ソーヴィニヨン・ブランの有名な地域をあげるとしたら真っ先に名前があがるのが、ロワールとニュージーランドだと思います。
しかし、そのスタイルは非常に対照的です。
ロワールのソーヴィニヨン・ブランの香りは控えめな香りのものが多い一方で、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは非常に香りが強いのが特徴です。
なぜこのような違いが生まれるのかを、両者の栽培環境とワインの醸造方法を比較することで調べてみようと思います。
まず最初に、ロワールの中でも代表的な産地であるサンセールと、ニュージーランドで代表的な産地であるマールボロについて、各要素の違いをまとめてみました。
ここで意外だったのが、両者ともに気候区分が「冷涼」エリアに位置することです。
何となく、
フランス → 涼しい → ライトボディのワイン
ニューワールド → 暖かい → フルボディのワイン
という固定観念があったのですが、両者ともに同じ気候区分に属していることを考えると、必ずしも温度差が単純にワインスタイルの違いを生み出しているわけではなさそうです。
そして、より大きな影響を与えている要素は、ニュージーランドの日照の強さにありそうです。
ソーヴィニヨン・ブランは、日照量によって香りの特徴が変わると言われる品種です。日当たりの良い環境で栽培されたブドウは成熟度が増しトロピカルフルーツのような香りを持つ一方で、日陰の多い環境で栽培されたブドウは草のような青い香りがより強く表れると言われます。
ニュージーランドは、南半球に位置することでオゾンホールの影響や、大気汚染の少なさによって、北半球に比べて4割程度高い紫外線にさらされているそうです。
また、特にマールボロに関して言うと、まわりを囲む山々が雨雲から畑を守っているために、年間の日照量もかなり長くなっているようです。
このように、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランのワインが香り高い特徴を持つ大きな理由の1つとしては、この地域の強い日照量にあるのではないかと考察されます。
これに加えて、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランの香りの強さに影響を与えていると思われる要因がさらに2つあります。
その1つは機械収穫です。
ニュージーランドでは機械による収穫が一般的です。機械収穫の場合は、ブドウは粒として収穫されて大きな容器で運ばれるため、輸送の際にブドウの実の破砕が起こり、一部のブドウ果汁がこぼれだします。どうやらこの現象がスキンコンタクトに似た状況を作り出し、ソーヴィニヨン・ブラン独特のパッションフルーツや植物のような青い香りを促進するのだそうです。
機械収穫は一般的に、ワインの品質にネガティブな影響を与えると言われていますが、どうやらこのようなポジティブな影響を与える場合もあるようです。
もう1つは、ワイン醸造における発酵温度です。
ニュージーランドの発酵温度は、ロワールに比べるとやや低いのだそうで、この発酵温度の低さのためにソーヴィニヨン・ブランの品種由来の香りが強調されたワインとなると考えられます。
また、醸造工程を通じて品種由来のピュアな香りを前面に出すために、酸化のリスクを最小限に抑えるような醸造方法が用いられるために、この点もソーヴィニヨン・ブランのワインの香り高さに寄与していると思われます。もともと、乳製品の製造の盛んなニュージーランドでは、このような衛生管理や温度管理は非常に得意分野のようです。
このような、栽培環境、畑作業、醸造手法が、ニュージーランドの香りの強いソーヴィニヨン・ブランを作り出しているのではないかと思います。
<了>