スキップしてメイン コンテンツに移動

最新記事

ワイン名称に出てくるフランス語の「Côte」と「Coteaux」の違いとは?

 タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>

シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、リースリング、ミュスカデの味わいの違いは? ~冷涼地域の白ワイン品種の特徴の比較~

これまで、「リースリング」、「シャルドネ」、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「シュナン・ブラン」と、主要な白ワイン品種の産地による違いをまとめてきましたが、今回はまとめとして品種ごとの味わいの違いをまとめてみようと思います。


幅広い産地のワインを集めても品種特徴による違いが分かりにくいので、今回はヨーロッパ、特に冷涼な地域を中心に6種類の品種のワインを集めてみました。





今回のワインは次の通りです:


ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ) → https://amzn.to/4eEnyDK (Amazonのサイトへ)


ワイン②:『Domaines Saint Martin Muscadet Sevre et Maine Sur Lie 2019』(ミュスカデ) → https://amzn.to/48ZLAYT (Amazonのサイトへ)


ワイン③:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc 2020』(ソーヴィニヨン・ブラン) → https://amzn.to/4fYR3BD (Amazonのサイトへ)


ワイン④:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(シュナン・ブラン) → https://amzn.to/3Zd8iti (Amazonのサイトへ)


ワイン⑤:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(リースリング) → https://amzn.to/48V44tv (Amazonのサイトへ)


ワイン⑥:『Just B Wines 2017』(アルバリーニョ) → https://amzn.to/4hYimOc (Amazonのサイトへ)



いままで登場した主要品種に加え、「ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)」と「アルバリーニョ」を加えてみました。


それぞれのワインは表でまとめると次のような特徴を持つはずですが、実際にテイスティングをして試してみました。








テイスティング



ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ)



まずは、冷涼地域のシャルドネの代表として、シャブリを選んでみました。


ワインは、シャルドネのテイスティングで用いたものと同じです。

(関連記事:シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


シャルドネはニュートラル品種と言われるだけあって、香りは控えめで、品種独特の香りの特徴はあまり感じられません。


冷涼な地域のワインらしく、香りの特徴は緑色系果実(ナシ、リンゴ)の香りが中心です。


そしてその中に、シャブリの特徴と言われる火打石を連想させる香りもしっかりと感じられます。この火打石の香りの原因ははっきりとは分かっていないようですが、グルタミン酸や、MLF(マロラクティック発酵)に関係すると言われています(確かに火打石の香りは、果実というよりは旨味を感じさせる香りなので、その仮説に納得です)。


また、繊細な香りの中にかすかに乳製品(ヨーグルト)の香りが感じられます。これもMLFに由来する香りです。


このように、「品種由来の果実の香り」「製造工程に由来する香り」がバランスよく組み合わされているのがニュートラルな香りをもつシャルドネ品種の特徴だと思います。


味わいは、辛口で、高い酸味を持ち、ライトボディです。これもシャブリの大きな特徴です。しかし、シャルドネは栽培地域によって大きくその特徴を変えるので、品種を推測するための大きなヒントにはならないかもしれません。




ワイン②:『Domaines Saint Martin Muscadet Sevre et Maine Sur Lie 2019』(ミュスカデ)



続いては、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュール・リーのミュスカデです。


ミュスカデは別名、ムロン・ド・ブルゴーニュとも呼ばれています。マスクメロンの香りに似ているからこの名前が付けられたのだとか。


シャルドネと同様、ニュートラルな香りを持つ品種なので、特徴は先ほどのシャブリと非常に似ています。


外観は薄いレモン色です。


香りはやや弱く、果実の香りも緑色系果実(ナシ、リンゴ)が中心です。しかし、特徴的な香りとして、パン・ドゥ・ミのような酵母の香りがじっかりと感じられます。


このパン・ドゥ・ミの香りは「旨味」の香りに分類されると思いますが、この「果実」+「旨味」の香りの組み合わせは先ほどのシャブリの香りと似ています。


しかし、シャブリに比べると、ややパン・ドゥ・ミ(酵母)の香りがしっかりと感じられます。期間は不明ですが、Sur Lie(澱との熟成)を経ている影響だと思います(規定上、少少なくとも9か月は熟成がされていると思います)。


