの噴霧作業の効率も高めてくれます。

ハイパーオキシデーションとは?ミクロ・オキシジェナシオンとは似て非なる醸造手法

ハイパーオキシデーション(Hyperoxidation) とは、発酵前のマストを大量の酸素にさらす白ワインの醸造手法です。 酸素にさらす部分は、 ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygénation) に似ていますが、パイパーオキシデーションはこれとは異なる手法です。 大きな違いは、ミクロオキシジェナシオンではワインを酸素にさらすのに対して、ハイパーオキシデーションでは マスト を酸素にさらします。 また、ミクロオキシジェナシオンは赤白どちらのワインに対しても行われ得るのに対して、ハイパーオキシデーションは基本的には 白ワイン に対して行われるようです。 ミクロオキシジェナシオンは、ワインの熟成プロセスとして行われますが、ハイパーオキシデーションは熟成プロセスではありません。 ハイパーオキシデーションは、 発酵後の酸化に対してより安定したワインを造ること(また、それによりワインの熟成能力を高める) を目的に行われます。 白ワインの酸化による悪影響としては次のようなことが知られています: ・フルーティーな香りを喪失させる ・本来は意図していない香りを生み出す(アセトアルデヒドのナッツや傷んだリンゴの香りなど) ・ワインの色をゴールド→茶色と望まない色に変えてしまう ワインを醸造したあとに急にこのような意図しない変化が起きないように予めある程度、酸素に接触させておく、そして、緩やかな酸化に対応できるワインを造る、というのがハイパーオキシデーションの意図するところだと思います。 過度に酸素から保護されたワイン醸造では、発酵プロセスにおいて酵母の健全な活動が妨げられ、不快な還元臭が発生することも知られています。ハイパーオキシデーションは、このような過度な還元環境のリスクも回避されます。 ハイパーオキシデーションのその他の効果 酸化に対する安定化に加えて、ハイパーオキシデーションには他にも効果があると言われています。それは、 ・苦みや渋み 成分 の除去 (未熟な果皮、種、茎などに由来するフェノール類など) ・不要な香り成分の除去(揮発性チオールやメトキシピラジンなど) です。 香り成分の除去はアロマティック品種ではネガティブに作用してしまうために、シャルドネなどのニュートラル品種で採用されることが多いそうです。 ちなみにハイパーオキシデーションを行うと、マストは酸化

ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation)とは?マディランのタナとの関係は?

  ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation) とは、ワインに酸素を吹き込むワインの醸造手法です。 別名、 ミクロ・ビラージュ とも呼ばれます。また、 ミクロ・オキシジェナシオン はフランス語読みですが、英語読みでは、 マイクロ・オクシジェネーション です。 ミクロ・オキシジェナシオンはもともとは、タンニンの非常に強いワインの口当たりを良くするために開発された手法のようです。 ワインに酸素を吹き込むことで、タンニンはポリフェノールと結合し、口当たりがまろやかになると言われています。 ミクロ・オキシジェナシオンは通常、ステンレスタンクを用いて、アルコール発酵後、 数か月 の期間をかけて行うそうです。 これはいわゆる「ワインの熟成」手法の1つです。 通常のステンレスタンクの熟成では、樽熟成のような「緩やかな酸化」の効果は得られませんが、ミクロ・オキシジェナシオンを用いると同様の効果が得られると言われています。 (関連記事: ワイン醸造における樽熟成の主な効果とその詳細 ) 当然、樽香などが付加されることはないのですが、「緩やかな酸化」により次のような効果が得られます: ・ワインの色が安定する ・タンニンがまろやかになる ・口当たりがよくなる ・未熟な果実からの青い香りが和らげられる ・しかし、微生物 (酢酸菌やブレタノマイセスなど) による汚染のリスクが高まる 樽熟成では、樽の購入や、樽の管理にかなりのコストがかかりますが、ミクロ・オキシジェナシオンでは樽熟成ほどコストがかからないことが大きなメリットです。 はじめのうちは、比較的価格の低いワインを中心に利用されていたミクロ・オキシジェナシオンですが、このようなメリットがあることから、徐々に高価なワインの醸造工程においても利用がされるようになってきているようです。 ちなみに、ミクロ・オキシジェナシオンの開発のきっかけとなったタンニンの強いワインとは、フランス南西地方のマディラン(Madiran)で造られるタナ(Tannat)いう名の黒ブドウから造られるワインです。 マディランのタナ種から造られるワインとは? マディランは、フランス南西地方にあり、ボルドーとピレネー山脈の間くらいに位置します。 大西洋に近いため比較的雨が多く降る地域です。 しかし雨は主に冬から春に集中するため、夏場は暖かく日照も確保で

