リースリングは、ヨーロッパからニューワールドまで様々な産地で栽培・醸造が行われている国際的な品種です。
このリースリングの味わいが産地やワインのタイプによってどう変わるのかを、調べて表にまとめてみました。多少、独断と偏見も含まれているかもしれません。
忘れずに、リースリングの品種特徴もまとめておきます。
日本語でまとめると、リースリングワインの基本的な特徴は、次のような点だと思います。
・アロマティック品種
・花やフルーツの香りが主体(青い香りはあまりない)
・栽培地域によって香りの特徴が変わる
・酸味が高い(完熟でも酸味を失わない)
・熟成能力を持ちハチミツや石油の香りを発展させる(長期熟成をせずともハチミツや石油の香りを持つワインもある)
・品種由来の香りを押し出したワインが多い(樽やMLF由来の香りはあまりない)
・様々なスタイルがある(ドライ~半甘~甘口、完熟・貴腐ブドウの使用など)
(関連記事:WSETをやってわかったリースリングの特徴とその素晴らしさ)
リースリングのテイスティング
では、この情報を踏まえて、実際にテイスティングをしてみようと思います。
今回用意したのは、次のようなワインです。表にまとめた主要なワインを全て網羅しているわけではありませんが、特徴のきわだったワイン5つに絞って選んでみました。
ワイン①:『Erbacher Siegelsberg Q.b.A. Grosses Gewachs 2018』(ドイツのクヴァリテーツヴァイン)
ワイン②:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(アルザスAOC)
ワイン③:『Riesling Annie‘s Lane 2019』(オーストラリア・クレアヴァレーGI)
ワイン④:『Selbach-Oster Riesling Kabinett Selbach-Oster 2014』(ドイツのカビネット)
ワイン⑤:『Udenheimer Kirchberg Riesling Auslese 2014』(ドイツのアウスレーゼ)
ワイン①:『Erbacher Siegelsberg Q.b.A. Grosses Gewachs 2018』(ドイツのクヴァリテーツヴァイン)
まずワイン①は、ドイツのクヴァリテーツヴァインです。特にその中でも品質の高い「グローセス・ゲヴェックス(Grosses Gewachs)」クラスのワインです。
(参考記事:ドイツワインのVDPとは?VDPの格付けに関する考察)
まず外観ですが、色は中程度のレモン色かもしくはややゴールドに近い色です。やや古いヴィンテージのワインなので瓶熟成の影響も考えられますが、開封から少し時間がたっていたのでやや酸化が進んでしまったのかもしれません。
香りは中程度の強さで、柑橘類(レモン、グレープフルーツ)~有核果実(モモ、アプリコット)のフルーツの香りや花の香り(スイカズラ)に加えて、瓶熟成の発展によるハチミツやドライフルーツの香りも感じられます。
味わいは辛口で、酸味は高く、中程度のアルコール度(12.5%)、ボディはミディアムボディ程度です。
表にまとめた、一般的なドイツのクヴァリテーツヴァインの特徴は、フルーティーでフレッシュ、ライトボディという特徴なのですが、このワインはそれよりもよりボディがあり、果実の成熟度も高い印象です。一般のクヴァリテーツヴァインよりも品質の高い「グローセス・ゲヴェックス(Grosses Gewachs)」クラスであることが原因であると考えられます。
しかし、香りの強さそこまで強くなく(中程度)で、酸味が高いという部分では、十分冷涼なドイツで造られたリースリングの特徴がでていると思いました。
ブラインド・テイスティングの場合には、甘い花(スイカズラ)の香りと、弱めの香り、軽めのボディ、比較的成熟度の低い果実の香り(緑色系果実、柑橘系果実)が、クヴァリテーツヴァインクラスの辛口リースリングの手掛かりになるのではないかと思いました。
ワイン②:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(アルザスAOC)
ワイン②は典型的なアルザスAOCリースリングです。
香りの強さは比較的強く、とても華やかで、柑橘系果実~有核果実のフルーティーな香りと、花の香り(スイカズラ)が強く感じられます。長い日照時間を経て、果実が十分に成熟した印象が感じられるワインです。
(関連記事:アルザスの自然要因(栽培環境)と、そのブドウ栽培への影響)
辛口で、酸味が高く、アルコール度は中程度(12.5%)、ボディはミディアムボディくらいです。ワインの余韻の長さは中程度くらいです。
しかし一方で、香りの強さの割には、ボディも余韻もやや物足りない印象を受けました。
