マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>
「grafting = 接ぎ木」です。
grafting(接ぎ木)は、ワイン用として栽培されるほとんどのブドウ樹に採用されている手法です。
上部のscion(穂木)にはVitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ種)と呼ばれるユーラシアの種が一般的に用いられます。
一方で、rootstock(台木)にはVitis Rupestris(ヴィティス・ルペストリス)、Vitis Riparia(ヴィティス・リパリア)、Vitis Berlandieri(ヴィティス・ベルランディエリ)などの北米原産種が用いられます。
一般的にワイン用ブドウに向いている種はVitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ種)と言われています。しかし、Vitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ種)には大きな弱点があります。それは、フィロキセラと言われる害虫に対する耐性がないことです。フィロキセラは主にブドウ樹の根を襲って、最終的にはブドウ樹を死に至らしめます。
フィロキセラはもともと北米からやってきた害虫です。北米原産のブドウ品種は長い時間をかけて、フィロキセラに対する体制を身につけてきました。
そのため、穂木をVitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ種)、台木を北米原産種とすることで、両者の「いいとこどりをする」というのが、この接ぎ木の考え方です。
こうしてできたブドウ樹は、Vitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ種)のブドウの味を持ちつつ、フィロキセラに対する耐性を保持します。
最も一般的な接ぎ木の手法は、穂木と台木になる両方のブドウ樹から長梢を切り取り苗木を作るという方法です。
この苗木を植えて育てることで、フィロキセラ耐性のあるブドウ樹に成長します。
高接ぎ
高接ぎ(Head grafting / Top grafting)は、苗木としての接ぎ木とは異なり、既に収穫ができるまでに成長したブドウの樹に接ぎ木をする方法です。
高接ぎでは、ブドウの樹は主幹だけを残して短く切られ、枝接ぎ、または、芽接ぎによって主幹とは異なる新しい品種のブドウ樹が接ぎ木がされます。
高接ぎの最大のメリットは、接ぎ木をしてからワイン生産用の果実を収穫できるようになるまでのスピードの速さにあります。
通常、新しく植えられたブドウの樹からワイン生産用の果実を収穫できるようになるまでは、最低3年かかると言われています。
しかし、高接ぎした場合には、新しい品種のワイン生産用ブドウが次のシーズンには収穫できるようになります。
この収穫までのスピードの速さによって、栽培者は市場のニーズの変化に素早く対応できるようになるわけです。
また、高接ぎは費用面でも大きなメリットを生み出します。畑全体を新しい品種に植え替えることと比べたら、高接ぎによる新品種への枝接ぎ、または、芽接ぎはずっと低コストに抑えられると言われています。