マルベック?コット?オーセロワ?紛らわしいシノニム

マルベック(Malbec) はフランスを起源とする黒ブドウ品種です。 フランス南西地方のカオール(Chaors)では特に多くのマルベックが栽培されており、この品種を主体としたワインが造られています。マルベックから造られるワイン色の濃さが特徴的で、その色の濃さから「 ブラックワイン 」とも呼ばれています。 また、ボルドーやロワールでも栽培面積は大きくはありませんが、ブレンドワインの一部に使われいます。 フランス以外ではアルゼンチンが最も有名で、19世紀に海を渡って以来広く植えられ、多くのワインが製造されています。 こんなマルベックですが、やや名前が面倒です。 なぜかと言うと、まずこの品種にはいくつかの別名(シノニム)が存在します。有名なものは「 コット(Côt) 」や「 オーセロワ(Auxerrois) 」で、先述のカオールではこのような名前でも呼ばれています。 オーセロワと言えば、アルザスでピノ・ブランとのブレンドに使われる「 オーセロワ・ブラン(Auxerrois blanc) 」という白ブドウ品種があります(ドイツやルクセンブルクでも栽培され、単に オーセロワ と呼ばれるそうです)。しかし、紛らわしいことに、これはマルベックとは全くことなるブドウ品種です。 また、マルベックに似た「 マルベック アルジェント(Malbec Argente) 」と呼ばれるブドウ品種も存在します。これはフランス南西地方の黒ブドウで、一般的には「 アヴリュー(Abouriou) 」という名で呼ばれるブドウ品種です。 このように、マルベックはシノニムを含めて、何かと紛らわしい名前が色々あります。 最後に、以前に一度、カオールAOCのマルベックを味わったことがあります。(マルベック85%+メルロー15%) 「ブラックワイン」と言われるのでもっと黒に近い色を期待していましたが、この時のワインは濃い紫色でした。(左のボルドーブレンドと比べると紫色が際立っています) スミレや、赤/黒プラム、樽(ヴァニラなどの甘いスパイス)の香りと、しっかりとした骨格(酸味+タンニン)を持った、香りが強めのワインでした。

フェーン現象とは?アルザスのブドウ栽培に影響を与える気象現象

フェーン現象(föhn/foehn wind) とは、気流が山の斜面にあたったのちに風が山を越え、暖かくて乾いた下降気流となってその付近の気温が上がる現象をいいます。 平たく言うと、空気が山を越えた時に、 山を越えた後の方が、空気の温度が高くなる ということです。 「フェーン(föhn)」はもともと、アルプスの北側に雪解けをもたらす冬の南風を指すことばだったようです。それが、アルプス以外を超える風にも適用されて世界中に広まりました。「föhn」というドイツ語表記は、その経緯に由来をするようです。 フェーン現象の原因としては諸説ありますが、最も有名なのは 「湿ったフェーン」 と言われるもので、 乾いた空気と湿った空気の標高に対する温度変化の違い が、気温差を生むというものです。 湿った空気が山を越える場合は高度が100m上がると気温が0.5℃ほど下がる場合でも、乾いた空気が下降する場合には100m下がると1.0℃ほど気温が上がるのだとか。結果として、同じ高度であっても、山を越える前よりも、超えた後の地域の方が気温が高くなります。 他にも、山頂付近の乱気流の影響や、雨雲がないことによる日照の影響など諸説ありますが、アルザス地方で発生する フェーン現象 では、 「湿ったフェーン」 の影響が大きいのではないかと思います。 下図にアルザスで発生するフェーン現象をまとめてみました。 アルザスでは、西側から来た湿った風が、 ヴォージュ山脈 を越えることで フェーン現象 が発生します。 湿った風はヴォージュ山脈の西にあるロレーヌ側で雨雲を作り雨を降らせます。そして、東部のアルザス側は、より乾燥した暖かい気温となります。 降水量を見てみると、ロレーヌ側のジェラールメでは1350mm、ル・オネックでは2000mmであるのに対して、コールマールで年間降水量は550mmほどと、実際にアルザス側には乾いた空気が流れ込んでいることが分かります。 アルザスはフランスでも北に位置する地域ですが、フェーン現象のおかげでブドウの育成期間の気温は上がり、乾燥した環境と長い日照時間もあいまって、ブドウの果実が十分に成熟することが期待できます。また、乾燥した環境は、ブドウ栽培にとって厄介なカビの繁殖も防いでくれます。 その反面、高い気温と乾燥した環境は干ばつのリスクをもたらします。特に灌漑の許可されていない

ブドウ品種「ピクプール(Piquepoul)」とは?