味わいは、辛口で、酸味は高く、ボディも軽めです。しかし、これもSur Lie(澱との熟成)の効果でシャブリよりもしっかりとしたボディを感じることができます。


総括をすると、ミュスカデのワインはシャルドネに近い味わいを持っていると思います。しかし、Sur Lie(澱との熟成)を経ることで、シャブリのような冷涼地域のシャルドネよりはしっかりとしたボディと、酵母の香りがワインに与えられています。


ミュスカデのシュール・リーのワインを見抜くには、はっきりとした酵母(パン・ドゥ・ミ)の香りを特定できるかどうかが最も重要なのではないかと思います。




ワイン③:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc 2020』(ソーヴィニヨン・ブラン)



ロワールのソーヴィニヨン・ブランです。


このワインも、ソーヴィニヨンブランのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:ソーヴィニヨン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


ソーヴィニヨン・ブランは冷涼地であっても、香りが非常に特徴的です。


ニュージーランドのものほど爆発的な香りの強さはありませんが、しっかりと、芝や野菜、もしくはグーズベリーを連想させる青い香りと、パッションフルーツのような華やかな香りをしっかりと持っています。


シャルドネ、メロンのニュートラル品種と比べると、ソーヴィニヨン・ブランはアロマティック品種と呼ばれるだけあって、香りの華やかさは圧倒的です。


しかし、リースリングやマスカットのような甘ったるい香りでは全くなく、フレッシュでさわやかさを感じさせてくれる香りです。(個人的には、リースリングの香りは、灯油や甘い香水のような、くらっとさせるような芳香系の香りを感じさせます)


味わいは辛口で、酸味が高く、ボディもやや軽めと、冷涼地域のワインの特徴が現れています。


しかし、やはりソーヴィニヨン・ブランの品種を特定するためには、「青い香り」と「パッションフルーツの華やかな香り」を感じ取ることができるかどうかにかかっていると思います。




ワイン④:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(シュナン・ブラン)



ヴーヴレのシュナン・ブランです。


このワインも、シュナン・ブランのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:シュナン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


シュナンブランは単独で味わうと、華やかな香りを持つワインのように感じられますが、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングと比べてみると、それほど華やかには感じません。アロマティック品種にカテゴライズされていない理由がなんとなく分かります。


確かに甘い香りを持ちますが、ぱっと華やかなというよりは、ハチミツのように甘味が凝縮されたような香りに感じられます。言い方を変えると、少し湿ったような、スモーキーな、ちょっとうちに籠ったような甘い香りです。


香りは緑色系果実(ナシ、リンゴ)から、柑橘系果実(レモン、グレープフルーツ)が中心で、やや有核果実(モモ)の香りも感じられます。


味わいはやや甘味があり、酸味が高く、ミディアムボディです。


香りの印象は、ニュートラル品種の香りと、アロマティック品種の香りの中間くらいの華やかさを持つワインなので、品種を特定する場合はどちらの特徴も持たないことが手掛かりになるのではないかと思います。


実際にブラインド・テイスティングで品種特定をするのはかなり難しそうです。




ワイン⑤:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(リースリング)




アルザスAOCのリースリングです。


このワインも、リースリングのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:リースリングの味わいは産地やタイプでどう違うのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


リースリングはとても華やかな香りが感じられます。特に、シャルドネやミュスカデと比べてみると、その華やかさは圧倒的です。個人的には、アルザスAOCのリースリングは、特に香りが華やかだと感じています。


香りの特徴は、少し甘ったるさを感じる香りです。灯油や、甘い香水の香りをかいだ時のような、少し芳香族の化学物質を感じさせるような香りが特徴です。自然の中にいるような、フレッシュで緑を感じさせるソーヴィニヨン・ブランの甘い香りとは対照的に感じられます。


少しハチミツを思わせる甘い香りも感じられますが、シュナン・ブランで感じたようなじめっとした、凝縮されたようなハチミツの香りと言うよりは、凝縮される前のフレッシュな花の蜜のような香りに感じられます。そのため、この香りの表現としては、「ハチミツ」よりは、「ハニーサックル(=スイカズラ)≒ 白い花」の方が適しているのではないかと思います。


味わいは、辛口で、酸味が高く、ミディアムボディです。


アルザスのリースリングは冷涼地域にしては比較的ボディがしっかりとしているのが特徴ではないかと思います。ブドウ栽培に適した日照時間が長く、乾燥した環境による影響が考えられます。


