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シュナン・ブランの味わいは産地によってどう違う? ~産地比較テイスティング~

 リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランに引き続き、今回はシュナン・ブランのワインです。

(関連記事:リースリングの味わいは産地やタイプでどう違うのか? ~産地やタイプによる特徴の違いのまとめ~

(関連記事:シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか? ~産地ごとの特徴の違いのまとめ~

(関連記事:ソーヴィニヨン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか? ~産地ごとの特徴の違いのまとめ~


まずシュナン・ブランの主な特徴をまとめると次の通りです。




・主要産地は、ロワール(仏)と南アフリカ。

・高い酸味を持つノンアロマティック品種。

・果実の成熟が不均一で、一房のブドウの中でも成熟度合が異なる


(ロワールでは... )

・スパークリングワイン、スティルワイン(辛口、オフドライ、甘口)など様々なスタイルのワインが造られる。

・多くのワインは、ミディアムボディ、やや残糖あり、高い酸味、オーク熟成なし、緑色系果実から南国系果実の香りや、青い香りを持つ


(南アフリカでは... )

・主に低価格帯の大量生産ワインに使われ、その多くは、ミディアムボディ、辛口~オフドライ、中程度~高い酸味、柑橘系~南国系果実の香りを持つ。

・ブレンドワインにも使われる

・近年、高価格帯のワインの製造も増えている


主な特徴はこのあたりだと思います。


そして、主要産地のワインの特徴は下の表にまとめてみました。ロワールでは、「ヴーヴレ」、「サヴィニエール」、「コトー・デュ・レイヨン」でそれぞれ特徴的なスタイルのワインが造られています。





シュナン・ブランのテイスティング


では、この情報を踏まえて、実際にテイスティングをしてみようと思います。


今回用意をしたワインは次の通り。


ワイン①:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(ヴーヴレAOC)


ワイン②:『Savennieres Chateau D'epire 2005』(サヴニエールAOC)


ワイン③:『De Trafford Chenin Blanc De Trafford Wines 2018』(南アのプレミアムCB)


ワイン④:『Libertas Chenin Blanc Distell 2019』(南アのテーブルワインCB)







ワイン①:『Domaine Brunet Vouvray Demi Sec Vieilles Vignes 2014』(ヴーヴレAOC)




シュナン・ブランで有名な産地である、ヴーヴレAOC(ロワール・トゥーレーヌ地区)のシュナン・ブランです。


外観は、中程度のレモン色で、冷涼地域にしてはやや濃い目の色をしています。少し古いヴィンテージのワインなので、瓶熟成による効果かもしれません。


香りは中程度からやや強めくらいで、まずはフレッシュなリンゴやレモン、グレープフルーツの香りが感じられます。その後に甘い香りが広がり、白い花や、缶詰のリンゴのような香りも感じ取ることができます。缶詰のリンゴの香りは、瓶内熟成による第3の香りかもしれません。


シュナン・ブランというと、ややスモーキーな香りや、濡れた段ボール紙のような香りで形容されることがありますが、このワインからはこのような香りは感じられません。成熟度が低いと青い香りが感じられることもありますが、そのような香りも無いので、しっかりと成熟した果実から造られていることが推測できます。


味わいは、残糖がしっかり感じられ、ミディアム・ドライくらいだと思われます。かすかな残糖を含むオフドライよりもやや糖分が多めの気がします。


酸味は高く、アルコールは中程度(13.0%)、ミディアム・ボディくらいです。余韻は比較的長めに感じられます。


高い酸味に対して、果実味や残糖のバランスが取れたフレッシュなワインですが、瓶内熟成によりやや複雑味が加えられた良くできたワインだと思いました。


ブラインド・テイスティングからの観点ですが、一番のヒントは、冷涼な地域で造られるワインで酸味が高く、残糖があることだと思います。


ドイツのリースリングも似たような特徴を持ちますが、ドイツのワインだともう少しアルコール度が低く(11%未満)、ボディももう少し軽めになることが考えられます。あとは、リースリングの場合はもう少し顕著な花の香りやペトロール香が感じられることが期待できます。