ピクプール(Piquepoul) というブドウ品種について調べてみました。 この品種は、主にフランスのローヌ渓谷や、ラングドック地方、また、スペインのカタルーニャで栽培されているワイン用ブドウ品種です。萌芽が遅く、ウドンコ病の影響を受けやすい品種です。 ピクプールには果皮の色が異なる 「ピクプール・ノワール」 、 「ピクプール・ブラン」 、 「ピクプール・グリ」 の3種類があります。 ラングドック地方では長い歴史があり、最も古い土着品種の1つのようです。ここでは、ブレンドワインとヴァラエタルワインの両方に使われています。特に、ピクプール・ノワールから生産される赤ワインは、アルコール度数が高く、香りが豊かですが、非常に色が薄いため、ブレンドに使われることが多いようです。 ローヌ渓谷では、ピクプール・ノワール、ピクプール・ブランがシャトーヌフ・デュ・パプAOCのブレンド品種として許可されています。また、広域のコート・デュ・ローヌAOCにも使われています。 ピクプール・ノワール、ピクプール・ブラン、ピクプール・グリのうち、最もよく知られているものは「ピクプール・ブラン」であり、栽培面積は増加傾向にあるようです。 フランスだけではなく、ピクプール・ブランはカリフォルニア州ソノマやオーストラリアでも栽培がされているようです。 ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC ピクプールを使った最も有名なワインの1つはラングドック地方の 「ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC」 だと思います。 このワインは、その名が表す通り、ピクプール品種から造られており 「ピクプール・ブラン」100%の白ワイン です。しかし、品種( Piquepoul )とワイン名( Picpoul )で「ピクプール」のスペルが若干異なります。 この地域では、ピクプールはもともと主にベルモットのベースワインとして利用されていましたが、醸造技術の発展により、フルーティーなヴァラエタルワインとして造られるようになりました。 ピクプール・ブランは、温暖な気候にあっても成熟時に高い酸味を保持することができ、ピクプール・ド・ピネAOCワインは、高いレベルの酸味を持つことが特徴です。 レモンや花の香りを持つ、ミディアムボディの辛口ワインとして造られます。 下のような特徴的なボトル

IGPペイ・ドック(IGP Pays d’Oc)とは?ラングドック&ルーション地方で大きな存在感を持つ理由の考察

 IGPペイ・ドックとは、 ラングドック・ルーション地方のIGPワイン のことです。 図のように広域のラングドックAOCを包含しています。ちなみにラングドックAOCには、ルーション地方に加えて、ルーション地方も含まれています。 IGPワインとは、3段階あるフランスワインの品質分類のうち、2段階目に位置するワインです。 (関連記事: EU各国とその他の国々のワインの品質分類の整理 ) (関連記事: ワインの原産地統制名称 -  AOC、AOP、PDOのざっくり整理 ) 簡単に言ってしまうと、AOCワインほど製造方法やブドウ品種に対するルールは細かく規定されてはいませんが、特定の地域でのブドウ栽培と醸造が求められているワインです。 IGPペイ・ドックは、ラングドック・リューション地方での栽培・製造が求められており、この地域全体をカバーしている広域IGPです。 IGPペイ・ドックは、IGPの中でも最大の生産量を誇り、フランスワインの10-15%をも占める生産量だということです。 なぜ、最大のIGPがラングドック&ルーション地方にあるのか? ここからは、なぜラングドック&ルーション地方にこのような大きなIGPがあるのかを考察したいと思います。 それには次の3点が関係していると思います: ・ブドウ栽培に非常に適した気候 ・お手頃価格のIGPワイン ・長いブドウ栽培の歴史 ラングドック&ルーション地方の気候 地中海に面するラングドック&ルーション地方の気候は、 地中海性気候 です。 夏は温暖で雨は少なく、非常に日照量が豊富で、ブドウが成熟するのに最適な気候です。 また、トラモンタンと呼ばれる乾燥した北西の風が年間を通して吹き、ブドウ樹や果実の病気を減らしてくれます。病気の心配が少ないため、オーガニックワインの生産も盛んで、フランスのオーガニックワインの製造の1/3を占めているそうです。 このようにラングドック&ルーション地方は、非常にブドウ栽培に適した環境に恵まれています。 そのため幅広い土地がブドウ栽培に適しており、ブドウの栽培面積は大きく、それらを使って大量のワインが生産されていると考えられます。 お手頃価格のIGPワイン 品質階級最上位のAOCワインに比べ、一般的に、IGPワインの価格は安いと言われています。その理由は、IGPワインのブドウ栽培・ワイン醸造の規制が、AOC