リースリングのワインを見分けるには、高い酸味が大きなヒントになりますが、やはり決定的な要素は品種独特の白い花や灯油のような甘い・甘ったるい香りなのではないかと思います。(ただし、甘ったるいとはいってもマスカット品種のようなデザートワインのような強烈なベトっとした甘ったるさではありません。)



ワイン⑥:『Just B Wines 2017』(アルバリーニョ)



リアス・バイシャスDOのアルバリーニョ100%のワインです。


このワインはリアス・バイシャスの中でも特に涼しい地域である、バル・ド・サルネス(Val do Salnés)というサブゾーンで造られており、ここで造られるワインは酸味が高くなると言われています。


ワインの特徴は、淡いレモン色の外観です。


香りの強さは中程度で、緑色系果実(ナシ、リンゴ)の香りが中心で、ハーブっぽい青い香り(フェネル、ディル)も感じられます。


ソーヴィニヨン・ブランも「青い香り」と形容されますが、ソーヴィニヨン・ブランのようなパッションフルーツと混ぜられたような華やかな青い香りではありません。どちらかというと、白い花の茎をイメージさせるようなほのかな青い香りです。この香りを深くだとっていくと、白い花の香りもわずかに感じられます。


加えてさらに、かすかに酵母の香りも感じられます。流通業者のウェブサイト(https://firadis.co.jp/product/producer-info/?producerid=3549)で確認をしたところ、やはり「澱と共に3-5ヶ月熟成」が行われているそうです。これが酵母の香りの原因です。アルバリーニョはボディが軽めの品種なので、澱との熟成によってワインにボディや質感をあたえているのだと推測されます。


ステンレスタンクとフレンチオークのバレルで発酵されているようですが、樽の香りは感じられなかったので、おそらく新樽の利用はないと思います。


味わいは、辛口で酸味が高く、ミディアムボディです。


ワイン全体の特徴としては、ミュスカデワイン(ワイン②)にかなり近いと感じました。


しかしミュスカデワインに比べると、酵母の香りよりも、ハーブの青い香りや果実の香りがずっと勝っている印象です。理由の1つは澱との熟成の期間が考えられます。ミュスカデは規定上9か月以上の澱との熟成が行われていますが、このアルバリーニョワインの澱との熟成期間はわずか3~5か月です。


もう1つの理由としては、アルバリーニョの品種特徴が、ミュスカデよりもやや華やかであることが考えられます。そのためニュートラルな香りを持つミュスカデよりも、より強いハーブや花の香り、果実の香りが現れているのだと思います。


しかし一方で、アルバリーニョはこれといった明確な香りの特徴が無いので、品種の特定はかなり難しいのではないかと思いました。




テイスティングのまとめ


同じ冷涼地域のワインでも、比較をしてみることで、それぞれの品種の持つ個性や製法の違いがはっきりと分かります。


特に、ヨーロッパのPDO(原産地呼称保護)レベルのワインは、品種や製法がしっかりと法律で決められているので、その産地の特徴がはっきりと出やすいと思います。


ワインの味わいは絶対評価をすることが難しいので、複数のワインを並べて比較テイスティングしながらそれぞれの特徴を明らかにして、それをしっかりと言葉で表していくことが、個々のワインの特徴をつかむ近道なのではないかと思いました。


よく読まれている記事

WSET Level3 記述式問題で重要に思えたところ(本試験の筆記問題対策)

