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ソーヴィニヨン・ブランの味わいは産地によってどうかわるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

 リースリング、シャルドネに引き続き、今回はソーヴィニヨン・ブランワインの産地による味わいの違いを調べてみようと思います。


(関連記事:リースリングの味わいは産地やタイプでどう違うのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

(関連記事:シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~


まず、ソーヴィニヨン・ブランワインの一般的な特徴は次の通りだと思います:



・アロマティック品種

・緑系果実と野菜の強い香り

・酸味が高い

・辛口のミディアムボディが多い

・フレッシュさを押し出すことが多いため、樽香を持つものは少ない

・温暖な地域では樽香を持つものも造られる

・酸味が高いため、甘口ワインとの相性が良い


この辺りだと思います。


そして、産地ごとのワインの特徴をまとめてみると、独断と偏見も含めて下の表のようになると思います。








ソーヴィニヨン・ブランのテイスティング


では、この情報を踏まえて、実際にテイスティングをしてみようと思います。


用意をしたワインは次の通りです:


ワイン①:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc (2020)』(ロワール IGP)


ワイン②:『Pouilly Fume Cuvee De Boisfleury Cailbourdin (2013)』(プイィ・フュメの古いヴィンテージ)


ワイン③:『MOUTON CADET BLANC (2021)』(ボルドーAOCのSB)


ワイン④:『Le Chenes de Bouscaut Blanc (2015)』(ぺサック・レオニャンのSB)


ワイン⑤:『POUNAMU Sauvignon Blanc (2019)』(ニュージーランドSB)


ワイン⑥:『Newton Johnson Sauvignon Blanc (2020)』(樽香ありの南アSB)





オールドワールドとニューワールド、樽熟成なしと樽熟成ありをバランスよく、メジャーな地域から集めてみました。


ニュージーランドのソーヴィニヨンブランは樽熟成を経たものもありますが、代表的なものは樽香のないフレッシュなワインなので、そのようなタイプを選びました。


また、南アフリカのソーヴィニヨンブランは、樽香のないフレッシュなものと、樽香のあるものがありますが、ニューワールドの樽香のあるものの代表として後者を選んでみました。





ワイン①:『Pascal Jolivet Attitude Sauvignon Blanc (2020)』(ロワール IGP)



典型的なロワールのソーヴィニヨン・ブランとしてこのワインを用意しました。


ソーヴィニヨン・ブランはアロマティック品種と言われるだけあって、しっかりとした品種特徴が感じられるワインです。


香りの強さはやや強く、柑橘系フルーツ(グレープフルーツ、レモン)の中に、しっかりと青いグーズベリーや芝のニュアンスが感じられます。また、やや火打石のような香りも感じられます。


味わいは、辛口で、酸味は高く、アルコール度は中程度(13.5%)、ボディは中程度くらいです。アルコール度が意外に高めであることに驚きです。風味の強さは中程度で、余韻はやや短めです。


ソーヴィニヨン・ブランの香りの良さと、酸味の高さによって、フレッシュさを楽しむ早飲みタイプのテーブルワインという印象です。


ブラインドテイスティングの観点からは、ソーヴィニヨン・ブランドであることは比較的に分かりやすいワインだと思いますが、アルコール度の高さと、意外な香りの強さから、チリやニュージーランドのようなニューワールドのソーヴィニヨン・ブランと間違えてしまいそうな気がしました。


果実の成熟度が柑橘系果実であることが、ロワールのソーヴィニヨン・ブランであることの最も大きなヒントだと思いました。また、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランにしては、やや香りの強さが弱めだとも感じられました。





ワイン②:『Pouilly Fume Cuvee De Boisfleury Cailbourdin (2013)』(プイィ・フュメの古いヴィンテージ



瓶熟成がやや進んだと思われる、やや濃い目のレモン色の外観を持ったワインです。


香りの強さはやや強めで、かすかなパッションフルーツと野菜の青さの中に、瓶熟成によると思われるハチミツやドライフルーツ(乾燥したモモ)の香りが感じられます。


この独特の熟成香は、若いソーヴィニヨンブランでは感じられないものだと思います。


味わいの特徴は、辛口、高い酸味、中程度のアルコール度(12.5%)、ミディアムボディです。


余韻はやや長く、華やかな香りと高い酸味のバランスが取れたワインだと思いました。


ブラインドテイスティングでロワールのソーヴィニヨン・ブランを見抜くためには、青い香りとパッションフルーツの香り、高い酸味だと思いますが、ニュージーランドのものに比べると香りの特徴が弱いので、これを見極めるのは繰り返しの練習が必要だと思いました。