サントル・ニヴェルネ地区(ロワール)のAOCの覚え方【語呂合わせ】

  前回の記事に続いて今回は、 サントル・ニヴェルネ地区 です。 ソーヴィニヨン・ブランから造られる白ワインが有名な地域です。 実際に、栽培されているブドウの8割近くがソーヴィニヨン・ブランであるようです。 それに続いて、ピノ・ノワールが2割程度生産されています。 ほとんどの白ワインは、ソーヴィニヨン・ブランから、赤ワインはピノ・ノワールから造られています。 この地区のAOCは、付近を流れる2つの川の流域に集中しています。1つは ロワール川 、もう1つは、トゥール付近でロワール川と合流する シェール川 です。 この地域で最も重要なAOCは、 「サンセールAOC」 と 「プイイ・フュメAOC」 の2つです。実際にこの2つのAOCは、サントル・ニヴェルネ地区で製造されるワインの多くの割合を占めています。特に、サンセールAOCは、この地区で最大のAOCです。 さて、AOCの覚え方についてですが、この地区はあまりAOCの数が多くないために、まとめて語呂合わせを考えてみました。 語呂合わせではAOCは南から北に向かって並べられています。 最後に、各AOCの説明です: サンセール(Sancerre)AOC  ・白ワイン(ソーヴィニヨンブラン)、赤ワイン、ロゼワイン(ともにピノノワール)のAOC ・サントルニヴェルネ最大のAOC ・畑はロワール川沿いの急斜面 ・グレープフルーツやグーズベリーの中程度強さの香りを持ち、酸味の強い白ワインを造る ・ワインの品質は幅広い(中程度から非常に品質が高いものまで) ・カイヨット(Caillottes)、テール・ブランシュ(Terre Blanches)、シレックス(Silex)の3種類の土壌を持つ ・カイヨットは石灰を多く含む浅い土壌、テールブランシュは石灰と粘土の混合、シレックスは石英を含む土壌。 ・カイヨットは早飲みの香りの強いワイン、テールブランシュは最も骨格があり長期熟成向きのワイン、シレックスはミネラル感のあるスモーキーなワインを造る プイイ・フュメ(Pouilly-Fumé)AOC  ・白ワイン(ソーヴィニヨンブラン)のみのAOC ・サンセールの白ワインに似たスタイルだが、香りはやや弱く、少しまろやかなスタイル ・サンセールに似た土壌だが、サンセールほど急な斜面ではない ルイイ(Reuilly)AOC  ・白ワイン(ソーヴィニヨン

