ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...
ワインの学習をしていると、「クローン・セレクション(clonal selection)」と「マサル・セレクション(mass selection)」というブドウ樹の選抜方法がでてきます。
良いワインは、良いブドウ樹から収穫されるブドウから造られます。そのために、これらのブドウ樹の選抜方法は、ブドウ栽培において重要な要素となります。
しかし、ワイン書籍においてこれらは比較的簡易に説明がされていることが多く、私はこれまでしっかりと理解をすることができませんでした。
今回、様々な書籍に目を通す機会があり、少し理解が進んだので、自身の理解を深める意味も込めて、この2つがどのような特徴を持っているのかをまとめてみました。(一部理解が足りず誤っている部分があるかもしれません)
クローン・セレクション(clonal selection)
これはブドウ樹の選抜を、クローン単位で行っていくという考え方のようです。クローンとは、同一遺伝子を持つブドウ樹の集合のことです。
クローンは「ピノノワール クローン115」のような番号で管理されており、それぞれのクローンは独自の特徴を持っています。例えば、高級ワインに向いた小さな実をつけるという特徴や、特定の病気に強いという特徴などです。
ブドウ栽培者は、自分の希望にあったクローンの苗木を選び、それを新たにブドウ樹を育てる畑に植えていきます。
畑に植えられる苗木はすべて同じ遺伝子を持ったクローンなので、そこから育つブドウ樹はすべて同じものになるはずです。
しかし、ブドウは突然変異を起こしやすい植物であり、他のブドウ樹とは異なる特徴をもったブドウ樹が育つ場合があります。例えば、実の大きさが違ったり、色が違ったり、病気や環境に対する耐性が異なるなどです。
この特徴が好ましい特徴の場合、この突然変異を起こしたブドウ樹は新たなクローンとして管理され、異なる番号で識別されます。
このような、特別変異によってより好ましいブドウ樹を選抜していく方法を「クローン・セレクション」というようです。
比較的新しい選抜方法ですが、多くのブドウ栽培者が用いている方法であり、新たなブドウ樹を育てる栽培者の多くは苗木屋から特定のクローンを購入するようです。
この手法の良いところは、畑一帯に同じクローンが植えられるため、萌芽、開花、結実などのタイミングが均一で、ブドウ樹の管理が比較的容易であるということのようです。また、苗木屋から購入するために、病気を持った苗木が含まれている可能性が少ないというのもメリットのようです。
一方で、すべての樹が同じクローンであるがために、特定の病気で畑一帯が大きな損害を受けたり、収穫されるブドウが画一的で複雑性がないというデメリットもあるようです。
マサル・セレクション(mass selection)
クローン・セレクションが比較的最近の手法であるのに対して、マサル・セレクションは昔から栽培家の間で行われている手法であるようです。
この手法にはクローンという概念は(おそらく)なく、自社畑のなかで理想的な性質をもったブドウ樹をいくつか選んで、そこから挿し木をとって、新しい区画に植えていくという方法です。
このサイクルを何回も繰り返していくことで、畑には理想的な性質を持ったブドウ樹が選抜されていくという考え方のようです。
この手法の特徴は、まず、非常に手間と時間がかかるということです。
クローン・セレクションのようにクローンごとの性質がわかっているわけではないので、それぞれのブドウ樹の成長やそこからできるブドウにどのような性質があるのかについて、長期間しっかりと記録をつけていかなければならないようです。
また、苗木屋から買うわけではないので、病気などに対する挿し木の衛生管理もしっかりと行わなければならないというデメリットもあるようです。
しかしその一方で、畑には様々な遺伝子を持ったブドウ樹が植えられているため、特定の病気で大きなダメージを受けることもなく、できあがるブドウには多様性や栽培者の独自性が生まれるというメリットもあるようです。
手間はかかりますが、このようなメリットを得るために、あえて従来の方法である「マサル・セレクション」で選抜をしていく栽培者もいるようです。