シュナン・ブランは、リースリングやソーヴィニヨン・ブランなどのアロマティック品種と比べると、顕著な香りの特徴がないことが特徴なのかもしれませんが、ブラインド・テイスティングで冷静にこれを見分けるためにはかなりの練習が必要な気がします。




ワイン②:『Savennieres Chateau D'epire 2005』(サヴニエールAOC)




ロワールのサヴニエールAOCのシュナン・ブランです。


サヴニエールはヴーヴレに比べると比較的温暖で乾燥した気候で、ミディアムからフルボディのワインが造られる地域です。


まず、外観は中程度のレモン色からゴールドくらいで、ヴーヴレのものよりも色濃く感じられます。かなり古いヴィンテージのワインなので、瓶内熟成の影響が考えられます。また、暖かく乾燥した地域で造られたワインであることも影響しているかもしれません。


香りの強さは中程度で、ハチミツや、キャラメルなどの第3の香りが圧倒しています。かすかに、リンゴや乾燥リンゴ、レモンの果実の香りが感じられます。


味わいは辛口で、非常に酸味が高く、中程度のアルコール(13.0%)でミディアムボディです。


酸味の高さだけが際立って果実の凝縮感はあまり感じられず、余韻は中程度かそれより短いかもしれません。


サヴニエールAOCのワインは若いうちは酸味が際立ってとっつきにくいワインになるようです。しかし、このワインは既に熟成が進んで、果実の新鮮味はほとんど感じられなくなってしまっているために、もしかしたら何らかの理由で既に劣化をしてしまったとさえ感じてしまいます。


サヴニエールAOCのワインはヴーヴレAOCのものよりもよりパワフルなワインであることを期待していましたが、このワインからはあまりそのような味わいを感じることができませんでした。


予想をしていたサヴニエールのシュナン・ブランワインの味ではなかったので、他のサヴニエールワインでもう1度、テイスティングのリベンジをしてみたいと思います。





ワイン③:『De Trafford Chenin Blanc De Trafford Wines 2018』(南アのプレミアムCB)




南アフリカはステレンボッシュWOのシュナン・ブランです。


南アフリカでは、シンプルな有核果実(モモなど)の香りを持つ飲みやすいシュナン・ブランが造られますが、より凝縮された風味や樽発酵・熟成を経た複雑な香りを持つものも造られます。このワインは後者のタイプのより凝縮感と複雑性のあるワインです。


製造元の情報によれば、スキンコンタクト、天然酵母の利用、樽発酵、澱との熟成・撹拌、一部フレンチーオークの新樽を使った熟成など、複雑性を増したり、口当たりを良くするための様々な醸造手法が使われています。(https://www.detrafford.co.za/chenin-blanc-2018)


外観は中程度のレモン色。


香りは中程度よりやや強め。缶詰のパイナップル、リンゴ、ピーチのような香りが全体をしめ、白い花の華やかな香りに、かすかに香ばしいヴァニラやクローヴの香りが感じられます。


味わいは辛口で、中程度よりやや強めの酸味、中程度のアルコール(13.5%)、ボディはミディアム程度です。


余韻は中程度かやや長めですが、最後に苦みが少し感じられます。この苦みは樽熟成によりタンニンが添加されたことだと推測します。


酸味と成熟度の高い果実バランス、樽香と、熟成した果実の香りによる複雑性が感じられる良いわいだと思いました。


ブラインド・テイスティングの観点から言うと、有核果実や南国系果実のフレッシュな香りと、樽の香り、やや高い酸味が南アフリカのシュナン・ブランの特徴なのではないかと思いました。





ワイン④:『Libertas Chenin Blanc Distell 2019』(南アのテーブルワインCB)




南アフリカの低価格シュナン・ブランです。


外観は中程度のゴールドですが、本来はレモン色です。保存状態が悪く少し酸化をしてしまいました。


香りは中程度で、シンプルな有核果実(モモ)~南国系果実の香り(ライチ、マンゴー)が中心です。


味わいはやや残糖が感じられるオフドライで、中程度の酸味、中程度のアルコール度(13.0%)、ミディアムボディです。


余韻の長さは中程度かそれよりも少し短いくらいです。


果実味と残糖のおかげで口当たりが良いワインに仕上がっていますが、果実の凝縮度は感じられず、深みはそれほどないワインかもしれません。


日常的なテーブルワインにちょうど良いワインだと思います。


ブラインド・テイスティング的な観点から言うと、シュナン・ブランであることを判断することは難しいかもしれません。リースリングの特徴も、ソーヴィニヨン・ブランの特徴もないフレッシュ感にあふれたワインということで、消去法的にシュナン・ブランの可能性を疑うというのが品種当てのヒントかもしれません。




