マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>
「aroma precursor = アロマ前駆体」です。
化学における 前駆体とは、ある化学物質について、その物質が生成する前の段階の物質のことを指します。前駆物質、プリカーサーとも呼ばれるようです。
ワインにおけるアロマ前駆体とは、ブドウに含まれている場合には特に香りは持たないものの、発酵工程中に香りを発する物質に変わるものを指します。その多くは、ブドウ中では糖と結合して非芳香物質として存在し、発酵中にその結合がなくなり芳香物質となるようです。
これらのアロマ前駆体は、ブドウの果肉(pulp)や果皮(skin)に含まれています。
aroma precursor(アロマ前駆体)として有名なものとしては、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン(4MMP)があります。これは化学式C6H12OSで表されるthiol(チオール)の一種で、トロピカルな香りを持ち、ソーヴィニヨン・ブランワインの特徴的な香りの原因となっています。また、ネコの尿を思わせる原因物質とされており、ソーヴィニヨン・ブランワインが「ネコのおしっこ」に例えられるのはこの物質が原因です。
マスカットのブドウに含まれるterpene(テルペン)の一種であるリナロール (linalool) やゲラニオール (geraniol) も有名なアロマ前駆体です。
リナロール (linalool) は分子式 C10H18O で表され、スズラン、ラベンダー、ベルガモット様の芳香をもちます。ゲラニオール (geraniol) はゼラニウムから発見された物質で、バラに似た芳香を持ち、広く香水に使われているそうです。モモ、ラズベリー、グレープフルーツ、リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、レモン、スイカ、パイナップル、ブルーベリーのような芳香としても用いられるようです。