以前にロゼの製法をまとめてみましたが、度々その中身を忘れてしまうので、今度こそ忘れないようにと、それぞれの違いをシンプルな表にまとめてみました。 (参考記事: 図解!赤ワインの製法から考える「ロゼワイン」の3通りの製法 ) 取り上げているのは次の3つの製造方法です: ・直接圧搾法 ・短いマセレーション(セニエ法) ・ブレンド法 これ以外にも、発酵時に黒ブドウと白ブドウを混ぜる「混醸法」と呼ばれる方法があるようですが、今回は割愛しています。 製造において、大きな違いが生まれる部分を特に赤い枠で囲んでみました。 これを見ると、「直接圧搾法」と「短いマセレーション」は比較的類似している製造方法です。 類似点をあげると次の2点となります: ・インプットとして「黒ブドウ」を用いている ・製造工程は「白ワインの製造工程」に近い 一方で、この2つの製造方法の大きな違いはマセレーションの長さです。 「直接圧搾法」においてマセレーションはほとんど行われない一方で、「短いマセレーション」では2、3時間~数日間のマセレーションが行われます。 このマセレーションの長さの違いは、アウトプットとなるロゼワインの特徴にも影響を与えており、「短いマセレーション」で造られたワインは「直接圧搾法」で造られたワインに比べ、より濃い色、より強い香りが現れると言われています。 「ブレンド法」は、「直接圧搾法」や「短いマセレーション」と比べると一風変わった製造手法であり、この手法ではインプットとしてブドウではなくワインを用いています。 「ブレンド法」は、白ワインに少量の赤ワインを加えるという最も簡単な製造手法を用いていますが、シャンパーニュなどのスパークリングワインの製造を例外として、ヨーロッパのワイン法ではほとんど認められていない製法であるようです。 逆を言えばヨーロッパ以外の地域では使われることもあるようですが、この方法は主に低価格帯のワインで用いられているようです。 しかし、単純な方法であるがゆえに、「ブレンド法」でワインを造る場合には、ロゼワインにおいて重要であると言われる、ワインの色味を容易にコントロールできるという大きなメリットがあるようです。 最後に、余談ですが「短いマセレーション」はあえて「セニエ法」とは記述をしませんでした。 セニエ法とは高級な赤ワインを濃縮させる場合の醸造手法であり、その副...
ワインの学習をしていると、「クローン・セレクション(clonal selection)」と「マサル・セレクション(mass selection)」というブドウ樹の選抜方法がでてきます。
良いワインは、良いブドウ樹から収穫されるブドウから造られます。そのために、これらのブドウ樹の選抜方法は、ブドウ栽培において重要な要素となります。
しかし、ワイン書籍においてこれらは比較的簡易に説明がされていることが多く、私はこれまでしっかりと理解をすることができませんでした。
今回、様々な書籍に目を通す機会があり、少し理解が進んだので、自身の理解を深める意味も込めて、この2つがどのような特徴を持っているのかをまとめてみました。(一部理解が足りず誤っている部分があるかもしれません)
クローン・セレクション(clonal selection)
これはブドウ樹の選抜を、クローン単位で行っていくという考え方のようです。クローンとは、同一遺伝子を持つブドウ樹の集合のことです。
クローンは「ピノノワール クローン115」のような番号で管理されており、それぞれのクローンは独自の特徴を持っています。例えば、高級ワインに向いた小さな実をつけるという特徴や、特定の病気に強いという特徴などです。
ブドウ栽培者は、自分の希望にあったクローンの苗木を選び、それを新たにブドウ樹を育てる畑に植えていきます。
畑に植えられる苗木はすべて同じ遺伝子を持ったクローンなので、そこから育つブドウ樹はすべて同じものになるはずです。
しかし、ブドウは突然変異を起こしやすい植物であり、他のブドウ樹とは異なる特徴をもったブドウ樹が育つ場合があります。例えば、実の大きさが違ったり、色が違ったり、病気や環境に対する耐性が異なるなどです。
この特徴が好ましい特徴の場合、この突然変異を起こしたブドウ樹は新たなクローンとして管理され、異なる番号で識別されます。
このような、特別変異によってより好ましいブドウ樹を選抜していく方法を「クローン・セレクション」というようです。
比較的新しい選抜方法ですが、多くのブドウ栽培者が用いている方法であり、新たなブドウ樹を育てる栽培者の多くは苗木屋から特定のクローンを購入するようです。
この手法の良いところは、畑一帯に同じクローンが植えられるため、萌芽、開花、結実などのタイミングが均一で、ブドウ樹の管理が比較的容易であるということのようです。また、苗木屋から購入するために、病気を持った苗木が含まれている可能性が少ないというのもメリットのようです。
一方で、すべての樹が同じクローンであるがために、特定の病気で畑一帯が大きな損害を受けたり、収穫されるブドウが画一的で複雑性がないというデメリットもあるようです。
マサル・セレクション(mass selection)
クローン・セレクションが比較的最近の手法であるのに対して、マサル・セレクションは昔から栽培家の間で行われている手法であるようです。
この手法にはクローンという概念は(おそらく)なく、自社畑のなかで理想的な性質をもったブドウ樹をいくつか選んで、そこから挿し木をとって、新しい区画に植えていくという方法です。
このサイクルを何回も繰り返していくことで、畑には理想的な性質を持ったブドウ樹が選抜されていくという考え方のようです。
この手法の特徴は、まず、非常に手間と時間がかかるということです。
クローン・セレクションのようにクローンごとの性質がわかっているわけではないので、それぞれのブドウ樹の成長やそこからできるブドウにどのような性質があるのかについて、長期間しっかりと記録をつけていかなければならないようです。
また、苗木屋から買うわけではないので、病気などに対する挿し木の衛生管理もしっかりと行わなければならないというデメリットもあるようです。
しかしその一方で、畑には様々な遺伝子を持ったブドウ樹が植えられているため、特定の病気で大きなダメージを受けることもなく、できあがるブドウには多様性や栽培者の独自性が生まれるというメリットもあるようです。
手間はかかりますが、このようなメリットを得るために、あえて従来の方法である「マサル・セレクション」で選抜をしていく栽培者もいるようです。