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シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、リースリング、ミュスカデの味わいの違いは? ~冷涼地域の白ワイン品種の特徴の比較~

これまで、「リースリング」、「シャルドネ」、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「シュナン・ブラン」と、主要な白ワイン品種の産地による違いをまとめてきましたが、今回はまとめとして品種ごとの味わいの違いをまとめてみようと思います。


幅広い産地のワインを集めても品種特徴による違いが分かりにくいので、今回はヨーロッパ、特に冷涼な地域を中心に6種類の品種のワインを集めてみました。





今回のワインは次の通りです:


ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ) → https://amzn.to/4eEnyDK (Amazonのサイトへ)


ワイン②:『Domaines Saint Martin Muscadet Sevre et Maine Sur Lie 2019』(ミュスカデ) → https://amzn.to/48ZLAYT (Amazonのサイトへ)


ワイン③:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc 2020』(ソーヴィニヨン・ブラン) → https://amzn.to/4fYR3BD (Amazonのサイトへ)


ワイン④:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(シュナン・ブラン) → https://amzn.to/3Zd8iti (Amazonのサイトへ)


ワイン⑤:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(リースリング) → https://amzn.to/48V44tv (Amazonのサイトへ)


ワイン⑥:『Just B Wines 2017』(アルバリーニョ) → https://amzn.to/4hYimOc (Amazonのサイトへ)



いままで登場した主要品種に加え、「ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)」と「アルバリーニョ」を加えてみました。


それぞれのワインは表でまとめると次のような特徴を持つはずですが、実際にテイスティングをして試してみました。








テイスティング



ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee 2018』(シャルドネ)



まずは、冷涼地域のシャルドネの代表として、シャブリを選んでみました。


ワインは、シャルドネのテイスティングで用いたものと同じです。

(関連記事:シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


シャルドネはニュートラル品種と言われるだけあって、香りは控えめで、品種独特の香りの特徴はあまり感じられません。


冷涼な地域のワインらしく、香りの特徴は緑色系果実(ナシ、リンゴ)の香りが中心です。


そしてその中に、シャブリの特徴と言われる火打石を連想させる香りもしっかりと感じられます。この火打石の香りの原因ははっきりとは分かっていないようですが、グルタミン酸や、MLF(マロラクティック発酵)に関係すると言われています(確かに火打石の香りは、果実というよりは旨味を感じさせる香りなので、その仮説に納得です)。


また、繊細な香りの中にかすかに乳製品(ヨーグルト)の香りが感じられます。これもMLFに由来する香りです。


このように、「品種由来の果実の香り」「製造工程に由来する香り」がバランスよく組み合わされているのがニュートラルな香りをもつシャルドネ品種の特徴だと思います。


味わいは、辛口で、高い酸味を持ち、ライトボディです。これもシャブリの大きな特徴です。しかし、シャルドネは栽培地域によって大きくその特徴を変えるので、品種を推測するための大きなヒントにはならないかもしれません。




ワイン②:『Domaines Saint Martin Muscadet Sevre et Maine Sur Lie 2019』(ミュスカデ)



続いては、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュール・リーのミュスカデです。


ミュスカデは別名、ムロン・ド・ブルゴーニュとも呼ばれています。マスクメロンの香りに似ているからこの名前が付けられたのだとか。


シャルドネと同様、ニュートラルな香りを持つ品種なので、特徴は先ほどのシャブリと非常に似ています。


外観は薄いレモン色です。


香りはやや弱く、果実の香りも緑色系果実(ナシ、リンゴ)が中心です。しかし、特徴的な香りとして、パン・ドゥ・ミのような酵母の香りがじっかりと感じられます。


このパン・ドゥ・ミの香りは「旨味」の香りに分類されると思いますが、この「果実」+「旨味」の香りの組み合わせは先ほどのシャブリの香りと似ています。


しかし、シャブリに比べると、ややパン・ドゥ・ミ(酵母)の香りがしっかりと感じられます。期間は不明ですが、Sur Lie(澱との熟成)を経ている影響だと思います(規定上、少少なくとも9か月は熟成がされていると思います)。