テイスティングのまとめ


シュナンブランは、リースリングやソーヴィニヨン・ブランに比べて、これといった特徴が分かりにくいワインだと思います。


よく「鋼鉄のような」、「スモーキーな」、「濡れた段ボール」などの香りの特徴を持つと言われますが、果実の成熟度によってこれらの特徴がでるものと、そうでないものがあるので、あまり当てにできるものでもないと思います。


シュナン・ブランは高い酸味とフレッシュ感が特徴だと思うので、ブラインド・テイスティングにおいては、このようなワインのうち、リースリングやソーヴィニヨン・ブランの特徴を持たないワインをまずは疑っていくのが良いアプローチなのではないかと思いました。


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地図を使ったヴェネト(Veneto)州の主要なDOCGの暗記法

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パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

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クリアンサ、レゼルバ、グランレゼルバとは?スペインワインの熟成規定(最低熟成期間)の私的暗記法

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ドイツワインの13の栽培・生産地域の私的暗記方法(語呂合わせ)

ドイツワインには有名な 13の生産地域 があります。 ドイツワインの上位2つの品質分類である「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」はこの13地域のいずれかで造られています。 (関連記事: プレディカーツヴァインの6区分の直訳による覚え方 ) クヴァリテーツヴァインは13地域のいずれか1地域のブドウを100%使って造られていますが、プレディカーツヴァインは13地域の中でさらにベライヒと呼ばれる特別な地区のブドウのみを使って造られています。 このようにドイツワインにおいては重要度の高い、 ベシュテムテス・アンバウゲビート(Bestimmter Anbaugebiete) とも呼ばれる13の生産地域ですが、全て覚えるのはなかなか大変な作業です。 (関連記事: ドイツワインの品質レベルとブドウ産地の関係と、ラベル表示の話 ) そこで、私的な13地域の暗記方法を紹介したいと思います。 暗記方法は次のような語呂合わせで、上から、西→東の順にそれぞれの産地が登場します。 --------------------------------------------------- <ドイツの13生産地域の暗記のための語呂合わせ> ドイツの ある打者の (アール) 見てるラインは (ミッテルライン) もう出ると思っても (モーゼル) なぜか (ナーエ) ラインが (ラインガウ) 変な線で (ラインヘッセン) ファールにならない。 (ファルツ) 「へし折れた (ヘシッシェ・ベルクシュトラーセ) バーで打って (バーデン) フライになったせい」だと (フランケン) ブルペンで (ヴュルテンベルク) 戯れごとうんという (ザーレ・ウンストルート) 雑魚専の投手。 (ザクセン) ※カッコ内が13の生産地域 --------------------------------------------------- ちょっと苦しい部分もありますが、野球の1場面で全てまとめてみました。 (関連記事: ドイツワインの品質基準の覚え方は「手羽好き」【語呂合わせ】 ) (関連記事: 「遅いブルゴーニュ」、「早いブルゴーニュ」とは?ドイツのブドウ品種の名前 ) (関連記事: 絵で覚えるミュラー・トゥルガウ(ドイツの交配品種) ) (...

2次試験でも役立つ?酒精強化ワインの見分け方(シェリー、ポートワイン、マデイラ、VDN、ラザグレン・マスカット)