ワイン③:『MOUTON CADET BLANC (2021)』(ボルドーAOCのSB)



ボルドーAOCのソーヴィニヨン・ブランです。


厳密に言うと、ソーヴィニヨン・ブラン(69%)、セミヨン(29%)、ミュスカデル(2%)です。


外観は、淡いレモン色で、ロワールIGPのSB(ソーヴィニヨン・ブラン)と同じくらいの色合いです。


香りもロワールIGPに近く、SBの品種特徴である、青い芝やグーズベリーの香りに、柑橘系果実(レモン、グレープフルーツ)の香りがあります。また、甘い花の香りも感じられます。


味わいは、辛口で、中程度よりやや高めの酸味、中程度のアルコール度(12.0%)、ミディアムボディです。


ロワールIGPのワインに非常に似ていますが、ボルドーの方がより華やかな花の香りを持ち、ボディもしっかり目な気がします。


これはおそらくブレンドされている、セミヨンとミュスカデルが大きな原因であると考えられます。セミヨンはワインにボディをあたえ、ミュスカデルはマスカットやオレンジの花のような華やかなやや甘ったるい香りをあたえていると考えられます。


多少の違いはありますが、このワインもロワールIGPのワインと同じく、SBのフレッシュさを楽しむ早飲みのワインだと思いました。


樽熟成の有無ですが、このワインは樽熟成は行われていないようです。ボルドーの白ワインは比較的高価格帯のものはワイン④のように新樽を利用した樽熟成が行われていることがありますが、ワイン③のような一般のボルドーAOCクラスのワインではあまり樽熟成はおこなわれていないようです。実際にこのワインの香りからは明らかな樽の香りも感じられず、また、樽熟成のワインに多い後味の苦みも感じられません。


ブラインドテイスティングの観点から言うと、SBのワインであることは非常にわかりやすいですが、ロワールのワインと区別を付けられるかについては非常に難しいと思いました。


ボルドーのワインは、ワイン④のような新樽の利用がないと産地を特定するのは難しいのではないかと思いました。





ワイン④:『Le Chenes de Bouscaut Blanc (2015)』(ぺサックレオニャンのSB)

(※楽天やAmazonでの販売が無かったので、実際のボトルの写真を載せました。以前に楽天のショップで購入できたのはラッキーだったのかもしれません。)


ボルドーはグラーヴ地区の格付けシャトー「シャトー・ブスコー」のセカンドワインです。


AOCはそのワインの品質の高さでグラーヴAOCから独立をしたぺサック・レオニャンAOCです。


外観は、中程度のレモン色。ソーヴィニヨンブランにしては、色が濃いような気がしますが、樽熟成の影響かもしれません。


香りの強さは中程度。香りの種類は、フルーティーさよりも旨味に関連する香りが強く感じられます。例えるならば、クリームとパン生地とバニラの香りで、甘いケーキを連想させます。新樽と、澱との熟成に由来する香りであることが推測されます。あまい香りは、リコリスを連想させます。


製造元情報によると実際に、バトナージュによる澱撹拌、8か月のオーク小樽での熟成(新樽比率35%)などが行われています。


このようなケーキを連想させるエレガントな香りは、ブルゴーニュのプルミエ・クリュのシャルドネでも感じました。フランスの醸造・熟成技術の高さを示しているのかもしれません。


香りの中にはフルーツの香りも含まれており、レモン、リンゴ、そして、モモくらいの成熟度だと思います。ソーヴィニヨン・ブラン特有のパッションフルーツや、野菜の香りは感じ取ることができませんでした。