繰り返しになりますが、WSET level3の最大の難関は記述式問題です。 (参考記事: WSET Level3 の試験構成 ) WSETの記述式問題では、出題されたテーマに対して、深く理解をしているかが問われます。 (参考記事: 一筋縄ではいかない!とてもWSET的だと思った記述式問題(問題例) ) そのため、記述式問題の基本的な対策は、WSETレベル3のテキストの読み込みと、講義ノートの見直しを主に行いました。 しかし、広大な産地全てについて、万遍無く、深く理解をするというのは途方もない作業に思われました。 さらに私の場合は英語受験だったので、日本語のようにテキストをスラスラ読むこともできるわけはなく、本試験までの日数から逆算をすると、とてもそんな時間は確保できないと思いました。 そこで記述式試験対策の方針としては、いくつか重要と思われる部分にヤマを張って、それらを重点的に勉強することにしました。「重要と思われる部分」は次のような判断基準で抜き出しました。 ・講義中に担当講師が「重要」「試験に頻出」と言っていた部分 ・サンプル問題で、何度も問われていた部分 (参考記事: WSET過去問は共有禁止!それでもWSETレベル3の試験問題の参考にしたウェブサイト ) ・複雑で、しっかり理解をしていないと説明ができないと思った部分(特に醸造工程のオプションなど) ヤマを張った部分に関しては何度もテキストを読み返して、テキストの重要ポイントは何度もノートに書きあげて英文を書く練習を続けました。 (参考記事: WSET Level3の英語受験を一発合格した勉強方法 ) (関連記事: WSET試験の記述問題対策では「動詞」が重要!? ) 「重要と思われる部分」として抜き出した具体例を下に紹介します: <ワインの保管とサービス> ワインの保管方法(参考記事: ワインの保管方法 ) ワインの提供温度 (参考記事: チャートで覚えたワインのサービス温度 ) ワインのデカンティング 発泡性ワインの栓の抜き方(参考記事: 非発泡性(スパークリング)ワインの栓の抜き方 ) ワインの保存に使われる方法(参考記事: ワインの保管方法 ) <ブドウ樹の栽培、畑の管理、ワインの醸造> 高接ぎとその特徴(参考記事: grafting(...

ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリットの整理

 ワイン用のブドウ栽培では、多くのブドウ樹が棚付けされて管理されています。 棚付けとは、ブドウ棚を使用して毎年成長するブドウの枝葉を支持するブドウ樹の管理方法です。 ブドウ棚は下図のような、支柱と針金からなる常設の構造物を指します。 そして、ブドウの樹の棚付けの方法として最も広く使われている方法が 「垣根仕立て(VSP = Vertical Shoot Positioning)」 です。 垣根仕立てがあまりに一般的なので、個人的には、ついつい「棚付けのブドウ樹 = 垣根仕立て」と混同しがちです。 そこで整理のために、ブドウ樹の棚付けと、垣根仕立て(VSP)のメリット、デメリットをそれぞれまとめてみました。 棚付けしたブドウ畑(樹)のメリット・デメリット 棚付けの最大のメリットは、キャノピー・マネジメント(樹冠管理)が容易になることです。キャノピーとは、ブドウ樹で毎年成長する緑色の枝葉を指します(一般的に、長年にわたり固定されているコルドンは含まないと思います)。 そして、キャノピー・マネジメントのメリットとしては、「日照量」、「通気」、「機械化」の3つが挙げられます。 日照量のコントロールは、葉陰を減らすことによる日照量の最大化や、反対に葉陰を増やすことによる果実の日焼け対策が含まれます。 通気の管理は、特に雨や湿気の多い地域で重要であり、カビなどの菌類病のリスクを減らします。 また、適切なキャノピー・マネジメントにより、樹の特定の部分に果実や葉がくるようにしておくことは、畑への機械の導入を促します。これにより、作業の効率化を図ることができます。 一方で、棚付けのデメリットとしては、ブドウ棚設置のための初期費用と、それらを維持管理するための費用や手間があげられます。 ブドウ棚は、急斜面では利用できないこともデメリットの1つです。北ローヌなどの急斜面が多い畑では、ブドウ棚の代わりに支柱のみを用いた棒仕立てなどが用いられます。 (関連記事: 棒仕立て、ミストラル、混醸... ローヌ川流域北部のブドウ栽培とワイン造り ) 垣根仕立て(VSP)のメリット・デメリット 垣根仕立て(VSP)のメリットは、ブドウ樹の樹勢が一定以下の場合に、キャノピー・マネジメントがしやすいことと言われます。 したがってそのような場合には、「日照量のコントロール」、「通気の確保」、「作業の...