南部ローヌ(メリディオナル)のAOCが複雑に思える理由の考察と、覚え方【語呂合わせ】

ワインエキスパートの勉強を始めたころから、南ローヌ(メリディオナル)のAOCを覚えるのは苦手でした。 その理由は、単純に覚えるべきAOCが多いことと、地図上のAOCエリアが雑多に並んでいるように思えたことです。 ここで改めて、南部ローヌのAOCがなぜこんなに複雑に思えるのかを、考察してみました。 コート・デュ・ローヌAOCに含まれないその他のAOCの存在 南部ローヌは、実は 「コート・デュ・ローヌ(Cotes du Rhone)AOC」 のエリア(上図のピンク色)と、それを取り巻く 「その他のAOC」 のエリア(上図の緑線)で構成されているようです。 その他のAOCとは次の7つです: ・コート・デュ・ヴィヴァレ(Côtes-du-Vivarais) ・デュシェ・デュゼス(Duché-d’Uzès) ・コスティエール・ド・ニーム(Costières-de-Nîmes) ・クレレット・ド・ベルガド(Clairette-de-Bellegarde) ・グリニャン・レ・ザデマール(Grignan-les-Adhémar) ・ヴァントゥー(Ventoux) ・リュベロン(Luberon) まずは、この7つのAOCの存在が、南部ローヌのAOCを複雑にしているのだと思います。 コート・デュ・ローヌAOC(及び、コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュAOC)のエリアと、これら7つのAOCは個別に覚えた方が、暗記もスムーズに進みそうです。 私がワインエキスパートの受験対策で、南部ローヌのAOCの暗記に取り組んだ時には、これら7つのAOCと、クリュAOC(タヴェル、ジゴンダスなど)をごちゃまぜにして覚えていました。 いま思え返せば、とても非効率だったと思います。 ちなみに、これら7つのAOCは、クリュAOCのワインほど品質が高くないため、資格試験などでは重要度も低めなのではないかと思います。 クリュAOCと地形の関係 今度は、クリュAOCについて考えてみたいと思います。 クリュAOCは、先ほどの 「コート・デュ・ローヌ(Cotes du Rhone)AOC」 のエリア(図のピンク色のエリア)にあり、その品質や名声の高さから、独立したAOCを与えられた地域です。 ローヌのAOC構造は4段階となっており、クリュAOCはその最上位に位置します。 (関連記事: ローヌの原産地呼称(AOC)区分と「

北部ローヌ(セプタントリオナル)の主要AOCの覚え方【語呂合わせ】

  北部ローヌ(セプタントリオナル)の主要AOCを覚えるための語呂合わせを考えました。 北から順番に並んでいます。 それぞれのAOCの特徴は次の通りです: コート・ロティ(Cote Rotie)AOC ・北部ローヌ最北 ・シラーの赤ワインのみ ・畑は南もしくは南東向きの急な斜面にある(日当たりがよく、風[ミストラル]の影響を受けにくい、手作業中心) ・テラス状の畑が多い ・ヴィオニエの混醸が20%まで認められている(実際は0%か、ずっと少ない量が主流) ・凝縮された品質の高いワインを造る(エルミタージュやコルナスと比べるとソフトでボディも軽め) コンドリュー(Condrieu)AOC ・ヴィオニエ100%の白ワイン ・南向きの畑が多い ・急で、養分が少なく、石の多い斜面に作られたテラス状の畑が多い ・高品質ヴィオニエワインのモデルとなるワインを造る ・小さいAOC(200 haくらい) シャトー・グリエ(Chateau Grillet)AOC ・ヴィオニエ100%の白ワイン ・コンドリューAOCに囲まれているモノポールAOC ・北部ローヌで最小のAOC(3.5 haくらい) サン・ジョゼフ(Saint-Joseph)AOC ・赤ワイン(シラー)と白ワイン(マルサンヌ、ルーサンヌ)のAOC ・赤の製造が90%近く ・赤ワインは、マルサンヌとルーサンヌとの混醸が認められている(実際は少ない) ・50km近くに及ぶ細長いAOC(斜面や平地など様々な地形が含まれる) ・様々な地形や土壌で造られるため、ワインの品質は幅広い(中~高品質) エルミタージュ(Hermitage)AOC ・赤ワイン(シラー)と白ワイン(マルサンヌ、ルーサンヌ)のAOC ・製造は赤ワインが2/3、白ワイン1/3くらい。 ・赤ワインは、マルサンヌとルーサンヌとの混醸が認められている ・白ワインは、マルサンヌ+ルーサンヌか、マルサンヌ100%のワイン ・暖かいヴィンテージには、ヴァン ド パイユ(樹上乾燥ブドウから造られる甘口ワイン)が造られる ・小さいエリアのAOC(140 haくらい) ・南向きの石の多い斜面、一部テラス状の畑 ・赤ワインのスタイルは、香りが強く、タンニンが強く、熟成能力がある高品質のワイン(骨格のしっかりした長期熟成のシラーのモデルとなるワイン) ・白ワインのスタイルは、長期熟成後に