味わいは、辛口で、酸味は高く、ボディも軽めです。しかし、これもSur Lie(澱との熟成)の効果でシャブリよりもしっかりとしたボディを感じることができます。


総括をすると、ミュスカデのワインはシャルドネに近い味わいを持っていると思います。しかし、Sur Lie(澱との熟成)を経ることで、シャブリのような冷涼地域のシャルドネよりはしっかりとしたボディと、酵母の香りがワインに与えられています。


ミュスカデのシュール・リーのワインを見抜くには、はっきりとした酵母(パン・ドゥ・ミ)の香りを特定できるかどうかが最も重要なのではないかと思います。




ワイン③:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc 2020』(ソーヴィニヨン・ブラン)



ロワールのソーヴィニヨン・ブランです。


このワインも、ソーヴィニヨンブランのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:ソーヴィニヨン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


ソーヴィニヨン・ブランは冷涼地であっても、香りが非常に特徴的です。


ニュージーランドのものほど爆発的な香りの強さはありませんが、しっかりと、芝や野菜、もしくはグーズベリーを連想させる青い香りと、パッションフルーツのような華やかな香りをしっかりと持っています。


シャルドネ、メロンのニュートラル品種と比べると、ソーヴィニヨン・ブランはアロマティック品種と呼ばれるだけあって、香りの華やかさは圧倒的です。


しかし、リースリングやマスカットのような甘ったるい香りでは全くなく、フレッシュでさわやかさを感じさせてくれる香りです。(個人的には、リースリングの香りは、灯油や甘い香水のような、くらっとさせるような芳香系の香りを感じさせます)


味わいは辛口で、酸味が高く、ボディもやや軽めと、冷涼地域のワインの特徴が現れています。


しかし、やはりソーヴィニヨン・ブランの品種を特定するためには、「青い香り」と「パッションフルーツの華やかな香り」を感じ取ることができるかどうかにかかっていると思います。




ワイン④:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(シュナン・ブラン)



ヴーヴレのシュナン・ブランです。


このワインも、シュナン・ブランのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:シュナン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


シュナンブランは単独で味わうと、華やかな香りを持つワインのように感じられますが、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングと比べてみると、それほど華やかには感じません。アロマティック品種にカテゴライズされていない理由がなんとなく分かります。


確かに甘い香りを持ちますが、ぱっと華やかなというよりは、ハチミツのように甘味が凝縮されたような香りに感じられます。言い方を変えると、少し湿ったような、スモーキーな、ちょっとうちに籠ったような甘い香りです。


香りは緑色系果実(ナシ、リンゴ)から、柑橘系果実(レモン、グレープフルーツ)が中心で、やや有核果実(モモ)の香りも感じられます。


味わいはやや甘味があり、酸味が高く、ミディアムボディです。


香りの印象は、ニュートラル品種の香りと、アロマティック品種の香りの中間くらいの華やかさを持つワインなので、品種を特定する場合はどちらの特徴も持たないことが手掛かりになるのではないかと思います。


実際にブラインド・テイスティングで品種特定をするのはかなり難しそうです。




ワイン⑤:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(リースリング)




アルザスAOCのリースリングです。


このワインも、リースリングのテイスティングでも用いたものと同じワインです。

(関連記事:リースリングの味わいは産地やタイプでどう違うのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


リースリングはとても華やかな香りが感じられます。特に、シャルドネやミュスカデと比べてみると、その華やかさは圧倒的です。個人的には、アルザスAOCのリースリングは、特に香りが華やかだと感じています。


香りの特徴は、少し甘ったるさを感じる香りです。灯油や、甘い香水の香りをかいだ時のような、少し芳香族の化学物質を感じさせるような香りが特徴です。自然の中にいるような、フレッシュで緑を感じさせるソーヴィニヨン・ブランの甘い香りとは対照的に感じられます。


少しハチミツを思わせる甘い香りも感じられますが、シュナン・ブランで感じたようなじめっとした、凝縮されたようなハチミツの香りと言うよりは、凝縮される前のフレッシュな花の蜜のような香りに感じられます。そのため、この香りの表現としては、「ハチミツ」よりは、「ハニーサックル(=スイカズラ)≒ 白い花」の方が適しているのではないかと思います。