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

JSA試験、WSET試験を通して酒精強化ワインであるシェリー(Sherry)を学んできましたが、ずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、「 パロ・コルタド・シェリーとは何なのか? 」です。 シェリーとは、スペイン・アンダルシア州カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとその周辺地域で生産される酒精強化ワインのことで、ポート・ワイン(ポルトガル)、マデイラ・ワイン(ポルトガル)とともに、著名な酒精強化ワインと言われています。 シェリーには、フィノ(Fino)/マンサ二ーリャ(Manzanilla)、オロロソ(Oloroso)、アモンティリャード(Almontillado)、 パロ・コルタド(Palo Cortado) 、ペドロヒメネス(Pedro Ximenez)など様々な種類があります。 しかし、JSA、WSETどちらのテキストにおいても、 パロ・コルタド に関する記述 はとても少なく、製法に関する記述もなく、漠然とその特徴が書かれているだけでした。 その特徴は、 ・希少であること ・アモンティリャード(Amontillado)の香りを持つが、味はオロロソ(Oloroso)のボディとこくを持つ という2点だけです。 ずっと疑問に思っていたことを解決すべく、製法を中心にパロ・コルタドについて調べてみました。 参考にしたのは、次のサイトです: https://www.sherrynotes.com/sherry-types/palo-cortado/ https://www.sherrynotes.com/2015/background/palo-cortado-mystery/ まずは、パロ・コルタドの発祥から。パロ・コルタドは、もともとフィノとしては不適合として除外された樽からできたそうです。 <パロ・コルタドの発祥> ------------------------------------------------------------------------ ・パロ・コルタドは、もともとフィノ(Fino)の製造から偶然生まれたワインと言われている。 ・フィノシェリーでは、樽での熟成中にフロールと呼ばれる産膜酵母が発生し、フロールのもとで熟成される。しかし、フィノ樽の中には...

WSETレベル3のテキスト購入方法とテキスト電子化のメリット

WSET英語学習 の難しさはの1つは、 テキストの記述が全て英語 であることです。 テキストが英語だと、やっぱり 内容の理解度が落ちます 。知らない単語を辞書で調べて...翻訳をして...と読み込んでいくのですが、部分的に言い回しが微妙だったり、細かいニュアンスが伝わらなかったりで、理解が難しい文章がいくつかありました。 <理解度対策は、日本語テキストの購入がおすすめ!> 理解度の問題を解決するために私がとった方法は「WSETレベル3日本語テキストの購入」でした。 ワインスクールでWSETレベル3を受ける場合、英語クラスを選択すると、英語テキストが配布されます。 しかし私はこれに加えて、日本語テキストを購入しました。ワインスクールでも購入ができるようなのですが、受講開始前に手にしておきたかったために個人的にWSETの公式ウェブサイト( https://shop.wsetglobal.com/collections/books )から購入しました。 注文から2週間ほどで手元に届いたと思います。レベル3のテキスト自体は £44.95 GBP でしたが、送料に £17.21 GBP かかり、合計費用は £62.16 GBP (8,300円程度) でした。 もう少し安く購入する方法としては、時々 メルカリ に出品されているものを購入する方法もありますが、常に売りに出されているわけではないのであまり期待できないかもしれません。 Amazonでも時々、中古品がでているのでここで検索するのも良いかもしれません。→  https://amzn.to/3YSx0xy  (Amazonへのリンクです) <情報検索にはテキストの電子化がおすすめ!> テキストが英語であることの問題がもう1つありました。それは、 知りたい情報を探すのが大変 であるということでした。 例えば、「カベルネ・ソーヴィニヨン」の産地ごとの特徴を知りたい場合、その情報は様々な章に分散されて書かれていました。醸造工程の章、ボルドーの章、アメリカの章などです。 日本語であれば、走り読みをしながらキーワードを探せばそれほど大変な作業ではありません。しかし、英語ネイティブでない私にとって、英語でこれをやるのはとても大変な作業でした。 英語テキス...