ブラインド・テイスティングにおいては、香りが強く華やかなわりに、ボディと余韻が中程度であることが、もしかしたらアルザスのリースリング・ワインの特徴なのではないかと思いました。
ワイン①のグローセス・ゲヴェックスは、香りがそこまで強くない割にボディと余韻がしっかり感じられたので、少し対照的だと思いました。
ワイン③:『Riesling Annie‘s Lane 2019』 (オーストラリア・クレアヴァレーGI)
ワイン③は、オーストラリアで有名なリースリング産地であるクレア・ヴァレーのリースリングです。
ドイツやアルザスのリースリングワインに比べて、やや色が濃く感じられます。
香りの強さはやや強めで、石油の香り、いわゆるペトロール香が強く感じられます。個人的な経験として、クレアヴァレーのリースリングからはこの香りが感じられることがとても多いです。
(関連記事:リースリングのペトロール香を感じる方法:テイスティング試験対策(ソムリエ・ワインエキスパート))
香りの強さはアルザスのリースリングと同じくらいなのですが、アルザスリースリングがフルーティーで華やかだったのに対して、クレアヴァレーのリースリングはスモーキーなペトロール香やハチミツのような香りで満たされています。フルーツの香りとしてはそこまで成熟度が高くなく、緑色系果実~有核果実くらいの香りです。
味わいは、辛口で酸味が高く、アルコールは中程度(12.0%)、ボディはアルザスリースリングと同じくらいのミディアムボディです。
新世界のワインは果実の成熟度が高めに現れる傾向がありますが、クレアヴァレーのリースリングではそこまで顕著に旧世界との果実の成熟度の違いが感じられない気がします。確かに香りもやや強めで、ボディもしっかり目なのですが、果実の熟度に関してそこまでアルザス産との大きな違いを感じられません。
ブラインド・テイスティングにおけるヒントとしては、ミディアムボディで強いペトロール香が感じられ、あまり華やかさが感じられないことがオーストラリアのリースリングを見抜くヒントなのではないかと思いました。
ワイン④:『Selbach-Oster Riesling Kabinett Selbach-Oster 2014』(ドイツのカビネット)
ワイン④はプレディカーツヴァインの中で最もマスト糖度の低いカビネットのワインです。とは言っても、プレティカーツヴァインはそもそもマスト糖度が高めなので、オフドライやミディアムドライなどのやや甘味をもったワインが多く造られています。
(関連記事:プレディカーツヴァインの6区分の直訳による覚え方)
外観との特徴はやや緑がかった淡いレモン色です。
香りの印象は、リンゴジュースのような爽やかな香り。基本的には緑色系果実の香り(リンゴ、ナシなど)と白い花の香り(ジャスミンやスイカズラ)が中心です。しかし、印象としてはシンプルな香りです。
味わってみると、まさにリンゴジュースのように、少しの甘味(中甘)としっかりとした酸味が感じられます。アルコール度もかなり低いです(8.5%)。そして、ボディもライトボディで、ジュースのように一気に飲めてしまう感じです。
ブラインド・テイスティングにおいては、リンゴ(緑色系果実)の香り、中甘、高い酸味、低アルコール、ライトボディが、ドイツのカビネットワインを判別するためのヒントになると思いました。
個人的には「フレッシュリンゴジュース」という言葉がもっとも似あうワインだと思います。
ワイン⑤:『Udenheimer Kirchberg Riesling Auslese 2014』(ドイツのアウスレーゼ)
ワイン⑤はプレディカーツヴァインの中でややマスト糖度の高いアウスレーゼです。
理論上は辛口のワインも作れるようなのですが、基本的には甘口のワインになるようです。
基本的には完熟ブドウが用いられますが、貴腐ブドウも含まれている可能性があるようです。
(関連記事:プレディカーツヴァインの6区分の直訳による覚え方)
まず、外観はカビネットと比べると、かなりゴールドに近い色をしています。
香りの第一印象は、ハチミツやマンゴーです。また、オレンジやマーマレード、ドライフルーツの香りも感じられ、ある程度の複雑さが感じられます。もしかしたら少し、貴腐ブドウが含まれているのかもしれません。
味わいは半甘~甘口くらいで、酸味は高め、アルコールは低め(9.5%)で。ボディはミディアムボディです。
先程のカビネットがアップルジュースだとすると、こちらは完熟オレンジジュースやマンゴージュースを連想させます。
まとめ
5種類のワインのテイスティングをしてみましたが、それぞれのワインの特徴がよく現れていました。
予め各ワインの特徴を表形式まとめておいたことで、特徴の違いが現れる部分が分かっていたので、その部分に特に焦点を当ててテイスティングを行うことができました。
まっさらな状態でテイスティングを行うことも重要ですが、予備知識があることで、より深くワインを分析できたような気がします。