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ナパヴァレーAVA(カリフォルニア)の覚え方を正攻法で考える

 ワイン学習において、ナパヴァレーAVAの暗記は難関だと思います。


いままで語呂合わせによる覚え方などを考えてきましたが、今回は正攻法による覚え方を考えてみたいと思います。


まず、ナパヴァレーの位置ですが、ナパ郡の西部の広い範囲に位置しています。そして、ソノマ郡とソラノ郡に挟まれたやや内陸に位置しています。


東西を、ヴァカ山脈とマヤカマス山脈に挟まれているために、東のセントラルヴァレーからの暖かい空気や、太平洋からの冷たい空気から守られています。


しかし南部はサン・パブロ湾に面しているために、ここからの冷たい海風や霧の影響を受けています。また、北部の一部も山脈が少しだけ途切れているために、ソノマ郡からやってくる涼しい空気の影響もやや受けます。


さて、ここから本題のナパヴァレーのAVAに関してです。


ナパヴァレーには、この地域全体をカバーするNapa Valley AVAと、その中に16の小地域のAVAが含まれています。覚えるのが難しいAVAは、この16の小地域のAVAです。


主だったAVAは、下の図のように、山の斜面と、谷底の川の近くに、南北に並んでいます。




数あるものを覚えるための1つの方法としては、それぞれの要素をグルーピングすることだと思います。


そこで、これらのAVAを、まずは山の斜面にあるもの(緑色)と、谷間にあるもの(無色)に分けてみたいと思います。


緑色のAVAではほとんどの畑が霧の冷涼効果を受けないフォグライン(Fog line)よりも高い標高に位置しています。一方で、無色のAVAの畑は霧の影響を受けるフォグラインよりも標高の低い場所に位置しています。




そして、次にサン・パブロ湾からの冷たい風と霧の影響を受ける度合によって、谷間のAVAを3つのグループに分けようと思います。南に位置するAVAほどその影響は大きく、北に位置するAVAほどその影響は小さくなります。


下図の青い地域は湾からの影響を大きく受け涼しい地域であり、赤い地域は湾からの影響はほとんどなく暖かい地域です。そして黄色はその中間くらいです。




谷間の南部のAVA


まずは、谷間のAVAのうち、もっともサン・パブロ湾に近い地域にある3つのAVAです。

・ロス・カーネロス(Los Carneros)

・クームズヴィル(Coombsville)

・オーク・ノール・ディストリクト(Oak Knoll District)




ロス・カーネロスは最も湾に近いAVAであり、湾からの冷涼効果の大きな地域です。涼しい気候を利用して、早熟品種であるシャルドネやピノノワールが造られることで有名です。VAの半分はナパヴァレーに、もう半分はソノマ・カウンティにまたがっています。


オーク・ノール・ディストリクトは、ロス・カーネロスの北部に位置するAVAです。ここは、ロス・カーネロスに比べるとやや暖かい地域です。


クームズヴィルは、ナパ川を挟んでロス・カーネロスとオーク・ノール・ディストリクトの対岸にあります。川の両側では土壌の性質がやや変わるので、収穫されるブドウの特徴もやや異なるのだと思います。

オーク・ノールやクームズヴィルでは、カベルネソーヴィニヨンやメルロ、シャルドネなどが多く栽培されているようです。


これら3つのAVAは丁度、ナパ(シティ)を取り囲むように広がっています。



谷間の中部のAVA


谷間の中部には次の4つのAVAがあります。谷間の中部のAVAは、基本的に温暖ではあるものの、湾からの冷たい風や霧の影響により、夜間の温度は冷やされます。

・ヨーントヴィル(Yountville)

・スタッグス・リープ・ディストリクト(Stags Leap District)

・オークヴィル(Oakville)

・ラザフォード(Rutherford)




もっとも南に位置するのは、ヨーントヴィルです。


そして、ナパ川を挟んだ対岸にスタッグス・リープ・ディストリクトがあります。ナパ川の東岸と西岸では土壌が異なると言われているので、ヨーントヴィルとはまた異なる特徴を持ったブドウが栽培されているのだと思います。


その北にある。オークヴィルラザフォードはそれぞれナパ川を跨ぐ形で広がっています。ナパ川の西岸には大きな扇状地が広がっており、ここでとれるブドウから造られるワインは、ナパ川近くのワインよりも、しっかりとした骨格を持つと言われています。


この地域では主にカベルネソーヴィニヨンが栽培されています。また、白ブドウではソーヴィニヨンブランも栽培されているようです。比較的暖かい地域なので、涼しさが必要なピノノワールやシャルドネの栽培にはあまり向かないようです。



谷間の北部のAVA


谷間の北部には次の2つのAVAがあります。ここは湾からの風や霧の影響がほとんどないために基本的に暖かい~暑い気候です。

・セントヘレナ(St Helena)

・カリストガ(Calistoga



ここで栽培される品種は主に赤ワイン用の品種であり、カベルネソーヴィニヨン、メルロ、シラー、プティシラー、ジンファンデルなどです。



山地のAVA(東側)


続いては山岳部にあるAVAです。


山地のAVAはナパヴァレーを囲むように東西に並んでいますが、まずは東側のAVAからです。ここには次の4つのAVAがあります。

・ハウエル・マウンテン(Howell Mountain)

・チャイルズ・ヴァレー(Chiles Valley)

・アトラス・ピーク(Atlas Peak)

・ワイルド・ホース・ヴァレー(Wild Hourse Valley)




山地のAVAでは、豊富な日照量、標高による冷涼効果、痩せた土壌の影響で、タンニンと酸味のレベルが高く、果実味の凝縮されたワインが出来上がると言われています(しかし、昼と夜の温度の差を意味する日較差は、谷間のAVAに比べて小さいようです)。


特に谷の東に位置するこれらのAVAは、午後の強い日照を受けるため、谷の西側のAVAよりも暖かく、よりアルコール度の高く成熟度の高いワインになると言われています。


東側のAVAの中でも、特に湾から遠いAVAほど暖かいと言われており、ハウエル・マウンテンはナパヴァレーでも最も暖かいAVAの1つです。ここでは、高い成熟度・凝縮感のある香りと豊富なタンニンを持ったカベルネ・ソーヴィニヨンが造られています。


ちなみにこれらのAVAのうち、ワイルド・ホース・ヴァレーは、ナパ郡とソラノ郡にまたがるAVAです(図の赤い点線がナパ郡とソラノ郡の境です)。


また、余談ですが「Chiles Valley」について私は初めは「チルズ・ヴァレー」と覚えましたが、どうやら本場の発音は「チャイルズ・ヴァレー」の方が近いようなのでこちらの表記としました。



山地のAVA(西側)


西側の山岳地帯には次のような3つのAVAがあります。

・ダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト(Diamond Mountain District)

・スプリング・マウンテン・ディストリクト(Spring Mountain District)

・マウント・ヴィーダー(Mount Veeder)



西側の山岳地のAVAは、午後の強い日照をそれほど受けることが無いために東側のAVAに比べるとより涼しい気候にあります。


また、東側のAVAと同様に、湾に近い南部の方がより涼しい気候にあります。


そのため、最も南部に位置するマウント・ヴィーダーは山岳地のAVAの中で最も涼しい地域であると言われています。



まとめ


ナパヴァレーのAVAは何の脈絡もなく覚えようとすると結構大変だと思います。


しかし、これまでの説明のように、特徴の似通った地域ごとにグルーピングをして覚えていくと、少しは暗記がしやすくなるかもしれません。




<了>


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