WSETで納得!JSAで疑問だったギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い

JSAワインエキスパートを学んでいた時に、ブドウ樹の仕立て方でずっと疑問に思っていたことがありました。 それは、 「ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの違い」 。 両者ともに世界的に広く採用されている仕立て方である「 垣根仕立て 」の代表例なのですが、 ギヨドゥブルは長梢剪定 、 コルドンロワイヤは短梢剪定 の例として紹介されていました。 (参考記事: ブドウ樹の仕立て、剪定とは?短梢剪定、長梢更新剪定とは? ) それぞれぱっと見の形はすごく似ていて、その違いは、枝の太さの違いだけ。ギヨドゥブルは2本に分かれる枝が細くて、コルドンロワイヤはそれが太い。 なぜこのような似通った2つの仕立て方が用いられているのか が、当時の私にはわかりませんでした。 JSAソムリエ・ワインエキスパート試験では、ブドウの栽培方法、特に仕立て方に関してはあまり深い知識は必要なかったために、この2つの機能的な違いや、長梢剪定、短梢剪定に関する説明は試験対策講座でも省略されていました。また、当時、独自でネット検索をして色々調べてみたのですが、結局答えはわからず終いでした。 それから一年、こんな疑問があったことも忘れてしまった頃、WSETレベル3の講義を受けて この疑問を解決することができました! ギヨ・ドゥブルとコルドン・ロワイヤの選定の流れ WSET の講義を受けて分かったことは、次のようなこと: ギヨ・ドゥブル では、前年の新梢が一本だけ残され、その枝(長梢)が水平方向に延ばされる ギヨ・ドゥブル では、水平に伸ばされた長梢の上に、その年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル では、その年の収穫が終わったら、その年の新梢1本だけを残して、残りの枝は刈り取られる コルドン・ロワイヤ では、一昨年かそれ以前に作られた腕枝(コルドン)の上に、去年の新梢の一部(短梢)が残される コルドン・ロワイヤ では、短梢から今年の新梢が垂直に伸びる ギヨ・ドゥブル、コルドン・ロワイヤともに 、新しいブドウの房は新梢の上にできる (ギヨ・サンプル/ドゥブルの剪定の流れ) (コルドン・ロワイヤの剪定の流れ) 仕立てが出来上がった状態では、それぞれとても似通った形になって...

リースリングの「菩提樹」の香りを知るヒント|ワインの香り用語

「菩提樹」 は、JSAソムリエ・ワインエキスパートの白ワイン用の回答用紙でよく登場する香りです。 リースリング 特有の香りを表す重要な香り用語なのですが、私は長らく、 この香りがどんなものなのかがわからず 、そのワインが リースリング だと思ったら、得点稼ぎのために 「菩提樹」 を選ぶという使い方をしていました。 実際に、私が分析をした範囲ではワインスクールの JSA試験対策 において リースリング のテイスティングシートでほぼ毎回 「菩提樹」 が選ばれていました。(下の回答シートは典型的なリースリングの回答例です) しかし、このままでは良くないと思い、 「菩提樹」 に関して調べてみてこれが何なのか、どんな香りなのか自分なりに研究をしてみました。 リースリングはワインにおいては重要な品種で、JSA試験において頻出の品種です。なので、この品種特徴について把握をしておくことはテイスティング能力を上げるうえで大きな助けになると思います。 私がワインエキスパート試験を受けたときには、実際に、ドイツのリースリングが出題されました。なんとか、その時は何とか品種・産地ともに当てることができました。 菩提樹とは何か? 菩提樹で検索をすると、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木インドボダイジュ」、「インド原産のクワ科イチジク属の常緑高木ベンガルボダイジュ」、「中国原産のシナノキ科シナノキ属の落葉高木ボダイジュ」、「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム=リンデン)」が見つかります。 色々調べてみた結果、最後にあげた「ヨーロッパ原産のセイヨウシナノキ(別名:リンデンバウム= リンデン )」が、ワインの香りにおける「菩提樹」に該当しそうだとわかりました。 その理由は、海外の様々なウェブサイトで、リースリングの品種特有の香りとして、 「リンデン」 があげられていたからです。 リンデンとは何か? リンデンについて説明しているサイトがあったので、引用をしました。 ヨーロッパでは ハーブ として使われているようです。 ------------------------------------------------------ リンデンはヨーロッパ原産のハーブで、和名はセイヨウボダイジュといいます。お釈...

ブドウ品種「ピクプール(Piquepoul)」とは?