 最近、さまざまな酒精強化ワインを飲む機会に恵まれたため、私的な酒精強化ワインの見分け方を表にまとめてみました。 対象とした酒精強化ワインは次の通りです: シェリー ポート マデイラ VDN ラザグレン マスカット まだまだ酒精強化ワインは飲み始めなので間違っているところもあるかもしれませんので、気が付くたびに修正をしていきたいと思います。 この見分け方は、個人的には、JSAソムリエ・ワインエキスパートの二次試験でもかなり有用なのではないかと思っています。 以下、この表の詳細です。 【レモン色 x 辛口】のタイプ ・フィノ/マンサニーリャ(シェリー) レモン色で辛口の酒精強化ワインと言えば、ほぼ「フィノ」か「マンサニーリャ」シェリーで決まりだと思います。 さらに、フロール(産膜酵母)由来のアセトアルデヒドのツンとした香りや、ナッツ系の香りが感じられたらまず間違いないなしです。 「フィノ」と「マンサニーリャ」は気候の違いによりフロールの形成に違いがあり、香りにも若干の違いが出るようなのですが、この香りをかぎ分けるのは相当至難の業だと思います。試験などでも問われることはまずないようなので、私はかぎ分けることはほぼあきらめています。 【レモン色~黄金色 x 辛口】 のタイプ このタイプには、「ペールクリーム シェリー」、「ホワイトポート」、「VDN(白)」が含まれます。 見た目やアルコール度で判断するのは難しいので、この3つは個人的には香りで判断をするしかないと思っています。 ・ペールクリーム(シェリー) ペールクリームは、フロールの下での熟成を経ているため、フィノやマンサニーリャと同様に、「フロール由来のアセトアルデヒドのツンとくる香り」や「ナッツ系の香り」を持つことが特徴だと思います。 ・VDN(白) VDN(白)には具体的には、「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ」、「ミュスカ・ド・フロンティニャン」、「ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ」などが含まれます。 VDN(白)は、マスカット由来の華やかでさわやかな香りが特徴だと思います。個人的には、「はちみつレモンのようなフレッシュな香り」で覚えています。 ・ホワイトポート ホワイトポートはレモンのさわやかさというよりは、熟したモモやアプリコットに近い香りだと思います。個人的には「煮詰めたリンゴの香り」...

サントル・ニヴェルネ地区(ロワール)のAOCの覚え方【語呂合わせ】

  前回の記事に続いて今回は、 サントル・ニヴェルネ地区 です。 ソーヴィニヨン・ブランから造られる白ワインが有名な地域です。 実際に、栽培されているブドウの8割近くがソーヴィニヨン・ブランであるようです。 それに続いて、ピノ・ノワールが2割程度生産されています。 ほとんどの白ワインは、ソーヴィニヨン・ブランから、赤ワインはピノ・ノワールから造られています。 この地区のAOCは、付近を流れる2つの川の流域に集中しています。1つは ロワール川 、もう1つは、トゥール付近でロワール川と合流する シェール川 です。 この地域で最も重要なAOCは、 「サンセールAOC」 と 「プイイ・フュメAOC」 の2つです。実際にこの2つのAOCは、サントル・ニヴェルネ地区で製造されるワインの多くの割合を占めています。特に、サンセールAOCは、この地区で最大のAOCです。 さて、AOCの覚え方についてですが、この地区はあまりAOCの数が多くないために、まとめて語呂合わせを考えてみました。 語呂合わせではAOCは南から北に向かって並べられています。 最後に、各AOCの説明です: サンセール(Sancerre)AOC  ・白ワイン(ソーヴィニヨンブラン)、赤ワイン、ロゼワイン(ともにピノノワール)のAOC ・サントルニヴェルネ最大のAOC ・畑はロワール川沿いの急斜面 ・グレープフルーツやグーズベリーの中程度強さの香りを持ち、酸味の強い白ワインを造る ・ワインの品質は幅広い(中程度から非常に品質が高いものまで) ・カイヨット(Caillottes)、テール・ブランシュ(Terre Blanches)、シレックス(Silex)の3種類の土壌を持つ ・カイヨットは石灰を多く含む浅い土壌、テールブランシュは石灰と粘土の混合、シレックスは石英を含む土壌。 ・カイヨットは早飲みの香りの強いワイン、テールブランシュは最も骨格があり長期熟成向きのワイン、シレックスはミネラル感のあるスモーキーなワインを造る プイイ・フュメ(Pouilly-Fumé)AOC  ・白ワイン(ソーヴィニヨンブラン)のみのAOC ・サンセールの白ワインに似たスタイルだが、香りはやや弱く、少しまろやかなスタイル ・サンセールに似た土壌だが、サンセールほど急な斜面ではない ルイイ(Reuilly)AOC...