味わいはドライで、中程度の酸味、中程度のアルコール度(13.0%)、ミディアムボディです。余韻はやや長めです。


ソーヴィニヨンブランの割に酸味は低めですが、これはセミヨン比率が高いためだと思います(60%)。


全体的には、香りの強度、複雑さ、バランス、余韻ともによくできたワインで、瓶熟成による香りの発展も期待ができるワインだと思いました。


しかし、ソーヴィニヨン・ブランのブラインドテイスティングという面で考えると、決定打となる特徴を捉えることができず、ブルゴーニュの品質の高いシャルドネと混同してしまうような気がしました。




ワイン⑤:『POUNAMU Sauvignon Blanc (2019)』(ニュージーランドSB)



フレッシュで、香り豊かなソーヴィニヨン・ブランです。


外観は、薄め~中程度のミディアムレモン色。


香りは強く、ソーヴィニヨン・ブラン品種特有の、パッションフルーツ、ピーマン、芝の香りに加え、レモン、グレープフルーツ、リンゴ、などのフレッシュなフルーツの香りが感じられます。


品種特徴を最大限に活かし、余計な香りを加えない醸造手法で造られたワインです。


味わいは辛口で、酸味は中程度よりもやや強く、中程度のアルコール度(13.0%)、ミディアムボディです。


豊かな香りと酸味の調和、風味の強さ、余韻の長さは感じられますが、品種由来の香りが中心であるために複雑性については少し物足りなく感じます。


品種特徴がはっきりと現れているワインであるために、ブラインドテイスティングでは、ソーヴィニヨン・ブランであることが最も分かりやすい部類のワインだと思います。




ワイン⑥:『Newton Johnson Sauvignon Blanc (2020)』(樽香ありの南アSB)



南アフリカはウォーカーベイのソーヴィニヨン・ブランです。


南アフリカのソーヴィニヨン・ブランのワインは、ロワールやニュージーランドのように品種特徴やフレッシュさを押し出したスタイルと、ボルドーのように樽熟成を経たスタイルがあるようですが、これは後者のスタイルです。


外観は、薄いレモン色。


香りの特徴としては、まずしっかりとした樽香が感じられます。焦げた木や煙のようなしっかりとしたタイプの樽香です。


流通元の情報によると(https://www.mottox.co.jp/catalog/wine-liquor/614487)、ソーヴィニヨン・ブランにブレンドされているセミヨン(ブレンド比率12%)のみがフレンチオークによる樽熟成を3~4か月経ているようです。新樽比率は10%です。


この程度の低い割合の新樽で、これだけの樽香が現れることに驚きです。


ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランのブレンドはステンレスタンクによる熟成を経ているようです。


果実の香りは、リンゴ、パイナップル、ピーチなどですが、強い樽香に消されてしまっている印象です。


味わいは、辛口で、中程度よりやや高い酸味、中程度のアルコール度(13.5%)、中程度よりややフルボディです。余韻は中程度でそれほど長くありません。


あと原因はよくわかりませんが、やや二酸化炭素が溶け込んでいるような、プチプチっとした感覚があります。


ブラインドテイスティングに関して言うと、これをソーヴィニヨン・ブランであると見抜くのは難しいと思いました。なぜなら、ソーヴィニヨン・ブランの特徴であるパッションフルーツや青い香りがほとんど感じられないからです。唯一のヒントは、やや高めの酸味にあると思います。




テイスティングのまとめ


ソーヴィニヨン・ブランはユニークな特徴を持ったアロマティック品種であることから、品種特徴を前面に出したスタイルのワインであれば、その品種を当てることが比較的容易なワインだと思います。


産地については他の品種と同様に、果実の成熟度や香りの強さ、ボディの厚みなどから推測ができるのではないかと思います。


しかし、一方で樽香が加えられたボルドースタイルのワインでは、樽香によって品種特徴が隠されてしまうことがあるために、ソーヴィニヨン・ブランであることを見抜くことが非常に難しいとも感じました。