ピクプール(Piquepoul) というブドウ品種について調べてみました。 この品種は、主にフランスのローヌ渓谷や、ラングドック地方、また、スペインのカタルーニャで栽培されているワイン用ブドウ品種です。萌芽が遅く、ウドンコ病の影響を受けやすい品種です。 ピクプールには果皮の色が異なる 「ピクプール・ノワール」 、 「ピクプール・ブラン」 、 「ピクプール・グリ」 の3種類があります。 ラングドック地方では長い歴史があり、最も古い土着品種の1つのようです。ここでは、ブレンドワインとヴァラエタルワインの両方に使われています。特に、ピクプール・ノワールから生産される赤ワインは、アルコール度数が高く、香りが豊かですが、非常に色が薄いため、ブレンドに使われることが多いようです。 ローヌ渓谷では、ピクプール・ノワール、ピクプール・ブランがシャトーヌフ・デュ・パプAOCのブレンド品種として許可されています。また、広域のコート・デュ・ローヌAOCにも使われています。 ピクプール・ノワール、ピクプール・ブラン、ピクプール・グリのうち、最もよく知られているものは「ピクプール・ブラン」であり、栽培面積は増加傾向にあるようです。 フランスだけではなく、ピクプール・ブランはカリフォルニア州ソノマやオーストラリアでも栽培がされているようです。 ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC ピクプールを使った最も有名なワインの1つはラングドック地方の 「ピクプール・ド・ピネ(Picpoul de Pinet)AOC」 だと思います。 このワインは、その名が表す通り、ピクプール品種から造られており 「ピクプール・ブラン」100%の白ワイン です。しかし、品種( Piquepoul )とワイン名( Picpoul )で「ピクプール」のスペルが若干異なります。 この地域では、ピクプールはもともと主にベルモットのベースワインとして利用されていましたが、醸造技術の発展により、フルーティーなヴァラエタルワインとして造られるようになりました。 ピクプール・ブランは、温暖な気候にあっても成熟時に高い酸味を保持することができ、ピクプール・ド・ピネAOCワインは、高いレベルの酸味を持つことが特徴です。 レモンや花の香りを持つ、ミディアムボディの辛口ワインとして造られます。 下のような特徴的なボトル...

「ジンファンデル」と「テンプラニーリョ」の違いをしらべる!比較テイスティング

 今回は、ジンファンデルとテンプラニーリョの品種比較テイスティングをしてみたいと思います。 なぜこの2つを選んだかというと、どちらも赤系~黒系果実の香りを持ち、ミドル~フルボディのワインを造り、オーク樽との相性が良いという共通点を持っているからです。 今まであまり比較をする機会が無かったので、どのような違いがあるのかを調べてみたいと思います。 今回用意をしたワインは次の通り: ----------------- ①ジンファンデル / ドライ・クリーク・ヴァレー(ソノマ、カリフォルニア) ・ワイン名:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017 ②テンプラニーリョ / リオハ(スペイン)ー 伝統的スタイル(アメリカンオーク+フレンチオーク利用で、新樽比率高め) ・ワイン名:Dominio de Ugarte Reserva 2013 ③テンプラニーリョ/ リオハ(スペイン)ー モダンスタイル(フレンチオーク利用で、新樽比率は低め) ・ワイン名:Remelluri Lindes de Remelluri Viñedos de Labastida 2014 ----------------- リオハのテンプラニーリョは、念のために異なる2つのスタイルのものを用意しました。結果としては、ワイン②(伝統的スタイル)の樽香が強すぎて、ワイン①(ジンファンデル)との比較にならなかったので、ワイン③(モダンスタイル)も用意をしておいて正解でした。 外観の比較 まずは外観ですが、どれも濃いルビー色で、それほど大きな違いは見られません。 外観での判別は難しいと思います。 香りの比較 次に香りの比較ですが、用意したジンファンデル(ワイン①)は、よりモダンスタイルのリオハ(ワイン③)に近い香りを持っていました。 反対に、ワイン②はヴァニラの甘い香りが特徴的で、ワイン①とワイン③とは少し香りの質が異なります。 これは、ワイン①、ワイン③ともに、それほど新樽比率の高くないフレンチオークで熟成をしているためだと思います。 香りの近いワイン①(ジンファンデル)とワイン③(テンプラニーリョ)を比べると、ワイン①はより成熟度の高いジャムのようなレーズンのような果実の香りを持っていることが特徴的でした。 また、ワイン①(ジンファンデル)は成熟度の高いジャムのような香...