味わいは、辛口で、酸味が高く、ミディアムボディです。


アルザスのリースリングは冷涼地域にしては比較的ボディがしっかりとしているのが特徴ではないかと思います。ブドウ栽培に適した日照時間が長く、乾燥した環境による影響が考えられます。


リースリングのワインを見分けるには、高い酸味が大きなヒントになりますが、やはり決定的な要素は品種独特の白い花や灯油のような甘い・甘ったるい香りなのではないかと思います。(ただし、甘ったるいとはいってもマスカット品種のようなデザートワインのような強烈なベトっとした甘ったるさではありません。)



ワイン⑥:『Just B Wines 2017』(アルバリーニョ)



リアス・バイシャスDOのアルバリーニョ100%のワインです。


このワインはリアス・バイシャスの中でも特に涼しい地域である、バル・ド・サルネス(Val do Salnés)というサブゾーンで造られており、ここで造られるワインは酸味が高くなると言われています。


ワインの特徴は、淡いレモン色の外観です。


香りの強さは中程度で、緑色系果実(ナシ、リンゴ)の香りが中心で、ハーブっぽい青い香り(フェネル、ディル)も感じられます。


ソーヴィニヨン・ブランも「青い香り」と形容されますが、ソーヴィニヨン・ブランのようなパッションフルーツと混ぜられたような華やかな青い香りではありません。どちらかというと、白い花の茎をイメージさせるようなほのかな青い香りです。この香りを深くだとっていくと、白い花の香りもわずかに感じられます。


加えてさらに、かすかに酵母の香りも感じられます。流通業者のウェブサイト(https://firadis.co.jp/product/producer-info/?producerid=3549)で確認をしたところ、やはり「澱と共に3-5ヶ月熟成」が行われているそうです。これが酵母の香りの原因です。アルバリーニョはボディが軽めの品種なので、澱との熟成によってワインにボディや質感をあたえているのだと推測されます。


ステンレスタンクとフレンチオークのバレルで発酵されているようですが、樽の香りは感じられなかったので、おそらく新樽の利用はないと思います。


味わいは、辛口で酸味が高く、ミディアムボディです。


ワイン全体の特徴としては、ミュスカデワイン(ワイン②)にかなり近いと感じました。


しかしミュスカデワインに比べると、酵母の香りよりも、ハーブの青い香りや果実の香りがずっと勝っている印象です。理由の1つは澱との熟成の期間が考えられます。ミュスカデは規定上9か月以上の澱との熟成が行われていますが、このアルバリーニョワインの澱との熟成期間はわずか3~5か月です。


もう1つの理由としては、アルバリーニョの品種特徴が、ミュスカデよりもやや華やかであることが考えられます。そのためニュートラルな香りを持つミュスカデよりも、より強いハーブや花の香り、果実の香りが現れているのだと思います。


しかし一方で、アルバリーニョはこれといった明確な香りの特徴が無いので、品種の特定はかなり難しいのではないかと思いました。




テイスティングのまとめ


同じ冷涼地域のワインでも、比較をしてみることで、それぞれの品種の持つ個性や製法の違いがはっきりと分かります。


特に、ヨーロッパのPDO(原産地呼称保護)レベルのワインは、品種や製法がしっかりと法律で決められているので、その産地の特徴がはっきりと出やすいと思います。


ワインの味わいは絶対評価をすることが難しいので、複数のワインを並べて比較テイスティングしながらそれぞれの特徴を明らかにして、それをしっかりと言葉で表していくことが、個々のワインの特徴をつかむ近道なのではないかと思いました。