一般的に言うワインの「熟成」とは?素朴な疑問と瓶詰めとの関係

ワインの学習を始めたばかりの頃、ある疑問を持っていました。 それは、一般的に言われる「ワインの熟成」とは、 「 どの プロセスを指しており、どのような効果があるのか」 ということです。 具体的には、 「瓶詰め前にワインを貯蔵しておくこと」 なのか、それとも 「瓶詰め後にワインボトルを寝かしておくこと」 なのか、どちらを指しているのかということです。 ワインの熟成と呼ばれるプロセスには、 「瓶詰め前の熟成」 と 「瓶詰め後の熟成」 の2つのプロセスが存在ます。 ワインの学習を進める中で明らかな答えに出会うことはありませんでしたが、たぶん、 一般的には、広義にそれら両方を指しているのではないか と思っています。 つまり「熟成」とは、「瓶詰め前の熟成」と「瓶詰め後の熟成」の両方を含めた、 醸造したワインを発展させるプロセス全般 を指しているということです。 次の疑問は、 「では、ワインの熟成とは一般的に何を意味しているのか?」 ということです。 熟成の効果は「瓶詰め前の熟成」と「瓶詰め後の熟成」で異なります。 そこで、「瓶詰め前の熟成」と「瓶詰め後の熟成」の 熟成環境の違い と、それによる 熟成効果の違い を簡単に表でまとめてみました。 赤色 の文字が主な違いです。 大きな違いは、「瓶詰め 前 」の方が様々な熟成の容器や方法を用いることができ、そのため、その効果も色、香り、味の多岐にわたります。 ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation) は、樽熟成などにおける「緩やかな酸素との接触」の効果をもたらす代替手段としても用いられます。 (関連記事: ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation)とは?マディランのタナとの関係は? ) 反対に「瓶詰め 後 」の方は、最終製品化をした後なので、基本的にはワインボトルを寝かせるだけで、熟成の効果は限定的です。 このようにじっくり調べてみると、「瓶詰め前の熟成」と「瓶詰め後の熟成」では、多少効果が異なりますが、一般的に 「ワインの熟成による効果」 という場合には、両者に共通する効果を大まかに指しているのではないかと思います。 それはつまり、 ・色の変化(白→濃く、赤→薄く) ・ブドウ由来の香りの減少と、熟成由来の香りの増加(ドライフルーツの香りなど) ・タンニン(もしくは、酸味)がまろやかになる

トゥーレーヌ地区(ロワール)で覚えたいAOC【語呂合わせ】

前回の記事(関連記事: アンジュ&ソミュール地区で覚えたいAOC )に続いて、今回はトゥーレーヌ地区についてです。 トゥーレーヌ地区は、アンジュ&ソミュール地区に比べるとシンプルです。 次の6つのAOCをあげてみました。 トゥーレーヌ(Touraine)AOC  ・トゥーレーヌ広域のAOC ・白、赤、ロゼ、泡などの製造が許可されている ・白はソーヴィニヨンブラン、赤はカベルネフランとコット、ロゼはカベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、ガメイ、グロローなどから造られる ヴーヴレ(Vouvray)AOC  ・白ワインのみ ・ほとんどシュナンブランのみから造られる ・主に辛口で、半甘口、甘口も造られる モンルイ・シュール・ロワール(Montlouis-sur-Loire)AOC  ・ロワール川の南の斜面 ・シュナンブランのみから造られる白ワイン(ヴーヴレに似ている) ブルグイユ(Bourgueil)AOC  ・赤ワイン、ロゼワインの製造が許可されている ・主にカベルネフランから造られる ・カベルネソーヴィニヨンの使用も少量許可されている サン・二コラ・ブルグイユ(St-Nicolas-de-Bourgueil)AOC  ・赤ワイン、ロゼワインの製造が許可されている ・ブルグイユよりも軽いスタイルのワイン ・ソミュールシャンピニィに似たスタイル シノン(Chinon)AOC ・赤、白、ロゼワインの製造が許可されている ・赤、ロゼはカベルネフラン、白はシュナンブランから造られる そして、個人的にはこんな語呂合わせで覚えています。 その他のAOC その他のAOCとしては、東部に シュヴェルニ(Cheverny) クール・シュヴェルニ(Cour Cheverny) ヴァランセ(Valencay) などがあります。 シュヴェルニやヴァランセでは、ピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランなど、「サントル・ニヴェルネ地区」で利用される品種が利用されています。 クール・シュヴェルニは、 ロモランラン(Romorantin) 種という珍しい品種から造られる白ワインが製造されています。