2次試験でも役立つ?酒精強化ワインの見分け方(シェリー、ポートワイン、マデイラ、VDN、ラザグレン・マスカット)

 最近、さまざまな酒精強化ワインを飲む機会に恵まれたため、私的な酒精強化ワインの見分け方を表にまとめてみました。 対象とした酒精強化ワインは次の通りです: シェリー ポート マデイラ VDN ラザグレン マスカット まだまだ酒精強化ワインは飲み始めなので間違っているところもあるかもしれませんので、気が付くたびに修正をしていきたいと思います。 この見分け方は、個人的には、JSAソムリエ・ワインエキスパートの二次試験でもかなり有用なのではないかと思っています。 以下、この表の詳細です。 【レモン色 x 辛口】のタイプ ・フィノ/マンサニーリャ(シェリー) レモン色で辛口の酒精強化ワインと言えば、ほぼ「フィノ」か「マンサニーリャ」シェリーで決まりだと思います。 さらに、フロール(産膜酵母)由来のアセトアルデヒドのツンとした香りや、ナッツ系の香りが感じられたらまず間違いないなしです。 「フィノ」と「マンサニーリャ」は気候の違いによりフロールの形成に違いがあり、香りにも若干の違いが出るようなのですが、この香りをかぎ分けるのは相当至難の業だと思います。試験などでも問われることはまずないようなので、私はかぎ分けることはほぼあきらめています。 【レモン色~黄金色 x 辛口】 のタイプ このタイプには、「ペールクリーム シェリー」、「ホワイトポート」、「VDN(白)」が含まれます。 見た目やアルコール度で判断するのは難しいので、この3つは個人的には香りで判断をするしかないと思っています。 ・ペールクリーム(シェリー) ペールクリームは、フロールの下での熟成を経ているため、フィノやマンサニーリャと同様に、「フロール由来のアセトアルデヒドのツンとくる香り」や「ナッツ系の香り」を持つことが特徴だと思います。 ・VDN(白) VDN(白)には具体的には、「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ」、「ミュスカ・ド・フロンティニャン」、「ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ」などが含まれます。 VDN(白)は、マスカット由来の華やかでさわやかな香りが特徴だと思います。個人的には、「はちみつレモンのようなフレッシュな香り」で覚えています。 ・ホワイトポート ホワイトポートはレモンのさわやかさというよりは、熟したモモやアプリコットに近い香りだと思います。個人的には「煮詰めたリンゴの香り」...

ワインエキスパート2次試験対策で味わった「ワイン以外(その他)のお酒」 ~リキュール編~

JSAワインエキスパート資格の2次試験(ブラインドテイスティング試験)では、ワインに加えて、「ワイン以外のお酒」も1種類出題されます。 詳しくはこちらの記事を参照: JSAソムリエ・ワインエキスパート2次試験対策、セルフ小瓶練習法 ワインのテイスティングとは異なり、「ワイン以外のお酒」はお酒の種類を当てるだけの単純な問題です。通常、4つの選択肢が与えられており、そのうち1つをマークするような形式です。 あるワイン講師によれば、「ワイン以外のお酒」への最良の対策は、できるだけ多くの出題される可能性のあるお酒を味わって、その特徴を自分の言葉でまとめることだそうです。 その教えに従って、「ワイン以外のお酒」対策として私が味わったお酒と、その時個人的に感じた感想をまとめたノートを公開したいと思います。 「ワイン以外のお酒」で出題される可能性のあるお酒には、大きく分けて 「リキュール」 、 「蒸留酒」 、 「酒精強化ワイン」 の3つが含まれます。 そのうち今回は 「リキュール」 を紹介したいと思います。 (関連記事: ワインエキスパート2次試験対策で味わった「ワイン以外(その他)のお酒」 ~酒精強化ワイン編~ ) (関連記事: ワインエキスパート2次試験対策で味わった「ワイン以外(その他)のお酒」 ~蒸留酒編~ ) 試験対策で味わったリキュール ※実際は一部、味わえなかったものも含まれます。 「リキュール」の特徴は、 アルコール度が強め であることと、 香りや風味が強め であることです。中にはスーズのようにアルコール度がワイン並み(15%)の例外もあるので注意が必要です。 対策ノートは、整理がしやすいように 「リキュールの色」 x 「アルコールの強さ(高・中・低)」 でまとめました。 「ワイン以外のお酒」の中でもリキュールは、色、アルコール度、主要な香りをしっかり覚えておくと、その知識だけでかなりの確率で正解ができると思います。 琥珀色のリキュール 黄色のリキュール 透明のリキュール その他の色のリキュール まとめたリキュールは28種類にもなりました。そのうち23種類は実際に味わいました。 「リキュール」以外に、「蒸留酒」、「酒精強化ワイン」があることを考えるとかなりの数です。 日本ソムリエ協会の発表によれば、「ワイン以外のお酒」の試験における得点配分は1種わずか3%だそうで...