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WSETと比較をしてみると、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験で特徴的な部分は、ワインに関する歴史が問われることでした。 (関連記事: WSETレベル3とJSAソムリエ・ワインエキスパート資格の違い、どちらがおすすめ? ) ワインやワイン産地には興味があるんですが、正直、ワインの歴史にはそこまで興味を持てませんでした。ワイン愛好家にとって重要なことは、おいしいワインを見つけることや、おいしいワインを飲むことであり、ワインがどんな歴史をたどってきたかなんて近代を除いてそんなに重要なことではないと思えるからです。 「歴史なんか覚えて、何の役に立つの?」正直こんな気持ちでした。 だから、いざ覚えようと思っても、興味のないことはなかなか覚えられません。ワインの色などは語呂合わせを駆使して覚えてきたのですが、年号関連は語呂を作っても同じような語呂ばかりになってしまい、この方法もあまり役に立ちませんでした。 そこで始めたのが、正確な年号を覚えるのはとりあえず置いておいて、年号の順番を覚えるというやり方。特定のトピックにおいて、関連した年号を1つの図にまとめていくと、何となく時代背景が見えてきて、少しずつ頭に入ってくるような気がします。さらに、キーとなる年号だけ覚えておけばその前後関係を覚えておくだけで、JSAソムリエ・ワインエキスパート試験は4択なので十分対応可能だと思いました。 例えば原産地管理法の年号は、ヨーロッパ→北米・南ア→南米・豪州→NZ・日本のように広まっていくのがわかります。 また、ブドウの伝来もヨーロッパ→南米→アメリカ・南ア→豪州→NZ→日本のように広がっています。 そして、日本も長野・山梨から始まり、北海道や山形に広がっていくのがわかります。 正確な年号を語呂合わせで覚えるよりも、こちらの方が時代背景がわかるので後々役に立つ知識になるとおもいました。 このような類似のトピックで情報を1つの図にまとめていくやり方は、その他覚えにくい生産量のデータや、気候区分を覚えるのにも役に立ちました。単なる数字を覚えるよりもずっと楽に暗記ができました。 例えば、フランス各地の栽培面積とワイン生産量。 そして、各地の気候区分。 試験中に具体的な数字が浮かばなくても、なんどなくこれらの図が頭に浮か...

WSETレベル3で一発合格できたテイスティング対策

WSETレベル3 の試験には、筆記試験に加えて、 テースティング試験 が含まれます。 WSETのテースティングでは、 SATという名のテイスティング・ツール を用いて、ワインの描写と品質・飲み頃に関する評価を行います。本試験においても、このSATに則って、出題される2種類のワイン(通常、赤ワイン1種と白ワイン1種)についての評価を回答用紙に記述します。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング回答のルール ) 一般的に、 WSETレベル3のテースティング試験は筆記試験に比べて合格をしやすい と言われています。しかしそれでも、試験をパスするためにはある程度の学習と練習が必要だと思います。 WSETレベル3のテイスティング対策を行うにあたって、私が感じたのは、どのように準備をしたら良いのかという情報がJSA試験ほどに豊富には手に入らないということでした。 そこで、この記事では私がテイスティング試験に向けて行った準備を紹介したいと思います。一度の試験で合格ができたので、それなりの効果はあったのだと思っています。 試験突破のカギは「SATの理解」と「品質評価」 テイスティング試験対策に取り組む中で、私が最も重要だと思い、時間を割いたのは、「 SATの記述ルールを理解すること 」と「 ワインの品質レベルを正確にとらえる 」ことでした。 テイスティング試験の合格基準は「55%」の得点率なので、この2つさえできていれば、まず落ちることはないと思いました。 反対にこの2つのいずれかが欠けていると、大きく減点をされてしまう可能性があります。例えば、SATでは、「テイスティングの記述に用いる用語」と「評価をすべき項目」がしっかりと決まっています。間違った用語を用いたり、評価すべき項目が記述されていなければ、全く得点は得られません。用語や評価項目以外にも、いくつか記述のルールが存在するので、ワークブックをしっかり読んで全てを把握しておくことが必須です。 (参考記事: WSETレベル3のテイスティング試験でやりがちな失敗トップ10 ) (参考記事: WSET SATのちょっとわかりにくかった香りと風味の選択・記述ルール ) ルールに関してはJSAのテイスティングのルールとは少し異なると思われる部分もあったので要注意です。 ...