イタリアとギリシャでは「ヴィンサント」という名前のワインが造られています。
どちらも干したブドウから造られる甘口ワインという似た特徴を持っていますが、実は異なるワインです。
そこで、イタリアとギリシャの「ヴィンサント」の違いを考察してみたいと思います。
生産地域
イタリアのヴィンサントは主にトスカーナ州で製造されています。しかし、一部トレンティーノ・アルト・アディジェ州でも製造されているようです。
一方で、ギリシャのヴィンサントはサントリーニ島で製造されています。
名称の違い
イタリアのヴィンサントは「Vin Santo」と2語で表記されます。
一方で、ギリシャのヴィンサントは「Vinsanto」と1語で表記されます。
製造方法の違い
製造工程を見てみると、2つのヴィンサントには大きな違いがみられます。
イタリアのヴィンサントには陰干しされたブドウが使われます。この陰干しの方法は、アパッシメント・メソッドと呼ばれます。
(関連記事:アパッシメント(appassimento)とパッシート(passito)の違いに関する考察)
一方で、ギリシャのヴィンサントでは、天日干しをした遅摘みのブドウが使われます。
両者ともにオーク樽での酸化熟成が行われますが、イタリアでは小さめの樽で、ギリシャでは、大きめの樽で長期熟成が行われます。
ブドウ品種の違い
イタリア、特に主な産地であるトスカーナでは、ヴィンサントの主要品種としてトレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)とマルヴァジア(Malvasia)が用いられています。
トレンティーノ・アルト・アディジェ(トレンティーノDOC)では、ノジオーラ(Nosiola)という品種が主要品種として用いられています。
一方で、ギリシャ(サントリーニ)のヴィンサントの主要品種は、アシルティコ(Assyrtiko)です。
トレッビアーノ・トスカーノとアシルティコに共通している点は、強い甘味とバランスをとるための高い酸味を持っているという点です。多くのブドウは成熟とともに徐々に酸味を失いますが、両品種ともに成熟しても強い酸味が保持されます。
ヴィンサントは基本的には白ブドウ品種から造られていますが、トスカーナでは黒ブドウ品種サンジョヴェーゼからも製造されており、このワインはオッキオ・ディ・ペルニーチェ(Occhio di Pernice)と呼ばれています。ヤマウズラの目という意味だそうです。
余談ですが、スイスのヌーシャテル州のロゼワインにも「ヤマウズラの目」と呼ばれるウイユ・ド・ペルドリ(Oeil de Perdrix)というワインがありました。ヤマウズラの目というのはヨーロッパでポピュラーなワードなのでしょうか??
味わいと価格帯
イタリア(トスカーナ)とギリシャ(サントリーニ)のヴィンサントはともに次のような多くの共通点を持っています。
・甘口
・高い酸味
・熟成香(ドライフルーツの香り、ナッツの香り)
・樽の香り
しかし、甘口を主流としながらもイタリア(トスカーナ)では、さまざまな甘味レベルのヴィンサントも造られているそうです。
価格帯については、どちらも生産に手間暇と時間がかかり、少量生産であるために、高価格帯という共通点を持っています。
まとめ
起源についてはさまざまな説のあるそれぞれのワインですが、とても似た特徴を持っているワインであることがわかりました。
味わいについてはあまり顕著な違いは無いようなのですが、その製法、特にブドウの乾燥工程における「陰干し」、「天日干し」には大きな違いがあることが分かりました。
これにはトスカーナでは一定の降水量があり、サントリーニはほとんど雨が降らないという気候条件の違いが大きくかかわっているのではないかと思いました。
<了>