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ワイン樽に使われる最もメジャーな木材と言えば オーク です。 オークについてwikipediaで調べると、「オーク(英: oak、仏: chêne、独: Eiche)はブナ科 コナラ属(学名:Quercus)の植物の総称。落葉樹であるナラ(楢)の総称。」と書かれています。 ここで疑問が。昔、英語の授業で「 oak = カシ 」と習ったような...。 この疑問について調べてみました。 オークは「ナラ」?それとも「カシ」? まず、ワインで使われるオークは大きく分けて、「 ヨーロッパオーク 」と「 アメリカンオーク 」の2種類があるそうです。 ヨーロッパオーク に使われる種(species/ genus)は2種類あり、 ヨーロッパナラ と呼ばれる Quercus robur(ケルカス・ロブール) と、 フユナラ と呼ばれる Quercus petraea(ケルカス・ぺトラエア) です。 アメリカンオーク に使われる種は、 ホワイトオーク に属する Quercus alba(ケルカス・アルバ) です。 やはりここでも、 「カシ」 ではなく 「ナラ」 という名称が使われています。 そこで、「ナラ」「カシ」の両者についてwikipediaで調べてみました。 ------------------------------------------------------------------------------------- 「ナラ(楢、柞、枹)は、ブナ科 (Quercoideae) コナラ亜科 (Quercoideae) コナラ属 (Quercus) コナラ亜属 (subgenesis Quercus) のうち、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク (oak)。秋には葉が茶色くなることで知られている。英語のoak(オーク)という単語(他のヨーロッパ言語も同様)はヨーロッパナラを指す場合が多く、常緑性のカシのみを指す言葉はライヴオーク(live oak)であり、誤訳となることがたびたびある。英国に分布するoakはナラに相当する。」 「カシ(樫、橿、櫧)とは、ブナ科の常緑高木の一群の総称である。狭義にはコナラ属Quercus中の常緑性の種をカシと呼ぶ。 英語で常緑性のカシのみを指す場合はライブオーク (live oak...

IGPペイ・ドック(IGP Pays d’Oc)とは?ラングドック&ルーション地方で大きな存在感を持つ理由の考察

 IGPペイ・ドックとは、 ラングドック・ルーション地方のIGPワイン のことです。 図のように広域のラングドックAOCを包含しています。ちなみにラングドックAOCには、ルーション地方に加えて、ルーション地方も含まれています。 IGPワインとは、3段階あるフランスワインの品質分類のうち、2段階目に位置するワインです。 (関連記事: EU各国とその他の国々のワインの品質分類の整理 ) (関連記事: ワインの原産地統制名称 -  AOC、AOP、PDOのざっくり整理 ) 簡単に言ってしまうと、AOCワインほど製造方法やブドウ品種に対するルールは細かく規定されてはいませんが、特定の地域でのブドウ栽培と醸造が求められているワインです。 IGPペイ・ドックは、ラングドック・リューション地方での栽培・製造が求められており、この地域全体をカバーしている広域IGPです。 IGPペイ・ドックは、IGPの中でも最大の生産量を誇り、フランスワインの10-15%をも占める生産量だということです。 なぜ、最大のIGPがラングドック&ルーション地方にあるのか? ここからは、なぜラングドック&ルーション地方にこのような大きなIGPがあるのかを考察したいと思います。 それには次の3点が関係していると思います: ・ブドウ栽培に非常に適した気候 ・お手頃価格のIGPワイン ・長いブドウ栽培の歴史 ラングドック&ルーション地方の気候 地中海に面するラングドック&ルーション地方の気候は、 地中海性気候 です。 夏は温暖で雨は少なく、非常に日照量が豊富で、ブドウが成熟するのに最適な気候です。 また、トラモンタンと呼ばれる乾燥した北西の風が年間を通して吹き、ブドウ樹や果実の病気を減らしてくれます。病気の心配が少ないため、オーガニックワインの生産も盛んで、フランスのオーガニックワインの製造の1/3を占めているそうです。 このようにラングドック&ルーション地方は、非常にブドウ栽培に適した環境に恵まれています。 そのため幅広い土地がブドウ栽培に適しており、ブドウの栽培面積は大きく、それらを使って大量のワインが生産されていると考えられます。 お手頃価格のIGPワイン 品質階級最上位のAOCワインに比べ、一般的に、IGPワインの価格は安いと言われています。その理由は、IGPワインのブドウ栽培・ワイン醸...