アメリカのワインの原産地名称と言えば、AVA(American Viticultural Areas=米国政府認定ブドウ栽培地域)が思い浮かびます。
しかし、調べてみると原産地名称がAVA以外のワインも存在します。それは、州名や郡名などの地方行政区画が原産地名称として表示されているワインです。
なぜ、AVAと行政上の区画の2種類の原産地名称があるのでしょうか?少し紛らわしく感じます。
また、この2種類の原産地名称は、原産地名称だけではなく、収穫年のラベル表示に対しても影響を与えます。
アメリカのワインはラベルに収穫年を表記するためには、その年のブドウを一定以上含んでいる必要がありますが、AVA表記のワインと、州/郡表記のワインでその割合は異なります。AVA表記ワインでは95%以上のブドウがその年のワインである必要がありますが、州/郡表記のワインでは85%以上で収穫年の表記が可能です。
このような2種類の原産地表記のワインがある理由について調べてみましたが、これにはAVA導入の経緯が関係しているようです。
AVAは、地質学的・地理学的にユニークな特徴を持つブドウ栽培地域としてアメリカ全土に適用されましたが、それ以前の原産地呼称は、州や郡の行政区画の境界線に基づいて指定されていたそうです。
そしてAVA導入の際、それらの原産地呼称はAVAに組み込まれることなく、そのまま残されました。
これが、2種類の原産地表記が残された経緯なのではないかと思います。
最後に、アメリカのワインの勉強をしていると次のような表をよく見かけます。産地の項目には、州、郡、AVAに加えて「畑」が並んでいますがこれは少し誤解を与えるような表だと思います。
調べた範囲ではアメリカのワインの原産地として認められているのは、「州・郡」、もしくは、「AVA」のいずれかです。「畑」については、、あくまでも条件を満たせば選択的に表記ができる項目であり、「州・郡・AVA」にとって代われるような原産地にはなりません。
しかしこの表を見ると、ブルゴーニュのように、あたかも畑が原産地として認められているかのような誤解を受けてしまいます。
以上、アメリカの原産地にまつわる疑問と、その考察をまとめてみました。
<了>